上映作品
今こそアルドリッチ
生誕100年のロバート・アルドリッチ監督特集です。男の世界を描くと語られがちなのですが、女を描く作品も多いのです。そしてオープニングシーンの見事さに始まる、ときめくセンスとガッツをたっぷり堪能してください。
※全作品日本語字幕上映。
ロバート・アルドリッチRobert Aldrich
1918年、アメリカ生まれ。チャップリンやルノワールの助監督を経て、企画もの『ビッグ・リーガー』(53年)で監督デビュー。『アパッチ』(54年)で注目され、原作の大胆なアレンジが光る『キッスで殺せ』(55年)で衝撃を与える。念願の自身のスタジオを創設しハリウッドの内幕を描いた『悪徳』(55年)と戦争の現実を描く『攻撃』(56年)がヴェネチア国際映画祭で、メロドラマに挑んだ『枯葉』(56年)がベルリン国際映画祭で受賞。その後も気骨ある主人公を斬新な手法で描き『飛べ!フェニックス』(66年)『特攻大作戦』(67年)『女の香り』(67年)『甘い抱擁』(68年)『傷だらけの挽歌』(71年)『北国の帝王』(73年)『ロンゲスト・ヤード』(74年)など展開の読めない、時代を先取りした傑作を多数発表。83年没。遺作は闘う女たち『カリフォルニア・ドールズ』(81年)
『キッスで殺せ』上映に黒沢清監督が登壇。
アルドリッチの魅力について語ります。
『ビッグ・リーガー』
大リーグでの活躍を夢見て競う若者たちと家族とスカウト。助監督やテレビ映画で腕を磨き、34歳にして監督デビューを果たした初々しい一作。野球映画でキャリアを始め、遺作はレスリング映画という偶然に涙。
撮影:ウィリアム・メロー 編集:ベン・ルイス 美術:セドリック・ギボンズ、エディ・イマズ
出演:エドワード・G・ロビンスン、ヴェラ・エレン、ジェフ・リチャーズ
『キッスで殺せ』
ミッキー・スピレインの生んだ探偵マイク・ハマーを独自の解釈で改変したノワールの傑作。アルドリッチ作品の中で、音と画の効果を最大限に生かす突出したカルトとなり、後世の映画に与えた影響は計り知れない。
撮影:アーネスト・ラズロ 編集:マイケル・ルシアーノ 美術:ウィリアム・グラスゴー
出演:ラルフ・ミーカー、アルバート・デッカー、ポール・スチュアート
『悪徳』
『攻撃』『地獄で秒読み』にも主演するジャック・パランスはじめ俳優たちの、憑依したような熱演に圧倒されるショービジネスのまさかの内幕。舞台劇を基にしたほぼ屋内で進む物語が尚更緊張と痛切さを高め結末が迫る
撮影:アーネスト・ラズロ 編集:マイケル・ルシアーノ 美術:ウィリアム・グラスゴー
出演:ジャック・パランス、アイダ・ルピノ、ロッド・スタイガー
『枯葉』
ずっとファンだったというジョーン・クロフォードを迎えて挑戦する初の女性映画は、年下の男性のプロポーズに揺れるタイピストが、思いもよらぬ状況に遭遇し変化する、先の読めないスリリングな、“今”すぎる傑作
撮影:チャールズ・ラング・ジュニア 編集:マイケル・ルシアーノ 美術:ウィリアム・グラスゴー
出演:ジョーン・クロフォード、クリフ・ロバートスン、ヴェラ・マイルズ
『攻撃』
第二次世界大戦の激戦で無能で卑劣な上官のために犬死にしていく兵士たち。かつてない痛烈な反戦映画故に米陸軍は撮影協力を拒否し、ヴェネチア映画祭では米大使が抗議をした。兵士たちのそれぞれの決意が美しい…。
撮影:ジョゼフ・バイロック 編集:マイケル・ルシアーノ 美術:ウィリアム・グラスゴー
出演:ジャック・パランス、エディ・アルバート、リー・マーヴィン
『何がジェーンに起ったか』
『攻撃』のあとヨーロッパで長く不遇のときを過ごした監督のハリウッドカムバック作。往年の大女優二人を「子役時代から憎みあう女優姉妹」として蘇らせ大ヒットを記録。アルドリッチの企画力に脱帽。
撮影:アーネスト・ハラー 編集:マイケル・ルシアーノ 美術:ウィリアム・グラスゴー
出演:ベティ・デイヴィス、ジョーン・クロフォード、ヴィクター・ブオノ
『ふるえて眠れ』
南部の旧家の箱入り娘は、駆け落ちの約束を破った既婚の男を殺したのか?老いて豪邸に住まうかつての娘の幻聴と幻覚を見事な美術で描き、後のサイコホラーの礎を築く。アルドリッチの多才さに改めて唸る。
撮影:ジョゼフ・バイロック 編集:マイケル・ルシアーノ 美術:ウィリアム・グラスゴー
出演、ベティ・デイヴィス、オリヴィア・デ・ハヴィランド、ジョゼフ・コットン
『特攻大作戦』
極秘裏のナチス高官潰滅作戦に参加する軍刑務所の曲者たち。リー・マーヴィン率いる超豪華キャストも相まって、最高の人気作に!『フェイシズ』編集中のジョン・カサヴェテスをキャスティングする友情にも涙。
撮影:エドワード・スケイフ 編集:マイケル・ルシアーノ 美術:W・E・ハッチスン
出演:アーネスト・ボーグナイン、チャールズ・ブロンソン、テリー・サバラス
『合衆国最後の日』
米軍の協力を全面拒否され独で撮影したヴェトナム戦争まっただなか制作の反戦愛国映画。ペンタゴン・ペーパーズのリークをヒントに、憂国の士、大統領、二枚舌の軍人らのスリリングな駆け引きがマルチ画面に展開される。
撮影:ロベルト・ハウザー 編集:マイケル・ルシアーノ 美術:ヴェルナー・アッハマン
出演:バート・ランカスター、リチャード・ウィドマーク、チャールズ・ダーニング
『クワイヤボーイズ』
悪趣味過ぎる!と惨敗した警察群像劇。原題「少年聖歌隊」のように一日の疲れを大勢で騒いで晴らす喜劇映画のはずが、組織の腐敗や硬直にからめた監督の意図が空転?だが熱烈なファンを生んだ傑作!
撮影:ジョゼフ・バイロック 編集:モーリ・ワイントロープ 美術:ビル・ケネディ、シド・ティングロフ
出演:チャールズ・ダーニング、ルイス・ゴセット・ジュニア、ジェイムズ・ウッズ