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  3. No.26:『Recreation』in 第30回バンクーバー国際映画祭

海外映画祭レポート

日本国内のみならず、海外の映画祭でも上映される機会が多くなったPFFアワード入選作品&PFFスカラシップ作品。このページでは、そんないろいろな映画祭に招待された監督たちにも執筆していただいた体験記を掲載します。

PFFアワード2011入選作品『Recreation』in 第30回バンクーバー国際映画祭 (韓国:2011年10月6日~14日)

前回の『僕らの未来』レポートにも登場した『Recreation』の永野義弘監督によるバンクーバー国際映画祭の体験談。アジアの新人監督のために設けられたコンペティション部門「Dragon&Tiger Award」でスペシャルメンションを授与された心境も綴られています。

「Dragon&Tiger Award」授賞式直後の永野義弘監督(写真右)と橋本和志さん。

『Recreation』と『僕らの未来』は第30回バンクーバー国際映画祭・アジア新人監督部門「Dragon&Tiger Award」にノミネートされた。
バンクーバー国際映画祭(以下:VIFF)から5泊6日の招待をいただき『Recreation』主演:池村晃役のはっしー(橋本和志)と『僕らの未来』の飯塚花笑監督、主演の日向 陸さんとカナダ・バンクーバーに行ってまいりました。

はっしーとは中1からの付き合いで、当時、野球漬け(僕)とバスケ漬け(はっしー)がまさか10年後、監督と俳優として一緒にバンクーバーに行くことになるとは―。東京との時差は17時間、フライトは約8時間のため前日は寝ずに出発し飛行機で熟睡し戦闘態勢を整えた。

バンクーバー国際空港に着くとゲートに僕らの名前が書かれたボードを持った人が。(内心、「あいのり」気分)
ボードを持っていた方はVIFFボランティアの方(日本人)でした。出発前にPFFの荒木さんから「VIFFは通訳&ガイドチームがしっかりしていて言葉も何も心配することないです!」と伺っていた。全くそのとおりだった。食事は朝、夕とホテルで出るわ、外食も御馳走になるわで、常に現地の日本人の通訳の方が「困ったことがありましたら何でも言って下さいね」と親切にサポートして下さるという、まさに至れり尽くせり、感謝しまくりでした。

黄色いタクシーはほぼイエローキャブ。(発見する度、真っ先に「サトエリ」が思い浮かんだ)

ホテルに着き、6日間の流れを説明してもらう。
『Recreation』の上映は6日間で4日目と5日目計2回。「Vancity Theatre」という会場で上映される。ホテル内にはVIFF関係者専用ルームがあり、1つはスタッフルーム(PCを使わせてくれたり、分からないことがあったらここで聞ける。分かりやすくいえば「ポケモンセンター」みたいな所)。もう1つは朝食、夕食をいただく、なんちゃってパーティルーム(バー設備。辛口ジンジャーエールが美味美味。バーテンダーのおじさんの髭がダンディすぎてちょっと分けてほしかった)。

全然関係ないが僕はあごから髭が11本しか生えない。ほんとに関係ない。

このなんちゃってパーティルーム(実際には名前があるはずですが)は映画祭関係者との交流の場だった。
朝食、夕食の時間は決まっているので皆その時間に集まってくる。「Dragon&Tiger Award」の作品関係の監督やキャストは皆同じホテルに宿泊しているので、特にアジア人と交流することが多かった。韓国のとってもヘンタイ(親しみ込めてるよ)なディレクター、An Young Jung。韓国の可愛すぎるトランスレーター、Leeちゃん。中でも香港の作品「Big Blue Lake」チームとは朝食の席がよく一緒になった。主演女優のLeira Tongさんは一瞬で心を奪われた程の美しさだった(のちに結婚していることが判明)。プロデューサーのmonさんは映画祭後にメールをくれたりもした。アジア人は日本語を知っている方が多いので比較的話しやすかった。

永野監督の宿泊ホテルから見える風景。

テーブルの席が一つ空いているところでも「ここ座っていい?」と、知らない外国の方が加わってくる。毎日がその連続だった。会って間もない時間で映画トークをしているのだ。海外独特のあのフレンドリーな雰囲気が僕の口を動かしてくれた。初めて会う人々にはかなりの高確率で「so young」と言われた。年齢なのか、アジア人が若く見られるのか、それとも僕がただ幼いのか。いや、もしかして髭がないせいなのか。結果、髭をたくわえたはっしーがDirector、僕がActorに間違われることもしばしばあった(石井裕也監督にも間違われる事件)。

先に書いてしまったが、尊敬する監督と実際にお話できた。
まずはヤン・イクチュン監督。今回のVIFF「Dragon&Tiger Award」の審査員の一人だ。
僕は『息もできない』の大ファンである。『Recreation』撮影前にはっしーに勧めて観てもらっていたりもした。恐縮なことに今回のVIFFの予備知識はほぼゼロで、審査員が誰かも知らなかった。ヤン監督と初めてお会いした時でも誰か分からなかった。ファンなのに。でも理由がある。髪も伸びて、ジャージにサンダル姿、さらに優しそうだったからだ。とてもじゃないがサンフン(劇中での役名)ではなかった。通訳の方に「“Breathless”のヤン監督です」と言われた瞬間、僕とはっしーは飛び上がった。ヤン監督は日本に住んでいたことがあるということで、日本語と英語を交えながら僕らは直接会話することができた。
そして今回のVIFFで「アジア1面白い日本映画」ということで『ハラがコレなんで』が上映される石井裕也監督。今このレポートを読んで下さっている方に説明する必要もないだろう。とっても気さくでパーカーの似合う方だった。日本と海外の映画祭、これからどうやって映画作りをやっていくべきか親身になってアドバイスをくれた。石井裕也監督の日大時代の家が今の僕の家と番地違いだったことが判明し、近所のおいしい店なんかも教えてくれた。ちなみに石井裕也監督は海外の人と普通に英語で会話できるため、僕らがNYのイカついディレクターに「今夜パーティがあるんだが来ないか!?」と2日連続で誘われた際も華麗にスルーして助けてくれるのであった。

この5日間では、自分の作品の上映が後ろの方にあるため、観たい作品とインタビューの時間をチェックし、空き時間は観光しまくった。

印象的だった場所は…
【ブリティッシュ・コロンビア大学付属の人類学博物館】
とにかく、ハンパないトーテムポール達が展示されている。館内もトーテム、館外にもトーテム。一つ一つの表情が実にユニークで、細部にわたり独創的なデザイン彫刻が施されていた。
【スタンレーパーク
年間800万人が訪れる公園。スタンレーとパークの間にビッグを付けるべきなんじゃないかと思うくらいとてつもなく広い。こちらでもトーテムポール達が待ち構えてました。海沿いには沢山のベンチがあり、その中の一つに通訳の方のお母さんの名前が刻印されていた(最愛の人を亡くすとベンチを贈るそうです。素敵だ)。
【ガスタウン
レンガの街並みが非常におしゃれでのどかなバンクーバー発祥の地。蒸気時計が有名で15分毎にフォッフォーと汽笛を鳴らす。マイナスイオンを感じた。怒りっぽい人はここに来ればきっとやさしくなれるだろう。

バンクーバーにいた野生のアヒル。奥の方ではカモメが休んでいる。

さすが5年連続“世界一住みやすい都市・バンクーバー”。
文字や言葉じゃ表現しきれないが、とにかく街並や空気が心を穏やかにしてくれる。
時期的にも心身ともに余裕がなかった僕には、そう強く感じた。
動物が大好きな僕とはっしーは野生動物を発見する度にテンションがあがった。
アヒルの大群と一緒に「ガーガー」言いながら歩いたり、リスを見るために木の下で待ち構えたり、、、楽しかった。。

で、本題です。
毎回上映前に英語で簡単な挨拶をし、上映後は質疑応答の時間が設けられていた。
1回目の上映は21時半から。尺が78分あるため上映が終わるのはじつに23時頃だ。にも関わらず、7~8割お客さんが入っており、ちょっと安心する。

そして上映が始まる。
ここで僕には一つ心配事があった。
『Recreation』をご覧になった方には分かって頂けると思うが、劇中でカメを袋詰めにし、バイクで轢き殺すシーンがある。カナダといえば、自然や動物を愛し、人も動物ものびのび暮らしているイメージが僕にはあった。抵抗できない生き物を殺すなんて、反感を買うのではないのか、それこそ観客の口から放送禁止用語が出てくるのではないのか、心配だった。(僕の大学在学時の上映では20人程、気分を悪くしたり、泣いてでていく人がいた)
ところが、本編が始まり、ちょいちょい「hahaha」そんな声が聞こえる。それも立花(劇中で女子高生のスカートめくりを繰り返す男)が出てくるシーンはほとんど。問題のカメ殺しシーンでは、「oh!haha」。暗い会場内で、僕とはっしーは「(まじで?)」と目を丸くした。ラストシーンにおいても、「oh~笑」だった。どうやらあまりにもクレイジーなヤツを見てしまうと笑いに変換されるらしい。おそるべしカルチャーギャップ。
(ちなみに2回目の上映は笑いは一切なかった。なぜ)

上映が終わり、質疑応答が始まる。
観客の挙手の仕方がなんともクール。
手をピンっと高くあげるのではなく、座席にもたれたまま、軽く開いた掌をヒョイっとあげる程度である。クール。
内容としては、このようなやりとりだった

Q:「立花はサイコパスなのか?」
A:「立花にはイメージとなった人物がおり、女性に興味があるが、表現方法が分からず、スカートをめくり、下着の色を記録していく少年がいた。サイコパスではなく、ささいな興味から発展してしまっただけ」
Q:「ストーリーの着想はどこから?」
A:「高校時代にリンチを目撃し、教師に報告したが“おれが見た訳じゃない”と相手にしてもらえなかった、その悔しさから、大人がいない(見てない)少年犯罪を題材にした」

上映後の質疑応答が続くにつれシアター閉館の時間になり、ロビーに移り再開。
僕の前には長い列ができていた。皆、最初に「good movie」と言って握手を求めてくる。やはりクールだ。いつの間にか「Thank you」が「Thanks」に変わっていた僕。クールは伝染するのだ。ロビーでも終わらず、会場閉館時間に。「寒いけど続きは外で」と会場外に案内され、ぞろぞろと移動。時計を見ると24時近くだった。最後まで並んで待っていてくれたのは現地の映画学校に通う女の子(これまた可愛い)。「私も今大学で映画を学んでいるの!あなたの映画が卒業制作と聞いて驚いたわ!何かアドバイスが欲しいわ!(英語だからこんなノリで)」と言ってくれた。僕にとって『Recreation』はリアルを求めた映画。すべては自分の経験からきている。自分の知らないことは描けない(これは恩師である石井岳龍監督が良く口にしていた)。僕はその子に「あなたしか描けない、あなたしか経験したことのないものがあるはずだから、それを題材にしてみたら力のある作品になると思いますよ」とちょっとぶった発言をした。彼女は「嬉しいわ!刺激を受けたの!何年後かあなたのようにここで上映するのが目標だわ!」と僕の右手を両手で握った。(若干キュンときた)

授賞式が行われたVOGUE Theatre。

今まで、僕は映画を学ぶ身だった。もちろん今もこれからもずっとそうだ。でも、こうやって今映画を学び始めた人に、刺激を与えられるようになったのかと、と何だか嬉しくなって興奮し、今夜は眠れそうにないなと思った。(ホテルに戻ったのは25時すぎ。爆睡した)

現地の新聞取材、カナダに住むアジア人向けのラジオ番組などメディア対応も多く、いかにVIFFが大きな映画祭かを思い知った。

5日目は授賞式。会場はVOGUE。

「Dragon&Tiger Award」授賞式後にプレミア上映される、『ハラがコレなんで』の公式ブログ用カメラマンを任されていたため、最前列の石井裕也監督の隣に座った。
授賞式は日本のようにじらしもなく、かなりサクサク進行されていく。
しかも先に講評が発表され、最後にタイトルが言われるため、何言ってるか分かる人にはどの作品なのか分かっちゃうという。
耳元で通訳してもらい、スペシャルメンション一作目がフィリピンの作品。そして2作目の講評が始まる。その中で「Crime」という単語がすっと耳に入ってくる。「え?」と思った瞬間、通訳の方も黙る。数秒後、会場内で発音のいい『Recreation』という単語が響き渡った。
僕とはっしーは立ち上がり、後ろを振り向くと、歓声と拍手とフラッシュが一気に降り掛かってきた。特に面白いこともできず普通に壇上に上がって喋って終わった。(若干心残りです。。)

その後グランプリ(チベットの作品)が発表されると、すぐに会場外に案内されそこには多くのカメラと人。
カメラを構えながら、掌をちらつかせ「目線ちょーだい」的なジェスチャーをするカメラマン達を目の前にこの10分間で何が起きたのかまだアタマの中の整理が追いつかず、アホな顔だけはしまいと必死だった。そして、きっと人生で一番フラッシュを浴びた瞬間でした。。。。

同じ「Dragon&Tiger Award」ノミネート監督やVIFF関係者の方達からは「Congratulations!!」と祝福される。そこになんと、心を奪われ、見事打ち砕かれたLeiraさんから「一緒に写真撮りましょう」と。バンクーバー万歳。そして沢山の方と握手を交わしていった。

自分が海外で評価をいただいたと実感できた瞬間だった。

授賞式後のパーティにて。左からヤン・イクチュン監督、永野監督、橋本さん、ホン・ヨングンさん。

授賞式後の食事会では、ヤン監督や『エイリアン・ビキニの侵略』の主演ホン・ヨングンさんとかなり打ち解けていた。気づけば通訳なしで会話。ほぼ下ネタだったがエロは国境を越えるのだと僕に大きな収穫を与えてくれました。内容はとてもじゃないけど書けません。

そして僕が今回で一番衝撃を受けたこと。それは同じく審査員の一人、アン・ホイ監督の言葉だ。

「あなたに一つだけ質問していい?彼らはなぜあんなに眉が細いの?」

これに対する答えはあえて書かない。ただ今迄、映画をつくる時に海外を意識したことなんてなかった。「これで観る人に分かるだろうか?」と考えることはあっても、その対象となっていた人は無意識にも日本人だった。国によって言葉は勿論、文化も違う。況してや、『Recreation』は福岡が舞台というバリバリ「ローカル」な映画だ。

これから僕が映画を創る際は、少なくとも、「海外の人が観たら….」と考えるだろう。これは「どの国の人が観ても分かるように」と制限してるようにも捉えられるかもしれない。ひとまず、そこは置いとくとして、アン監督の言葉は僕に一人の映画人として、視野を広くしてくれた。とっても。

国境を越え、何カ国ものfilm makerと交流できたこの6日間は僕にとって大きな財産となった。
と、同時にここで満足してはいけないと思った。
これからも映画を創っていきたい。

最後に。
僕自身が目指すもの、
それは
「どの国の人が観ても分かる映画」ではない。
「どの国の人にも刺激を与えることのできる映画」を創りたい。
そしてバンクーバー。絶対また行くのだ。

このような素晴らしい経験を与えてくれたすべての方々に感謝しています。
『Recreation』のキャスト、スタッフ、石井岳龍監督、神戸芸術工科大学の仲間。
PFF事務局の皆様、VIFFの皆様。

本当に本当にありがとうございました。

文:『Recreation』監督 永野義弘

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