577本の応募作の中から、約4ヶ月もの厳正な審査を経て選出された20作品を、お披露目上映。まずは、気になる1作品から観てみよう!あなたの投票で賞が決まる「観客賞」にもご参加ください。
※審査員、賞一覧、審査方法などPFFアワードの詳細は、「PFFアワードについて」をご覧ください。
長崎県大村市。母に連れられて初めて祖父の家に来たチズは、山に分け入り、植物を探し歩く。一方、おじいちゃんが生きた証しである植物標本を、ドライな母はさっさと火に投げ入れていく。人生の痕跡を求める少女という乙女チックな枠から、ふっとはみだして時空を超える、哲学的深みを感じさせる作品だ。
標本に収められた植物たちは、少女が初めて訪れた大村という土地に、いまも繁茂し、息づき、運動している。顔も知らない祖父の痕跡を確認するかのように、彼女はひとつひとつ植物の名を呼び、間近で見つめる。「わたしがいなくなったら?」、あるとき不意に彼女はそう問いかけるが、そのときに思い浮かべる「わたし」という存在の意味さえ、この作品を見終えた後には、すっかり変わってしまうだろう。感傷をもたず、どこまでも軽やかで、極めて唯物的、そんな一夏の記憶。
結城秀勇(ライター・映写技師)
1990年東京都出身/多摩美術大学 映像演劇学科 中退
子どもの頃からお話を考えるのが好きで、空想癖がありました。その空想を人に伝えるにはどんな方法がいいか探し続け、漫画、小説、油絵を経て、映像に辿り着きました。それで多摩美術大学映像演劇学科に入りましたが、単位不足のため5年目に中退しました。今、昼間はときどき映像の仕事をして、夜はガールズバーのキッチンで働いています。
『大村植物標本』は、「スナメリの詩プロジェクト」参加作品です。ぜんぜん知らない土地である長崎県の大村市で撮るにあたって、以前から興味があった植物標本を話のなかに取り入れました。まずは、ひたすら大村を歩きまわって、植物を採集しながらロケハンをして、同時に植物標本を作っていきました。主役以外は大村市の方々に出演していただいて、10日間ぐらいで撮影。主人公を演じた藤原芽生は、「スナメリ」のメイキング班に東京から参加していた学生でしたが、雰囲気が気に入って、チズ役を演じてもらいました。
【繰り返し観ている作品】
『イングロリアス・バスターズ』(2009年/クエンティン・タランティーノ監督)
【好きな映画監督】
クエンティン・タランティーノ
[2015年/19分/カラー]
監督・脚本・編集:須藤なつ美/撮影:矢川健吾/録音:佐藤考太郎/製音:錦見尚希/助監督:岡田和音/音楽:riki hidaka/美術:工藤麻祐子、鹿出俊恵/制作応援:加藤はるか/草花監修:川口祥勝、渡海俊明/プロデューサー:加固治男、片岡 力/総合プロデューサー:小口詩子
出演:藤原芽生、松下美佐紀、川口祥勝、大地、佐藤孝太朗、鳩本喜代人、井川三男、井川和彦