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PFFアワード

PFFアワード作品紹介

PFFアワード2012

作品名 監督名 作品名 監督名
『あの日から村々する』 加藤秀則 審査員特別賞
『stay チューン』
伊藤智之
審査員特別賞、観客賞(京都)
『あん、あん、あん』
イノウエカナ 『飛び火』 永山正史
『オハヨー』 佐久川満月 『Her Res~出会いをめぐる三分間の試問3本立て~』 山戸結希
エンタテインメント賞(ホリプロ賞)、映画ファン賞(ぴあ映画生活賞)、観客賞(名古屋)
『かしこい狗は、吠えずに笑う』
渡部亮平 日本映画ペンクラブ賞
『Please Please Me』
青石太郎
グランプリ、ジェムストーン賞(日活賞)
『くじらのまち』
鶴岡慧子 『継母』 工藤隆史
審査員特別賞、観客賞(福岡)
『故郷の詩』
嶺 豪一 準グランプリ
『魅力の人間』
二ノ宮隆太郎
『極私的ランナウェイ』 河合 健 『ゆれもせで』 川原康臣
『水槽』 加藤綾佳 観客賞(神戸)
『リコ』
弓場 絢

応募総数 522本 入選 16本

『あの日から村々する』

監督:加藤秀則

原子力発電を全廃させた2021年の日本で悪夢の事故が再び!
2021年の日本。10年前の事故を契機に原子力発電を全廃したこの国の電力は、その半分が新種のクリーン発電方式「なめこ汁発電」によってまかなわれている。ある日、安全なはずの首都電力奥多摩なめこ汁発電所が事故を起こす。周辺住民に避難勧告が出されるが、逃げ遅れた人々の体に次々と異変が起こり出す…。
なめこ汁発電、カニ化する身体、幼児化した首相。そうした、いまの日本のきわめて表面的で軽薄なパロディを装いながら、この映画はあの事故がすでに起こったことではなく、いまなお起こりつつ問題であることを私たちに思い出させる。なぜ、いまこの場所に居続けるということが、こんなにも困難なことになってしまったのか。行き場のない憤りが言葉にならない叫びとしてこの映画の隅々まで響きわたるとき、それは日常の中に消えてしまいかけていた私たち自身の叫びと共鳴するだろう。(文・結城秀勇)

2012年/22分/カラー 英題:MORE FUKUSHIMA
監督・脚本・編集:加藤秀則
撮影:多賀世帆 音楽:林 暢彦 美術:祟
出演:黒田芽衣、斎藤芳廣、林 崇夫、小泉雄詩、山口祐子

劇場公開
海外映画祭
2013年 ニッポンコネクション
NIPPON CINEMA 部門
(ドイツ)

【貸し出し対象作品】料金:15,000円(税別)/貸し出しフォーマット:ビデオ

審査員特別賞、観客賞(京都)

『あん、あん、あん』

監督:イノウエカナ

ボーイッシュな女子高生を軸に浮遊する「女」のさまざま
女子校に通う肘木圭の周りには、多くの性愛があった。どうやら父は不貞行為している。友人のあずみと沢村先生の関係も怪しい。自分を求める大人たちがいる。男装をしてみても変わらない。保健室では、今日も養護教諭の福原トモコが私を待っている。解けた靴紐を結んでくれたあずみ。彼女にだけは素直になりたいと想う。「わたし」の抱える女性性嫌悪、それでも逃れることが出来ないこの性(さが)と出会うため肘木は少しだけ勇気を出してみる。
作品を固める巧演者たちが素晴らしい。様々な年齢の女性たちを通して、「女であること」への意識を丁寧に浮かび上がらせる。例えばそれは、同居している祖母の存在や、夫から未だに名前で呼ばれる妻の存在だ。役割を変えながらも、そこで生きる女性の姿を捉える深い洞察がある。説明的な台詞を排除し、登場人物が発する生きた言葉に魅了され、物語の終わりには、肘木の迷いと決意をありのままに捉えた眼差しに瞠目する。(文・吉田光希)

2012年/43分/カラー 英題:AH,AH,AH
監督・脚本:イノウエ カナ
撮影:寺澤知花 編集:石橋賢一 音楽:白鳥綾香 照明:縄手佑基
出演:辻本彩衣、近藤忠紀、大江志乃、黒糖きなこ、播野周平

【貸し出し対象作品】料金:15,000円(税別)/貸し出しフォーマット:ビデオ

『オハヨー』

監督:佐久川満月

恥辱にまみれた失恋男子が疾走の果てに吐き出すものとは!?
ある朝男子は、バス停の女子高生に一目惚れをした。恋に悶え、妄想する日々。そして歌を作り始めた。憧れのあの子に渡すのだ。男子は勇気をふりしぼる。「あ…あの…すみません…これぜひ…聞いてください」。悲劇は、ここから加速する。「ちがうちがう! そーゆーのじゃないです! なんなの? あれ? あ”~~」。悔しさと、恥ずかしさ、そして吐き気…吐き気?? たどりついた廃墟で男子は吐きだした。性的欲求(イカ)を。彼女への想い(テープ)を。すべてを体内から排除し、海で再び生まれかわるのだ。ギターの墓場で男子は目覚めた。それは、彼女のためにつくった歌の墓場である。「オハヨー」。内向的男子の笑顔の裏には、哀切が満ちている…。
これは敗者の映画である。絶妙なリズムで刻まれた編集と、ヘッポコなサウンドトラックにのせて男子は走る。その叫びは、どこまでも切なく狂おしい。男子の恥辱にまみれた慟哭を13分に凝縮させた失恋ジェットコースタームービー。(文・長澤 豊)

2012年/13分/カラー 英題:OHAYO!-GOOD MORNING
監督・脚本・撮影・編集:佐久川満月
出演:若松朋茂、三好 遥、宮里和誉

【貸し出し対象作品】料金:15,000円(税別)/貸し出しフォーマット:ビデオ

エンタテインメント賞(ホリプロ賞)、映画ファン賞(ぴあ映画生活賞)、観客賞(名古屋)

『かしこい狗は、吠えずに笑う』

監督:渡部亮平

孤独な女子高生が初めて見つけた友情。その絆の行く先は?
苗字の“熊田”とその風貌から、クラスメイトに蔑称に近い形で“プー”と呼ばれる女子高生の美沙。当然、友達などいない彼女にとって心を許せるのはペットのインコと理科室の水槽にいる金魚だけだった。そんな彼女は、他の女生徒から妬まれるほど“かわいい”と評判の同級生、イズミと急接近。なぜか自分に興味を示すイズミに戸惑いを覚えながらも美沙は初めての友人の存在に心躍る。孤独な美沙が初めて手にした友情。しかし、その絆が…。
学園生活において“絶対”であり“すべて”であるとともに、“移り気”でもあるティーン世代の友情をキーに、まるで主人公の心模様をなぞるように晴天から曇天へと表情を変えていく転調の効いたストーリーが秀逸。その脚本の構築力と、最後まで観る者を惹きつける緊迫感をもたせた演出から確かな才気が立ちのぼる。いじめ問題、モラルの欠如、希薄な人間関係など、現代の日本社会の闇を見据える視点もまた鋭い。(文・水上賢治)

2012年/94分/カラー 英題:SHADY
監督・脚本・編集:渡部亮平
撮影・編集:辻 克喜 音楽:近谷直之
出演:mimpi*β、岡村いずみ、石田剛太、仁後亜由美、佐藤幾優

劇場公開
2013年 3月23日~29日 愛媛 シネマルナティック
6月22日~28日 東京 オーディトリウム渋谷
8月3日~9日
8月31日~9月6日 大阪 第七藝術劇場
11月16日~22日 広島 ハ丁座
11月23日~29日 宮城 桜井薬局セントラルホール
12月21日~27日 富山 フォルツァ総曲輪
12月23日~28日 東京 下高井戸シネマ
2014年 1月3日~10日 愛媛 シネマルナティック
1月4日~10日 東京 キネマ大森
3月7日のみ 奈良 ならシネマテーク
3月8日~14日 新潟 シネ・ウインド
4月19日~25日 愛知 名古屋シネマテーク
海外映画祭
2013年 ニッポンコネクション
NIPPON CINEMA 部門
(ドイツ)
シンガポール日本映画祭2013 (シンガポール)
第21回レインダンス映画祭 (イギリス)
Camera Japan Festival 2013 (オランダ)
第9回オスナブリュック・ニュー・ジャパニーズ映画祭 (ドイツ)
第14回サンディエゴ・アジア映画祭 (アメリカ)
2017年 高雄フィルムアーカイブ「日本爆裂。獨立時代- PIA影展映畫大賞」 (台湾)

【貸し出し対象作品】料金:15,000円(税別)/貸し出しフォーマット:ビデオ

グランプリ、ジェムストーン賞(日活賞)

『くじらのまち』

監督:鶴岡慧子

仲良し高校生男女3人組のすれ違う心の揺れを瑞々しく描く
陸上での生活に適応した鯨は、なぜあえて新天地を目指す試練を選び、海へと還ったのか…。6年前に失踪した兄が気がかりな女子高生まち。同級生の朝彦とほたるの“仲良し3人組”は、高校生最後の夏休み、東京への小旅行を計画する。まちの兄が東京にいると知り、わずかな手がかりと期待を胸に、列車へと乗り込む。
思春期の持つ眩しさは、まだ未発達な自分自身の輪郭さえ気づいていない“無意識”が宿す光そのものにある。あやうさや艶めかしさも内包するその魅力を、スクリーン一杯に散りばめながら展開する意図的な仕掛けには、映像ならではの手法と試みが幾つも光る。永遠に続くかのように見えた子ども時代。どんなに満ち足りた環境でも、人はやがてその世界を抜け出し、何かを得て、何かを失う。渇望や喪失など、ままならない感情が芽生え始めた子どもたちの移りゆく表情と、揺れる心象風景を刻みながら、人はどのように大人になっていくのかを模索した青春群像劇。(文・鈴木沓子)

2012年/70分/カラー 英題:THE TOWN OF WHALES
監督・脚本・編集:鶴岡慧子
撮影・照明・編集協力:佐々木健太 照明助手・助監督:入澤朱陽 制作:永井 浩
出演:飛田桃子、片野 翠、山口佐紀子、佐藤憲太郎、中嶋 健

劇場公開
海外映画祭
2012年 第17回釜山国際映画祭
コンペ部門「ニュー・カレンツ」
(韓国)
2013年 第63回ベルリン国際映画祭
フォーラム部門
(ドイツ)
第15回ドゥーヴィル・アジア映画祭
コンペティション部門
(フランス)
アジア映画祭
NEWCOMERSセクション
(イタリア)
第15回ブエノスアイレスインディペンデント国際映画祭(BAFICI)
国際コンペ部門
(アルゼンチン)
第15回ソウル国際女性映画祭
アジア・スペクトラム部門
(韓国)
第11回クエンカ国際映画祭(FICC)
コンペティション部門
主演男優賞
(エクアドル)
第40回ゲント国際映画祭
コンペティション部門「ExploreZone section」
(ベルギー)
第9回オスナブリュック・ニュー・ジャパニーズ映画祭 (ドイツ)
2014年 香港インディペンデント映画祭
特集「日本インディ最前線」
(香港)

【貸し出し対象作品】料金:15,000円(税別)/貸し出しフォーマット:ビデオ

審査員特別賞、観客賞(福岡)

『故郷の詩』

監督:嶺 豪一

熊本から上京した大学生の、中途半端で空回りな愛しき日々
スタントマン志望の大吉は、故郷・熊本に可愛い彼女を残して上京。しかし東京での日々は、同じく熊本出身で映画監督を目指す天志と酒を呑み、ナンパし、完成することのない映画の構想を練ることに費やされ、気づけば卒業は目前だ。先の見えない未来と、叶わないかもしれない夢。恋愛も映画作りも袋小路に陥った大吉は、一世一代のスタントを計画する。
実在する男子学生寮・有斐学舎(ゆうひがくしゃ)を舞台に、まだ何者でもない若者たちのぐだぐだな青春が、当事者目線でセキララに綴られる。主人公が、監督・脚本・そして主演の3役をこなした嶺豪一自身であるのは、誰の目にも明らか。夢を語るものの実現に向けてなかなか努力できない大吉の焦燥は、はたして演技かそれとも地か。彼の悩みは若く青くクサいけれど、文字どおり、なりふり構わぬ捨て身の行動へと行きつくことで、青春の落とし前をつけるに至る。そう、本作は上京物語であると同時に、卒業の物語でもある。(文・皆川ちか)

2012年/71分/カラー 英題:THE KUMAMOTO DORMITORY
監督・脚本:嶺 豪一
撮影:楠 雄貴 編集:小野寺拓也 音楽:今村左悶 楽曲提供:SPANGLE
出演:嶺 豪一、飯田 芳、岡部桃佳、林 陽里、広木健太

劇場公開
2014年 10月18日~11月7日 東京 ポレポレ東中野
2015年 3月7日~20日 熊本 Denkikan
海外映画祭
2012年 第31回バンクーバー国際映画祭
招待作品部門
(カナダ)
2014年 インド日本映画祭 (インド)

【貸し出し対象作品】料金:15,000円(税別)/貸し出しフォーマット:ビデオ

『極私的ランナウェイ』

監督:河合 健

夢を忘れた青年と金髪援交娘が北へと向かうロードムービー
日々のアルバイトを無機的にこなす青年・蚊崎(かざき)。カメラマンになる夢を抱いて上京したけれど、生活に追われて最近はカメラを手にすることもない。ある夜、行き倒れの金髪女サラと出会い、部屋に泊めることに。金色の髪に一房まじったサラの赤いメッシュに惹かれ、北へ行きたいという彼女と共に旅へ出る。旅先で様ざまな人と出会い、2人の心は次第に歩み寄るが…。
虚ろな目に半開きの口。目的を見失い、ただ生きているだけの状態である蚊崎は、もう焦燥すら感じられない。対照的にサラは身体全体を使って生きて、そのためリスクも引き受けざるを得ない。主演ふたりの役への憑依、とりわけ有元由妃乃演じる痛々しいほどやけっぱち、それでいて純粋な援交娘サラが強烈な存在感を放つ。手ずからカラーリング、ラブホテル、発泡酒、骨の折れたビニール傘、そして街頭で配られるティッシュと、物語を彩るジャンクなディティールから日本のリアルが立ちのぼる。(文・皆川ちか)

2012年/76分/カラー 英題:FROM HERE TO NOWHERE
監督・脚本・撮影・編集:河合 健
脚本:牧野名雄、寺田 瑛 編集:田中悦子 音楽:日高ロンドン出身
出演:櫻井拓也、有元由妃乃、林 祐介、山崎智恵、箱田友紀

【貸し出し対象作品】料金:15,000円(税別)/貸し出しフォーマット:ビデオ

『水槽』

監督:加藤綾佳

田舎町でいじめを受けている女子中学生の強さと弱さに見惚れる
田舎町に暮らす中学生の千雪は、クラスメイト・裕輔からの軽率な告白をきっかけに、学校でいじめを受け始める。小さなコミュニティで発生した同調圧力から救ってくれる大人は何処にもいなかった。そんなある日、町に現れたひとりの男。どうやら訳アリらしい。千雪は男と出会い、少しずつ彼に魅かれていく。2人の関係は小さな町ではすぐに広まり、学校でのいじめにも拍車がかかる。告白した雄輔も千雪を気にせずにはいられなかった。
教室の水槽を見つめる少女は、囲われた金魚と、田舎町に暮らす自分を重ねていたのかもしれない。町の外からやって来た大人なら、きっと此処ではないどこかへ連れて行ってくれる…。小さな身体で、懸命に救済を手繰り寄せようとする千雪の切実な訴え。彼女の抱える不安を無言のままに表現し、同時に少女から大人の女性へと変わろうとする心理を見せる秀逸なラストにも注目してほしい。(文・吉田光希)

2012年/49分/カラー 英題:UNDERWATER
監督・脚本・編集:加藤綾佳
撮影:倉本光佑 照明:川上高広 助監督:佐野真規 録音・整音:中瀬 慧
出演:生駒梨奈、小林寿生、山段智昭、小野孝弘、宇江山ゆみ子

【貸し出し対象作品】料金:15,000円(税別)/貸し出しフォーマット:ビデオ

審査員特別賞

『stay チューン』

監督:伊藤智之

ぱっとしない男子高校生、真の姿は深夜ラジオのスター投稿者!
イケてない男子高生ヒロト。しかしてその正体は、人気ラジオ番組の常連投稿者“三代目天津丼”だった。三代目天津丼を師と仰ぐ不良生徒マーシー、さらに憧れの女子アヤエも誘い、ハガキ職人クラブを結成。さえない日常が動きだし、浮かれるヒロトだがアヤエは瞬く間に三代目天津丼を凌ぐ常連リスナーに。また彼女とマーシーの仲も訝しむようになり、ヒロトのアイデンティティは追いつめられる。
趣味はラジオと自己嫌悪、そしてオナニー。兄のセクシーな恋人を妄想の対象とする一方で、アヤエで抜くことは己に固く禁じるバリバリの童貞。思春期という名の言い訳で武装する主人公の殻を破るのは、アヤエと、恍惚の人おじいちゃんだ。過剰な自意識、卑小な現実、持て余す性欲。それら全てを吐き出して疾走する彼の姿は、情けないほど愛おしい。全編に横溢するギャグに最初は失笑、次第に微笑、最後は爆笑すること必至。(文・皆川ちか)

2012年/65分/カラー 英題:stay tuned
監督・脚本・編集:伊藤智之
撮影:三宅 唱、山崎悠太 編集:横田新之介、海田晃弘
出演:原田シェフ、亀谷志奈子、山中雄輔、佐々木麻衣、平川和宏

劇場公開
海外映画祭
2013年 Camera Japan Festival 2013 (オランダ)

【貸し出し対象作品】料金:15,000円(税別)/貸し出しフォーマット:ビデオ

『飛び火』

監督:永山正史

夜の山道で助けてくれたオジサンの倫理観に恐怖で震える青年
牛乳配達店に勤めるヨシオは胃弱で気弱。パートのおばさんにもアルバイト青年にも何も言い返せない。配達車を運転するときだけが発散の場で、大音量で音楽を鳴らして日頃の不満をぶちまけ、ひとりシリトリに興じる。今夜も音楽を鳴らして山道を運転中、誤って犬を轢いてしまう。瀕死の犬を前にうろたえていると、通りがかりの地元のオジサンが応急処置のため自宅へ運んでくれる。それが、ヨシオの人生観を覆す一夜の幕開けだった。
犬の飼い主の女も交えた物語は、不協和音なラブ&コメディ&ホラーを展開。善意の塊のように見えたオジサンが次第に見せる、独特な倫理観と自分の核をしかと持つ行動は、ヨシオと観客の善悪の判断基準の根底をぐらつかせ、恐怖させる。だがさらに一転、確固たる自分を持たないヨシオはある種の啓示を受けることに。田舎町を舞台にしたホラー映画の形をとりながら青年の成長譚に帰結させる剛腕に、並々ならぬストーリーテリングの才能が光る。(文・片岡真由美)

2012年/58分/カラー 英題:LIGHT MY FIRE
監督・脚本・編集:永山正史
共同脚本:鈴木由理子 制作:武田祥 撮影:森脇由二 音楽:テレコフ
出演:仲田天使、鐘築健二、竹下かおり、筧十蔵、上杉シンヤ、満利江

【貸し出し対象作品】料金:15,000円(税別)/貸し出しフォーマット:ビデオ

『Her Res~出会いをめぐる三分間の試問3本立て~』

監督:山戸結希

対照的な女の子2人の出会いにまつわる、実験的恋愛短編集
ちょっとボーイッシュな風貌のみなみと、愛嬌のある顔がどこか周囲をいつも和ませるすみれ。傍から見るとどこにでもいるごく普通の女の子である2人が、どんな出会いをして、どんな状況にいて、どんな決定機を迎えれば、その互いの想いを成就させることができるのか? そんな女の子同士の恋と愛を試問形式で紐解く短編連作。
こうは書いてみたものの、そこまでストーリー性があって各編に連動性があるように感じられるかは、はなはだ疑問で作品はとにかくまだまだ荒削り。だが、それを補って余り有る才気が12分の随所にほとばしる。中でも特筆すべきは映像表現のセンスにほかならない。映像の切り取り方、つなぎ、さらにそのテンポなどの感覚は天賦の才を感じさせるに十分。『愛のむきだし』や『下妻物語』といった作品に存在するモノローグ、映像、音楽が渾然一体となって観る者を圧倒する映像の力、そんなパワーの宿る映像を生み出しそうな才能を感じてならない。(文・水上賢治)

2012年/12分/白黒+カラー 英題:Her Res - 3 cases in which you will find me in 3 minutes
監督・脚本・撮影・編集:山戸結希
ピアノ演奏:堀 静香 録音:大和田麗衣 応援:坂本悠花里、中島彦次郎
出演:飯島みなみ、上埜すみれ、今村貴子、由比絵理子、加々美文康

劇場公開(長編作品の同時上映作品として)
2012年 11月10日~16日・29日 東京 ポレポレ東中野
2013年 2月16日~21日 東京 オーディトリウム渋谷
海外映画祭
2013年 第15回ソウル国際女性映画祭
アジア・コンペティション部門
(韓国)
2017年 高雄フィルムアーカイブ「日本爆裂。獨立時代- PIA影展映畫大賞」 (台湾)

【貸し出し対象作品】料金:15,000円(税別)/貸し出しフォーマット:ビデオ

日本映画ペンクラブ賞

『Please Please Me』

監督:青石太郎

ささやかに幸せに暮らす女子大生が悪意の存在によって世界を発見
20歳の大学生・笹野さつきは、トレーラー運転手の父と団地で2人暮らし。親子の関係も良好で、彼氏もいる。ある日、さつきは清掃アルバイトの仕事先で「事件」を目撃してしまう。何気なく過ごしてきた場所で、不意に表出した誰かの悪意。疑わなかった日常は、それほど平和ではないのかもしれない。不安を覚えたさつきは、転職を決意する。
本作を無視できない理由のひとつは、人間関係の不和を積極的に“描かない”所にある。親子の不協和や、痴情のもつれなどは安易に使用しない。信頼出来る父親も、仲の良い恋人もしっかりと存在しているのだ。映画になりやすいエピソードには手を出さずに、それでも65分を魅せきる強度は、日常描写の中に立ち上がるさつきの感情とその変化、懸命に生活を営む人間の美しい一瞬を魅せる成熟した演出にある。「半径数メートルな日常」を描く凡庸さを打ち砕き、些細でも、一歩を踏み出すことの眩い精神の軌跡を見せてくれる。(文・吉田光希)

2012年/65分/カラー 英題:Please Please Me
監督・脚本・撮影・編集:青石太郎
音楽:大堀晃生
出演:佐々木綾子、森 了蔵、森塔湖都音、小室裕樹、水野 哲

【貸し出し対象作品】料金:15,000円(税別)/貸し出しフォーマット:ビデオ

『継母』

監督:工藤隆史

父の再婚相手の過剰な世話焼きに可奈子はなんとか対処してきたが…
母の死から3年後、父は再婚した。そしていま父は死の床に伏し、彼女は実の母親でもない女性と、ひとつ屋根の下2人きりで暮らす。彼女たちを結びつけていたはずの父を失っても、2人は共に暮らしていくのか。母でもない女性を母と呼び続けることはできるのか。
典型的な2階建ての一軒家、なんでもない日常の一コマ、見慣れたはずの光景が、2人の女性の微妙な関係性によって、遠近感を狂わせていく。特殊な道具立てにも奇抜なアイディアにも頼らず、距離を置いて人物を見つめ続けるカメラと抑制の利いた音響によって、2人の女性の生活はホラーにもアクションにも変化していく。長回しの後にクロースアップが挿入される瞬間。薄暗い室内から外へと飛び出す瞬間。その都度この映画は表情を変える。「当たり前」の、なにかがほんの少しだけ違う。ただそれだけのことで、この映画の始めから終わりまで、彼女たちから目を離すことができない。(文・結城秀勇)

2012年/22分/カラー 英題:A STEPMOTHER
監督・脚本・撮影・編集:工藤隆史
脚本・音楽:高橋良輔
出演:佐藤可奈子、工藤尚代、高橋茂樹

【貸し出し対象作品】料金:15,000円(税別)/貸し出しフォーマット:ビデオ

準グランプリ

『魅力の人間』

監督:二ノ宮隆太郎

工場で働く男たちの中学生男子のような日常に浮かび上がる不穏
自動販売機の修理工場で働く男たち。無口な依田は周囲と距離を置き、いつもひとりで過ごしている。依田の態度が気に食わない先輩の高橋。そんな高橋を諫める大島。同僚の坂田は、依田と親しくなろうと毎日声をかけてくる。ある日、高橋が依田への不満を爆発させる。プライベートな問題も重なり、苛立ちながら夜の町を歩く依田は、合コン帰りでほろ酔いの坂田と出くわしてしまう…。
会話の話題はパチンコにガールズバー、昼休みにはサッカーや罰ゲームで盛り上がる――そんなぱっとしない彼らの日常を掬い取り、他者とうまく関わることの出来ない青年と、彼を取り巻く人間模様を、絶妙な距離感で描いた群像劇。個性溢れる俳優陣の中で、捉えどころがなく不思議な魅力を放つ男・坂田を演じるのは二ノ宮監督自身。次にどんな動きをするのか予測のできないこの男、一見ユーモラスに見えて、その実、鋭い眼差しで人間を観察している。そしてその視線は、本作全編にも貫かれている。(文・中西佳代子)

2012年/89分/カラー 英題:THE CHARM OF OTHERS
監督・脚本・編集:二ノ宮隆太郎
撮影:西村洋介 音楽:pot au feu 録音:細川充由、市来聖史
出演:細川佳央、二ノ宮隆太郎、芦原健介、宇田川大介、皆川敬介

劇場公開
海外映画祭
2012年 第31回バンクーバー国際映画祭
ドラゴン&タイガー・ヤングシネマ・アワード
(カナダ)
2013年 第42回ロッテルダム国際映画祭
Bright Future部門
(オランダ)
Kino Otok - Isola Cinema Film Festival (スロベニア)

【貸し出し対象作品】料金:15,000円(税別)/貸し出しフォーマット:ビデオ

『ゆれもせで』

監督:川原康臣

震災からひと月後、大阪の男が元恋人を連れ戻しに東京に来る
東日本大震災から1ヶ月後の2011年4月11日。バンドでの成功を夢見て東京で暮らす明海の部屋に元恋人の正雄が押しかけてくる。聞けば“放射能汚染を懸念して、地元の大阪に連れ戻そうと説得しに来た”とのこと。だが、いまある生活を最優先させる彼女に応じる気はまったくない。話しが平行線をたどる中、2人の前に突如、“黒い影”が出現。その正体を知ったとき、明海が出した答えは? 
どんより感じられる空の下、薄暗い部屋で放射能に怯える明海は当時の東京在住者の代表。一方、簡易防護服に身を包む正雄は関西圏の人々が抱いた被災地のイメージにほかならない。その2人が交差したときみえてくる放射能に対する問題意識の温度差や危機感の相違は、いまや忘れかけている震災直後に確かに存在した世の中の不穏な空気、止まったような時間の記憶を呼び覚ます。“あの日がすでに風化しているのではないだろうか?”。そんな声が見え隠れする作り手の視点が大きな問いを投げかける。(文・水上賢治)

2012年/20分/カラー 英題:JISHIN - Earthquake and Confidence
監督・編集:川原康臣
脚本:岡 太地 撮影:松井宏樹 録音:石川真吾 衣装:藪野麻矢
出演:神農 幸、本多 力

劇場公開(2本立て+α上映の1作として)
2013年 2月2日~15日 東京 池袋シネマ・ロサ
海外映画祭

【貸し出し対象作品】料金:15,000円(税別)/貸し出しフォーマット:ビデオ

観客賞(神戸)

『リコ』

監督:弓場 絢

中年男との同居生活で他者と繋がるすべを学んでいく無口な女の子
アパートの玄関に立つ女性、ゆりこ。部屋からは「遠慮するな、入れ。」と言う男の声。此処はどうやら、この“おやじ”の家らしい。親子ほど歳の差もありそうな2人だが、血縁関係は無さそうだ。恋人同士にも見えない。2人きりの炊事と食事。共食という行為が親密さを育む。おやじはゆりこをリコと呼んだ。関係が明示されないまま、唐突に始まる物語に喫驚する。我々は彼らの生活を見つめ続けることでしかそれを探すことは出来ない。
本作は、曖昧な関係を活写し、「時間」を魅せることだけには留まらない。注目すべきは、映画の中に巧みに仕組まれたフィクション性である。それは、何気ない所作の中で唐突に起こるアクションだったり、日常会話に挟み込まれた劇的な台詞で、それらが予想もつかない可笑しみを起こしている。誰かと共に生きるとき、確かに起こる他者への想い。そのリアリズムを突き破り、物語と正面から向き合おうとする意欲作。(文・吉田光希)

2012年/65分/カラー 英題:RIKO
監督・脚本・編集:弓場 絢
撮影:西川達郎、添田康平、郡司浩輔、隈本遼平
出演:弓場 絢、榎本豊治、小池雄太、久保寺晃一、乙女絵美

劇場公開
海外映画祭
2012年 第31回バンクーバー国際映画祭
ドラゴン&タイガー・ヤングシネマ・アワード
(カナダ)

【貸し出し対象作品】料金:15,000円(税別)/貸し出しフォーマット:ビデオ

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