審査講評

2021年9月24日(金)の「PFFアワード2021」表彰式にて述べられた、各賞授与理由および、最終審査員による総評をご紹介します。[人名敬称略]

授与理由

グランプリ

【受賞作品】

ばちらぬん
監督:東盛あいか

【プレゼンター】

最終審査員:池松壮亮 (俳優)

素晴らしい映画に出会えたと思っています。人の記憶、血の記憶、土地の記憶......私たちは自分の短い"生"にとらわれがちですが、もっと長い精神の歴史の上を生きているということを、この映画は当たり前のようにわかっていると思いました。言葉にならないことをなんとか映像で掴み取ろうとする強い意志と技術的なバランスに感銘を受けました。

[副賞:賞金100万円]

準グランプリ

【受賞作品】

グッバイ!
監督:中塚風花

【プレゼンター】

最終審査員:今泉力哉(映画監督)

いろんなタイプの作品がある中で迷って、審査員みんなで話し合いましたが自分は単純にこの映画が大好きで選びました。ご家族を描いた話で、登場人物のキャラクターが魅力的です。お父さんが出てきた時にズルすぎるなと(笑)。人物を描くというのはこういうことかと勉強になりました。家族を描いたドキュメンタリーというと、最終的に家族が仲良くなるとか、家族や自分のアイデンティティって何だろうという内容になりそうですが、上京して就職するにはお金がかかるから貸してほしいという話にした選択も好きです。
撮影面でいうと、2人の会話シーンで、カットバックではなく片方をずっと映し続けても、そのリアクションでこんなに映画は豊かになるのかと驚きました。周りに魅力的な人がいたという偶然だけでなく、音に対する意識も高く、おそらくわざと残してある風の音も魅力的です。編集能力もすごくて、カットの割り方や言葉の選び方、ナレーションの最小限だけど効果的な入り方など、とても面白く見ました。それに、奇跡的な言葉がたくさん引き出されていて、お母さんの「あとはおまえの人生や」という言葉とか、まるでセリフみたいだと思いました。お父さんが息子と娘を乗せた車の中で「夕日がきらきら光ってるな、まるであなたたちの未来みたい」と言うシーンで、スベった空気が流れるんですけど、なぜか俺は号泣してしまって......。それはドキュメンタリーの強みでもありますが、一過性の不思議な魅力があって、何度も繰り返し見てしまった映画でした。ただ個人的には、エンドロールに曲が無くても十分成立したと思います。
審査員の皆さんと作品について議論する時にとても盛り上がった作品でした。賞金は20万円ですが、お父さんには言わないほうがいいと思います(笑)。受賞おめでとうございます。

[副賞:賞金20万円]

審査員特別賞

【受賞作品】

豚とふたりのコインランドリー
監督:蘇 鈺淳

【プレゼンター】

最終審査員:柴崎友香 (作家)

まず、このコインランドリーの場所をよく見つけたなと思いました。この場所で映画を撮ると決めた時点で、この映画は決まっていたという感じがしました。とてもシンプルな、ワンシーンワンカットで2人が話しているだけの映画ですが、会話の中で周囲の街並みやそれぞれの恋人、過去といった外の世界がたくさん見えてきて魅力的でした。もしかしたら、"何も起こらない"と形容されるストーリーかもしれないんですけれども......何も起こらないように見えて次々といろんなことが起きている。ずっとこの場所が映っているだけなのに、2人の言葉や視線、ちょっとした空間の揺らぎのようなものから目が離せない。
豚って何だろうと思っていて、出てきた瞬間、「それか!」という驚きもありました(笑)。
最後に外からのカットがあることで、この空間と2人の人物が違ったように見えてきました。隅々に目を凝らしたくなる、ずっと見ていたい、引き込まれる映画でした。これから蘇監督が撮る、いろんな映画を見たいという気持ちにさせられましたので、今回の授賞となりました。おめでとうございます。

[副賞:賞金10万円]

【受賞作品】

Journey to the 母性の目覚め
監督:岡田詩歌

【プレゼンター】

最終審査員:高田 亮(脚本家)

すごく面白かったですね。カラフルで自由で振り切った表現をされていて。子供がつくれることに縛られている不自由さ、母性を掴めないでいる感じ、身体の中で子供ができるメカニズムへの納得できなさ......。それらが渦巻いて様々なテクニックで次々に表現されていくのがすごく濃密で、ずっと興奮しながら見ていました。しばらくこの映画を流したままでいたいと思いました。こういう刺激が欲しくて、俺は映画を見続けているんだと再確認できた気がしたんです。
だから審査会の最初に僕はこれがよかったですと言いたくて、推させていただきました。

[副賞:賞金10万円]

【受賞作品】

転回
監督:岩﨑敢志

【プレゼンター】

最終審査員:岨手由貴子 (映画監督)

自分が推さないと賞に選ばれないかもしれないという使命感で、この作品をいちばんに推したんですが......。他の審査員の方々も推されていて、私がそんなことを考えなくても議論に上ってきた作品でした。
商業映画は共感されるかされないかで判断されることが多いと思います。自主映画だからこそ、そういう基準ではなく、いろんな人間関係やせこい気持ちを描いた作品を審査員として選出するのが重要だと感じました。カメラの位置や画角が描こうとしているテーマに対して正確で、技術があると思いました。どこにでもいるようなイヤな奴というのは揶揄して戯画的に描きたくなるものですが、その罠にはまらずに、その人に対峙するカップルの揺れ動きを描いていたのが描き手として真摯で、なかなかないバランス感覚を持たれています。個人的に爆笑したシーンもあり、人間の滑稽さを観客に届ける前に監督がジャッジして描いてしまう映画もありますが、この作品はそうではない面白さを目指し、それに成功しているのではないでしょうか。
審査会議で話し合ったうえでこのような賞を贈ることができて、私もすごくうれしいです。おめでとうございます。

[副賞:賞金10万円]

エンタテインメント賞(ホリプロ賞)

【受賞作品】

愛ちゃん物語♡
監督:大野キャンディス真奈

【プレゼンター】

堀 義貴 (株式会社ホリプロ 代表取締役社長)

エンタテインメント賞(ホリプロ賞)は、とにかくお客さんを楽しませたいという作品を毎年選んでおります。
『愛ちゃん物語♡』はお客さんを楽しませようという意志が強く、主演俳優の魅力を全面に出した、ある意味で完成された作品だったと思います。今日初めてお会いしました監督も大変に個性的で、ここでもお客さんを楽しませようという意志が感じられました。
松林監督の『夜の帳につつまれて』も引き込まれる作品で、登場人物の感情を非常に丁寧に描いた、いい映画でした。この2作品が長編であるにもかかわらず、本当によくできた作品だと思います。
他にも挙げると、宮原監督の『ROUTINE』は説明なしで社会をきちんと捉えていて、仕事や生きる"ハリ"を短い時間で感じさせた作品でした。石川監督の『巨人の惑星』が個人的には大好きです。会話の掛け合いがおぎやはぎの漫才のようで面白かったです。岩﨑監督の『転回』は、主人公が散々偉そうなことを言っておいてそれはないだろうというオチで、緊張感のある話が秀逸でした。
どれもエンターテイメント性が充分で、役者もよく、編集もうまくて、お客さん本位という感じがする作品たちでした。コロナ禍の後、また不要不急だと言われないよう、皆さんの強い意志で映画業界を守っていってほしいです。

[副賞:AMAZON商品券]

映画ファン賞(ぴあニスト賞)

【受賞作品】

愛ちゃん物語♡
監督:大野キャンディス真奈

【プレゼンター】

岡 政人 (ぴあ株式会社 デジタルメディア・サービス事業局 専任局次長/メディア事業推進部 部長)

一般公募で選ばれた3名の審査員の方に映画祭会期中に会場で18作品をご覧いただき、『愛ちゃん物語♡』に授賞することを決めました。授賞理由はシンプルで、今すぐ映画館でお金を払って見たとしても大満足できる作品だからです。笑って、泣けて、ちょっと考えさせられて......きっと満足して映画館を出るだろうというのが審査員全員の声でした。監督は映画以外でも才能を開花される方だと思いますが、映画館でぜひ次の作品が見たいです。期待しておりますので、頑張ってください。
3時間ほど議論したうえで、最後まで残った他の2本が『夜の帳につつまれて』と『ばちらぬん』でした。18作品それぞれに個性や魅力がありました。語れば語るほどもう1回見たくなる作品ばかりでした。

[副賞:映画館ギフトカード]

観客賞

【受賞作品】

へだててて
監督:加藤紗希

【プレゼンター】

岡島尚志 (国立映画アーカイブ 館長)

500に近い応募作品を見て選定されたセレクション・メンバーの方々の勇気や繊細な心を称えたいです。プロの監督になったら将来性があるだろうと思わせる映画もありますが、今この瞬間でしか撮れない映画をつくる人たちがいます。例えば、10代で、他の年代では絶対に撮れないような映画を撮る作家の方です。そうした映画を選定することがセレクション・メンバーの方々の大きなミッションだと思いますが、毎年それを見事に実現しておられることに、心の底から敬意を表したいと思います。
そこで、私は審査員でも何でもありませんが、スペシャルメンションとして高橋監督の『帰路』を挙げさせていただきます。不思議な、ある年代の人にしか見ることができないような映像が残されていて、まるでジャン・ヴィゴの作品を見たような気がいたしました。
へだててて』は題名の素晴らしさも、出演する役者さんたちの素晴らしさも、感動できる映画であったので、観客賞はもっともであろうと思っております。おめでとうございます。

[副賞:国立映画アーカイブ優待券]

最終審査員による総評

池松壮亮
俳優

PFFの1977年からにわたる取り組みに心から敬意を表します。小さいけれども偉大なインディペンデント映画に光を当てることで、私たちはたくさんの映画、映画人と出会えました。今年は素晴らしいクリエイターの方々とその歴史の一端を担うことができて、大変光栄でした。489本それぞれの映画のここまでの旅路を祝福します。
他の審査員の方々が十分に話してくださいましたし、入選作品1本1本に触れたいところですがやめておきます。
とにかくどの作品も素晴らしかったです。自分の内や外にあって漂う何かを映像として切り取ろうとする気迫に刺激を受けました。映画とは何なのか、映画祭とはどうあるべきなのか、そういうことすら考えさせていただきました。順位はついてしまいましたが、映画への愛情を共有するという一点において優劣はなく、素晴らしい作品ばかりでした。
コロナ禍で、より不確かな時代を生きているのは間違いないですし、みんなが不安を抱えて生きています。僕らの未来はお先真っ暗と言われています。僕もそう思います。
でも、そんなもん知るか、です。今、生きているのは僕らです。自分の奥底の声に忠実に、世の中と対峙し、クリエイティビティを探求しつつ、仲間とシェアしながら、映画を共に分かち合っていけたらうれしいです。
映画の世界も変化を求めています。変わらないことを受け入れる優しさや強さ、変えられることを変えていく勇気を、みなさんとともに新しい時代をつくりながら考えていきたいです。
また、みなさんと映画を共有できる日を楽しみにしています。ありがとうございました。

今泉力哉
映画監督

受賞監督の皆さんおめでとうございます。受賞できなかった監督も入選したことを自信に繋げてもらえればと思います。自分にもいろんな映画祭で入選して賞を獲れなかったことがあるので、悔しい気持ちがわかります。
言わないようにしようと思っていたんですが、自分は5、6回PFFに応募して入選できなくて、1次通過を1回した自信と悔しさを基に、今映画をつくっています(笑)。入選や受賞はゴールではないし、映画を続けるか続けないかも自分で決めていいし、映画以外のことに今日の経験を活かして生きていくのもすごく大事なことだと思います。
ただ、映画祭が少なかった頃から多くの監督を輩出している歴史あるPFFは特別なものです。自分が審査員という立場でかかわれるのが光栄で、怖さもありましたが引き受けてよかったです。
ばちらぬん』はその時、その人にしか撮れなかった映画だと感じました。コロナ禍で変更を余儀なくされて、マイナスの状況から悔しさをバネに、創造性あふれる作品に仕上げているのがすごいです。フィクションパートが独特で、フィクションパートのみの映画もぜひ見たいです。それから、知らないことに触れられるのが映画の魅力の一つですが、そういう部分がたくさんある映画でした。
五里霧中』は、中国の荒廃した場所と、漫画喫茶やiPhoneといった現代的な要素の対比がよかったです。どこの国にもある、栄えた駅前の路地に入るとホームレスがいるような、当たり前の景色を見ないようにして過ごしている現状をきちんと描いた作品でした。ただ、審査会議では他の作家との類似性についての議論になりました。終盤の男女2人の会話シーンで、普通だったら寄りで表情を撮るところを広い画に人物を立たせて撮っていて、ロケーション選びを含め僕も影響を受けるくらい素晴らしいと思いました。
豚とふたりのコインランドリー』は、監督が諏訪敦彦さんの本を読んで影響を受けているそうで、脚本をどこまで書いて、役者にどこまで任せてエチュードでつくっているのかが気になります。ラストシーンのワンカットを監督が選択して入れたというのが魅力的でした。ぜひ次の作品も見たいです。
サイクルレース』は習作としてつくられたのかもしれませんが、技術面を含め、そうとは思えませんでした。長い作品も見たいです。ワンカット目がすごく好きで、何回か見返しました。
Parallax』は、アートアニメは自分から作品を見たいと思う人以外に届かないと監督自身が考えられてPFFに応募して、多くの人に見られる機会を増やそうとされていて、意識が高いと感じました。作品自体もすごく面白く見させていただきました。
転回』は、審査員もみんな技術面を含め、褒めていた作品で、長編が見たいという意見もありました。ベタに描くことを回避して、実際に監督の周りにいた人とかつくりものじゃないところからつくれていると思います。『距ててて』監督(の加藤さん)が出演されていて、一見してそれに気づけないのが役者としていいことだと思いました。
へだててて』はシュールで好みが分かれる作品ですが、堂々としていました。会話に注視せず映像で表現をされていて、終盤に起きる出来事には驚かされました。
みなみとあした』は恋愛とか小さな人間の機微についての作品だったと思います。時間についての概念も魅力的に見えました。
ROUTINE』は言葉だけじゃない部分で描けている作品でした。ただ、中年の女性の扱いについての議論が審査で出ました。
巨人の惑星』の監督は映画館でバイトをされていると聞きましたが、いろんな映画に触れられているんだな、映画が好きなんだろうなと感じました。
帰路』や『苺のジャムとマーガリン』といった10代でしか撮れないような作品にも出会えてうれしかったです。
来年は自分も応募したいなと冗談で言っていたくらい、ここに来られてよかったです。ありがとうございました。

柴崎友香
作家

私は高校の時に映画部で8ミリで5分くらいの映画を1本だけつくったことがあります。映画部のOBで1986年にPFFに入選した先輩がいまして、顧問の先生や他の先輩からPFFに入選するのはどれだけすごいことかと何度も聞かされていました。審査員をさせていただくなんて想像もしていませんでしたが、今回はこういう機会を頂けてありがたく思っています。
当時から比べると言うのも乱暴ですが、映画を撮ること、映すこと、映されることがとても身近になって、技術も発達して、こんなに色々できるようになったんだというのがまず最初の感想です。どの作品もレベルが高くて、審査員であること抜きに、楽しんで拝見しました。いろいろなタイプの作品の中からどんな基準で授賞作品を決めればいいのか迷いましたが、その幅広さ、懐の深さが、PFFが注目されて長く続いてきた所以だと考えました。
何をどう撮って、なぜ映画をつくるのかということを1人で観ているときもすごく考えましたし、審査会議でも映画って何だろう、どんな意味があるんだろうという話を何度もしました。
私は小説家で、今まで2回自分の小説が映画化されるという機会に恵まれまして、元々映画が好きなので撮影現場にも何度もうかがいました。そういう機会があると、「映画と小説の違いって何ですか?」とか「映画にしかできないこと、小説にしかできないことって何だと思いますか?」とよく聞かれるんですが......。今回の審査を通してあらためて、1人でつくるか、複数の人がかかわって自分以外の要素と折り合いをつけながらつくるか、というのが映画と小説のいちばんの違いなんじゃないかと思いました。思い通りにならない要素とかかわりながらでしか生まれてこないもの、だからこそ生まれてくるものであるというのが、映画の面白さなのかなと。小説家としては、大変そうだけどうらやましいなという気持ちがあります。今回はコロナ禍で撮影が難しかったと思いますが、それさえも映画の魅力に変えていくのが監督の仕事なのかもしれません。
現実では何も起きていないのに、映画の中では特別なこと、重大なことが起きているように見える......。それが映画の魔法なんじゃないでしょうか。自分が映画の何に魅力を感じているか、映画を見始めた頃の面白さをあらためて認識した、楽しく充実した時間でした。
苺のジャムとマーガリン』は若い監督が撮られた映画で、その時期のその人にしかわからないとても個人的な感覚がうまく捉えられていて、学校や教室の中でしか感じることができない独特の関係や感覚が表現され、自分がとっくに忘れていたことが蘇ってくるようでした。
壁当て』はセリフが無くても、サスペンスとスリルにあふれていました。
若い監督たちの作品は特に、カメラを持つことで世界と関わっていく感覚が魅力的でした。
県民投票』は、自分たちの周りでどういうことが起こっているかを、ごく普通の身近なかかわりとして、幅広くいろんな人に見られる機会があるといいなと思う作品でした。
受賞作品は、映画をつくらなければ起きなかったことが映画の中に映っている、今ここで何かが起きている、と目が奪われてしまうような作品だったと思います。
今回はどうもありがとうございました。おめでとうございます。

高田 亮
脚本家

僕も昔自主映画を10本くらいつくっていまして、PFFに応募して一回も受かったことがないんです。そんな僕が審査員をやってしまって、皆さん申し訳ありません。
巨人の惑星』には、「面でみるとよく見えるけど、縦で見るとよく見えない」というような紙のたとえが出てきますね。どうでもいい人たちにとってはどうでもいいことをいつまでも騒いでいる"炎上"だったり、選挙の投票率の低さだったりを連想して、巨人の見える人と見えない人の温度差があるのが現在なんじゃないかと感じさせられました。
壁当て』は、最初は野球少年が壁に1人でボールを当てていて、友達にレギュラーを奪われた、部活を引退したんだというのが段々とわかってきて......。最終的にキャッチボールをして気まずさが解消されるというのが、すごくおしゃれな映画だなと思いました。
帰路』は、ロープを持って学校を抜け出す主人公が死に場所を探しているように見えました。夜になって人目のない場所で死のうと思うんだけども死ねない。結局家に帰るというシーンで、画面が白黒からカラーになり、生きる活力が戻ってくるという描写があって......。僕が中学時代に感じていた鬱屈がよみがえってくるようでよかったです。
僕の解釈は間違っているかもしれませんが、映画は見た人のものなので、皆さんの映画も僕のものにさせてもらいました。
本当にいろいろな刺激を頂いて、ありがとうございました。

岨手由貴子
映画監督

私も10年以上前にPFFに入選しまして、1度目は何も賞をもらえず、2度目に準グランプリを頂きました。なので今、受賞された監督、受賞できなかった監督、どちらの気持ちもわかります。自主映画をつくっていて、なかなか作品の上映機会への糸口が見つからない方も多いかと思います。"監督人生"はこの先も続けていればずっと続くので、賞をもらうもらわないに関係なく、ぜひ次の映画をつくっていただきたいです。
私が入選した年は女性監督が私1人だけの年もありました。今年は入選監督に女性が多く、受賞された監督もほぼ女性だということが、個人的にはうれしいです。
どの作品も残るべくして残っていて、受賞作品以外にも魅力的な作品がたくさんありました。
巨人の惑星』は映画を撮ることに対して野心的で、わくわくしながら撮られているのが伝わってきました。1本目ではそういうことができてしまう気がしますが、何本も撮り続けながらモチベーションを保つのはすごく難しいと思います。見ていてすごくうらやましかったです。自分がここ最近は仲間内で楽しく撮るという現場ではないので......(笑)。自主映画の時にそういう経験ができないと、規模が大きい作品になった時になかなかご自身の力を発揮できないと思います。入選監督の皆さんは素晴らしい経験をされてここにおられるんだと感じます。
県民投票』も面白く拝見しました。政治的な発言をすること、政治的な作品を見ることに対してアレルギーがある人が多いと聞いてショックを受けました。私は学生の頃にその時の自分には理解できなかった映画をたくさん見て、知ることを怖がったら終わりだということを教えられました。その時は理解できないものを否定せずに一回のみ込むこと、興味を持つこと、自分が知ったことで誰かとコミュニケーションをとること、というのが難しくなっているのかもしれません。『県民投票』は劇場公開の機会があったらいいと個人的に思います。
本当に皆さん素晴らしい作品をありがとうございました。