招待作品部門

特別企画

才気溢れる監督たちよ!その名を永遠に留めよう

<生誕120年・小津安二郎が愛したふたり>


小津がこころから愛し、尊んだ清水宏と山中貞雄作品を上映し、小津スピリッツを伝承する。

清水宏監督:乗合バスを通して描く戦前と前後の日本。その鮮やかな手腕!
山中貞雄監督:28歳で戦場に果てた天才を悼む。
日本映画の至宝作をスクリーンで!

Director

小津安二郎

OZU Yasujiro

1903年、東京都生まれ。23年に松竹キネマ蒲田撮影所に撮影助手として入社。26年に演出部へ移動し、その翌年に時代劇『懺悔の刃』で監督デビューを果たす。サイレント映画からトーキー映画まで、約35年のキャリアの中で『晩春』(49年)『東京物語』(53年)『お早う』(59年)など全54本の作品を監督。「小津調」と称される独自の世界観を持つ作品群は、没後60年となる今もなお国内外から高く評価され、愛され続けている。

『有りがたうさん』

1936年/白黒/78分/35mmフィルム上映
監督:清水 宏/原作:川端康成
出演:上原 謙、桑野通子、築地まゆみ、二葉かほる、忍 節子
小津をして天才と言わしめた、同い年の清水宏監督。その技に唸る

乗合バスの運転手と様々な事情を抱えた乗客との交流を描く。オールロケで撮影された、山の自然が美しい珠玉の名作。運転手役の上原謙は加山雄三の父、乗客役の桑名通子は『青春残酷物語』桑名みゆきの母。2世もいい。

Director

清水 宏

SHIMIZU Hiroshi

1903年、静岡県生まれ。21年、松竹蒲田撮影所に入社。23年に小津安二郎が松竹に入り、生涯の友となる。翌年には21歳の若さで『峠の彼方』で監督デビュー。ヒット路線を突き進み、キャリア10年目にして100本の作品を監督。66年、63歳で逝去。

『明日は日本晴れ』

1948年/白黒/65分/35mmフィルム上映
監督:清水 宏
出演:水島道太郎、三谷幸子、國友和歌子、日守新一、御庄正一
長らく上映の機会が失われていた幻の名作

乗合バスの故障で、山中に立ち往生する人々の群像劇。歩いて進むか、戻るか、いつかやってくる車を待つか。様々な行動と会話を通し、戦争孤児や元兵士など、先年までの戦争の影が浮かびあがり、明日への希望も立ち昇る傑作。

『人情紙風船』

1937年/白黒/86分/35mmフィルム上映
監督:山中貞雄
出演:河原﨑長十郎、中村翫右衛門、中村鶴藏、山岸しづ江、霧立のぼる
小津安二郎のライバル、山中貞雄監督の代表作にして遺作

22歳でデビュー以来、5年間で26作を監督し全てヒットさせた天才が、歌舞伎の「髪結新三」を原作にした静かでニヒルな人情時代劇。欲にまみれた武士や豪商と対比させるように庶民の明るい暮らしが描かれる。美術にも注目!

Director

山中貞雄

YAMANAKA Sadao

1909年、京都府生まれ。27年、マキノ・プロダクションに助監督として入社。各社を転々とし、嵐寛寿郎プロダクションへ。32年に監督デビュー。わずか5年の間に26本の映画を撮った天才監督として知られる。38年、28歳の若さで逝去。

<20代監督の衝撃作!>


才能爆発!奇しくも、こんにちのジェンダー・サブジェクトに呼応する2作品です。

©︎Collections CINEMATEK - ©Fondation Chantal Akerman
©︎Collections CINEMATEK - ©Fondation Chantal Akerman

『ジャンヌ・ディエルマン ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地』

1975年/ベルギー、フランス/カラー/200分
監督:シャンタル・アケルマン
出演:デルフィーヌ・セイリグ、ジャン・ドゥコルト、
ジャック・ドニオル=ヴァルクローズ
伝説の女優D・セイリグと共に作り上げた監督第2作

16歳の息子と暮らす未亡人ジャンヌは几帳面に家事をこなす一方、様々な仕事をして生活費を稼いでいる。執拗に繰り返す主婦のルーティーンと精神的に崩壊していく様を、定点観測するカメラで映し出していく。アケルマン監督25歳の衝撃作。

©︎Jane Stein - Fondation Chantal Akerman
Director

シャンタル・アケルマン

CHANTAL Akerman

1950年、ベルギー生まれ。15歳の時にゴダールの『気狂いピエロ』に出会い、映画の道を志す。18歳で自ら主演を務めた短編を初監督。その後ニューヨーク、ベルギーで制作を続け、25歳の時に本作を発表。世界中に衝撃を与えた。15年、逝去。

『わたしはロランス』

2012年/カナダ、フランス/カラー/168分
監督:グザヴィエ・ドラン
出演:メルヴィル・プポー、スザンヌ・クレマン、ナタリー・バイ
非凡な才能に世界が驚愕した、カンヌ受賞作

初監督作『マイ・マザー』で鮮烈なデビューを飾ったグザヴィエ・ドランが、弱冠23歳にしてさらに世界を驚かせた監督第3作。心と体の性の不一致をカミングアウトしたロランスと、彼を受け止めようとする恋人のフレッドとの痛々しいまでに切ない愛の在り方を描いた傑作。

Director

グザヴィエ・ドラン

XAVIER Dolan

1989年、カナダ生まれ。幼少期より映画やテレビ番組に子役として出演。09年、19歳にして『マイ・マザー』を初監督。「若き天才」と呼ばれ、世界中で注目を浴びるが、23年に監督業引退を宣言。代表作に『たかが世界の終わり』(16年)他。