米アカデミー、カンヌ、ベルリン、ヴェネチア…世界を驚嘆絶賛させた近年の日本の短編映画を一挙に集めたプログラム。短編だからこそ描ける世界、短編にしか生まれない力、短編映画の面白さと可能性を味わってください。アニメーションと実写、そのヴァラエティにも注目です。
「戦後66年の3月11日に起きた4基の原発の事故」を指すタイトルのこの作品は、戦後66年間を過ごした土の中から出てきたセミが、地震や津波、放射線の被害を受けながらも土地に愛着を抱いて生きる物語。
平林 勇監督は武蔵野美術大学卒業後、グラフィックデザイナーを経て、CMディレクターとして活躍。そのかたわら2002年より短編映画を作り始め、2003年に制作した『TEXTISM』がイメージフォーラムフェスティバルで大賞を受賞。その後、映画評論家のトニー・レインズ氏をもって「平林 勇は間違いなく、今後の日本を代表して行く映画監督になる」といわしめた作品群が次々と世界中の映画祭で上映され熱狂的な支持を得る。2012年には本作がベルリン国際映画祭に出品が決まり、短編映画で三大映画祭(カンヌ・ベルリン・ベネチア)全てで上映されるという大きな快挙を果たす。世界に向けて短編映画をみせることに最も意欲的なひとりである平林監督の神髄がここにある。
[2011年/日本/8分/カラー]
監督:平林 勇/音楽:渡邊 崇/効果音:飯嶋慶太郎/アートディレクター:村上 健/配給:岡本珠希
◎神戸会場限定上映
[2010年/10分/カラー]
監督:平林 勇
見渡す限りの荒野で、地中に埋められた母子の探索が始まる。尾野真千子、堀部圭亮出演、カンヌ国際映画祭にも出品され話題となった本作を、神戸会場のみ限定上映します!
東京で働く55歳の地味なOLのセツ子(桃井かおり)。英会話教室で“ルーシー”というニックネームで金髪のカツラをかぶり授業を受けるうちに、抑圧されていた欲望を解放しもう一人の自分を見つけていく…
ニューヨーク大学大学院映画制作学科シンガポール校修了作品として製作された本作は、世界三大映画祭のひとつ、2014年のカンヌ国際映画祭のシネフォンダション(学生部門) で応募作1,631作品の中から見事2位を受賞、日本人初の快挙を果たす。翌年のサンダンス映画祭ではインターナショナル・フィクション部門の最優秀賞にあたる審査員賞を受賞、トロント国際映画祭などを含むその他数々の国際映画祭で審査員特別表彰賞、最優秀賞を受賞するなど世界中を魅了している。本作のキャスティングにあたり、平柳監督が桃井の住むロサンゼルスに渡り、「この役をどうしてもお願いしたい」と直接口説き落としたというエピソードも。現在、『Oh Lucy!』の長編版の企画が進行中。
[2014年/日本・シンガポール・アメリカ/21分/カラー]
監督・脚本・プロデューサー:平柳敦子/エグゼクティブ・プロデューサー:RAZMIG HOVAGHIMIAN、MICHAEL CHUA/プロデューサー:曽我満寿美、夏原 健、PERRY LOONG
出演:桃井かおり、BILLY SCOTT、長嶋りあん、山口みよ子、津田恵一
主人公はふっくらとした体格の少年たち。彼らの住む世界では、かつてウサギを崇高で神秘的な存在ととらえ、「グレート」と呼んでいた。時代はすすみ、思考や思想が変わった現代社会でも「グレート」と呼ばれ続ける理由を探る物語。キャラクターはシャープペンシルで描かれ、その柔らかい曲線からはほのぼのとした暖かさが溢れ出る。画から鋭角的な要素は排除され、映像や音声を日常的に浴び過ぎる今を生きる人々の心を和やかにしてくれる。
神戸市出身の和田監督がフランスの製作会社で制作し、ベルリン国際映画祭の短編部門で銀熊賞を受賞した本作。「間」と「気持ちいい動き」を大きなテーマに作品を発表し続けている世界が注目する若手監督は、これまでに『わからないブタ』(10年)でもロンドン国際アニメーション映画祭でグランプリを受賞。鈴木卓爾監督作『私は猫ストーカー』(09年)、『ゲゲゲの女房』(10年)ではアニメーションパートを担当している。
[2012年/フランス/7分/カラー]
監督:和田淳
※神戸会場では、『グレートラビット』の上映はありません。
2組のカップルの不穏な関係。彼女は私の妄想なのか、それとも私の方が彼女の妄想なのか…「"静かな絶望"をキーワードにこの世の不条理、存在の不確実性といったネガティブイメージを魅惑的な映画として成立させようと試みた」と伊藤高志監督がいう本作は、第61回オーバーハウゼン国際短編映画祭のコンペティション部門に選出もされた、世界で最も有名な日本人実験映像作家が放つ、4年ぶりの待望の新作。
九州芸術工科大学在学中に、日本の実験映画の第一人者である松本俊夫監督のゼミ内で発表した『SPACY』(81年)が、大学生の衝撃的デビュー作として世界を席巻、1995年のクレルモンフェラン国際短編映画祭において「短編映画の1世紀」100本の中の1本に選出されるなど、一躍脚光を浴びた伊藤監督。その後も、『SPACY』で究めた複雑なムービング・イメージと空間造形との組み合わせを極め、超現実的な視覚世界や人間に潜む狂気・不条理を追求し続けている。
[2014年/日本/33分/カラー]
監督・撮影:伊藤高志/撮影協力:竹内彩夏/音響:荒木優光
出演:村上璃子、上川周作、大谷 悠、松尾恵美、早川 聡
さくらんぼを種まで食べる、「もったいねぇ」が口癖のケチなひとりの男。頭から毛が伸びると思ったら、そのてっぺんに生えたのは何と桜の木だった…喜悲劇である、落語「あたま山」を現代風にアレンジ、新解釈を試みたアニメーション。
13歳から8ミリフィルムで、アニメーションをつくりはじめた山村浩二監督。本作は、浪曲師・国本武春の唄と三味線で物語るというユニークで日本的な要素と、ダイナミックな映像が高い評価を受け、アヌシー、ザグレブ、広島をはじめ世界の主要なアニメーション映画祭で6つのグランプリを受賞。さらに、日本人で初めて短編部門でのアカデミー賞ノミネートを果たし、その名を世界に知らしめた。以降も『年をとった鰐』(04年)、『カフカ 田舎医者』(07年)など、多彩な技法で短編アニメーションを制作し、これまで国内外の受賞は80を越える。代表作のひとつである『頭山』で、山村作品の斬新かつ、心を打つ映像体験を!
[2002年/日本/10分/カラー]
監督:山村浩二/音楽:国本武春/音楽:シジジーズ/効果音:笠松広司
出演:国本武春
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『グレートラビット』© Sacrebleu Productions - CaRTe bLaNChe - Atsushi Wada 『頭山』© Yamamura Animation