アンゴウ

監督:古本恭一

審査員特別賞

レンタル可能/配信有り

タクシー運転手の島は、数カ月前に交通事故で、幼い2人の娘を奪われた。その車を運転していた妻は、命は助かったものの視力を失ってしまう。妻の退院の前日、図書館の職員を名乗る男性から「本を返却して欲しい」という電話が入る。島がその本を探し出すと、中から数字を羅列した暗号めいたメモが出てきた。胸に引っかかるものがあった島がその数字を読み解くと、「イツモノトコロデマッテイマス」というメッセージになっていた。彼は、美しい妻の不倫を疑い始める。一方、妻は、よそよそしい夫の態度に事故の責任を感じて苛立つのだった。
子供の死、失明、夫婦の危機というシリアスなテーマを、重過ぎず、暗過ぎず、かといって明るい応援風でもなく、誠実な平常心で扱って、多くの人の心に素直にしみる作品に仕上がった。全体に落ち着いた語り口だが、時代遅れの感動モノにならなかったのは、夫のタクシー運転手としての暮らしぶりだけでなく、妻の“目が見えなくなってから”の生活を、ヴィヴィッドに描きこんだことが大きな要因だろう。同じ失明者の男友達をつくり、新聞勧誘員に思いを寄せられ、夫の態度に大声を出し、あるいは必死で夫婦の絆を結び直そうとするその姿は、同情だけに終わらない魅力がある。苦しみの末、同じ日の同じ時間、違う場所で、2人がそれぞれに子供の死を乗り越えるラストシーンは感動的。

  • 1999年/74分/カラー/video 英題:ANGOU
  • 監督・脚本:古本恭一
  • 制作:宮脇信行 撮影:三本木久城 音楽:野口真紀
  • 出演:高井純子/平出龍生/古本恭一/川相真紀子

配信・放映

レンタル可能作品

料金:15,000円(税別) 貸出フォーマット:ビデオ

レンタル方法はこちら