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  3. No.28:『恋に至る病』in 第36回香港国際映画祭

海外映画祭レポート

日本国内のみならず、海外の映画祭でも上映される機会が多くなったPFFアワード入選作品&PFFスカラシップ作品。このページでは、そんないろいろな映画祭に招待された監督たちにも執筆していただいた体験記を掲載します。

第21回PFFスカラシップ作品『恋に至る病』in 第36回香港国際映画祭 (香港:2012年3月21日~4月5日)

前回のベルリン国際映画祭レポートに続いて、『恋に至る病』の木村承子監督による海外映画祭の体験レポート。今回は、『恋に至る病』がヤングシネマコンペティション部門で審査員特別賞を受賞した香港国際映画祭での体験談をお届します。

ヤングシネマコンペティション部門の表彰式会場の様子。

到着した日の夕方に上映を控えていたため、ホテルについてすぐ着替えを済ませ、先に香港入りしていたPFF荒木さんと合流。4月の香港は、日本の初夏の気候で少し動いただけで汗をかいてしまうような温かさだった。

映画祭の会場の一つである「香港科学館」という博物館へ向かう。日曜ということもあり、会場はほぼ埋まっていた。観客の皆さんと一緒に観賞。ベルリンに引き続き、リアクションがあったところをメモしながら見ていたのだが、コメディシーンではほとんど笑いが起きていたので一安心する。何回上映に立ち会っても、此処ではどういう反応がおきるのだろうというハラハラがなくなることはないのだが、その分、近くで好意的な反応を見られたときは、ひとりでニヤニヤしてしまう。自分の頭の中を人に無理矢理見てもらうような、この感覚はものすごく贅沢だよなあとボンヤリ思う。お客さんの年齢がとても若く、上映後に声をかけてくれた女の子四人組に年齢を尋ねると、高校生だと言っていた。『恋に至る病』の登場人物たちと同年代の観客に直接感想を聞けたのはすごく新鮮で、劇中の色使いのことなど気になった点をはにかみながら伝えてくれたのは素直に嬉しかった。また、ひとつ驚くべき質問が。上映後に声をかけてくれた若い男性は、(男女の性器が入れ替わったのではなく)「ヒロインが、男性器と女性器をふたつとも体につけているのだと思っていた」と感想を告げてくれた。その理由を聞くと「ヒロインは膨らんだ胸を持っているから」と答えてくれた。人によって、体の部位の感じかたは様々で、彼にとって女性の象徴は性器ではなく胸なのかもしれない。こういった感想は初めてだったので衝撃的だった。

審査員特別賞のトロフィーと副賞のカメラ。

また、滞在中荒木さんの紹介で、フルーツ・チャン監督にお会いすることが出来た。『花火降る夏』『リトル・チュン』『ドリアン・ドリアン』など、彼の作品を事前に観賞していたのだが、ひとつどうしても気になるところがあった。フルーツ監督の作品は、香港の町並みの切り取り方、細やかな人物描写など、繊細な表現がとても印象的なのだが、どの作品にもうんこ、ナプキン、タンポンといった汚物が登場するのだ。これはどういった意図で使われているのか質問してみた。彼は「当時、映画界で生き残るためには、作品の内容の良さの上に、もう一つ、絶対に誰の記憶にも残るようなシーンを入れることが必要だった。だからああいったシーンを意図的に入れている」と答えてくれた。彼が笑いながら言った「現に、こうして質問してくれるように君の記憶に残っているでしょう?」という一言には深く納得した。他にも、子役を演出する上で気をつけていること、役者さんとの接し方など、たくさんの質問に答えてくれた。

今回の香港滞在で一番大きかったことは、ヤングシネマコンペティション部門で審査員特別賞を頂いたことだ。本作は性器交換という特殊なモチーフ、アクの強い性格の登場人物など、一筋縄ではいかない内容な分、賞を頂けたことは日本での上映に向けて大きな励みとなった。また、会場でアニメーション作家の山村浩二さん(新作『マイブリッジの糸』が短編映画部門でグランプリ受賞)にお会いできたのもすごく嬉しかった。子どもの頃から憧れていた方に実際に対面できるのは、とても感慨深い。山村さんが教授をしている東京藝術大学での授業の事、制作の裏話から作業中のBGMの話まで、様々なお話を聞かせてくれた。とても穏やかで温かい人だった。

その夜、二次会でカラオケに流れたのだが、国籍・年齢ともにバラバラな参加者が「昴」を合唱している模様を眺めて、国を超えて受け入れられるものを作りたいと胸を熱くする。頂いたトロフィーは宝物だ。

『恋に至る病』を評価して下さった方、観客の方々、みんなみんな、本当にありがとうございました。

文:『恋に至る病』監督 木村承子

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