ゴキブリマン

監督:福津泰至

グランプリ

ゴキブリマン、あなたがいたから僕がいた

佐藤には近頃、気になることがある。煙草の減り方が妙に早いのだ。「自分1人で2人分喫っているのか。それとも、もう1人喫っている誰かがいるのか」。そして彼は考える。「自分が行っていない時も大学は存在するのか」「自分が部屋にいない間、部屋には本当に誰もいないのか」と。そんなある日、クローゼットの中からブリーフ1枚の男が登場する。時々、ベランダで飛ぼうとするその男は、毎日を無気力に過ごす佐藤に、現実的な質問をしたり、意見を言うようになるのだった。彼の正体は一体…?
自分の視界の外に広がる世界。その圧倒的な大きさに思いを馳せた時、自分という存在の小ささを思い知る。外との接触を断って、その恐怖をうやむやにする佐藤。男との会話を字幕にしたことで、彼の閉じた世界を表現することに成功した。数日間に起こった小さな再生を描いたユーモラスなタッチは、エンディングのテーマ曲で一層印象的になった。

  • 1996年/33分/カラー/8mm 英題:COCKROACH MAN
  • 監督・脚本・編集:福津泰至
  • 撮影:伊藤伸浩、長池弘史 録音:古沢秀治 照明:鈴木竜一郎、長池弘史 記録:熊田祐子 音楽:野崎美波
  • 出演:冨永昌敬、福津泰至、大野洋介、長池弘史