招待作品部門

自由だぜ!80~90年代自主映画

全国の高校&大学にあった映画研究会での8ミリフィルム映画制作熱のピーク時代につくられた傑作選。
一巻3分しか撮れない8ミリフィルムで"劇場映画"をつくろうとした情熱を今こそ実体験!!

*「特別上映」以外はすべて、貴重なポジフィルムからデジタル変換して上映する、ここでしか見られないレアなチャンスです

<高校時代から始めました>


中学生、高校生が大学生に交じって映画をつくったいい時代の逸品

『気分を変えて?』

1979年入選/カラー/30分/8mm
監督・制作・脚本:犬童一心
撮影:犬童一心、池田一之
助監督:池田一之
製作:法政一高シネマ・ド・ヒマゴ
出演:原 純一、長谷川 聡、池田一之
夏の日、"初潮"を迎えた青年の物語

人気アイドルの解散コンサートの日、カメラを持った青年が1978年の東京の街を駆け巡る...。『ジョゼと虎と魚たち』の犬童一心監督、高校時代の8ミリ初作品。自由奔放な映像表現に、若きエネルギーがみなぎっている。

Director

犬童 一心

INUDOU Isshin

1960年、東京都生まれ。高校時代より映画制作を行い、『気分を変えて?』が79年PFFに入選。CM演出家としても活躍。主な監督作に『ジョゼと虎と魚たち』(03)、『最高の人生の見つけ方』(19)、『ハウ』(22)など。

『教訓Ⅰ』

1981年入選/カラー/35分/8mm
監督・脚本・撮影:笹平 剛(現・利重 剛)
音楽:最賀俊介、古賀弘之
製作:熱血笹平組&放浪舎
出演:鶴田雄次郎、加瀬文照、彦坂 誠
時代の空気に飲み込まれる高校生たち

朝礼で突然、徴兵制度が宣告された。学校を守るための訓練が始まり、それはやがて高校同士の戦争にまで発展していく。県人エピソードなど『翔んで埼玉』を彷彿とさせる風刺も光る、先鋭的な高校生監督誕生の瞬間。

Director

利重 剛

RIJU Go

1962年生まれ、東京都出身。『ザジ ZAZIE』(89)でデビュー。主な監督作に『エレファント・ソング』(94)、『クロエ』(01)、『さよならドビュッシー』(13)など。俳優としても映画、テレビ等で幅広く活躍している。

『The story of "CARROT FIELD"』

1983年入選/カラー/70分/8mm
監督:東山充裕
脚本:東山充裕、浦沢一正、前島 恵
撮影:早川壮一
製作:The とるこ
出演:浦沢一正
ニンジンと、青春と、覚悟

陸上選手と少女が織りなす幻想的な世界が魅力の8ミリ長編。彼らの運命が空へと羽ばたく独創的なストーリーは、時を超えて心を揺さぶる。「高校生映画の金字塔」と称される快作。

ゲスト
東山 充裕氏(映画監督)
Director

東山 充裕

HIGASHIYAMA Mitsuhiro

1965年、北海道生まれ。高校時代に級友たちと制作した本作が83年PFFに入選。自主映画監督を経て、90年NHKに入局。ディレクター、プロデューサーとして数多くのドラマを手掛ける。

『ORANGING'79』

1979年入選/カラー/25分/8mm
監督・制作・脚本・撮影:今関あきよし
照明:小林弘利
出演:三留まゆみ、田代豊一、手塚 眞
あの頃の東京と彼女が鮮やかに蘇る

としまえん、銀座の名画座、江の島、お茶の水。ちりばめられた昭和の風景を歩くあのコを撮るだけで、こんなにもドラマチックになる奇跡。おしゃれな語り口も魅力だ。79年PFFで審査員の大林宣彦監督が絶賛した。

ゲスト
今関 あきよし氏(映画監督)
主演・三留 まゆみ氏
Director

今関 あきよし

IMAZEKI Akiyoshi

1959年、東京都生まれ。83年に『アイコ十六歳』でデビュー。『グリーン・レクイエム』(88)、『すももももも』(95)などを発表し、『LAIKA-ライカ-』(16)、『恋恋豆花』(19)等、海外撮影の作品も多数。近作に『青すぎる、青』(23)、近作に『しまねこ』(24)など。

<伝説の映研「立教パロディアス・ユニティ」>


映研映画の枠を超えた意欲作に圧倒される!活劇がここに

『この道はいつか来た道』

1983年入選/カラー/80分/8mm
監督・脚本・撮影:浅野秀二
製作:パロディアス・ユニティ
出演:勝野 宏、塩田明彦、浜田耕作
エンターテインメント溢れる一編!

犯罪心理学に関する卒論を書くために、子犬誘拐事件を企てた正太が遭遇する連続通り魔事件の犯人と、それを実況する地元ローカルテレビ局との共犯関係にも似た逃走劇をシニカルな活劇として描く。

ゲスト
浅野 秀二氏(映画監督)
Director

浅野 秀二

ASANO Shuji

1959年、新潟県生まれ。本作で83年PFF入選。その後、CG制作会社でTVやCM、イベントのデジタル映像制作に没頭。VFXスーパーバイザー、プロデューサーとして『ジョゼと虎と魚たち』『劇場版スパイの妻』等、多くの作品に携わる。

<8ミリで超長編!桁外れの情熱炸裂>


「とにかく面白い!」この超大長編は、審査員にも大感動を巻き起こしたらしい

『ファントム(DES FANTÔMES)』

1983年入選/カラー/132分/8mm
監督・脚本・撮影:樋口尚文
製作:早大政経クリエイティブ
出演:太田裕己、小山登美夫、山本奈津子
ジャンルを越境する青春怪異譚

高校時代の第一作『ゲリラになろうとした男』がPFFの前身・ぴあ自主制作映画展で佳作となりPCB(ぴあシネマブティック)で上映された作者の、早大入学後の第二作。青春映画が怪談映画に反転する奇異な2時間超の大作。

ゲスト
樋口 尚文氏(映画監督)
Director

樋口 尚文

HIGUCHI Naofumi

1962年、佐賀県生まれ。中学生の頃から8ミリ映画を撮り始める。CMプランナーとして活躍しながら映画評論を執筆し、主な著書に『大島渚全映画秘蔵資料集成』など。監督作に『インターミッション』(13)、『葬式の名人』(19)。

<8ミリ超長編で描く不朽のSF恋愛譚!>


渾身のSF長編で長谷川和彦監督に弟子入り。プロ並みの技量も話題に

『みどり女』

1986年入選/カラー/140分/8mm
監督・制作・脚本:成島 出
撮影:遠藤孝史
出演:日野明子、琢磨裕子、原田文明、長谷川雅一
男女4人の奇妙な同棲、衝撃の140分

「緑色の性器を持つ女」みどりと、彼女の虜になった3人の男の奇妙な同棲生活。コミカルで微笑ましい描写から、終盤の緊迫感あふれる演出まで、当時24歳の成島監督の力量に驚愕。長谷川和彦監督も絶賛の超力作。

Director

成島 出

NARUSHIMA Izuru

1961年、山梨県生まれ。『みどり女』が86年PFFに入選。相米慎二監督らの助監督を経て、『油断大敵』(04)でデビュー。主な監督作に『八日目の蝉』(11)、『ソロモンの偽証』(15)、『52ヘルツのクジラたち』(24)など。

<8ミリ時代の終焉、最後の傑作群>


奇しくも追悼プログラムとなってしまった当時話題の3作品一挙上映!

『ついのすみか』

1987年入選/カラー/35分/8mm
監督・制作・脚本:井川耕一郎
撮影:福本 淳、井川耕一郎
録音:山岡隆資
出演:北沢典子、飯塚裕之、荻原かおる
濃密な映画空間に酔う!

姉の失踪後、夜ごと男と逢瀬を重ねる妹。2人が虚ろな会話を交わす中、執拗に肉体を捉えるカットを重ね、濃厚なエロスを醸し出す独特の演出は、今も褪せることなく、観る者に迫ってくる。

Director

井川 耕一郎

IKAWA Koichiro

1962年、東京都生まれ。早稲田大学シネマ研究会に在籍し、本作で87年PFF入選。その後、オリジナルビデオを中心に手掛け、98年より映画美学校の講師として長年、後進の指導にあたる。2021年、逝去。

『悩ましき東京タワーのもとで』

1990年入選/カラー/28分/8mm
監督・制作・脚本:計良美緒
撮影:古賀太郎
録音:三浦秀一
出演:土海美幸、夏目吾郎、勝野雅美
めんどくさい女子の本音が炸裂

ボーイフレンドを不器用に拒んでしまった17歳の恋。そして3年後、優しい男性にイラ立ち自分の欲望に混乱してしまう20歳の恋。東京タワーのもとで繰り広げられる恋の追いかけっこに、主人公ゆみ子の感情が爆発する。

『紫の部分』

1991年グランプリ/カラー/45分/8mm
監督・脚本:計良美緒
撮影:古賀太郎
録音:三浦修一
照明:岡元 洋、武居 徹
出演:大塚千寛、井土紀州、北原彩絵、土海美幸、勝野雅実、落合深志
体臭、嘔吐、生理...あなたの"紫"は?

映画館で働くふみえは、見知らぬ男に突然「臭い」と言われ、必死に下着を洗う。押入れに隠して吊るす下着のように、誰もが持つ心の恥部を独特の感性で描いた1991年PFFグランプリ受賞作。中野武蔵野ホールも懐かしい。

Director

計良 美緒

KEIRA Mio

法政大学在学中に制作した『悩ましき東京タワーのもとで』がPFFに入選し、注目される。続いて自身がアルバイトをしていた中野武蔵野ホールで撮影した『紫の部分』は、翌年1991年のPFFアワードグランプリを受賞。2023年、54歳の若さで逝去。

<地方発映画の衝撃!>


愛知から出現した超popな才能、福岡から来たクールなリズム、唯一無二のふたり

『ねんねこりんりん』

1981年入選/カラー/45分/8mm
監督・脚本・撮影・音楽:長谷川 久
協力:愛知医大映研
出演:牡鹿埜としあき、倉知三希子、すもももも
予測不能のラブストーリー!

高校卒業を機に離れ離れになったカップルが、失業や天女の策略など予期せぬ展開を乗り越え、新しい星で再会するまでを描くSFラブ・メルヘン。ポップな音楽とキュートな演出が弾けるインディーズ・カルトの傑作。

Director

長谷川 久

HASEGAWA Hisashi

1959年、新潟県生まれ。大学時代は映画研究会に所属し、本作で81年PFFに入選。舞台の道に進み、役者・脚本家としても活躍しながら劇伴を手掛ける。その後、医師となり、郷里で音楽活動を続けた。97年、逝去。

『hi-lite』

1987年入選/カラー/32分/8mm
監督・脚本:墨岡雅聡
制作:岐部俊夫、山本康晴
撮影:田中 徹、山本康晴
編集:山本康晴、墨岡雅聡
出演:墨岡雅聡、山本康晴、長沼秀幸、島田一久
都会的なユーモアが凝縮された32分!

32分の中に十数本ものエピソードやギャグが散りばめられ、シュールなモノローグとリズミカルに展開する映像が心地いい一編。当時23歳、学生であった作者の日常がコミカルに投影されている。登場人物のユニークさも魅力。

『バス・アマリリス』

1988年入選/カラー/39分/8mm
監督・脚本・音楽:墨岡雅聡
撮影:山本康晴、大坪英彦、山下秀児
編集:墨岡雅聡、山本康晴
出演:墨岡雅聡、山本康晴、弥生健生、日野哲也、古川 寛、中原むつき
遊び心にあふれたパワーのある一作

ある男の"自分の音"探しの旅。何度もリフレインされる音と映像が融合し、不思議な世界観が広がる。スタイルの枠に囚われない独特な表現のエネルギーを感じてほしい。1988年PFF最優秀音響賞受賞作。

Director

墨岡 雅聡

SUMIOKA Masaaki

1963年、熊本県生まれ。『hi-lite』で87年PFF入選、翌年『バス・アマリリス』が最優秀音響賞を受賞。TBS深夜番組の自主映画コンテスト「えび天」にも出場し、『前向きでいこう』等で好評を博した。2000年、逝去。

<伝説となったグランプリ作品>


テレビ放映もされた人気作品と、傑作中編のデジタル化をついに実現!

『灼熱のドッジボール』

1992年グランプリ/カラー/15分/16mm
監督・制作・脚本:古厩智之
撮影:青柳省吾
録音:今村 豊
出演:清水優雅子、松島 創、仲野麻貴
永遠に輝く、青春恋愛映画の金字塔

夏の日の放課後。あの娘は今夜、東京に発つ。列車まで40分、最後のドッジボールが始まる...。見事な編集とカメラワークで、高校生の淡く切ない別れのカウントダウンをまっすぐ描き切った、1992年PFFグランプリ受賞作。

ゲスト
古厩 智之氏(映画監督)

『走るぜ』

1994年招待作品/カラー/29分/16mm
監督:古厩智之
撮影:泉 直希
録音:渡辺暁雄
出演:波多雅子、直井徳弘
絡まる視線、止まらない疾走感!

「かばん盗られた!」 女子高生と仲間が犯人を追いかける。山へ、海へ、とにかく走る。いつしか逃げる側、追う側の立場を忘れ、ただ走ることに高揚していく。抜群のロケーションと異次元の撮影に圧倒される、躍動の29分!

Director

古厩 智之

FURUMAYA Tomoyuki

1968年、長野県生まれ。『灼熱のドッジボール』で92年PFFグランプリに輝き、第8回PFFスカラシップ作品『この窓は君のもの』(95)でデビュー。主な監督作に『まぶだち』(01)、『ロボコン』(03)、『のぼる小寺さん』(20)、『PLAY!~勝つとか負けるとかは、 どーでもよくて~』(24)など。

【特別上映】
自主映画じゃないけれど自由だぜ!
「2本撮り」という技、「編集」という技


90年代の自由な映画づくりを象徴する2作を上映!1月に逝去した映画編集者・鈴木 歓氏を偲び、黒沢監督が登壇し創作秘話を語ります。

©KADOKAWA 1998
©KADOKAWA 1998
©KADOKAWA 1998

『蛇の道』

1998年/カラー/85分
監督:黒沢 清
脚本:高橋 洋
撮影:たむらまさき
美術:丸尾知行
音楽:吉田 光
編集:鈴木 歓
出演:哀川 翔、香川照之、下元史朗、柳 憂怜、翁 華栄
復讐に燃える父親のバイオレンス・サスペンス

幼い娘を殺された男は謎の協力者を得て、拷問も辞さない残忍さで犯人を追い詰めていく。ついに2人はロリコンビデオ密売組織を壊滅させるが...。2024年、舞台をフランスに移し、柴咲コウを主演に迎えたセルフリメイクを製作。

ゲスト
黒沢 清氏(映画監督)
©KADOKAWA 1998
©KADOKAWA 1998

『蜘蛛の瞳』

1998年/カラー/83分
監督:黒沢 清
脚本:西山洋一、黒沢清
撮影:たむらまさき
美術:丸尾知行
音楽:吉田 光
編集:鈴木 歓
出演:哀川 翔、ダンカン、大杉 漣、菅田 俊、寺島 進
復讐の先にある"救い"と"絶望"

『蛇の道』の異色姉妹編。復讐を果たし、生きる目的を失った男は昔の同級生に誘われ、ある組織の殺し屋になる。だが、内部抗争に巻き込まれ、ある決断を迫られることに。乾いた暴力とナンセンスな笑いに満ちたオフビートドラマ。

Editor

鈴木 歓

SUZUKI Kan

1954年、東京都生まれ。19歳で日活撮影所編集部に入社し、その後独立。若松孝二、小水一男、廣木隆一、石井聰亙、大友克洋などさまざまな監督作品の編集に携わり、中でも黒沢清監督とはオリジナルビデオ「勝手にしやがれ!」シリーズ、『打鐘 男たちの激情』(94)をはじめ、『CURE』(97)、『蛇の道』『蜘蛛の瞳』などで数多くタッグを組む。2011年からは京都芸術大映画学科で後進の指導にも熱意を注ぐ。近年の編集作品に『嵐電』(19/鈴木卓爾監督)、『痛くない死に方』(21/高橋伴明監督)など。2024年1月28日、逝去。

Director

黒沢 清

KUROSAWA Kiyoshi

1955年、兵庫県生まれ。立教大学在学中に自主制作した『しがらみ学園』が81年の第4回PFFに入選。『CURE』(97)で世界的な注目を集め、『回路』(00)、『トウキョウソナタ』(08)、『岸辺の旅』(14)でカンヌ映画祭にて3度受賞。その他の作品に『Seventh Code』(13)、『ダゲレオタイプの女』(16)、『旅のおわり世界のはじまり』(18)などがある。2020年、第77回ヴェネツィア映画祭にて『スパイの妻〈劇場版〉』で銀獅子賞を受賞し、日本人監督としては17年ぶりの快挙を達成した。