クール・バナナ

監督:小村幸司

いまわの際におばあちゃんは言った。「…バナナ」

吉本家の親戚一同が久々に本家に集まった。おばあちゃんが危篤になったのだ。みんなが枕元で見守る中、彼女はつぶやいた。「…バナナ」。おばあちゃんはそんなにバナナが食べたいのか。孫が走る。彼が苦労して手に入れた一箱のバナナ、その一本一本がもぎとられ、親戚それぞれの口に運ばれるたび、小さなドラマの断片が浮かび上がる。
最後にバナナが食べたい――。奇抜でコミカルなこの設定は、監督が以前、ある雑誌で読んだ実話なのだそう。親戚が集まった時に交わされる男同士、嫁同士、孫同士の会話は、誰もが見に覚えのあるステレオタイプなもの。そのつまらなさが逆に、生と死のコントラストを描き出す結果となっている。

  • 1993年/10分/カラー/video
  • 監督・制作・脚本・編集:小村幸司
  • 撮影:朝倉浩貴 録音:渡辺 融 助監督:菅野宏彰、倉田健次
  • 出演:照井康政、藤原常吉、川島祐子