煙之花 花之煙

監督:嬰木義行

WOWOW賞

「和子ちゃんは引っ越すことになりました」
草原の中で泣いている和子の姿に、そんなナレーションがかぶさる。声の主は、和子の親友で療養所にいる春子。彼女の見舞いに行った和子は、「想像してみて」といわれて花に巻かれた和子の姿を思い描いた。その帰り道、森の中で同級生の山田君に後をつけられた時、和子は木の枝に上りながら、今度は自分が花に巻かれているのを見る。そんな不思議な思いを抱いたまま和子は知らない町に来た。新しい友達と焼却炉の中で煙草を吸った和子は、すっかりその場所が気に入ってしまう。そしてある日、自転車で遠出した時、和子は懐かしい療養所がなくなっていたことを知った。そこには空き地があるだけ。和子はその場にうずくまって泣いた。
「それは春子が死んで7日目のことでした」
記憶のはかなさと忘れてしまうことの寂しさ。思い出が薄れていくことの切なさを幻想的なタッチで映像化した、花と緑のファンタジー。

  • 1991年/30分/カラー/8mm
  • 監督・制作・脚本:嬰木義行
  • 撮影:吉永健司、嬰木義行 音楽:小西英登
  • 出演:北山美樹子、堀 恭子、井上勝己、石山美由紀