577本の応募作の中から、約4ヶ月もの厳正な審査を経て選出された20作品を、お披露目上映。まずは、気になる1作品から観てみよう!あなたの投票で賞が決まる「観客賞」にもご参加ください。
※審査員、賞一覧、審査方法などPFFアワードの詳細は、「PFFアワードについて」をご覧ください。
チューによる唾液感染でゾンビになっていく者たち。『サンゲリア』『ゾンゲリア』にちなんだタイトルからしていい意味での脱力感に満ちた本作の魅力は、予想を裏切る展開によって観客を思いもよらない場所へジャンプさせ続けてくれるところ。特に亀の登場は、人間存在のちっぽけさまで感じさせる名シーンだ。
怨念と戦っていたかと思えば、街中をゾンビが歩き回り、そこから逃げていたはずが、いつの間にか山々の懐に抱かれる。『チュンゲリア』がエクソシズム映画なのかゾンビ映画なのか、はたまたネイチャー映画なのかなどと思い悩む必要はない。これは映画なのであり、「見ることは移動することなのです」。こんなちっぽけな人間たちを、監督は、セミを捕食するカマキリや、亀の緩やかな歩みや、夏の終わりの死にかけの昆虫のようなゾンビたちと同じように見つめていて、それはつまり大いなる「愛の力」なのだ。
結城秀勇(ライター・映写技師)
1988年奈良県出身/大阪芸術大学 文芸学科 卒業
子供のころから映画が好きで、文芸学科在学中から映画をやりたいと思っていましたが、当時は人と接するのが苦手すぎて断念、その後、桜美林大学の映画専修に編入学し、1年間だけ在籍した後、塚本晋也監督『野火』のボランティアスタッフに参加しました。『チュンゲリア』は念願の初作品で、あえて製作費ほぼゼロで撮りました。
前半の映画内映画『念力先輩』は、赤い液体を人に浴びせるだけの、記号レベルに単純化させたスプラッターという発想がまずあり、そこからお話をつくっていきました。後半のゾンビは、現実と変わらない風景や人物が映画の文脈の上でだけ非現実化するようなものにしたかったので、ただ人が歩いているだけ、血糊や特殊メイクは使わない前提の設定を考えていき、噛んだり食べたりするのではなく、チューで感染するゾンビになりました。映画という方法でだけ成立できる表現をよりエッセンスに近い形で取り出してみようという狙いです。
【繰り返し観ている作品】
『弥太郎笠』(1952年/マキノ雅弘監督)、
『宇宙大戦争』(1959年/本多猪四郎監督)、
『ダンボ』(1941年/ベン・シャープスティーン監督)
【好きな映画監督】
ジョージ・ルーカス、ペドロ・コスタ、ヴェルナー・ヘルツォーク
[2015年/37分/カラー]
監督・脚本・撮影・編集・録音:峯 達哉/撮影:本荘在右
出演:飛田雛子、川尻桃子、峯 達哉、柏葉瑠子、渡邉彩七、本荘在右、岩本崇穂、杉浦仁輝、飛田桃子、弓場 絢