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2012/05/01 03:49:37

自立は幸せな人生への早道であると再認識した4月

晴天の29日は、東銀座のシネパトスでの、今井正生誕百年特集で過ごしました。
去る4月8日には、『青い山脈』『続青い山脈』上映と杉葉子さんのアメリカからの来場があり、行かねば!とはりきっていたのですが、前夜素敵な『利き酒会』に参加して断念・・・・
大変後悔しました。
今回は、53年版の『ひめゆりの塔』と、有志によるニュープリント作成で上映が実現した、オムニバス映画『愛すればこそ』の二本立てに加え、香川京子さんのご来場。
今回は逃しません。

香川京子さんといえば、小津、溝口、黒沢、成瀬という、並み居る巨匠の映画全てで重要な役を演じておられるのみならず、ご出演なさった作品の記憶が、現場を、まるで俯瞰で見ているように、あるいは、まるで、取材記者かプロデューサーかのように、鮮明に記憶あるいは観察されておられることで有名です。香川さんを取材なさった方幾人かから、その驚きを聞いたことがあります。「監督よりその映画をよく知っているかも」と。また、どこにでも、おひとりで静かに現れることも有名です。
今回のトークも、さりげなく、しかし、映画への熱い情熱の伝わる、貴重な体験になりました。

当時爆発的なヒットを記録し、現在でも知る人の多い『ひめゆりの塔』ですが、私は実は今回初見でした。沖縄に行った折に、ひめゆり部隊の記念館や、保存されている塹壕をみて、あまりの戦争の狂気に唖然としたまま、今日まで映画を観る勇気がなかったのです。そして、映画は、やはり必見映画の1本でした。これが、東映の大泉撮影所で撮影されたとは、到底信じられない、戦場としかみえない、入魂の作品です。
『愛すればこそ』は、独立映画プロダクションの経営を救うために、スタッフとキャストが手弁当で集ってつくりあげた作品。思想や哲学が強く伝わる、戦う映画人たちの映画、でした。

香川さんが、他の女優と違うキャリアを積むことを可能にしたのは、早い時期からフリーランスの道を選んだことだという話が、非常に印象に残っています。フリーだから、声がかかって、ご自身も興味があれば、どの会社の作品にも出演が出来た。(かつては、映画会社専属契約の俳優が大多数で、簡単には他社の作品に出演できなかったのです。)
変な言い方ですが、若くして、自立した女性だったのだなあ・・・と感慨が湧いた私です。

自立。それは人生で一番、楽しさへの早道だなあと、最近改めて感じています。
ロングランヒットを続ける『Pina 踊り続けるいのち』をやっと拝見したのですが、これをみると、同じく公開中の『ピナ・バウシュ 夢の教室』をみずにはいられなくなります。
両作品とも、しみじみと、「自立する」ための「表現」というものを考えさせられずにはいられませんでした。

ピナ・バウシュを初めてみたのは、83年のフェリーニ『そして船は行く』。誰もがひれ伏す圧倒的な存在感の皇女としてスクリーンにいるこの人は、誰?・・とその名前を記憶しました。
そして、86年のヴッパタール舞踏団初来日。大野一雄さんの製作の方に、来日公演が実現すると教えられ、予備知識なしで国立劇場に行きました。驚きました。舞台では、これまでみたことのない緊張感漲るダンスが展開されていきました。そして、ダンサーたちが、自己について舞台で語る・・・「ダンサーは人間である。人間だから踊る」と、人間宣言をされたようでした。それは、まるで、ロックを初めて聞いた時のような衝撃でした。
が、それ以来、一度も生の舞台を体験していません。私には、一度で充分だったのだと、映画をみながらおもいました。

緊張と弛緩で見事に鍛えあげられたダンサーの肉体。(これって、流行りの加圧と同じこと?とかつい考えた私・・・)かなりの危険が伴う構成、相手に自分を全面的に「委ねる」ことの出来る信頼関係(そこで突然、ふと、バナナ学園純情乙女組のステージを思い出しました。ちょっと同じ感じをうけたのを発見)
「個々の目指す高みに向かって責任ある仕事をする」という、そのことを肉体で示されているなあと、しみじみしました。

劇場を出ると、1600円のパンフが飛ぶように売れていました。職業柄、羨ましい風景でした。同じく職業柄、ヴッパタール舞踏団の新芸術監督になる方は、大変なプレッシャーで気の毒だな~と、つい気になってしまうのでした。
それにしても、もし、最初の企画通りに、ピナの存命時に撮影されていたら、この映画はどんなものになっていたのでしょうか。何はともあれ、この映画がきっかけで、ピナ・バウシュを知る人が増えている。映画ってすごいなと嬉しくなります。
そして、3Dって凄いな、ともおもうのでした。

2012/04/28 11:14:56

映画への敬意が高まる

メジャー系の映画を、つい後回しにしてしまいます。一種の職業病でしょうか。
そして、出来るだけ白紙で劇場に行く習慣が更に嵩じています。タイトルとスチル、あるいは予告編、で勝手な想像をしながら劇場に行き、驚く。これが楽しみにすらなってきました。
『戦火の馬』は、ディズニーの『三匹荒野を行く』のように、「馬が我が家目指して旅する映画」かな?大陸の戦場を抜け出してどうやってドーバー海峡を渡りイギリスへ戻るのだろうか?ドーバーを泳いで渡る?船に紛れ込む?とかあれこれ想像。
実際は、ぜんぜん違いました!!当たり前か。
今、私の中での「スピルバーグ最高傑作」と位置づけられています。絶賛『戦火の馬』。

馬をどうしたらこんな風に撮ることができるのか、その技術にも呆然とする『戦火の馬』
猿がどんどん好きになる『猿の惑星 ジェネシス』
ちょっと違うけれど、車なのに魅力的『カーズ』
人間ではないものの魅力は、近年の撮影技術の進化で、更にアップしそうです。
(あ、でも、古式の撮影と思われますが『木漏れ日の家で』の犬、素晴らしかった。)

そして、『ヒューゴの不思議な発明』も大絶賛中!
一瞬だけ出演する、スコセッシの満面の笑顔に、更に心掴まれ暖かい気持ちで劇場を出ました。
スコセッシは、映画の修復保存活動でも有名です。2007年のカンヌ国際映画祭で発表されたこの活動(「世界映画基金」を立ち上げ、第一作は『赤い靴』でした)は、現在も着々と世界中の名作の修復保存を継続しています。

昨年末、突然私を襲った「ミュージカル映画みます!」熱。
実はこれまで、重力に囚われずに踊れるフレッド・アステアしか興味のなかったミュージカル。きっかけは、ふと「ジュディー・ガーランド」という存在に惹かれたから。そこから「少しでも早くミュージカル映画観ておかなくては・・・」と加速していったのは、彼女の出演した『スター誕生』でさえ、完全な形で残っていないことからです。(余談ですが『アーティスト』は『スター誕生』の4度目のリメイクかと勝手に想像していましたら、これまた違いました)
そんなとき、ジュディー・ガーランドの代表作のひとつである、『イースターパレード』が、前記、修復保存作品の1つになっていることを知りました。DVDの特典映像では、スコセッシとイーストウッドが『イースターパレード』の素晴らしさについて語っています。
あ~イーストウッド版『スター誕生』待ち遠しい!

奇しくも、『戦火の馬』も『ヒューゴ』も、第一次世界大戦が背景です。
第一次世界大戦は、初めて映像記録の残った戦争で、その悲惨さは「映像の世紀」(日本ではNHKで放映され、その後DVD化されたシリーズです)で一部みましたが、シリーズ中最も忘れられない一編でした。
勃発が1914年7月。5ヵ月後の「クリスマスには帰ってくるよ!」と、意気揚々と国を出た=志願兵となった若者たちが、予測もしていなかった4年間の果てしない戦いで、肉体も精神も壊れていった様が記録されています。PTSDで精神病院に収容された若者たちの記録もあります。映像の力を、まざまざと示す記録です。
戦禍を国土に刻まれた国は、日本のみならず、欧州にもアジアにも沢山あり、現在でもアフリカや中東はじめ、各地で無残な戦いが継続中だと思い出します。外国に国土を荒らされていない国ですぐ思い出すのは、アメリカ。荒らしても荒らされない、まさに暴力番長。世界中の植民地から軍隊維持費を集金してる、集金番長でもあります。
う~ん。「番長」って、なんだか妙にノスタルジックな響きですね。三池崇版『愛と誠』では、番長がどう描かれているのか、楽しみです。更にミュージカルということですし。

話しは戻って、今回の『ヒューゴ』。
なんと、これがメリエスに纏わる映画だということさえ、観るまで知らなかった私でありました。知っていたら、ちょっと怖くてまだみてなかったかも・・・・何故なら、メリエス、それは私の超弱点。心の宝だからです。ああ、みてよかった!
そのまま帰宅して、私の中で"メリエス的"なテリー・ギリアム作品を鑑賞。『バンデットQ』という、不思議な日本語タイトルの名作。現在の技術があれば、あんなこともこんなことも出来ただろうなあと、しみじみしてたら、エンディングにジョージ・ハリスンの唄が。はっ!と、この映画の製作がジョージ・ハリスンだったことを思い出したのでした。
ジョージ・ハリスンといえば、スコセッシは彼のドキュメンタリーもつくっていました。ああ、未見。子供時代、ジョージの大ファンだったもので、ちょっと照れくさかったのでした・・・・うかつ。

『戦火の馬』と『ヒューゴ』。どちらもエンディングクレジットが終わるまで、劇場の席から立つ人がいなかったのが、これまた印象に残りました。
映画への敬意をあらためて掻き立てられる、『戦火の馬』と『ヒューゴの不思議な発明』。
単なる映画ファンブログになってすいません。

2012/04/18 13:07:28

明日はカンヌのラインナップ発表ですね

世界で一番有名な映画祭。それはカンヌ国際映画祭です。
映画関係者の一番行ってみたい映画祭。それもカンヌと言っていいかもしれません。
気候はいい、食事は美味しい(ついこれが先に来る・・・)、リゾート感も抜群、勿論映写状態はいい、観客の感能力が高い、映画多すぎて嬉しい悲鳴、有名監督&スターとの遭遇率も高く、散歩するだけで楽しいし、なんだか全体的な高揚感、お祭り感は類がない。そこにいると、不思議と映画の仕事していることを誇りに思う効果がある。そんなカンヌ。滞在経費は他の映画祭より格段にかかりますからお財布が心配ですけど・・・・
と言いながら私は、もう随分とカンヌに出かけておりません。

しかし、エイプリル・フールのカンヌの「漏れたラインナップ」という嘘は、結構世界を駆け巡ったようです。
http://spooool.com/2012/04/cannes-film-festival-in-competition-line-up-leaked-and-translated-into-english/

それに対して、アーティスティック・ディレクターのティエリー・フレモーが怒っている(当たり前ですが)
http://www.deadline.com/2012/04/exclusive-thierry-fremaux-says-no-leak-at-cannes-film-festival-its-all-lies/

こんな騒ぎが起きるのも、カンヌならではだな~と感心しています。
私も、先日、カンヌの某セクションのプログラマーの一人から(どのセクションも、沢山いるんです。プログラマー)、選ばれた日本映画について耳打ちされましたが、口外しないのが映画祭運営者の常識です。

それにしても、一番小さい「監督週間」でも、PFFの10倍か?という予算でありながら半分以下の映画本数の上映。コンペなどの本体でしたら、多分100倍くらいの予算でしょう。う~すごい~。以前、「スポンサー探しに苦労したことがない」と言われたことがあり、腰が抜けそうになりました。
・・・・・あ、いかん。なんだか僻みっぽくなってきました・・・・
そうなんです。経済的苦労の連続なんです、映画祭運営は。全ての映画祭が同じ悩みを抱える昨今。景気のよい話は、カンヌ、釜山、トライベッカ、ハワイなどで、たまに聞くくらいです。あ、ドバイも。
・・・・なんだか話題がしょぼくなってきましたのでやめます。

大人になっても夢と希望と理想と信念と想像と創作について臆面もなく語る場所が「映画祭」ですので、そこでは、映画や映画監督が、その夢や希望やもろもろの畏敬の対象になります。「人間は素晴らしいものを生むことができる」という前提に立った場所、それが「映画祭」ともいえます。言い換えれば、「人はよきものになっていく」ということを恥ずかしげもなく確認する場所と申しましょうか。う~ん、書いてるとアブナイ感じがしますね・・・
一方、「映画祭」基準で暮らすと、世の中が不思議なものに見えてくるという傾向と申しますか、弊害と申しますか、は、あります。

私自身も、昨今の国内の出来事を目に、耳にすると「狂った世界」としか思えず、困っています。
戦後民主主義教育の成果はなかった・・・・と申しましょうか、世界でも有数の独裁国家に生きているという感を強くすると申しましょうか、江戸時代のまま変化がないことを痛感すると申しましょうか、2012年であることが信じられないと申しましょうか。
国の運営という仕事に携わる人たちの「(実は)何をしていいかわかりません」感、「責任は私にはありません」感、「嘘をつくこと、プロパガンダをすることが仕事です(えっへん)」感、つまるところ「誰か指示してください(強い人についていきたい)」でも「私たちは選ばれた人間で権力行使します(黙って言うことを聞け。いじめるぞ)」感。結局は「自分で考えて仕事したことがないのでよくわからない(所属するものがないと何もできない)」感。
という、混乱した子供な感じ。あ、職場の身近にもいませんか?そんなオソロシイ人。つまり、自分のことしかみてない人。
しかし、想定「将軍」も瓦解し始めている、幕末みたいな21世紀に、まだ「20世紀再び」と視野狭窄になってるというか、自暴自棄になってる為政者と共倒れ、と申しましょうか、その犠牲になるというかは、嫌だなあ・・・・
現実をみたくないなら、せめて現在を活写する映画をみてほしい!と声を大にしたい次第です。

私が多分小学校低学年のとき、年賀状に紛れこんだ、他家宛のあまりにも稚拙な葉書を笑ったところ、明治の末生まれの祖母に「この人は多分、文盲で、これだけ書くのも精一杯だったのだ。昔は読み書きできない人が沢山いたのだ。戦争が終わって、誰でも教育を受けられる、選挙に参加できる、好きな職業につける、病気になっても怖くない、乞食のいない、民主主義の社会になったのは、素晴らしいことなのだ」といったことを、ゆっくりと諭されたときの記憶が甦って驚いています。
「素晴らしい社会」
現在の目指すべき素晴らしい社会とは何なのか。
少なくとも、病人が出ると、親が子を、子が親を殺すという選択に追い込まれる社会、自殺が普通になる社会、老後の心配で頭がいっぱいなり貯金にはげみ、それを狙って詐欺が横行する社会、大人も子供もいじめが大好き、な社会、ではないことは確かではないかと思う次第です。

あれ?何故カンヌの話がこんなところに来たのでしょうか・・・・

映画に限らず、あらゆるエンターテインメント、あらゆる芸、クリエイティブ、表現、芸術、と呼ばれるもの、そしてスポーツや武道などの力が重要だとする仕事に長く従事してきました。同時に、その力によるコミュニケーションを信じています。
これは、川喜多記念映画文化財団のHPにのった最新の映画祭レポートです。
http://www.kawakita-film.or.jp/kokusai_3_2012_dauville.html
日本の様々な表現者が、世界で愛され、評されることが、日々積み重なっていることの一例を、もっと多くの人に知ってもらいたいなあと思ってリンクしました。

う~ん、なんだか、ナショナリストみたいに聞こえますね。
しかし、自分の暮らす場所が、愛と平和と敬意に満ちた場所であってほしいというのは、人類の希求でありましょう。
あら!今度は宗教者みたいになってしまいましたね~
困ったね。
何はともあれ、ちょと長すぎる本日のブログでした。

あ、被災地復興の宝くじの売り上げが1000億円を超えたのに、現地へは100億円ちょっとしか届かないという嘘か本当かわからない記事がありました(あり得るぞ!と思っていますが)。宝くじも集金マシーンのひとつですが、少なくとも購入するときは「夢」を買うマシーン。その夢への投資を、文化芸術芸能にまわす宝くじ発売は、実は私の願いのひとつです。思い出したので書いてみました。その使用におかしなことをなくするのが優先ですけど。

さて、カンヌ発表から数日遅れて、PFFの名古屋と福岡のプログラムを発表する計画です。
名古屋開催は、東京から近いということもあり、多数の監督が参加くださる予定です。是非、今必見の映画を、今ごらんください。
引き続き福岡会場へ移動する私たち。新幹線に乗る計画です。
映画評論家の相田冬二さんによると、現場に参加された『僕達急行A列車で行こう』の撮影に、劇中と同じく、マツケンはほんとに東京から博多まで新幹線で移動したそうです。九州では、あの映画に描かれた、黄色い一両だけの電車に乗って、あの無人駅に降りたいものです。そして、次の列車までの一時間、ぼーと読書。う~ん、7月だと、かなり暑そうですけどね。

2012/04/06 00:59:08

香港映画をみた

香港にいて香港映画をみるのに、何の不思議があるのか・・・と思われそうですが、近年、滞在時期に街の劇場から香港映画が消えていることが珍しくなかったのです。

香港国際映画祭にも、昨年の香港映画を一挙上映するプログラムがあるのですが、映画祭のはじまり時期に設定され、後半に参加しがちな私はずっと逃してきました。そこで、街の映画館でみようとするのですが(無茶苦茶ながら英語字幕がついての上映なので助かります)、近年はめっきり香港映画が減りまして、みるものがないという悲しい状況が続いたのでした。

さて今年は、4本あります。
残念ながら全部みるやりくりができなかったので、パン・ホーチョン監督の新作LOVE IN THE BUFFに行きました。2年前の作品、LOVE IN THE PUFFの続編。香港映画の王道、ラブロマンスコメディです。
前作では、いきなり建物内一斉禁煙になった香港で、裏通りの喫煙所が近隣のオフィスやショップの従業員たちの新たな出会いの場所になることをうまく使ったラブストーリーでした。そのときに知り合ったカップルの現在を、あれから急速に普通になった、北京あるいは上海への異動をフックに描いた作品です。
パン・ホーチョンの時代への嗅覚に、今回も「うまい!」と膝を叩くのでした。新作には、中国のスターも勿論キャスティングされ、北京の名所や独自の文化も漏れなく映画に取り込まれ、ほんとに「うまい!」の連続です。(実は私は"北京&台北食い倒れ"が趣味なので、北京の街にもちょっと親しみがあるのです)

同時に、30歳台のためのラブストーリーつくりの伝統が脈々と受け継がれる香港にも感服しました。日本にないもののひとつです。なかなか科白もニクいものが多い。この「LOVE IN THE ~」シリーズ、長く続いて欲しいなあと願ってしまいました。
*誰か映画祭上映あるいは、DVD発売いかがでしょうか?このシリーズ。

そんなこんなで、もう帰国です。
今回は、滞在が短すぎて悔いの残る毎日でした。短編も含めると500作品にのぼろうかという香港国際映画祭。会場が広く点在するため移動が手間なこと、どこにいっても冷房が効きすぎて骨まで冷えること、食べ物が美味しくて食事時間を大切にしたくなることなど、最大一日5作品みられるはずが、実はいささか難しいのが現実のこの映画祭。少し長く滞在したいなあと、また今年も思いながら終わるのでした。

2012/04/04 22:40:39

香港でカラオケ

既報のように、『恋に至る病』が香港国際映画祭Young Cinema Competitionで審査員特別賞をいただきました。今年から名称がリニューアルされたこのコンペ。昨年までは「デジタルシネマコンペティション」という名称で、その時代からほぼ毎年、何らかの作品を出品してきたPFFです。
賞は、「グランプリ」と「審査員特別賞」の2つのみ。大きさの少し違うトロフィー、少しランクの違う賞品、そして副賞として現金が少し贈られます。
今年の賞品は、Nikonのデジタルカメラセット。グランプリにはD7000、審査員特別賞にはD5100が贈られました。
8年前の『ある朝スウプは』の受賞の際には、賞品はSonyのビデオカメラ=香港仕様のPALシステムで、高橋監督がPFF事務局に寄贈してくださったのを思い出しました。また、中国映画の『牛革』とどちらがグランプリか紛糾して、最終的に2作品ともグランプリとなった異例の年でした。昨年は、『世界グッドモーニング』が、スペシャルメンションを授与されています。

このYoung Cinema Competitionのほかに、香港にはDocumentary Competition(ドキュメンタリーコンペティション), Fipresci Prize(国際批評家連盟賞), SIGNIS Award(人道賞), Short Film Competition(短編コンペティション)があります。
本年、日本映画では、他に短編グランプリを山村浩二監督『マイブリッジの糸』が獲得、人道賞のスペシャルメンションが、是枝裕和監督『奇跡』に授与されました。

表彰式のあと、会場では引き続き台湾映画「10+10」の上映が。
後ろ髪をひかれつつ、「日本のアジア映画祭できっとやるはず!」と願いを込めて映画祭ディナーに移動します。席が一緒になった香港のPR会社のOLさんと話していたら、やはり今、広東語では商売にならず、中国語と英語は必須だと。ディナーのあとは、なんと、初体験「香港でカラオケの夜」に突入。

審査員のひとりで、ハワイ映画祭のプログラマー、アンダーソン・リーさんの熱意に誘われて大人数でカラオケです。アメリカ、フランス、韓国、香港、日本と、多国籍の大グループ。部屋にトイレがついていてびっくり。そして、世界共通で盛り上がるのは、ビートルズ、U2、Queenなど。もともと外国語の曲がそれほど入っていないので、選択肢はそこそこのため、一番盛り上がりそうな唄を選べなかったりするのですが、アジアで誰でも知っていると聞いていた「昴」は、やはりすごかった。まず、日本語の歌詞の上に、ローマ字表記でルビが振られている。他にはないのでびっくり。そして、「あ~この曲知ってる」という人の多いこと!なぜか唄える人の群れに、むちゃくちゃ盛り上がるのでした。「リンダリンダリンダ」も結構いけました。
そんな私は、部屋でオリジナル鼻歌をうたうのは得意ですが、カラオケからはとても縁遠い暮らし。しかし、今回、音楽のコミュニケーション力に脱帽したのでした。
そして、かいがいしく飲み物の世話や、選曲の世話をしてくれる人がいて、映画祭スタッフかと思っていたら、The Hollywood Reporterの人だったのには驚きました。「"客に飲み物を絶やさない"という中国人気質にスイッチが入っちゃうのよね~」という姉御な感じにしびれるのでした。

これまで映画祭中盤に設定されていたコンペティションの発表が本年からは後半になり、映画祭も明日が最終日。私も、映画を観る事に集中できるのは明日のみ。明後日には帰国で、いささか焦っているところです。
香港の観客は、とにかく若い。『恋に至る病』の観客は、ほぼ全員高校生と大学生のようにみえました。30歳以上が見当たらない雰囲気なのです。この観客層が、毎年毎年入れ替わっている感じがするので、映画祭の最古参、アーティスティックディレクターのリ・チョク・トーさんに聞いてみました。

「香港は、日本のように年金や手当てが充実していないので、仕事についたら、自分の人生を支えるために少しでもお金を稼ごうとそれでいっぱいになり、映画祭に来なくなる。また、日本では大きな映画観客層であるシニア層は、香港では悠々自適という生活は獲得が難しいため、映画祭に来ない(何らかの形でずっと働いている人が多い)。
そのような環境で、映画祭は、エンターテインメントに限りのある香港では、若い人の年に一度のイベントとして盛り上げるのが使命になる。しかし、昼間に映画祭上映に集ってもらうためには、学生でも会社勤めでもない人に来場を促す必要があり、そのため、デイタイム上映の料金を、少し安く設定することをやっている。」

ただ、昨日小さい会場でみた、ドキュメンタリーコンペティションのグランプリ受賞作品『Jai Bhim Comrade』は、客席の年齢層も人種も大変多様でした。3時間に及ぶインドのカースト制に関する作品です。インド人の居住者数の少なくない香港なのに、インド人来場がひとりもないのが、この映画を物語っているところがあるのですが、子供のころは知っていたことを忘れかけてるのに愕然としたカースト制度。その歴史やプロテストを唄の力で熱く伝える場面の多さに、インドの口伝文化を目の当たりにする驚きと、戦い方の違いに対する驚きがありました。
先日は、伊集院静さんの「お父やんとオジさん」を読んで、北朝鮮と韓国が休戦状態なのだということをすっかり忘れていた自分に気づき赤面し、今回、『Jai Bhim Comrade』をみて、インドの(のみならず各国でありますが)カースト制度のことを忘れていた自分に赤面し、生活に追われて身の回りのことでいっぱいになるのって、あっけなくやってくるなあと怖く思ったのでした。

2012/03/29 01:42:29

PFL

PFLは、「ぴあフィルムライブラリー」の略称です。
PFFアワードにご応募くださった方は、「約款」という書類にサインなさってますが、この約款は、PFLにまつわるものです。PFFアワード"入選作品"は、PFLに入ることになります。
もともとは、この世にそれ一本しか存在しない8ミリフィルム作品(1970&80年代、90年代も前半は、自主映画は、ほぼ全て8ミリフィルム作品でした)の紛失を防ぐために、つくり手からお預かりして、貴重な作品を後世に残していくことを意図した映画ライブラリーです。
背景には、「自主上映会に貸して、紛失された」とか、「いつのまにかなくなっていた」、という話が珍しくなかったことがあります。
同時に、「無料」が当たり前のように起こる自主映画の上映を、少しでもつくり手に「上映料」が入るように交渉する窓口になるためでもありました。

PFLを「PFFが権利を持って行くシステム」と解釈する方をみかけますが、それは完全な間違い。権利はつくり手のもの。PFFは、一定期間、対外的な窓口になるのです。
1:作品が確実に保管される 
2:国内外の映画祭や上映会、興行など、出来るだけ多くの場所での上映を推進する 
3:煩雑な交渉ごとを代行して、制作費が少しでも還元されるチャンスを逃さないようする
ということから始まったPFLですが、デューププリントを1本つくるのも大変だった8ミリ作品と違い、デジタルが主流の現在は作品のコピーは大変に手軽。しかしその保管方法に関しては、世界的にまだ明確な方針を持てていません。デジタル作品は、商業映画も自主映画も、どちらも"保存"に関しては手探りな状況です。
制作費の潤沢にあるメジャー映画の場合、デジタル作品も、現在最も安心な「ネガフィルム」で保存されているのですが、低予算映画はデジタル素材しかない。その保存方法に、確実な答えの出る日はまだ来ないでしょうから、常に最新のフォーマットに移し変えていくしかないのではないか?と囁かれてもいます。

「デジタルは、とてもパーソナルなものなのだな、8ミリフィルムみたいな存在だな」と、ふと感じる今日この頃です。「個人の責任で保管する」という現実において。そして、35ミリフィルムは、個人では保管が難しいところで、公的なものなのだな、と思わされます。

DCP(デジタルシネマパッケージ)とか、VPF(ヴァーチャルプリントフィー:前回のブログに、間違ってVPCと書いちゃいました!失礼しました)とか、略語はその内容を表すに効果的なのかどうか、近年疑問ですが、ともかくPFLのことを改めて考え始めたのは、このDCPとVPF騒動のおかげかもしれません。

しかし、フォーマットが何に変わろうが、興行システムがどうなろうが、自主映画は、全て関係ない、とも言えます。自主映画は「映画をつくる」ということに純粋に集中できる最も自由な世界。そのつくり手が「映画」というものをどう定義するか、というところからして自由です。自由ゆえに難しいとも言えますが、「自分で自分に課題を与える」ことで整理する人も多いでしょう。
ともあれ、出来上がった作品がおもしろければそれでいい。つまり内容が全て。規制ゼロです。

自主映画のコンペティション「PFFアワード2012」の締め切りまで残りわずかとなりました。
そのPFFアワード2012入選作品発表は、7月初旬、できるだけ早くを目指しています。入選作品を上映する、第34回PFFは、東京国立近代美術館フィルムセンター大ホールにて、9月18日から28日の10日間(月曜休館)で開催が決定しました。
最終審査員や招待作品の発表も、7月初旬を目指します。

更に速報です。
震災の影響で開催決定に時間のかかった第33回PFF各地会場予定ですが、
名古屋開催は6月30日、7月1日と3日の3日間で決定しました。愛知芸術文化センターです。そして、福岡開催は、続く7月6日、7日、8日の3日間、福岡市総合図書館で決定です。プログラム決定次第お知らせします。

第33回と第34回が、同じ年に展開する珍しい一年となる今年。「いよいよ始動」という雰囲気に包まれてきた事務局です。

2012/03/26 18:59:42

神戸で爆音体験

京都でのPFF開催最終日の翌日24日に、神戸アートビレッジセンターで、爆音のモンテ・ヘルマン二本立てがありましたので、ちょっと出かけて行きました。
今回、神戸アートビレッジセンターでは、上映準備のため、前日23日を休館して音を追い込んだという太っ腹!いわゆる「映画館」ではその決断は難しく、イベントにはありがたい会場だとしみじみしました。
主宰の樋口泰人さんとも、ダグラス・サーク特集以来ゆっくりお会いしました。
今回の神戸上映をきかっけに、ゴールデンウィークには、本格的に爆音go west展開とのことで、「食べ物の美味しい関西で、爆音参加しながらゴールデンウィークを過ごすのはどうか?」と私も考えはじめています。ほんとに、食べ物天国だ。関西!

四方山話によると、これまでの体験から、音に最も拘っていると思うのは、リンチ。そして、日本の監督で他にない面白い音のつくり込みをしていることを発見したのは、相米監督だそうです。また、何度も何度も大きな音でテストを繰り返していると、それぞれの監督が、どんな風に音を考えているのかが、くっきりと見えてくると。
爆音で観ていると、もう、普通の上映に戻れないなと思う音体験です。

同時に、今、樋口さんが夢中なのがモノラルレコードだそうで、先日、仙台で行った聞き比べイヴェントは、2時間の予定が5時間になったとか・・・次回は、関西で、アナログ時代、プレスする国によって音が多少違ってくるという、その差の聞き比べの企画も実行する計画だそうで、こちらも"果てなき路"だなと、ふかく感動しました。

そして、昨日25日は、新宿にある映画大学院大学での「デジタルのミライ」と題されたシンポジウムに出席しました。
VPSが日本の興行界を震撼させてから、活発に行われているシンポジウム。私たちPFFは「映画祭」のうえ、会場がいわゆる映画館でもない場合が多いため、ちょっと別世界にいるわけですが、デジタルにつきまとう、「最新装備へのアップデート」「上映規格の統一」という問題をクリアできるシステムは、ほんとに一種類しか設定できないのか?とは思います。
多種類は無理なのか?と、私の知りたいポイントは、そこであったりするのですが、今回はそういう話には流れず、私のしたことは、PFFがデジタル時代にどう対応しているかの紹介がメインでした。

シンポジウムが正直大変苦手な私。ドン・コルレオーネがいたら「思ったことをすぐ口に出すな」と注意され、早々と始末されてしまうタイプだなと、出席するたびに思う次第です。つまり、人に自分のオピニオンを話す訓練が足りないわけです。馬鹿ってことですね、

話は戻って、私が一番懸念しているのは、「10年後にもハリウッド映画は王者か?」ということ。決して変らないものとして想定されている、ハリウッドメジャーと、そしてアメリカ。ほんとに変らず、大きな興行収入を日本にもたらしてくれるのでしょうか。多くの人の生活を支えてくれるのでしょうか?映画で食べることの基本であり続けるのでしょうか?
(あ、現在のハリウッド映画で公開間近の『ドライブ』と『スーパー・チューズデー』どちらもライアン・ゴズリングいいですよ!余談でした。)

また、大規模に変わるものは、後年のツケ、大きくないでしょうか?ほら、大型店による地元商店街の崩壊とか、森林伐採里山削りだしによる自然体系の破壊とか。原発への転換とか。
少しづつ、様子をみながら変えることはできないのかな。
DCPの上映可能で、アップデートの可能な他のシステムは他に置けないのか。
あるいは、データ上映の可能な他の方法。
たとえば、Kyoto DUの推進している、Ki-Proを使っての上映。映画祭はこちらの可能性を考えてみなくては、とも思っています。

里山で思い出しましたが、5月にPFFを開催する計画の名古屋で、県が東京在住の地主を訴えているとか。20年前に県を支える大企業が計画した700名以上の地主が持つ東京ドーム58個分の里山をテストレーシングコースにするという計画。当時は買収に失敗したものを、「公共事業」として県が買収に動き、最後に残った一人が首を縦にふらないので、裁判と。すごいな~。自動車のテストコースのために里山を潰す。20世紀に計画された「21世紀の公共事業」って、怖すぎる・・・・

切実に収入が減り、借金が増え続ける日本という国の家計。
これまでの収入あるいは収支計画を維持しようと各地で必死の行動が噴出していますから、これからもっとすごいことが出てきそうで、こりゃますます、映画は現実に負けるわ・・・・現実に追いつけないわ、と、呆然とする気持ちになるこのごろ。
フリーランスの私には、国民年金がいつのまにか多くの公務員に着服されて誰も責任をとらないことに漫画を超えた日本の不思議を感じていましたが、今回はAIJによる1458億円の年金基金の損失を厚生年金で補填という方針が出そうとか。何故そうなるのかさっぱりわからないけど、これでサラリーマンの年金も崩壊する(してる?)ことがわかりました。そして公務員の共済年金は無傷。もう、笑うしかないですね。日本の縮図ここにあり。
でも、AIJに運営させたのは、誰?
銀行預金は、郵便貯金は、誰がどう転用してるのかな?
「お金が廻ることで豊かな社会になる」という、共同幻想が破壊された現在、お金は凶器に等しいなあとほんとに暗くなるのでした。そして、こんな壊れた社会だから、一笑に付される企画のほうが、正しくミライを予言する映画であったりするのかも、とふと思うのでした。

10年後、20年後、あるいは100年後を見据えた普遍的な力を持つ映画。その登場を待つPFF。公募締め切りは31日消印有効。既に審査は始まっています。

2012/03/23 17:21:43

京都着

二年ぶりに大阪に立ち寄り、大阪駅の変化に驚いた後、京都に着いて、これまた街の様変わりに驚きながら、京都シネマのPFF開催最終日に向け、会場に向かっています。
意外に激しい雨に、革靴と折り畳み傘は失敗でした。雨のなかのご来場、取りやめにする方がいないことを祈るばかりです。

京都の街、小さなお店の経営に世代交代が起きている感じ。一度ゆっくり歩いてみたいものですが、明日は神戸に移動です。

2012/03/21 16:33:11

銀座シネパトスのイヴェント満載さに驚愕

昨日は、銀座シネパトスで開催されている森田芳光監督追悼特集の一日を使って、森田監督の自主映画『水蒸気急行』と『ライブイン茅ヶ崎』そして、当時、ぴあのイヴェントのために森田監督に監督を御願いした『劇的ドキュメントレポート'78~'79』という8ミリフィルム作品を3作品、更に、それらに続き製作された、劇場デビュー作品『の・ようなもの』も加え、合計4作品が上映されました。

朝からおよそ5時間半に渡る、この4作品の上映が終了したところで、トークイヴェントもありました。
『ライブイン茅ヶ崎』がPFF77年の入選作品だったこともあり、現在のPFFから私が、森田監督の8ミリ時代にまつわるトークに、厚顔にも登場させていただきました。
70~80年代の森田監督を存じ上げない私です。会場には、かつてのスタッフの方や、お知り合いの方が沢山おられると聞き、かなり真っ青でした。が、司会進行の樋口尚文さんが、8ミリ自主映画をつくっていた少年時代、まさに憧れの兄貴だった森田監督の姿をお話くださったこと、そして、森田監督初期3作品に助監督でついておられた金子修介監督が、突然の指名にも関わらずご登壇くださり、『メインテーマ』や『家族ゲーム』での爆笑の思い出を語ってくださったことで、盛り上がって終了しました。

実は何度かお目にかかった際の金子監督は、シャイで無口な印象でしたから、昨日は別の方をみるようでした。極め付きは、森田監督、大森一樹監督、そして石井岳龍監督という、70年代、自主映画から彗星の如く登場した監督たちのお話の中で、最近、石井監督の『生きているものはいないのか』を観た。と。
「この映画は、日本映画界の話なんだよ!「日本映画に、生きているものはいないのか」という映画なんだよ!」と、いう話に爆笑しながら、なるほどそうなのか。と、またあの映画を思い出していました。『生きているものはいないのか』。近年の日本映画に欠かすことの出来ない俳優、村上淳さんと、渋川清彦さんを見ているだけで嬉しくなるのですが、既に、染谷将太さんも日本映画の顔だなあとしみじみする作品です。未見の方は、是非。

また、そのトーク前の楽屋で、ご夫人でプロデューサーの三沢和子さんと少しお話させていただきました。この時に伺った『水蒸気急行』と『ライブイン茅ヶ崎』のエピソードが大変面白く、トークでご披露したかったのですが、話の流れで触れることができなかったので、ここに記しておければと思います。
森田監督と三沢さんが知り合ったのは、『水蒸気急行』が完成し、森田監督が全く無謀と言える自主上映会を、銀座の「ガスホール」を借りてやると決めていた時だったそうです。
通常自主上映会に考える会場キャパの10倍もあろうかという、メジャー映画の試写会に使われる「ガスホール」をどう満員にするか。そのときからプロデューサーとしての三沢さんの道は決まってしまったのかと感じたのですが、それまでJazzをやっていて、映画の興行や製作に縁のなかった三沢さん。まず、友人知人に「私が結婚すると決めた相手を見ることができますよ」と案内したと。
結果(?)上映は満席の大成功で、"無名の自主映画にガスホールが満席"と、その現象が新聞記事にもなったと。
そして、続く『ライブイン茅ヶ崎』は製作も関わられ、ヒロインのノブコさんは、妹さんが演じておられます。今回の『ライブイン茅ヶ崎』の上映に、主役のマサミ、タモツ、ノブコさんにご連絡なさったところ、マサミさんはお店を経営しておられて茅ヶ崎を離れられず、タモツさんは、映画にもあるトマト農家の収穫で忙殺されており、ノブコさんは年度末の会計に追われており、どなたも仕事で実現しなかったのでした。みるうちに、どんどんマサミとタモツが好きになる『ライブイン茅ヶ崎』。当時の思い出を伺いたかったですね。
そして、81年のデビュー作『の・ようなもの』から、ずっとプロデューサーとして森田監督を支えていらした三沢さん。「面白がる」ことの上手なおふたりの共同制作の日々をふと想像してみたりしました。

更に、この週末に公開となる『僕達急行 A列車で行こう』を撮る前に、『水蒸気急行』をご一緒に再見したお話も伺いました。「30分に編集し直したら傑作だ!」と再編集を考えていたという森田監督。35年の月日のあと、自主映画を再編集するという有り得ないことが起きていれば、これまた面白かっただろうなあ・・・・
『僕達急行 A列車で行こう』楽しみです。

というわけで、昨日は半日以上シネパトスにいたのですが、様々なイヴェントが告知されていました。
特に驚愕したのが、石井輝男監督の『盲獣VS一寸法師』の35ミリプリント上映がある!!そのトークゲストに、出演者のリリー・フランキーさんと、塚本晋也監督、手塚眞監督が登場すると。
また、今井正監督特集では、『青い山脈』『続・青い山脈』上映に際して、アメリカから杉葉子さんが来日なさると。
その他にも沢山の企画が掲示されており、スタッフの方の貢献に頭が下がると共に、どんどん映画祭がやる企画がなくなるなあという複雑な気持ちも持ちつつ、映画の力を再確認して帰途についたのでした。

2012/03/14 01:50:07

2012年ベスト10が出揃ったようです

先日の日本アカデミー賞TV放映後の夜、近所のTSUTAYAを訪れると、見事に『八日目の蝉』が全部借りられておりました。『冷たい熱帯魚』もありませんでした。テレビの伝播力健在なり・・・とふと思いました。
数々の映画ベストテンの発表も一段落した昨今。インディペンデント系映画への注目が高い、ヨコハマ映画祭、おおさか映画祭、高崎映画祭などの賞も決定し、さまざまなベストテンを並べてみると「多彩な年だなあ~」と実感しています。同時に、来年の所沢イヴェント「世界が注目する日本映画たち」ラインナップスタートだなあ、と、本年のイヴェントを2日後に控えならが(!!)思っていました。

「世界が注目する日本映画たち」は、日本国内のみならず海外でも注目の邦画を一挙上映する企画ですので、当然海外での邦画への反応も集めなくてはなりません。
以前、このブログで、「海外で有名な日本の監督は、宮崎駿と北野武、映画祭関係者が会いたいのは、黒沢清と是枝裕和という傾向がある(敬称略)」ことをご紹介しましたが、今月は、奇しくもフランスで、是枝監督の特集(フランスアジア映画祭でドキュメンタリー作品も含む全作品上映がありました)と、黒沢清監督の特集(ドービルアジア映画祭で今)が行われました。どちらも監督を招いての企画でした。フランスは監督特集の活発な国で、「いいな~」と子供のような感想が漏れます。また、5月の韓国チョンジュ映画祭では、小林政広監督と内田吐夢監督の特集を実行するそうです。小林監督も、海外で多く特集が組まれる監督です。

さて、金曜16日から始まる"週末映画祭"とでもいった「世界が注目する日本映画たち」。西武線航空公園駅にお近くの方、是非お越しください。上映7作品のみならずゲストも監督、プロデューサー、出演者と多彩ですし質疑応答タイムや、パンフレットへのサイン会も行われます。今回唯一来場不可能な是枝監督はメッセージビデオで登場いただくのですが、そのビデオは、『ふゆの獣』の内田伸輝監督が撮影くださいました!今回上映の是枝作品は『奇跡』。子供たちが"願い"をかける、その願いに心で滂沱の涙が流れた私。被災地の仮設住宅街でも感じましたが(勿論日常生活でもそうでしょうが)子供のエネルギーたるやすさまじいものがあります。子供が来るといっぺんに、場の色が変わってしまう。そんな子供の有無を言わせぬエネルギーを生かし切った奇跡のような映画『奇跡』。スクリーンで堪能いただけると嬉しいです。

そうです。あの日から一年が経ち、メディアは「復興」へと報道色を替え、政府は原発再開推進やらなんやらかんやらに動いている気配がします。「もうすっかりメジャー報道を疑っているなあ・・・」と我ながら思うのは、一斉に始まった「大地震が来る」報道を、大がかりな「現実から目をそらさせろキャンペーン」だと解釈している自分がいることです。いやいや~、書いてて我ながらこわいです~。
電気代徴収は、水(とガス)と並び「止まると困る」もののひとつとして、ものすごく安定した「全国民からの自動集金装置」ですから、その権利を手放したくない、人生設計をそこからの収入に依って居る人が、驚くほど多くの場所に、大量にいるのだと実感したこの一年。ただ今公開中の映画『TIME』になぞらえると、『発電送電からの収入』でしょうか。さて、自分の生活で電気がないと困るものは何か。もちろん、映画をみることです。あとは、PC、冷蔵庫?ガスもスイッチに電気が必要で電話もそうだから、必要ないものに変えるか?灯は18世紀に戻ってランプと蝋燭か。家庭内自転車型発電機を導入するとどのくらいまかなえるか?ダイエットも兼ねられるが、足腰動かなくなったらどうするか?とか、いつものカウントをしてみます。実は最近一番頻繁に思うのは、それはともかく「エレベーターの閉じるボタン廃止はどう?」と、「エスカレーターの片側一列乗り廃止はどう?」です。
エレベーターの「閉じる」ボタンは、ゾンビや殺人鬼やストーカーに追われた時には絶対欲しいですが、基本、要らないものでは?「開く」ボタンは優しさに沿っているけれども、「閉じる」ボタンは意地悪に近づいていかないでしょうか。エスカレーターも、あの不自然なステップを歩いて登る力があれば、普通に階段を登ればいいのではなかろうか?エスカレーターはその本来の目的通り、二列(ほとんどの場合2人幅ですね)でただ乗ってる昇降機でいいのではと思えてなりません。ほんの数秒の速さのために、無駄なストレスとエネルギー使ってる気がするエレベーター「閉じる」ボタンとエスカレーター「片側歩行専用制度」。一年前までの悪習のひとつなのではないかな~。

政治的イデオロギーや様々な常識、暗黙の所属、などが崩壊したと思うこの一年。戻るのではなく、復興や再生や刷新を願って新しい価値観を生きていくことにすんなり入れるのは、もしかしたら一年前に何も持っていなかった私たち、いわゆるフリーランスの人間や、まだ何もない若者なのかなあとやはり思ってしまったのは、先日国際空港でみた風景からでもあります。
それは推定60代なりたての夫と、推定50代中盤の妻、そして推定20代後半の娘。推定家族旅行に出発する推定裕福な日本人3名。e-ticketに慣れない夫は、妻がまとめてチェックインしたあとに手許にあるものが、従来の「搭乗券」ではないので「お前は何か間違ってる」と不機嫌になり、また妻をカウンターに並ばせる。そのなんだか理不尽に怒っている父の機嫌を「まあまあ」と(明らかに馬鹿にしながら)なだめることに終始している娘。既に疲労してカウンターから戻り「これで間違いない」と夫に報告する妻。「もうやだ~パパ~」という娘。憮然として不機嫌なままの夫。まだ旅は始まってもいないのに・・・今年一番面白い風景で、なんだかずっとその家族の姿を追いかけていた私。多分、夫は推定自分の所属する「組織」の習慣を家庭に持ち込んでいるのでありましょう。推定、部下が旅の準備をし、旅だちも、到着してからも、常に誰かが世話をする。自分の不安や不便を人に解消させることが普通と思う、推定「組織で上がっていく」ことを日常生活でも引きずるその家族の姿に「古い」とつぶやいてしまうのは、私だけではないだろうなあと感じながら、話す相手のいない一人旅を残念に思ったのでした。

「ひとりでなんでもやれ。
次に、ひとりでやれないこと、あるいは、ひとりでやらないほうがいいことを知れ。」
それが自主映画の基本ではないかと常々思う私は、その一家にビデオカメラを持たせて「映画を撮ってみれば?」と話したくなったりしました。
勿論キチガイ扱いされるのは明白ですから、話しませんけど。

あれ?なんだか話がすっかり飛んでしまいました。
本日は気分転換にまたまた『次郎長三国史』(マキノ雅弘監督)をみてしまいました。「ワッショイワッショイ」と走って、とりあえずいつも笑ってる。素晴らしいなあと、またまた惚れ惚れするのでした。

2012/03/04 03:00:00

心洗われる金曜日

「木村栄文作品みておかねば~」と、やはり金曜はオーディトリウム渋谷へ。その上映合間に打ち合わせ、などと、事務局スタッフに苦労をかけつつ、ともかく最終日は全プログラムを拝見しました。
そもそも、「テレビドキュメンタリーが劇場で上映される」ことが、画期的な出来事で、作品制作のRKB毎日放送の決断に頭が下がります。ケースバイケースで一概にここに記すのは困難ですが、スクリーンで有料でのテレビ作品の上映は「諦める方が賢い」というくらい、手間暇かかるというか、不可能に近く、映画祭上映も四苦八苦ですので、しみじみ快挙だと思うのです。

が、この木村栄文作品、「パッケージで全国各所で今後展開予定」ということを支配人に聞き、「どこかで全作みることができるのか!」と、心に希望の灯がともる次第です。このチャンス、是非多くの方に掴んでほしい。う~んと、たとえば、ゴーマニズムシリーズを読んで、教科書にない日本の歴史に気づいた方など、栄文作品必見かと思ったりしました。

また、多分、こういうテレビ作品は、今まさに現場に出ておられる方がご覧になると刺激的なのだと思うのですが、20代&30代のテレビや映画の現場スタッフは忙しくて映画館に行く時間がない!のが現実では?その厳しい現実を前に、いつも思うのは、「だからこそ、学校よりも映画館だな」と、ということです。

恐ろしことに、10代~20代前半までの映画の観貯めで、あとの20年間を乗り切るのが映画映像を仕事にする人の現実だったりします。いや、どんな仕事をする人でも、その後の人生の糧を蓄積できるのは、学生時代だと思われる。その蓄積物の中に「映画」を入れると、かなり簡単に多彩な刺激を蓄積することができると思われる。何故なら、映画の情報量は他よりずっと多いから。
そんなことを再確認した刺激的な作品群でした。

足がまだ元通りではないので、都市の「階段尽くし」がいささか辛く、出歩くのを控えている日々です。しかし「やはり出かけると色んないいことに遭遇するなあ」と実感したのは、その日に会場で知った、英語字幕翻訳者によるシンポジウムでした。
「字幕翻訳者が選ぶオールタイム外国映画ベストテン」という書籍の出版にあわせて企画されたイヴェントで、映画翻訳家協会会員が揃い、映画字幕にまつわるお話や、シンポジウムで構成されると。そこで、木村栄文プログラムのあとも、そのまま、若干枚数出るという当日券の列に並んでみたのでした。

「翻訳」という仕事、映画字幕にしろ文学にしろ、言葉を熟考なさる方の文章は面白いなあと、岸本佐知子さん、鴻巣友季子さん、太田直子さんなどなど多くの著書を通して感じていたのですが、今回のシンポジウムも、登壇者の歯切れの良さ、明確さ、ユーモア、感服しました。
告白しますと、映画祭予算が足りないとき「字幕を自分でつくってみようか・・・」と思ったことが、数度あります。思うだけで、実際の作業を考えて、とても手を出せるものではないと恥じ入ってやめるのですが、今回、改めて、プロはプロであると痛感するお話でした。

特に、皆さんの強調なさっていた(個人的解釈でまとめてしまって恐縮ですが)「脚本家はじめ、製作スタッフが何年もかけて作り上げてきたダイアログであり、物語であり、その丸ごとの結果である「映画」をどう観客に伝えるかということに心を砕いて字幕をつくる」という字幕翻訳への姿勢に、「映画」を大切にすることの神髄がすべて詰まっていることに、心洗われた次第です。
"「映画」をまるごと掴む。掴むために努力をする。そして、その映画が多くの人に伝わるために仕事をする"映画を仕事にするというのは、つまりそういうことなのだと、明確に言葉にしていただいた感じです。

ところで、映画字幕、そして、映画パンフの、他に類のない美しさ、クオリティの高さは、実は日本で高度に発達したオリジナル文化です。ここに現れるように、外国文化の伝道者である「外国映画」を大切にしている国日本なのですが、しかし、一方「日本映画」のほうの対外的なプロモーション力は非常に低い。日本映画ファンが世界各地で自主運営している日本や日本映画に特化した映画祭が、日に日に外交場所として重要度が増している、"海外の映画祭頼り"である現実は、実は切実な問題でもあるのです。

が、今それは置いておいて、美術では、もっと切実な問題が起きました。
ロンドンの大英博物館から「日本コーナー」がなくなり、アジアの一部に組み込まれる。と。
文化芸術エンターテインメント芸能スポーツを通して、人はその国に興味を持ちます。理解を深め、愛情を深め、そこに人間が住んでいることを実感し、国のイメージが固まります。その国家イメージのアピールのために、国税を使って活動している人たちがいます。国家公務員ですね。既得権の確保が仕事であるのに、失ってしまった・・・これを皮切りに、ずるずると世界各地の文化施設から日本が撤退させられていくことを、止められないで終わるのだとしたら、これはかなりの危機です。
経済で人を集められても、そこに敬意が伴うかどうかは別問題ですが、文化芸術エンターテインメント芸能スポーツには、必ず敬意が伴います。それを増やすことは、明確に「よきこと。必要。得策」なのに、何故貴重な既得権を失うのか?(個人所得の増える既得権はなぜ手放さないのか?とも書きたいところです・・・あ、書いちゃった)
コミュニケーションの改善が難しいなら、少なくともコミュニケーション場所の確保はしてほしかった・・・・

ともかく、創作物の活発な交流がますます重要になるこれからの世界です。できることをやり続けようと思います。

2012/03/02 00:39:27

3月のPFF事務局

4月の新年度に向けて、入試、入学、転校、転勤、入社、転職、転居、確定申告、いろいろ煩雑な日常に追われる3月。PFF事務局も、人の移動があり、また、「PFFアワード2012」締切を控えつつ、17日から一週間、京都シネマで「PFFin京都」の開催、16,17,18日、所沢ミューズでの「世界が注目する日本映画たち」開催、そして、20日、シネパトスでの森田芳光監督追悼特集への参加と、イヴェントが満載の3月です。

京都は、『春夏秋冬くるぐる』日原監督、『ダムライフ』北川監督、『僕らの未来』飯塚監督、『山犬』佐藤監督と、4作品の監督が駆けつけて、質疑応答を行います。
会場の京都シネマは、イヴェントやゲストの大変多い映画館ですので、スタッフの方々が監督とのトークを非常に盛り上がてくださる上に、PFFに関しては、地元の学生の方々への運営参加を促してくださるので、毎年暖かい雰囲気に包まれます。今、どんな人がどんな映画をつくっているのか、是非一度参加いただいて、自主映画の最前線に触れてくだい。そして、会場は3スクリーンを持つ映画館で、一般ロードショー作品が中心ですから、組み合わせていけば、朝から晩まで多彩に映画漬けになれる、京都シネマでのPFF開催です。

池袋や新宿から40分弱で到達する、所沢の文化施設「ミューズ」を会場にする「ミューズシネマセレクション 世界が注目する日本映画たち」も12回を数えます。昨年は震災で中止を余儀なくされましたが、本年はデジタル作品の上映も可能となり、新たなスタートを切ります。

16日(金)は、「前夜祭」として、デジテル作品のためこれまで上映を断念していた想田和弘監督の『精神』と『Peace』を上映し、想田監督と、瀬々敬久監督に対談をお願いしました。新作『演劇』も完成という想田監督。瀬々監督との対談がどう拡がっていくのか、私も楽しみです。

17日(土)と18日(日)は、5作品の上映。それぞれの作品の監督はじめ、ゲストをお迎えします。
17日『奇跡』是枝監督連続来場は新作準備で叶わず、ヴィデオメッセージでのご出演ですが、『ヘヴンズストーリー』瀬々監督は、主演のひとり、ミュージシャンの山崎ハコさんとご一緒に、前夜祭に引き続きご来場くださいます。
18日、『歓待』は、深田晃司監督に加え、アジアのミューズとして昨年の東京国際映画祭で特集も組まれた、女優でありプロデューサーの杉野希妃さんもご来場くださいます。そして、『川の底からこんにちは』は、石井裕也監督が、『海炭市叙景』は熊切和嘉監督が、(奇しくも大阪芸大の後輩先輩ですね)ご来場下さいます。

作品公開も一段落して、余裕をもって作品を振り返ることができる時期だからかもしれませんが、この所沢ミューズでのトークは、それまでにない話題が飛び出すことが多いように感じます。作品を未見の方は是非、また、再見の方も是非、この機会にタイトルにもあります「世界が注目する日本映画たち」=昨年、一昨年の国内外で話題の日本映画をご体験ください。各回とも、映画のパンフレット(売り切れている場合もあります)や、書籍などご用意して、ゲストサイン会も企画しています。

そして20日は、シネパトスの森田芳光監督追悼特集の一日をいただいて、8mm作品を監督の監修のもとデジテル化したバージョンで、『水蒸気急行』『ライブイン茅ヶ崎』『劇的ドキュメントレポート』の特別上映が。不肖私が対談に参加させていただくことになり、ただ今森田監督作品を再見致しておりますが、新たな発見に驚く日々です。

そして、3月は「PFFアワード2012」の作品審査を、ご応募いただいた作品から順に始める緊張感の走る月でもあります。また、9月の映画祭に向けて、プログラムの準備開始、そして、恒例の香港国際映画祭への参加があります。
意外にスケジュールの詰まっている3月。
しみじみ、多くの映画イヴェントから、PFFのイヴェントを選んでご来場くださる方に有難い気持ちの高まる季節です。というのも、私自身、年明けから3月はイヴェントを逃すことが重なるからです・・・

例えば、モンテ・ヘルマン見逃し確実で「24日日帰りで神戸アートビレッジセンターに爆音体験か?」と考え中。オーディトリウム渋谷での木村栄文さんの特集も本日最終でまっさおです。はたまた、いつも感嘆する、ユニフランスや、ドイツ文化センターの活発な自国映画の紹介活動、アテネフランセ文化センターでの得難い特集など、行きたい企画にどれだけ参加できているか振り返ると、恥ずかしい限りです。

ありゃ、なんだか、懺悔の時間になってしまいました・・・「映画を仕事にすると、映画をみる時間がやりくり困難になる」とはよく言われる言葉。新年度は、そんな言葉を思い出さなくていい日々にせねばと、「新しい日記帳の最初のページに書く決意」のように思うのでした。日記つけたことないんですけど・・・

2012/02/27 00:27:52

白黒映画が流行中?

タル・ベーラの『ニーチェの馬』が立ち見も出る盛況と配給会社の方から伺い、大変嬉しく思っています。
白黒映画です。
先日、フランスのセールスカンパニーの方が、「このところ白黒映画が増えている気がする」とおっしゃっていました。「ハネケの『白いリボン』の影響が大きいのかも・・・」という話でしたが、どうなのでしょうか。

数時間後に始まる米アカデミー賞表彰式で、作品賞の最有力候補と言われている『アーティスト』も白黒映画ですね。ミシェル・アザナヴィシウス監督。東京国際で意表を突くグランプリが話題だった『OSS 117 私を愛したカフェオーレ』の監督ですね。
先日、ベルリン関係で紹介した、メインコンぺのポルトガル、ミゲル・ゴメス監督作品『タブー』も白黒映画でした。『アーティスト』は未見なのですが、『タブー』は、『アーティスト』にすこ~し似ているところがあるのかもしれないな~と勝手に気になってます(が、両作品ともご覧になってらっしゃる方多いでしょうから、頓珍漢でしたらすいません)。

表彰式では、このゴメス監督、受賞したアルフレード・バウワー賞(銀熊)がご不満の様子で、プレゼンテイターのオゾン監督をちょっと困らせていましたが、その受賞スピーチで(最初に発表されたポルトガルの短編映画監督のスピーチにあった、インディペンデント映画製作状況の大変困難なポルトガルという言葉に繋げて)オリヴェイラとペドロ・コスタ、この2監督の存在の大きさを話しておられました。そのとき、日本の監督が同じような状況で先人として名前を挙げるとしたら、どの監督になるのだろうなあ・・・と考えたのを思い出しました。

さて、米アカデミー賞の発表を、日本で一番ドキドキして待っているのは、ノミネート作品を公開する関係の皆様でしょう。特に、単館系公開作品にとって、その宣伝効果は得難い大きさだと想像できます。『アーティスト』、外国語映画賞候補のイラン映画『別離』、公開中の『ピナ』(『ピナ』が長編ドキュメンタリー賞候補なのは意外ですね)などでしょうか。なんだか、私も落ち着かない気持ちになってきました・・・

イラン映画『別離』は、個人的にヒットを願っています。
イランの映画製作状況が好転することを願ってやみません。映画製作状況だけに留まらない、もっと根本的な話なんですけど・・・・
イラン映画といえば、キアロスタミ監督の日本撮影の新作。一体どんな風に「日本」が写っているのか、待ち遠しいです。

「日本」と言えば、本日はヨロヨロと新橋演舞場 中村勘太郎改め勘九郎襲名披露千秋楽へ行って参りました。
遡れば6年前の新春浅草歌舞伎『仮名手本忠臣蔵 六段目』での早野勘平が度胆を抜く素晴らしさで、その後、出来るだけ目撃してきた中村勘太郎さん。昨年3月の博多座『夏祭浪花鑑』にまたまた驚き、今回『春興鏡獅子』すごかった。長唄囃子連がこれまた背筋がざわつく素晴らしさで、「残る人生で邦楽をやる!」と思ってしまうくらい心底震えました。ジャズですね。いや、すごい。その後見を務めた中村七之助さんの『於染久松』(平成中村座1月)も大変ようございました。ありゃ。歌舞伎ブログみたいになってきた・・・
歌舞伎、いったい何からみればいいのと思う方、歌舞伎は他の伝統芸能に比べ結構選択肢が多い。おせっかいですが、まず毎年正月のみ開催される「新春浅草歌舞伎」おすすめします。若手がのびのびと演じておられること、お値段が他劇場ほど負担にならないこと、など、手軽に楽しめます。自分が、仕事柄つい「若手」「新人」に注目するからかもしれませんが・・・
この「新春浅草歌舞伎」、若手を脱すると出演がなくなる定めですので、今年は市川亀次郎さん最後の出演となり、ものすごく暴れておられ爽快でした。亀次郎から猿之助へ襲名となる舞台には、香川照之さんが出演なさるのも話題。先日放映された『贖罪』での怖さの焼きつく香川さんの舞台、目撃できたらと思っています。

え~、話を白黒映画に戻します。
ベルリンネタもこれが最後ですが、映画祭会場のあるポツダム広場には「映画博物館」があります。展示方法が世界でも群を抜くかっこよさで、一度は訪問をお薦めするのですが、内容は、カリガリ博士、マレーネ・ディートリッヒ、メトロポリスが多くを占めていて、もう少し他をみたくなります。が、ドイツ語がわかれば、アメリカに亡命した監督たちの貴重な肉筆手紙なども沢山展示されてときめきます。今回、10年ぶりに再訪したのは、別フロアに設けられている特撮コーナーをもう一度みたかったからでした。レイ・ハリーハウゼンを中心に、ギーガーのエイリアンなど、ジオラマや、ミニチュア、実物など、実に見応えのある展示だったのです。が、しかし、今年はそのフロアが消えていました!2年前に撤収され、今は、テレビ番組のコーナーに変わったということで、特撮が過去のものになったことをしみじみと知らされ、がっくり。
で、白黒映画です。
この博物館に、ムルナウ監督作『最後の人』でエミール・ヤニングスが着たホテルドアマンの制服が展示されているのです。これが、鮮やかな朱色に金のボタンとモール。
何度みても、「ほほー」と思うこの色。歌舞伎や絵画をみても思うことですが、現在に比べ、19世紀までのほうが、人々は鮮やかな色の服を纏っていたのではないかと。ビクトリア時代のイギリスで大流行したというモーヴ色など、今、着る人はめったいにいないですしね・・・
明るい色は心を浮き立たせる効果、確かにあるような気がします。と言いながら、自分も黒黒黒なのを反省・・・
かつてスタジオには、白黒フィルムに色がどう映るか研究していた方がきっといたはず。
そんな勉強をしてみようかと思っている今日この頃です。あ、邦楽もやらなくちゃだし、忙しいぞ自分!
その前に仕事です。


2012/02/24 00:00:20

危うく死ぬところでした

めったに乗らない自転車で走っていましたら、信号無視で飛び出してきた小型トラックを避けようとして、鋪道にはみ出していた民家のブロックにタイヤをとられ転倒。半身が車道に飛び出し、そこで車が来てればもう今ごろは告別式、という事故にあいました。トラックは逃げちゃったけど。
人生、一寸先は闇であります。

いろんなところを打撲したようで、湿布をべたべた貼って、テープで固定して、「フランケンシュタイン~~~~」とかいって遊んでますが、痛みが移動しながら高まるのには、ちょっと困ってます。子供の時の懐かしの「膝小僧を擦りむく」とか「肘を擦りむく」とかも体験し、「かさぶたが出来るのはいつごろかな~」とか呑気なことを言っております。(かさぶたをはがす行為、大人になってとんと経験しないですよねえ・・・)

というわけで、自宅静養中なのですが、その前にぴあで郵便物を整理していましたら、北九州市民映画祭で、キム・ギヨンの特集というチラシを送っていただいていたのをご紹介したいと思います。PFFin北九州を実行くださっていた吉武あゆみさんからのお知らせです。
門司出身の青山真治監督も参加するこの企画、ゲストのひとりに、現在東京国際映画祭「アジアの風」プログラマーの石坂健治さんがおられます。

石坂さんのことは、以前にもご紹介いたしましたが、かつて渋谷に存在した国際交流基金の「アセアン文化センター」で、映画の担当をしておられました。その後、赤坂ツインタワーに移って、ずっと、日本未紹介のアジア及びアラブ映画の紹介を続けておられ、特にアセアン文化センター時代はお仕事をご一緒するご縁の深かった方です。
キム・ギヨンを、世界で最初に再発見再上映をした人です。
気難しい監督との親交も深く、日本での特集をきっかけに、本国韓国で再発見が始まり、いよいよ1998年には、ベルリン国際映画祭で特集が組まれるという、その直前に、ご自宅の火災で監督はご夫人と共に亡くなられ、ベルリンの会場には息子さんがいらしたのを覚えています。あのときは、心底驚きました。

さて、今や、知らないもののいないキム・ギヨン。
九州では初めての上映ということですので、是非多くの方に体験いただければと思います。

今年のベルリンでは、内線前の幻のカンボジア映画を3本特別上映しました。まだ、スタジオがあり、映画産業があった時代の映画です。カナダに亡命した監督も参加なさって、40年以上を経た貴重なそれだけしかない16ミリフィルムでの一回限りの上映。映画祭というのは、映画の最新事情を見せる場所でもあり、歴史をみせる場所でもあるなあと実感する会場の雰囲気でした。石坂さんは3作品すべてご覧になったのではと予測しています。(私は1作品しか時間がとれませんでした)

ベルリンの話題を続けますと、帰国して、しみじみと「スペシャルメンションの地位があがったなあ」と考えていました。
メインコンペで、スペシャルメンションに銀熊のトロフィーが贈られたのが、まず最初の驚き。すでに、「メンション」ではなく、「賞」という扱いですね。
これは「コンペティション」というもの変化が始まっていることを示しているのかも・・・と考えはじめています。映画祭運営側にとっては、新たな課題の表出です。

あ、前回のブログでは、『グレートラビット』を日本映画と記してしまいましたが、これはフランス映画でした。失礼しました。和田監督は日本在住ですが。というわけで、受賞した日本映画はCICAE賞の『かぞくのくに』(ヤン・ヨンヒ監督)なわけですが、スペシャル・メンションの今泉さん、平林さんとも、受賞と同じっていうベルリンの見解では。
今泉さんは、夫婦揃って映画監督というのも、現代日本の映画事情をうつす面白い話ではないでしょうか?

さて、海外から戻っていつも思うのは、日本の雰囲気の不機嫌さです。
公共機関で、街で、人々の顔が、空気が、不機嫌で剣呑だなあと感じます。不安で不幸ななかで、自分だけは得をしたい、という価値観がこの国を覆っていると申しましょうか、あるいは、最少単位である家族だけは安全でいたいが他はいい、という価値観と申しましょうか、なんか、全体的に身勝手な感じ。それって、つまるところ、損な発想ではないのかなあと思います。自分と家族だけでは暮らせないからなあ...現実は。ちょっとした視野の拡大や、優しさの表出が、何かのときに自分にも得となって戻ってくると思うけど、ちょっとやってみませんかね?と言いたくなる電車の中だったりします。

成田空港からの電車で一気読みした『海にはワニがいる』は、推定9歳でアフガニスタンを脱出し、子供の力でパキスタン、イラン、トルコ、ギリシャを経て推定15歳でイタリアに政治亡命した少年の記録ですが、この話で言えば、日本はあきらかに亡命者を助ける立場の国。その感覚はしっかりあったほうがいいと、しみじみ思った『海にはワニがいる』。私は横尾忠則さんの紹介文で興味を持ち読みましたが、映画化すすんでいるそうです。

本といえば、遅ればせながら、沼田まほかる『彼女がその名を知らない鳥たち』を昨秋拝読しまして、腰が抜けました。映画化は不可能だと思いますが、近年もっともすごかった小説でした。

2012/02/19 09:27:12

ベルリンからの帰国準備中

ベルリン国際映画祭は、綺羅星の如く賞があります
日本映画は短編『グレートラビット』と長編『かぞくのくに』が受賞をし、短編『663114』と長編『聴こえてるふりをしただけ』がスペシャルメンション授与という嬉しいニュースとともに(海外の映画祭にいると、自国の報告がつい最優先になるのがおかしですね・・・・)全て賞の発表が終了し帰国準備中です。次作への意欲に火をつける効果大!の金銀の熊の授与されるメイン表彰式へ、今年も木村監督へは出席を薦めながら、実は自分ではあまり参加しておあらず、本年は3年ぶりに会場へ。構成がシンプルに軽やかになり、さくさく進行する変化を体感。メインコンペ作品はわずか2本しかみておりませんでしたので、拝見した一本である、ポルトガル作品『タブー』のアルフレードバウワー賞(革新的な映画に与えられる銀熊)しか反応ができませんでした。この監督が、独特のチャームを放つ人で、スピーチもおかしく(古臭い映画を撮ったのに、この賞で戸惑ってるそうです)、ある出演者かと思いました。機会があれば是非ご覧ください。

準備に膨大な手間隙をかけながら、開幕後はあっというまに終了へと突きすすむ、一種、「花火」のようなイベント「映画祭」を改めて感じる映画祭最終日の訪れです。
『恋に至る病』は、受賞には至りませんでしたが、3回の上映に立ち会うことができた木村監督。共通の質問もありましたが、反応がくっきりと会場によって違うことを肌で感じたことは、得がたい体験だったのではと思います。「質疑応答に慣れたころには帰国」というのも、毎年思うこと。特に本作は、ジェンダーについての興味が高いドイツと、意識せずに暮らす日本という差も、はっきり見える反応でした。

長距離のフライト機内は、映画三昧の場所にもなります。実は仕事柄、後回しになりがちなメジャー系映画を観る時間となり、ロッテルダム往復では『スペースカウボーイ』と『カンフーパンダ2』が印象に残りました。カンフーパンダのほうは、自分のカンフー映画好きという要素と(あ!今回ベルリンでは、ツイ・ハーク監督の新作を拝見できませんでした。残念!)近年のアニメーション技術への畏敬とあわさって強烈だったのですが、『スペースカウボーイ』は、まるで現代日本の縮図であるところが興味深いのでした。メジャー映画の普遍的な物語構造の強みをみるようです。宇宙船はアメリカ、エイリアンは日本の政財界の既得権所有者=新財閥と呼べるような集団、エイリアンの目的である「金」を吸い上げる装置は、あまりにも生生しく迫りました。ベルリンへの往路では、アンドリュー・ニコル監督の新作『タイム』。最近「中世の王様が捜し求めた「不老不死」は、現在でも変わらず人間の求めることなのでは?」と感じているのですが、その感じを具体化されたような映画です。不老不死という言葉は誤解をよびそうなので、「死」の不安を乗り越えるために、肉体にも精神にもお金を注ぎ込む。と言い換えたほうがよさそうです。そして、クレジットカードの種類や限度額が人の価値の尺度になる。そんな現代社会が、『タイム』では「時間」に置き換えられています。旧作『ガタカ』同様、穴だらけのゆるい映画ながら、そくそくと迫るリアリティ。こんな社会にしない選択を続けていかねばなあと感慨深いのでした。帰国便も映画との出会いが楽しみです。

・・・って、映画祭の帰りにいう科白ではないですね・・・映画祭で映画に出会えよ!と自らつっこみ。映画祭は人との出会いが大きな要素でもあり、今年の個人的な驚きは、1992年の招待作品(この年は、招待作品部門で世界で話題のインディペンデント映画をラインナップしました)『Swoon』のトム・ケイリン監督との20年ぶりの出会いでした。最初、昼食の席で一緒になったのがケイリン監督と気づかなかったうかつな私。デビュー作『Swoon』が当時ベルリンのForum部門でカリガリ賞を受賞し、本年は、テディ賞の審査員として参加と同時に、『Swoon』の特別上映があるのです。PFFでの来日後、『美くしすぎる母』の公開でも日本に行き、主演のジュリアン・ムーアが来日できなかったかわりに、記者会見ではジュリアンのさまざまな衣装をかわりに並べたそのシュールなしかし情熱ある日本の配給会社が忘れられないそうです。また、現在コロンビア大学で教鞭をとる監督は、優秀な教え子である日本人女性が果たして日本で映画を撮るチャンスがあるのかを心配しています。が、今回のベルリンでは、日本からの長編フィクション映画は、4作品全て女性監督だったことをお伝えしました。ヤンさん、今泉さん、荻上さん、木村さん。映画状況は変化しています。

2月も残り少なくなりました。3月は京都シネマでのPFF京都開催です。同時期に所沢のイベント『世界が注目する日本映画たち』もやってきます。そして、PFFアワード2012締め切りが。香港国際映画祭もはじまりますし、森田芳光監督の特集も開催されます。
学校は春休み。さまざまな場所で映画を体験いただけるとうれしいです。

2012/02/17 10:40:36

ベルリンから その2

朝は早起き、夜は遅寝というか朝寝の本格的にハードな映画祭の日々になってきました。
ベルリンは、1:会場が多い、2:作品が多い、3:ホテルが遠い と「時間調整三重苦」な映画祭。更に、パーティー族ではない私にとって、パーティーハンターの方々の体力には脱帽です。映画とミーティングと、さらにパーティーという、「三種をはしご」して廻る日々の人々に「仕事は体力が勝負なのね・・・」としみじみ感じさせられております。

今回PFFから唯一の出品作品となった『恋に至る病』は、映画祭ラインナップの中で突出したオリジナリティとフレッシュさで大好評!と、自画自賛の恥ずかしいことを書かせていただきます。質疑応答では、木村監督歌まで唄って大受けです。「シリアスな映画の多い年に当たってかえってよかったよ~!」と内心思う私でした。

ロッテルダムでは、「ブラジルと韓国が当たり年では?」という声が聞こえてましたが、ここでは、「ポルトガル?」という声が。ポルトガル。アキ・カウリスマキもポルトガルの農園で暮らしてますね。私の中では『白い街』。リスボンに一度行ってみたいと思いながらはや幾年。うつの友人が、ポルトガルの旅で回復したのも印象に残っています。中世から第二次世界大戦前まで、世界各国を勝手に植民地化していた(いる)多くの帝国(イギリス、オランダ、スペイン、ポルトガルなど)の中でも、最も落日をみている、枯れた国終わった国というイメージが、日本の参考になるのではないかと長く感じているポルトガル。一度滞在して確認してみたいものです。
『山のあなた BEYOND THE MOUNTAINS』というベルギー人の母と日本人の父を持つ監督がポルトガルで撮った中篇作品もロッテルダムの上映から引き続き話題です。もともと東京在住だった監督。ランドスケープデザイナーのお父様が、風光明媚で自給自足の可能な土地への移住を考え、日本中を探しまわる過程で、ここだ!と思った理想的な土地には、必ず原発が建てられていたことから、「もう日本はだめだ」と諦め、ヨーロッパに住処を求め、巡り合ったポルトガルに土地を求めた、という幼い時の体験を回想、確認するドキュメンタリー。日本の映画祭からの問い合わせもかなりあるそうですので、みる事の出来る日も近いと思います。

原発。
今回のベルリンは、邦画とくれば原発がらみという印象で「恋愛映画ですいません・・・」という気分になっている私たちですが、ベルリンで初めて拝見した、岩井監督の『friends after 3.11』船橋監督の『Nuclear Nation』(藤原監督の『無人地帯』は日本で拝見したのですが、こちらには音を5.1チャンネルに再編集して出品しておられることを今日知りました)は、観客の反応が興味深かったです。『friends after 3.11』は、反原発発言、活動をしている方々のインタビューを中心に構成されており、現在第2弾も製作中とのことなのですが、上映後、プロデューサーは「私もこんな活動をしています」というかたがたに囲まれ、熱い時間をすごしておられました。『Nuclear Nation』は、双葉町から埼玉の廃校に避難していらした方々をじっくり追いかけたドキュメンタリー。永遠に追いかけ続ける。完成させる時期を決めていない。というつくりかたをしている作品で、今回第一弾の作品としてまとめるきっかけとなったのは、昨年末の政府の原発事故収束宣言。上映後の質疑応答前には、現在、補償交渉の大詰めで日本を離れられない町長からのメッセージビデオも流され、真摯な雰囲気に包まれました。しかし、海外でみる福島原発事故の記録は、改めて、日本の不思議さを感じます。怒らないひとびと。責任者がみえない状況。男男男の社会。「外国で日本のドキュメンタリーをみるのは、ものすごく面白いかも・・・」と感じる体験です。

フォーラム部門の日本からのもうひとつの長編作品は、ヤン・ヨンヒ監督の初フィクション映画『かぞくのくに』。未見ですが、「最後に泣いてしまった」という声を沢山聞きました。朝鮮半島の南北分断が、ドイツの東西分断と状況が近く理解がしやすいという側面があるからか、ヤン監督はベルリンのレギュラー監督。日本公開も近い『かぞくのくに』は、キャストも魅力的でとても楽しみです。

マーケットが撤収し、いよいよ終わりが実感されてきたベルリン国際映画祭。本年から広報担当者が変わり、世界中の新聞社に8泊の宿泊招待が出たそうですし、上映は英語字幕が中心へと変化、質疑応答も英語になり、プレスは例年より賑わっている感じです。私たちは、18日の上映立会いを最後に帰国です。


2012/02/14 05:08:36

ベルリンに着きました

深夜1時羽田発全日空ボーイング787でフランクフルトに着き、ビジネスマンでいっぱいの朝6時50分発ベルリン行きに乗り換え、朝9時すぎにホテルに到着し、ものすごく早いチェックインをさせてもらいました。ボーイング787。確かに、座席やトイレ、座席画面、いろいろゆったり設計の快適なフライト。何より、「夜発って朝着く」という感覚が、ほぼ徹夜状態なのを忘れさせ、そのまま映画祭事務局に行ってもろもろの手続きができ、即普通の一日が始められるのは、すばらしい限りです。まあ、今、目が真っ赤なんですけど・・・・

おそれていた寒波も一段落し、分厚い川の氷も割れてたゆたい始めています。もう数日すると、東京並みの気温に落ち着くのではという予測。ひと安心ですが、道は凍っています。

ドイツの首都となったベルリン。年内に大型の国際空港が完成し、今までフランクフルトからのフライトが到着していた、旧西ドイツの国際空港、小さく可愛い「テーゲル空港」は廃止されますが、その新国際空港に、日本ーベルリン直行便の飛ぶ可能性はゼロだそうです。ベルリンには日本企業がぜんぜんないから。ああ残念・・・

迎えに来てくれた映画祭ドライバー氏によると、テーゲル空港の跡地は、「空港の出来る前に戻す」ということで、森に帰すそうです。東京の暗渠も元に戻して、また、船で行き来する街に戻ったらいいのになあと一瞬夢想しました。

学生だというドライバー氏から、「ベルリン映画祭何度かきたことがありますか」と聞かれ、「多分あなたの生まれたころから通ってる」と答えたら(今回22回目だったので)彼は30歳。一度映画祭事務局で働いて、また学生に戻り、今年はバイトでドライバーをしているそうです。いや〜、若く見えるドイツ人もいるんですね。明日到着する木村承子監督は、私が最初にベルリンに来たときには、まだ保育園に行ってたのでは?と思うと同時に「もしかして、ベルリンがかつて東西に分断されていたことを知らない人もいるのか?」とも。・・・まさかね・・・・
かつて東西に分断されたドイツで、ベルリンは東側の中にぽっかり飛び地のように残された西側。19世紀、森鴎外が青春を過ごしたヨーロッパ最大の都ベルリンの面影は、壁の崩壊直後、かつての東側のほうにより残されており、ネオンの輝く西と、暗く手入れされない石造りの東と、コントラストがすごかったのですが、今や、街の中心部も、おもしろいことの発信地も、全て旧東側に集中しています。その前に、今や、旧西・東を話題にしません。

まあ、ともかく、ベルリン国際映画祭は、冷戦下に自由都市ベルリンで開催されることに意義のある映画祭でもあったわけです。

そして、今年。いろいろと驚くことがあります。

フォーラム部門は、カンヌの監督週間と同じく、メインのセクションへのアンチの立場で始まりました。ですから、オフィシャルセクションというよりは、ちょっと異端。また言葉を非常に大切にしていたので、映画祭カタログも、独自に、ヴォリュームたっぷりの作品紹介や監督のメッセージなどを盛り込んで発行していました。

しかし今年から、フォーラムも、コンペやパノラマと一緒に、分厚いカラーの映画祭カタログに一挙掲載され、独自のフォーラムカタログは、e-bookとしてダウンロードする形式となりました。

これは、とても大きな変化だと思います。また、映画祭全体でチケット管理がいっそう厳しくなり、もし一度でもチケットを受け取った作品を見に来なければ、即ブラックリストにのる。そうです。ひゃ〜。カンヌより厳しい?

そして、もともとベルリン国際映画祭が展開されていた、旧西側のZOO駅周辺の再開発が急ピッチで進んでいます。かつてのコンペ作品上映会場であったZOO PALASTも、映画祭ビルディングだったEUROPE CENTOREも、大工事中。来年どんな様子になっているのか、今、全く想像がつきません。

まあ、とにかく、刻々と変化するベルリンをみていると、ヨーロッパの不況をあまり感じないのですが、全ての都市計画は何年も前のもので、着工時点で現状とそぐわなくなるのは、古今東西毎度の出来事でもあります。

さて、前回のブログで、「木村監督、映画祭のスタッフを独占できるかも?」と書きましたら、それは甘い期待で終わり、明日は、岩井俊二監督作品の「friends after 3.11」の関係者もいらっしゃるそうです(監督はこられないそうで残念ですが)。と言いながら、こちらに来てから日本映画の詳細をカタログで読んでいる私。「friends after 311」がインタビュー集であることを知り、そして、明日お越しになる方のひとりは、藤波心さんということにひとり盛り上がっているのでした。

前述のドライバー氏の父上は日本贔屓で、これまで7回日本旅行を繰り返しているそうです。車中の話題も津波後の日本は大丈夫かという心配と、日本人のメンタリティについての質問など。そのあと、映画祭事務局で話かけられたスイスのプロデューサーも津波後の回復を心配してくださり、いろいろ聞かれました。贔屓の和食屋では、日本で寿司は食べられるのか心配されました。先日、ロッテルダムの帰路のドライバーも、日本を心配してくれたことを思い出します。彼はモロッコから幼い時に一家でオランダに移住し、一番上の兄が当時医学生でそのままモロッコで医者になったと。そのお兄様が3年間癌の闘病をして先日亡くなり、その3年は、保険も効かず、モロッコでの収入では手が出ないベストの治療を受けてほしくて、二ヶ月に一回、30万円近くの送金をして破産したけど悔いがなかったことや、アメリカのがん保険が役にたたなかったこと、などの話になりました。オランダ人の妻と3歳と7歳の子供がいて、この5年くらいでオランダ人の美点が失われ、他者排除の意識が急激に高
まって、冷たい国になってきているので、モロッコに移住することを考えていること、お金が貯まり子供も手がかからなくなったら、アジア旅行をしたいが、子供をストリートに放り出すタイやフィリピンのような国は絶対に行きたくないこと、モロッコでは子供は「聖なるもの」で虐待などありえないことなど聞きました。「日本も一日一件くらい子供の虐待死のニュースがある」というと、「そんなニュース聞いたことがない!日本は家族を大切にする国だと思ってた」とものすごく驚いていました。

あるイメージが、自分たちで自分たちを幻想に追い込むことはよくあるなあと、改めて確認したくなる、「日本のイメージ」。でも、世界は世界規模で“荒んで”いっているのは確かではないかと感じます。イメージから、現実へ。311が露呈したものは、つまるところ「現実」ではないでしょうか。現実をいいものに変える、その方法を文化芸術エンターテインメントそして芸能がどう担えるか、そこに「面白さ」を提示することに知恵を絞りたいと折々の会話のたびに思います。

昨年末、メジャーで全く報道されなかった、東電会長宅前の右翼青年のハンストを取材に来たのが、フリージャーナリストと、新聞「赤旗」の記者だったというのが、私の「昨年の面白さ最高の事件」でした。イデオロギーの崩壊を如実に語るこの出来事。「面白い」ことから未来の芽がみえるような気がします。

2012/02/12 16:29:55

東欧映画、そしてチケットレス入場

昨年のタル・ベーラ『サタンタンゴ』(新作『ニーチェの馬』みてくださいね。『サタンタンゴ』を超える俳優の忍耐力に驚愕しますよ~)上映は、約20年ぶりのPFFでの東欧映画上映でした。PFFの最優先事項は「PFFアワード」。作品選定や字幕制作に膨大な予算のかかる日本未公開作品上映は予算を考えると他の映画祭に任せるしかありません。しかし、東欧映画情報は随時知りたいなあと思っていた矢先、以前、ニューヨークのジャパンソサエティで映画担当をしておられた平野共余子さんが、新宿書房のコラムにルーマニアとセルビアの映画についてお書きになっておられることを知りましたのでご紹介します。
民族の坩堝とも言えるNY。「ルーマニア映画祭」会場には、ルーマニア所縁の人だけでも多くの観客がいそうですね。そして、「英語字幕だけで上映」できれば、どんなに映画祭が組みやすかろう・・・と、やりたい特集をあれやこれやと考えるのですが、ないものねだりはしないのが大人。夢想にとどめる次第です。*昨日、『Fish Tank』と書いていて、イギリス映画も近年日本にめっきり紹介されてないことを思いました。「少女映画特集」とかもあるなあ~とも思ったのですが、考えてみると、過酷な映画が多い。少女を取り巻く世界は、とてもとても厳しいことを再確認です。余談でした。

予算削減と言えば、今年のロッテルダムは、チケットレスに踏み切って、パスホルダーは、映画祭パスに、観たい作品のデータを入れてもらう方式になりました。上映会場入り口では、バーコードでパスの情報を読み取っていくのです。そうすると何が起きるかと申しますと、自己管理しないと「どの作品をどこで何時に観る予定か忘れる」のでした。紙のチケットには、作品タイトル、会場、時間が入っていましたから、それを順番に並べて回れば確認も兼ねて一日を過ごせたのですが、パスに入ったデータを自分でみることは出来ず、あわわわわ。パスのない観客はどうするのかと言いますと、これが、プリントアウトした紙(観る作品のバーコードが入っている)をパスと同じく入り口で読み取ってもらうのですが、この紙が、A4二枚とかになってたりするのです。昨年まで(昨年参加していませんが多分一昨年までと同じはず)のロッテルダムのチケットは、5センチ×7センチくらいでしたので、今年は遥かに紙使ってますねえ・・・あ、今度はお客が紙代負担か・・・。
なんだかね、「これからはペーパーレスになる」と喧伝されていた昔が笑えるほど、現在のほうがいろんな場面で遥かに紙を使っていますよね。プリンターのインクと紙、今や巨大産業ではないでしょうか。そんな万国共通の現実を相次いでみせられたロッテルダムでした。

そしてもうベルリン国際映画祭が始まっています。
マイナス16度。ホテルの部屋にいても寒いという話が聞こえてきます。近年の異常な寒波に、ベルリンの会期変更を求める声もあがるのですが(昔は5月だった)、5月のカンヌ、8月のベネチア、2月のベルリンと、プレミア合戦のトップにいる3大映画祭ですから、その会期の変更は難しいものがあるようです。「せめて12月はどう?」と呟いてみる私でした。
一昨年まで、ロッテルダムとベルリンの間に、一週間は日本に戻ることにしていました。そこに「PFFアワード」の会議のひとつが置かれていましたから。しかしPFF会期の変わった今、その必要もないのに、長年の習慣で今年もつい一週間空けて、明日からベルリンです。しかし来年からは、ロッテルダムは後半、ベルリンは前半と、連続滞在に切り替えようと考えています。あまりの寒さに、一度帰国すると戻りたくなくなってしまうのでした。ヨーロッパに。南極探検に行くわけではないのですけど・・・
今回は、『恋に至る病』のワールドプレミアとなり、追って木村承子監督も出発します。フォーラム部門です。ここには、日本から他にも長編映画4本が招待されています。フォーラム事務局は、舞台通訳や、ゲスト担当などの対日本語関係セッティングがしっかりしており、心配なく映画祭を過ごせるのですが、ふと気付くと、他の長編作品監督は、岩井さん、藤原さん、舟橋さん、ヤンさん、みなさん言葉が堪能。もしかして、木村監督は、日本人ゲスト担当をしてくださる近津さんを一人で独占できるのかも?と、彼女の幸運に驚いているところです。近津さんは近年映画祭期間はキャビンアテンダントの仕事を休んで日本人ゲスト担当として参加くださる奇特な方なのです。

2012/02/11 22:34:33

ロッテルダム受賞3作品は似ているかもしれない

ちょっと情報として古くなってしまいましたが、ロッテルダムのコンペ、「タイガーアワード」の長編グランプリ受賞3作品(各賞約150万円の賞金)について折々考えていました。
今回、3作品とも女性監督作品だったこと、いずれも少女の視点の物語であること、親世代とのコミュニケーションがとれないこと、など、共通点の非常に多い、乱暴に申しますと「似ている」3作だったなあと思い返しています。
歌舞伎をみていると、「何故登場人物(男)はこんなにも肝心のことを話さず、思い込みで行動するのか?」と茫然とすることがあるのですが、それはそこ、お芝居。無茶なことを役者の力と、音楽、美術で強引にねじ伏せる醍醐味が歌舞伎。その思い込み&早合点の行動が、他者をどんどん巻き込んでドラマを高めて行くのが(歌舞伎も含む)「芝居」というものですが、映画の場合、お芝居とは違い、なまなましい。そして今回の、肝心のことを話さない、いえ、話せない、に近い3人のローティーンの行動は、自分自身を傷つける度合いが高い。この生き辛さは、同時に、「女の子が生きやすい世界への道のり」はまだ困難なのか、という現実を写し出してもいたのでした。
具体的に3作品を紹介しますと、ロッテルダム映画祭の映画製作支援システム「ヒューバート・バルス・ファンド」(サードワールド対象ですので日本作品は受けられません)を得て製作されたチリ作品『Thursday Till Sunday』by Dominga Sotomayorは、両親と姉、弟という4人家族のロードムービーで、さりげない描写の連続でありながら見事にサスペンスフルに構築された、地味ながら3作品の中で頭一つ達者で唸らせられる才能です。少女は、もうひとつの受賞作、中国の『Egg & Stone』by Huang Ji の主人公と同じ年頃と思われます。両作品の少女とも、透明感の高い、素晴らしいキャスティング。細いうなじ、持て余す細長い手足、言葉にできず伏せるまつげの揺れる様、目で見る前に、感じる空気に反応する体。『Egg&Stone』では、養父が彼女を妊娠させる、その事実を言わない、言えない少女とその世界が、観客に問われる作品です。そして、しみじみと悲しく「家庭内性的虐待が世界共通の問題」であることを再認識させられます。監督のパートナーであり本作の撮影監督である大塚竜治さんの名前に記憶がありましたら、08年に『LING LING's GARDEN』という中編映画でPFFアワードの一次通過をなさった方でした。大変議論された作品なのでよく覚えています。こちらも見事な撮影でした。これからの活躍の期待高まる才気溢れる北京在住のカップルです。セルビアの作品『Clip』by Maja Milosは、前記2作より数歳年上の少女が主人公で、セックスを過大評価するのが痛ましい姿としてこれでもかと迫ります。常に自分の姿をiPhoneで撮影し、セクシーショットのお手本はFacebookから。ローティーンなのにセックス+ドラッグ+酒の毎日。親はコミュニティの破壊し尽くされたセルビアで真面目に暮らしをたてていくのが精一杯で、行き場のない苛立ちをぶつけ親を傷つける子供に対峙する余裕に恵まれず、そのギャップは開くばかり。この作品は同時に、オランダ批評家賞を受賞(賞金としてオランダ語字幕をつけてオランダ配給のチャンスにつなげる)しています。インパクト大。好きな男の子にまとわりつき、いきなりフェラチオ(それも学校のトイレ)で歓心を買う。犬のように扱われ、でも最後は、『愛』へと至るハッピーエンド。今回の受賞作で唯一、賛否両論、蛇蝎のごとく嫌う人もいた作品でした。「安いポルノ映画」と吐き捨てる人、「近年のローティーンの苛立ちを描いた作品の中でもひどい出来」という人(秀作例は『Everyone Dies But Me』露2008『Fish Tank』英2009など)、「ハッピーエンドから逆算してつくられた陳腐な作品」という人、それはそれは大変。確かに、骨格は古い恋愛映画です。が、あらゆる国の人にそんなに反感を買う作品、ちょっとみたくなりませんか?
*余談ですが、コンペ作品で、性器がやたらに出てきたのは、2作品でした。1つはこれ。さあもうひとつはどの作品でしょう?・・・とか下らないことを言ってる場合ではないですね。

と3作品のことを考えていたら、岡崎京子さんの『へルター・スケルター』映画化進行中というニュースが!ざっくり言って、上に羅列した映画の世界をいち早く描いた岡崎京子。その世界が蜷川監督の手でどんな映画になるのか、あまりにも楽しみです。実は1996年、岡崎さんが事故にあわれる一週間ほど前にPFFアワード審査員のお願いをした私。「数日考える時間を」というお答えに、そろそろお返事を伺おうと考えていた矢先の仰天の出来事。それからずっと何らかの新刊が出るたびに胸が痛んできたものですが、岡崎ワールドを映画化、演劇化したいという情熱は、各地で益々高まっているのではないかと感じます。例えば劇団「口字ック」。昨年PFFを手伝ってくださった山田佳奈さんが主宰する劇団。それがご縁で遅ればせながら拝見した舞台は女子満開!満開女子をこれでもかとぶつけてどんどんあがるテンションは、爽やかさまでに達していきます。(是非一度体験を!)
女子世界が女子によって描かれることが増え続けて行くことが、世界が面白くなることに繋がる予感がするという意味において、今回のロッテルダムの結果、大したものかも思う一方、無邪気な男子映画の減少に繋がるのもちと寂しいとも思うのでした。色々な映画を観たい欲張りな場所、それが「映画祭」でもあるのでした。
・・・・うわ~、ブログにあるまじき長さになってますね・・・
ロッテルダムに戻ります。短編グランプリ3本の1本に日本の作品が選ばれたのも話題でした。牧野貴監督の『Generator』。私は残念ながら未見ですが、こちらは、PFFの名古屋会場でもある愛知芸術文化センターが「身体」をテーマに毎年製作する作品の最新作です。企画が選ばれれば、監督が予算を貰って自由に完成させるという方法で、以下のように多彩な監督による、多彩な作品があります。
http://www.aac.pref.aichi.jp/frame.html?bunjyo/original/index.html
*PFF名古屋開催は、5月を予定しています。

しかし、男女問わず、「伝えたいことを言葉にして話すという技術」の獲得って難しい。よく喋る人は、考えを隠すため、騙すために喋る場合が多々あり、疑われやすいですし、言葉は誠に厄介。昔、審査員をお願いした桃井かおりさんが、少女時代にイギリス留学から戻って日本の暮らしに馴染めず、何をどう話せばコミュニケーションできるのかわからなくなり、途方に暮れて話し方教室に通った結果、とにかく自分の考えていることを全部相手に伝えるという方法を用い始めたとおっしゃっておられましたが、帰国子女には、その方法を用いる人が少なからずいる印象があります。「あらゆる人と対等に向き合う」ということが、言葉を伝えるための第一歩では、と個人的には考えていますが、対等に向き合いたくない人も多いですし、こちらも厄介。
あ、老人の繰り言みたいになっちゃいました。

2012/02/02 07:14:04

エージェントとかセールスカンパニーとか呼ばれる会社あるいは個人があります

あっというまに帰国となりました。残念ながらJALのアムステルダム直行便が廃止されたので、10年ぶりくらいのKLM利用。機内では映画を見続けることにしているのですが、KLM(およびAir France)の映画紹介は、かなりどうでもいいマニアック、あるいは眉唾な裏話が必ずついてきて、面白いのでした。「日系航空会社の映画紹介ではあり得ないなあ・・・」と日本の真面目さをここでもまた発見する次第です。
往路は、実は「ひとりアニメ特集」をしてみましたが、機内上映ラインナップがハリウッド作品満載なのにびっくりです。「ハリウッド映画が日本ほど公開されないのかも?」と考えてみたり・・・

日本は、世界で一番各国の映画が配給・公開されている国です。映画祭のラインナップを交渉する際も、日本国内の配給会社と交渉するケースが多いので、海外の映画祭ほど、作品をハンドリングしているエージェントというか、セールスカンパニーとの交渉がないかと思われます。この「エージェント」とは、たとえば、日本作品ですと「日本以外の劇場公開、テレビ放映、映画祭出品、DVD化、リメイク」などの交渉窓口になるわけですが(日本を含む、という場合もあります)、どうしても大きな商売が優先になるのは、ビジネスとして当たり前ではあります。映画祭も、勿論、手間隙かけての効果の高い、大きな、マーケットがあるような映画祭に力が入ります。小さな映画祭は「交渉しても返事ももらえない」ということは、珍しくない話です。大きな映画祭とは集客力抜群のメガストア、小さな映画祭とは商店街の小売店みたいなものかもしれませんね、ビジネス的には。フランス、ドイツ、オランダ、イギリスなどに会社が置かれてる場合の多い、つまり、ヨーロッパで盛んな仕事です。
今、増加する日本からの放射性物質で汚染された貨物の陸揚げ拒否・返送でも話題のウラジオストック。「極東のヨーロッパ」と自分たちでも呼んでいるこの街に、「ウラジオストック映画祭」という、決して小さくない映画祭があります。コンペ部門の審査員を、桃井かおりさんや、岩井俊二さんが努めたこともある、東京から2時間半で行けるロシア=ヨーロッパです。この映画祭で昨年、日本からのコンペ作品の上映が出来ず、招待されたゲストは上映なしで帰国したという出来事がありました。フィルムの時代、人気作品のプリントの映画祭間転送がうまくいかず、ゲストの滞在期間に上映されずに終わった場に私も居合わせたことがありますが、ウラジオストックの場合は、フランスのエージェントからのデータがシステムの不具合で開かず上映できなかったのでした。何をどうしてもだめだとわかったのが、上映の2日前。すぐフランスに連絡したが、時差が8時間で向こうは深夜。つまるところ1日が消えてしまい、上映前日に電話でやりとりしながら再挑戦したが、だめで、審査員にはDVDで試写室審査に切り替えてもらい、会場は上映中止で平謝りの返金だったと、今回ミーティングした際に伺いました。
この話の教訓は「上映素材チェックは遅くとも1週間前に終わろう」ということですが、そのことに加え、時差もなく、2時間半で行ける製作国・日本にある素材で何とかならないのであろうか?という残念さ。しかし、製作者側にも「エージェントを通さなくてはならない」という契約=決まりがあり、それを破ることにかかる煩雑な交渉や、製作者&映画祭双方とも、今後の長い付き合いへの配慮からの判断であることも理解できます。同時に映画祭運営者にとっては「テープ上映が確実だ」「バックアップの用意は必須」ということの再認識でもあります。

あら?話がロッテルダムから離れてきました。
コンペ作品は無事完遂し、アイスランド、トルコ、中国、韓国(2作品。ひとつは3D!)、ギリシャ、ブラジル(2作品。ひとつは白黒シネスコ!)、ビルマ(!)、セルビア、ポーランド、タイ、ロシア、チリの最新作品をみました(日本作品は既に拝見してました)。こうしてまとめて観ると、不幸なセックスやドラッグや暴力、多いです。コミュニティの崩壊がまだ修復されないセルビアやロシアの辛さ、ひと際重いです。また、アジアって、なんだかスィートで柔らかな感じなんだなあと驚きます。そして、ヨーロッパの作品は、その作品国系のお客さんで溢れかえります。いやはや、面白いです。
*ロッテルダムには5段階評価方式の観客投票があり、上映翌日位には集計されリストアップされるのですが、コンペ作品で現在最も評価が高いのは、トルコ映画「VOICE OF MY FATHER」です。

見逃した作品も勿論沢山あります。ラウル・ルイス追悼トークや、フランスでつくられた足立正生さんのドキュメンタリーは、特に残念です。
そしてともかく帰国し、中旬からはベルリン国際映画祭に参加します。昨日ベルリンのタイムテーブルが発表され、業界人は早速スケジュール作成にはいっています。この時期、ベルリンと、アカデミー賞が話題です。


2012/01/31 17:07:52

三池人気変わらず高きロッテルダム

「ブログの頻繁な更新を実現できる」と前回言ってみたにもかかわらず、できてません。「最優先事項は映画をみること!」と決め、それが達成できるチャンスとなった今回の滞在。予想以上ハードです。が、目標のひとつの「コンペ作品の全網羅」は間もなく終了します。ロッテルダムのタイガーアワードは「世界の映画」が対象ですので、めったに観る機会のない国の作品にも遭遇でき、「世界各国で2011年に創られた新人の作品を一挙にみる」ということが、いかに刺激的で貴重な体験かをしみじみ実感しているところです。が、一方で、失敗したのは、「人と会う時間がない」。
1:映画をみる。2:人と会う。3:作品を出品する。この三つを全て同時に達成するには(そういう状況に置かれることが多いPFF)、ひとりでは無理だな~と90年代からずっと感じてきましたが、今回も同じため息です。映画をみるとは、即ち、映画の上映時間に合わせてスケジュールを決め、更に、そこで必ず約2時間を費やす必要がある。ということなのを、再認識。今回も、「ミーティングのみの日を設定し、滞在期間を長くすべきだったな・・・」と悔いています(ミーティングを集中的にこなして、映画はみない。というのは、映画祭では当たり前の仕事のやり方なのです)。同時に、見回せば「ひとりで参加する」映画祭や映画会社は、ごく少数派です。複数で滞在しないと1,2,3の同時達成は無理なのですね。映画祭のみならず、どんな仕事も、一人で出来ることに限界があるわけで、特に「時間」を要することは、どうにも工夫の仕様がない。と改めて学びます。更に、スマートフォンの普及により、メイルでのやりとりをPCでやってる場合ではなくなってますが、英語で携帯から通信するのは、ネイティブでない私には、ありえない時間がかかり気が狂う~~~~!!更に、携帯からの電話代高すぎる~~~~!!とかそんなこんなで、今回は、目標をひとつに絞り、映画をみることにまい進している次第です。同時に、一日5本平均の映画からの刺激が強すぎて、人と話していても集中力が落ちることを感じています。

と、前置きが長くなりましたが、会場でひときわ目立つ『逆転裁判』のポスター。「なんだこれは?」と思ったら、三池崇監督の新作ワールドプレミア&三池監督来場で盛り上がるロッテルダムなのでした。『殺し屋イチ』『オーディション』などで、世界中に熱狂的なファンを持つ三池監督。久方ぶりのロッテルダム登場に会場はもうそれは大騒ぎ。しかし、大量の作品を持つ監督なのに上映作品一本だけなんて勿体ないな~と思ってましたら、実は、『一命』と二本立てで、三池崇のふたつの顔、とでもいった企画が進んでいたそうなのです。が、予算削減のあおりを受けて、1本だけになってしまった、と。ああ残念!見てもらいたかったなあ『一命』・・・
"予算削減"それはいまや映画祭のサブタイトルに漏れなくついてくるとしか思えない言葉です。全く、ひとごとではありません。 で、『逆転裁判』。ゲームを映画化した奇想天外な映画で、映画祭向けとは言いがたい作品ですが、こちらの観客人気投票では、推定500本の作品の中で、現在、ベスト10にはいっており、しみじみ人気の高い三池監督です。 *おまけ(?)として、三池監督と緊張全開で食事の席にいる『東京プレイボーイクラブ』の奥田監督という珍しいツーショットを、ライターの中山治美さんからいただきましたのでご紹介します。

話かわって、コンペティションのタイガーアワード。2作目までの長編映画が対象ですから、PFF同様、監督はほぼ20代、30代です。
日本でみる機会の少ない中東、東ヨーロッパ、南米の作品など、驚かされるものが多いのですが、表現が政治的背景と切っても切れないのを実感します。数年前に、香港でルーマニア映画特集に通って以来、東欧映画の変化が気になっているのですが、今回のコンペにあったセルビアの作品から再び興味が高まり、時間がちょうどやりくりできたルーマニアのドキュメンタリーをみてみました。男女混合刑務所で、愛について取材した1時間の作品。設定そのものがあまりにも意外で、ぽかーんとしてしまいました。受刑者は私服で、女性は化粧ばっちり、アクセサリーも身に着けてます。受刑者同志のカップルが沢山いて、デートしてます。塀の外の一般人との結婚の際は、48時間の特別自由時間が与えられるので、その2日間を獲得するために、何度も離婚を重ねている夫婦がいます。なんといっても、取材者(数人)が、自由に刑務所内に入って、たっぷりインタビューや撮影をしているのです。全く不思議な1時間でした。実のところ撮影もインタビューも構成も「作品」としてのお薦めは難しいですが、未知の世界を知ったということでは、今もびっくりしています。

そして、日本映画ですが、すでに映画をつくっておられる方にはお馴染みの、フランクフルトの「NIPPON CONNECTION」のディレクター、マリオンさんから、「昨年の震災と原発事故以来、日本の若い監督たちがこれまでのエンターテインメント志向から、言いたいことを作品に織り込むという方向に転換したと聞いたけどほんとう?」と聞かれました。それがほんとうかどうか、「PFFアワード2012」に応募いただいた作品からはかるしかないので、「わからない」と答えるしかありません。マリオンも、作品探しに来日を続け10年たつわけですが、近年、日本の監督が自分の作品を自分で売り込む、プロモーション能力に長けてきたと感じるそうです。すばらしい~~~。しかし、変化がないのは、作品のクオリティの低さだと。「スクリーン上映に耐えられない音と画のクオリティの作品が多すぎるのは、なんとか意識を変えてほしい」と訴えております。
そして、「NIPPON CONNECTION」本年は、60~70年代の日本の政治的映画と、311を取り上げた映画の特集を準備中とのこと。こういった特集が日本で実現する機会はまずありませんので、参加しちゃおうかなとこっそり考えてみた私。また、311の映画は、誠に大量に生まれてきつつあるようですが、海外の映画祭関係者が一番早くみているなと思い知らされています。その中で「ダントツは、平林勇監督のアニメーション作品だ」というのは、トニー・レインズさんでした。

時差ぼけで朝4時とか5時とかに目覚めてしまう健康な生活を送っています。日本時間にすれば、午後なんですけどね・・・

2012/01/28 04:05:56

アンゲロプロスとオリンパス

ただいま、オランダ・ロッテルダム映画祭に来ています。
今回は、なんと申しましょうか、大変珍しい、そして大変残念なことに、PFF作品が招待されていないため、「一人で映画をとことんみる」という滞在に徹することとなりました。もしかしたら、初めての状況ですので、これまで一度も実現できていない「タイガーアワードノミネート作品完網羅」達成いきます!
個人的な事情で昨年連続参加記録のとまってしまったロッテルダムですが、一年ぶりの印象は「ますますフレッシュで活気ある映画祭」。皆様既にお気づきのように、写真を撮る習慣の全くない私ですので、その感じを伝えるビジュアルがなくて恐縮ですが、間違いなく、今、世界で一番「いい感じ!」そして、「21世紀らしい」映画祭だと思います。帰国までに、折々、その感じをお伝えできたらと思っています。
が、直前に聞いたテオ・アンゲロプロス監督の訃報に、まだがっくりきています。撮影現場での事故死!それも、警官の運転するバイクに撥ねられるなんて・・・実は、オリンパススキャンダルの出たときから、アンゲロプロス作品のことを頻繁に考えていました。何故なら、8年前のPFFでのアンゲロプロス特集は、オリンパスの力で実現したからです。

その体験から、私の中で、オリンパスは「表現」というものに理解ある企業のひとつです。一度お伺いした開発中製品のプレゼンテーション会場でも、『ミクロの決死隊』のようなカプセル型内視鏡や、『スターウォーズ』から始まり、さまざまな映画でおなじみのホログラムによる伝達装置などが目の前に実現しつつある様子など、忘れ難いものがありました。オリンパスのみならず、さまざまに激動する日本。「この状態を生きていくには、体調整えないとなあ~」と、正月早々胃カメラ飲んだ私は、そこでもカプセル型内視鏡を使ってみたくてオリンパスを思い出したものでした。現実には、直径1センチ弱の黒くて細くて長い蛇のような胃カメラをぐりんぐりんと飲みました。快、不快は操作する医者の技術によって差が大きく、今回は実に苦しかった。結果は、胃壁がますますひどい状態で、更に、「こういう症状の人はピロリ菌がいるんですよね~。胃がん発症者の7割はピロリ菌がいるので、薬で退治する人も多いんですよね~。でも退治できないで終わる人も結構いるんですよね~」と言いっぱなしにされまして、「脅しと薬剤師の仕事が医者の仕事みたいだな~」と改めて認識しました。ピロリ菌と共生しますけど。

変な話はやめて、ロッテルダムのタイガーアワードに戻ります。長編15作品のうち、日本からは、『東京プレイボーイクラブ』がノミネートされています。奥田監督は、昨年に引き続きのロッテルダム参加。日本公開も目前の多忙な中の長旅です。
賞の名称の「虎」。ほかにも、何らかのマスコットのある賞は多いです。バンlクーバーは「龍と虎」、ベルリンは「熊」、ロカルノは「豹」、ヴェネチアは「獅子」などなど。そして、本年から香港も、デジタルコンペティションという名前をやめて、「火の鳥」賞という名前に変わるそうです。香港映画祭発祥のきっかけとなったシネクラブに敬意を表し、その名前からとったそうです。
マスコットがあると、デザイン展開が楽しくていいなあ~と思う私ですので、PFFも何かできないか?とまた考えていました。「P」だから「パンダ」とか「ペンギン」とかいかがでしょう。どちらも白黒のデザイン展開も素敵だし、いいマスコットです。

朝九時台から上映の始まるロッテルダム。が、規則正しい生活ができるので、頻繁にブログ更新できたらと思っています。

2012/01/18 00:19:15

2月1日から公募受付を開始する予定です

思わぬ時間がかかってしまいましたが、「PFFアワード2012」公募受付を、2月1日から開始すべく、応募要項及び応募用紙の最終準備に入りました。応募締切は、変わらず3月31日当日消印有効です。こちらも、例年と同じく、作品の確実な到着のため、必ず書留郵便で発送ください&本年の3月31日は土曜日ですので、郵便局の業務時間にご注意ください。
来週、25日には、このホームページに応募要項と応募用紙をアップする計画です。
昨年まで、応募はminiDVあるいはVHSコピーをご用意いただいておりましたが、本年からはDVDフォーマットでの応募受付に変更致します。「何故これまでPFFではDVDで受付をしてこなかったのか」それは、個人作成のDVDは、再生があまりにも不安定だからです。つまり、PCでしか観ることのできないDVDが少なからず生じる=小さな画面での審査になってしまう、からです。
PFFは映画祭です。フィルムセンターをはじめとする、大きなスクリーンで作品を上映します。「映画祭上映に近い環境で審査する」ことを前提に、応募要項を決定しています。しかし、テープでの応募は日々困難が増しているこの現実に、DVDでの応募受付を始めます。

何かを生み出そうとしている「個人」は、今、この世界の希望です。
「組織のルール」が人の活力や意欲、感情、あるいは能力を壊す。「組織の利益」を行動基準にすると世界が狂う。現実をみる力が損なわれる。そんなことを改めて実感させる昨今の出来事をみていると、嘘の数字を自ら信じてしまった「大躍進」や「文化大革命」下の中国を思い出すのは私だけでしょうか?
映画のみならず、文化芸術エンターテインメントは、ウソを創ってホントを更に際立たせる装置です。そこには、言い訳の出来ない、逃げられない創作の手間暇、あるいは、肉体を酷使した実行が必要です。ウソを創るのに、嘘やごまかしは一切介入できない。だからこそ、文化芸術エンターテインメントは人に伝わります。映画のみならず、その力に度々触れているが故に、PFFは活動を続けています。
一方、ご存知のとおり、経済危機に真っ先に削られていくのは、文化芸術エンターテインメントの予算。増税や、選択肢の閉ざされた独占インフラの税金のような値上げを予告されると、1億3千万人に迫る日本の人口の「ひとりあたり1円」PFFにくれたなら、映画祭も映画製作も心配なく続けられるなあ、そしてその金額分、日本の映画文化の海外へのプロモーションや、国内での創作隆盛に貢献するがなあ・・・と妄想してしまいます。実は厳しい現実を豊かにするのは、文化芸術エンターテインメントの得意技ですが、あまり話題になりません。街の掃除や、生活インフラの整備と同列にある、人の暮らしを美しく快適にする必需品であるうえに、特に素晴らしいのは、そこには限りない選択肢があること。つまり多彩なことです。
多彩であること。それこそが豊かさ。それこそが、社会のまともさです。
今年も多彩な作品の応募を期待しています。・・・・う~ん、我ながらいささか無理な結びでした・・・
改めます。
未来の希望は個人の想像力と創造力からしか生まれないことを痛感する新年。その具体的な塊である自主映画。昨年4月1日以降に完成した自主映画であれば、全て応募可能な「PFFアワード2012」。ご応募お待ちしております。

2011/12/31 23:20:27

2012年3月「世界が注目する日本映画たち」ラインナップ決定

すでに所沢市近郊ではチラシの配布が始まっていますが、新年、3月17,18日に開催される、第12回「世界が注目する日本映画たち」。主催の所沢市と共に、PFF事務局でプログラミングを行っています。日本のみならず海外でも評判の作品を週末に一気に観る!というこの企画。会場は所沢市の総合文化センター「ミューズ」の中にある、通常、オペラやクラシックのコンサートも行われている「マーキーホール」です。
今回は、3月17日土曜日に、『奇跡』と『ヘヴンズ ストーリー』の2本。18日日曜日は、『歓待』『川の底からこんにちは』『海炭市叙景』の3本。というラインナップで決定です。
チラシ制作の段階では、ゲストが確定しておらず、追って発表とさせていただいていますが、現在のところ、『ヘヴンズ ストーリー』には、瀬々監督と主演のおひとり、山崎ハコさんが、『海炭市叙景』には、熊切監督が来場くださることが決まりました。ゲストは決定次第、所沢市のオフィシャルホームページに随時発表してまいります。
「2010年~11年に国内外で話題となり、かつ、所沢近郊の映画館で公開されていない作品」という、数ある邦画からの作品選定は、毎回、上映したい作品の山に悩まされます。更に、これまでは、35mmフィルム作品上映に限られていた会場設備に、今回からはデジタル作品も可能となり、一層困難な仕事となりました。
そこで、3月16日金曜日は、デジタル上映実現を記念する前夜祭として、『Peace』と『精神』を上映、かつ、監督の想田和弘監督をお迎えし、17&18日の上映作品に関係するゲストとの対談も予定しています。

2011年も残すところあとわずか。
新年も、映画と人との一層素晴らしい出会いをつくっていけたらと思っています。
一年間、ありがとうございました。

2011/12/27 01:51:14

やりきれない訃報の多い12月

森田芳光監督のご逝去について、整理がうまくできません。ごく身近な方にとっても、全く予期せぬ出来事だったと聞き、一層考えてしまいます。
かなしいことですが、多くの尊敬する、憧れの、お仕事をお願いしたことのある映画監督の訃報を聞いてきました。が、森田監督の場合、「自主映画の歴史上の人物がこんなに早くいなくなるわけがない・・・」という気持ちがぬぐえないのです。
「審査員という依頼は絶対に受けないことにしているけど、ほかのことだったら何でも言ってよ」とおっしゃって、かつて入選したPFFのことを気にしてくださっていました。最新作、『僕達急行 A列車で行こう』は、私が個人的に森田監督の得意技であると考える、おたくを描くことで、すごい傑作になってるのではないかと、公開を心待ちにしていた作品でした。森田監督が初めて8ミリカメラを手にしたころ「とにかく何か撮る!」と都内を様々な電車が走る姿を追いかけ、繋いだ『水蒸気急行』という、人の出ない映画をつくられています。「映画って、リズムなんだな~」と思わされる作品です。2006年、マクセルの協力で、自主映画界伝説の『ライブ・イン・茅ケ崎』と一緒に、この『水蒸気急行』を8mmフィルムからデジタル化して上映する特別プログラムをPFFで設け、上映後、監督に当時のお話などを伺いました。変わらず走っている方、という印象でした。
商業映画デヴュー作品『の・ようなもの』は、個人的に、まさに「落語家」がそこに生きている傑作だと思っています。「落語を映画化する」ということでは、現在、日活100周年記念として、デジタルリマスター版が公開中の『幕末太陽伝』の右に出るものはないかと思いますが、「落語家生活を映画化する」という点において、『の・ようなもの』は、他の追随を許さないのではなかろうか、と。独自の世界を持っている人たち、自分の好きで好きでたまらないもののある人たち、を映画にするときの森田作品を心待ちにしている私でした。偏ってますね・・・すいません。
ご自身のプロデューサーとしての活躍、そして、一緒に事務所を運営する和子夫人のプロデューサーとしての卓越した貢献、など、次代に伝えていただきたいことも沢山ある森田監督の突然の訃報は、70年代から大きく変化を始めた自主映画の歴史が、21世紀の現在、すでに充分に長い、ということを改めて私に突きつけるのでした。

2011/12/26 23:51:30

先にアップされた釜山レポートにあるように

この年末に、また風邪ひきまして寝込んでいました。迂闊です。
アップ前に記しておきたいと思っていたのですが、『ダムライフ』が釜山国際映画祭のニューカレンツコンペティションに招待された、北川監督の体験レポートがアップされています。この中にもありますが、10月に私がこのブログで記した、「受賞者とそうでない人の(表彰式入場の)ゲートが違うようだ」という北川さんからの連絡は、その場の混乱による間違いであったことがわかります。巨大な会場での導線つくり、難しい仕事です。映画祭はイベント。今回の釜山のように、巨大な会場で初めての表彰式を行うという場合の準備だけでも、どれだけの人材やリハーサルや打ち合わせが必要であろうか?と想像してしまいます。そもそも、会場が巨大であるということは、参加者の集合時間も、随分早くにする必要がありそうです。となると、仕込みは一体何時から?
つい職業病でそんなことをあれこれと・・・
しかし、新たなことに取り組むことを毎年繰り返している釜山。活力も生まれようというものです。「変わる」ことと「変わらない」ことがうまく組み合わされている状態は、理想的ですね、どんな仕事でも。「変わりたくない」という人たちの多い日本の(一部のパワーを持つ人たちだけ、と思いたいですけれど)状況をみていると、変わらないで何がいいことがあるのか、教えて欲しいなあ・・・とこの年の瀬に風邪ひいて寝ながら、しみじみ考えてしまいました。勿論、あの天災がなかったらと願いたい。その意味では、変わらないでいて欲しかった。が、世界は、この大きな犠牲のあと、賢くなれる、改良できると進むのが、人間の知性でありましょう。そもそも、年間3万人以上が自殺することが続いていた社会を「そのままがいい」と言ってはならないでしょう。個人的には、政治の中心地を福島に移すせばいいのにと思っています。江戸時代から行政は東京。もうそこに限界があるのではと。明治維新という言葉はあれど、単に人が入れ替わっただけで、制度はもしかしたら古代から現在まで千年単位で何ひとつ変わっていないみたいだなあ・・・と。東京ベースで先祖代々行ってきた行政の仕事をまるっきり変えることを意気に感じられる人が、新たに政治に参加してはどうでしょうか?守るもの、創るものは「国」で、官僚とか政治家とかの「家業」じゃないよね・・・
なんて、ここはそんなことを書くための場所ではないので、脱線してますが、首相が早稲田大学で学生たちに、TPPやら、消費税増税やらに反対する人たちの陰謀について話をしたというニュースや、外国人客接待のために国家予算が余る度に追加で買い込んだ高級ワインが47,000本たまってるとかのニュースが、泣けてくるのでした。早稲田大学にはPFFアワード入選を大学院への入学資格として扱っていただくことで、既に12名の方が学んでいます。カメラを通し人を正面から見つめる訓練を積んで来た彼、彼女らのことを思い出すと、そんな彼らに陰謀説を語る政治家・・・大学生の子供扱いされっぷりにびっくりしました。外国産ワインを買い込むセンスもしかり。海外の映画祭にお土産を持っていく場合、あるいは、来日したゲストを接待する場合、ポイントは「日本のもの」です。そこでフランスワインが登場したら、映画祭世界では笑いものだがなあ・・・政治の世界は違うのかなあ・・・いや、その前に国家予算をそんなことに・・・
余談ですが、ここ2年の私の国内外へのお土産定番は、十火の「丸」というお菓子です。毎年何か感動するお菓子をみつけてお土産に、と考えていろいろ試していまるのですが、一方で、間違いない定番というものもあります。虎屋の小さな羊羹のセットは、世界的に高い人気、はずれなしお土産と言えましょう。
食べ物の話は長くなるのでやめます。
話は戻りますが、北川さんの釜山レポートに続き、飯塚さんのバンクーバーレポート、そして、森岡さんの釜山レポートに、永野さんのバンクーバーレポート、と、年明けから順次体験レポートを掲載する予定です。2月には、最新PFFスカラシップ作品『恋に至る病』を持って木村承子監督がベルリンへ。そのレポートも引き続き・・・という計画です。ご期待ください。

2011/12/19 18:14:19

福岡で初めてのPFFスカラシップ特集

本日、園子温監督が福岡に『ヒミズ』のキャンペインに訪れておられるそうです。前作『恋の罪』公開中に、新作のキャンペイン同時展開・・・・売れっ子です。
その福岡で、年明け1月5日から、PFFスカラシップの特集が組まれることになりました。園監督の『自転車吐息』もラインナップされています。これまで21作品の製作をしてきたPFFスカラシップですが、今回、福岡では、会場となる福岡市総合図書館のキュレイターが11作品を選んでの特集です。
福岡市総合図書館は、映像のアーカイブを持ち、日本では東京国立近代美術館フィルムセンターと同じく、FIAF(国際フィルム・アーカイブ連盟)のメンバーです。特に、90年代から所蔵されているアジア映画は、宝の山と言えます。外部上映はほぼ不可能ですが、図書館内の映像ホール「シネラ」での定期的な特集上映など、収蔵作品お披露目を行っていますので、チェックなさることをおすすめします。

そんな「シネラ」でのPFF開催も、もう15年。毎回最新スカラシップ作品を紹介してきましたが、PFFスカラシップをまとめて観る事の出来る特集は、福岡初の出来事です。今回は全てフィルム上映。園監督の『自転車吐息』も、大変貴重な、この世に一本しかない、英語字幕も付いた16ミリフィルムでの上映です。先月末には、イタリアのトリノ映画祭で「園子温特集」が組まれていました。学生時代の8mm作品から最新作まで18作品を上映。およそ30年のキャリアを持つ、堂々とした巨匠なのだなあ園監督・・・・と、改めて認識です。

2011/12/16 12:34:07

『生きてるものはいないのか』を観て外に出たら、世界が違ってみえました

明日からPFFin神戸が始まります。オープニングを飾るのは「PFFアワード2011」からの2作品『春夏秋冬くるぐる』と『Recreation』です。それぞれの監督、日原さん、永野さんともご来場くださるのですが、『Recreation』は地元、神戸芸術工科大学在学中の作品ですので、教授の石井岳龍監督をお迎えして、師弟対談を企画しています。
石井監督が『突撃!博多愚連隊』でPFFに入選なさったのが1978年。33年後の今や後進を育てる側にたたれていることにしみじみするのですが、その神戸芸術工科大学の学生たちも参加したご自身の新作『生きてるものはいないのか』が、すごい。
前田司郎さんの戯曲を、前田さん自身が脚本化している『生きてるものはいないのか』。舞台は拝見しておりませんが、映画は、終わって外に出て歩き始めると、世界が全く違って見えるのです。
心底驚きました・・・・

というわけで、明日から暫く関西に滞在することとなり、本日はいささか修羅場。留守中の19日には、アップリンクで『あんたの家』上映と山川監督とジャーナリスト今井彰氏の対談が。元自衛官で気骨の人、山川公平監督が今井さんとどんなお話を展開するのか楽しみだったので残念です。また、「群青いろ」の上映会もこの週末。こちらはチケット完売という知らせをいただき、追加上映実現を祈っているところです。


2011/12/16 11:49:09

劇場デジタル化問題についての追記です。

二週間ほど前に、「デジタル化による日本における映画文化の未来について」というシンポジウムのことを書きました。既にその映像をご覧になった方も多いと思います。未見の方のために、パネラーの一人だった瀬々敬久監督が紹介なさっているものを載せておきます。『ヘヴンズ ストーリー』の公式サイトにありました。

http://ameblo.jp/heavens-story/day-20111125.html

新宿のK'sシネマで 先週まで上映していた『ヘヴンズ ストーリー』はDVD化予定がありません。できるだけ上映チャンスをつくりたいと思い、PFFが企画に参加させていただいている、所沢市主催のイベント「ミューズ シネマ・セレクション 世界が注目する日本映画たち」でも上映を致します。来年3月17日です。今回、K'sシネマでは、「ヘヴン=天」繋がりで、『天皇ごっこ』と『天使突抜六丁目』の相互割引サービスも実施したそうで、ちょっと感動してしまいました。『天使突抜六丁目』は気骨のプロダクション"シマフィルム"の贈る、京都を舞台にした一作ですが、監督の山田雅史さんのロマンチックさが色濃く出た忘れがたい作品です。京都のような古都を歩く時、こんな、どこにもない場所があるのではないか、と、ふと期待する人多いかと・・・

2011/12/01 23:41:12

ケン・ラッセルと侯孝賢と

ケン・ラッセル監督が亡くなりました。
私がPFFに初めて観客として参加したのが1987年、ケン・ラッセル監督の大特集と最新イギリス映画の特集に通いたくてでした。そして、これが、人生で映画祭の初体験でした。デレク・ジャーマン、ビル・ダグラス、アレックス・コックス、ニール・ジョーダン、デヴィッド・ヘア、ピーター・グリーナウェイなどなど。これら監督の作品上映チャンスが少なかった頃です。そして、告白します。当時「一般公募部門」と呼ばれた現在のPFFアワードが目的ではありませんでした。すいません。
しかし1987年。現在のPFFアワード応募監督のかなりが、まだ生まれていないなと思うと、大変な昔に思えます。映画祭カタログも買って今も持っています。後にPFFで仕事するなどカケラも思わなかったときでした。映画評論家の川口敦子さんのインタビューに、ケン・ラッセル監督が非常に感動していたのを覚えています。
そして、そのとき、実は、ケン・ラッセルより、多くのイギリス映画より激しいショックを受けたのが、偶然が重なって観た、侯孝賢監督の『童年往時』(原題であり、日本公開タイトルですが、PFF上映時タイトルは『阿孝の世界』でした)。そこから台湾ニューウェーブと呼ばれたあの時代を体験できたことを、しみじみ嬉しく思っています。
そして、侯孝賢監督と言えば、ナント三大陸映画祭。フランスで中国語圏の映画を積極的に紹介していた映画祭で、『フンクイの少年』(フンクイは漢字ですがうまく出ません・・・)で侯監督を高らかに世界に知らしめた映画祭です。これ、いわばチンピラ映画です。しかし、「映画の王道、それはチンピラ映画」ではないでしょうか?そのナント三大陸映画祭で『サウダーヂ』がグランプリというニュースに、改めて「チンピラ映画よ永遠に」と感慨が湧きました。
チンピラ映画の魅力、それは、「切なさ」です。断言してますけど。
そして世界に誇るチンピラ映画の本家、それは日活映画だったのではないかと。日活100周年を記念したチンピラ映画祭りをしたいくらいです。で、つい、ひとり映画祭して観てしまいました。『赤い波止場』(1958)と『紅の流れ星』(1967)二本立て。舛田利雄監督がセルフリメイクした二作です。ジャン・ギャバン主演の名作『望郷』をベースにした、東京から神戸に身を隠すチンピラの物語を、石原裕次郎(小栗旬を彷彿とさせます)が演じる『赤い波止場』そのリメイクは渡哲也(妻夫木聡を彷彿とさせます)が演じる『紅の流れ星』。10年という時の流れは、ヒロイン像を大きく変えていますし、ゴダールの『勝手にしやがれ』も導入したという『紅の流れ星』は、会話やスタイルに変化がありますが、どちらも切ないチンピラの話。あからさまな他の映画からのパクリは素晴らしいですし、あきらかに、後にこれらの作品を香港映画がパクって、更に震えるチンピラ映画を創りあげています。
映画は、盗んでなんぼだなあと、改めて思う二本立て。ただ、時の流れは映画産業の衰退も映し出して興味深いのです。『紅の流れ星』はあきらかに『赤い波止場』より低予算。60年代から映画産業の斜陽は叫ばれていたことを痛感しながら、でも今よりずっとお金あるなあと思うのでした。
この二作品をみたのは、神戸が舞台だからでもあります。
17日から始まるPFFin神戸。今回は夜の上映のみで8日間の展開。神戸には2日ほど参加しますが、その昼間に、これら2本の映画に出て来るロケ地を訪ねてみたいと思います。美術は両作品とも木村威夫さん。二作共通のロケ現場もあります。ロケから40年を超える月日が経っていますので、もう現存はしていないでしょうが、面影でもあればと期待です。
昔、映画評論家の宇田川幸洋さんが、史跡観光に行かなくても映画にすべて記録されているから、昔の暮らしは映画を観ればわかるというようなことをおっしゃってましたが、改めてそう感じる古い映画を観る喜びです。
あ、渡哲也さんといえば、東映映画ですが『仁義の墓場』これ、全人類必見。
・・・つい、映画ファンのブログ?になって失礼しました。
&ヨーロッパでは、中国語の出来る映画祭ディレクターがたくさん生まれた80年代なんだなあ・・・とふと思い出しました。

2011/11/29 01:37:17

デジタル化による日本における映画文化の未来について

と題されたシンポジウムが、フィルメックスの会期中に朝日ホール10階で開催されていました。が、迂闊にも逃した私。
その日、11階での上映が終わったあと、ロビーにアップリンクの浅井さんを囲む熱い熱気を発する人々の輪が・・・・「これは一体何?」と思いましたらば、階下で開催されたシンポジウム「デジタル化による日本における映画文化の未来について」の流れで、浅井さんがご自身の体験から、とりあえず試す価値ある、低予算で実現できる劇場のデジタル化のノウハウを引き続き伝授しておられるのだと、居合わせた利重剛監督に教えていただいた(あわわ)更に迂闊を恥じる午後でした。このシンポジウム、映像で観ることができるそうなので、これから検索してみます。
考えてみれば、PFFは現在、イベント開催会場の方々と映写技師の方々に頼ることばかり。昨年までの事務局は試写室を持っていましたので、8ミリ、16ミリ、35ミリ、デジタルと、全てのフォーマットに対応できること、スタッフも映写できること、が目標でしたが、それがなくなってから、一挙に弛緩してるのか自分?と深く反省しました。
それにしても、ノウハウを伝授する浅井さんの姿、頼もしかった。いつも「インディペンデント」という言葉が浮かんでくる方ですが、アップリンクの紹介する映画のように、ニッチなマーケットがとても重要だと改めて思う会話を、先日海外からのお客としたことを思い出します。
フィルメックスに合わせて来日した方々がいます。メイルでしかPFFとの交流のなかった方々と、そんな来日チャンスに直接お会いできるわけですが、今回は、PFF作品を頻繁に上映してくださるカナダの新しい、しかし熱心で誠実な映画祭、「新世代映画祭」のクリスさんと、『川の底からこんにちは』『ハラがコレなんで』を配給してくださるイギリスのthird window filmsの、アダムさん。「日本映画にこだわる西欧の映画人はみな友達!」という側面がありますので、やはり二人はお友達。別々のアポイントメントで始まったのに、いっしょくたになってしまいました。
アダムさんは、惚れた監督の作品をずっと紹介していくことに情熱を注いでおり、石井裕也、園子温、中島哲也、藤田容介、三木聡、といった監督を、可能な限り紹介し続けたいのだそうです。「海外で三木聡BOXを出したのはうちだけ!」と威張っていましたが、もっといろいろな監督と出会い、たくさんイギリスに紹介したいのです。
イギリスは、日本のようなレンタルビデオショップマーケットはなく、セル主流。それも、セルで一本数百円からというのですから、感覚が違います。ただし、セルの本数は、日本と同じく、メジャー系でなければ、数百本・・・それで公開とDVD販売で商売が成り立つのか?と不思議なのですが、ニッチなマーケットは手堅いとおっしゃる。『おくりびと』がめちゃコケるイギリスでは、癖の強い映画が強いのだそうです。
ただ、日本の制作会社、配給会社は、Celluloiddreams とFortissimoという、アジア系作品のセールスに強いと言われる2大エージェントはじめ、大きなところに作品を預け、高額で売ろうと狙うことが近年常識になってしまったので、彼らの商売では値段が上がりすぎて、時間をかけても、結局売れない=買えないということが起こりすぎていて、ほんとうに残念なのだと。小さいけれども、情熱ある会社に個別に対応してくれるほうが、結局はずっと得なはずなのに・・・と嘆いておられました。
とてもよくわかります。
日本映画、近年海外セールス苦戦。いえ、日本映画に限らず、小さい映画は世界中で冷えてます。
私が、出会う映画人(いや、映画祭人とか映画監督ですね、正確には)に近年よくする2つの質問があります。
Q:お国で有名な日本の監督は? A:ほぼ間違いなく、北野武と宮崎駿です。
Q:あなたが個人的に会いたい監督や、好きな映画は?A:非常に高い確率で、黒沢清と是枝裕和です。
これらBIG4の作品がどのくらいセールスに成功しているのか?となると、宮崎駿以外、楽観的な数字ではないのではないかと思われます。が、小さい売り買いをコツコツやることを覚悟すれば、意外にまだまだ開拓できる顧客がいるのではないかと、ビジネスに積極的にタッチしない私でも感じるのです。
それにしても、「好き」とか「会いたい」とかに挙がる黒沢監督と是枝監督。近年ますます、その技術の冴えにほれぼれするお二人です。黒沢監督のWOWOW作品、楽しみです。
*文中敬称略・五十音順で失礼しました

2011/11/28 05:22:33

愛?

東京フィルメックスが終了し、チケット3枚を使えず終わりました。が、これでも私にとっては成績がよい。以前、某映画祭で買い込んだ前売りを1枚しか使えずに終わったときもあったのを思い出し今更がっかりしたり、何度「当日券主義になろう」と誓ったのかも思い出したり・・・・今回はかなり慎重にスケジューリングしたつもりだったのですが、東京で仕事をしていると、どうしても仕事優先にせざるを得ない時があることを改めて痛感です。
それはともかく、一日に5作品観ることが可能なフィルメックスですが、今回は一日4作品参加が最多な日となり残念ではあるものの、多彩な映画をまとめて観ると、色々と刺激されます。
しみじみと思ったのは、「愛」。
正体の知れない、なんらかの映画への愛、映画製作への愛、が心を揺さぶるのだなあと、久方ぶりに初心に戻るようなことを感じてしまいました。そのきかっけとなったのは、『これは映画ではない』。「愛」としか言いようのないものが、そこにありました。
そこから、「愛」にも多種多彩なものがあるなあと折々考えています。たとえば、「映画愛」はたまた「自己愛」で映画は成り立つか?ということなどなど。と、頭ぐるぐるしてるときに、立川談志さんの訃報。
ご自身が落語というか、落語とイコールな存在というか、そんな稀有な方が死ぬということがあるもんか、と、多くの方がお感じになるように、私も呆然としています。そこから、ぐるぐると「では、映画監督における、映画とイコールな存在って?」と考えています。映画は、ひとりではできない創造だから、そんな存在は有り得ない、という結論も含め、ですが、それでも、そのポイントは?と。映画の技術?才能?映画への愛?敬意?畏怖?本人のチャーム?情熱?。簡単に答えが出るとも思えませんが、とにかく数日で必死にみた9作品を通して、不調な思考回路のメンテナンスも始まった感じの充実感があります。
そして、仕事と関係なく映画を観る喜び。この快感を感じることが、映画を仕事にする不幸とも言えましょう。

この週末は、随分以前にお伝えした「映画屋とその仲間たち」の4回目のボランティアバス出発でもありました。木曜夜から土曜夜までを使い、被災地で映画上映とフリーマーケットを行うのです。前回9月はPFF開催と重なり、さすがに誰も参加できなかったPFF事務局ですが、今回は3名参加です。私は東京で入稿間際の印刷物との格闘が必要で離れられませんでしたが、毎回同じ場所を訪問するこの活動、継続の力を発揮していることを参加者のお話しを伺うたびに感じています。
次回は1月、そして3月と、極寒の時期。寒さの想像がいまひとつできていないことに気づく今日この頃です。

2011/11/19 16:20:45

群青いろ作品とかエンディング・ノートとか

「群青いろ」は脚本家で監督の高橋泉さんと、俳優で監督の廣末哲万さんで構成される映像制作ユニット。2004年のPFFアワードで、それぞれの監督作品『ある朝スウプは』『さよなら さようなら』が、グランプリと準グランプリとなり、その後『ある朝スウプは』が劇場公開ヒットと同時に海外でも多くの受賞をし、一躍注目を集めました。その前もその後も、多くの作品を生むふたり。高校中退後完全に独学で映画をつくってきた二人は、最初、録音の方法がわからずサイレント映画を撮っていたとか。近年の長編作品は、PFF、東京フィルメックス、東京国際映画祭などでお披露目されてきました。ただし、「群青いろ」の作品でDVDで観ることができるのは、『ある朝スウプは』『さよなら さようなら』『14歳』のみ。他は上映の機会を逃さず観るしかありません。
そんな彼らの久方ぶりの自主上映会が決定という連絡をいただきました。12月18日午後5時から渋谷オーディトリウムにて。(最近頻繁にこのブログに登場する渋谷オーディトリウム。ものすごい数のイヴェントが行われていて、スタッフの気力体力に感服するばかりです。)昨年、東京国際映画祭でお披露目された最新作『FIT』の上映と、これまでの制作作品のダイジェスト紹介、トークショーなどで構成されるそうです。
『FIT』の東京国際映画祭上映に参加なさった方はお気づきでしょうが、あの会場で使用された英語字幕版は製作上の不備でいささか完璧な状態とは言えませんでした。が、その後ダビングをやり直し、素晴らしい状態のものが完成。ベルリンや香港での上映は大変美しい画面でした。この機会を逃すと次はいつ上映されるかみえない『FIT』。監督の廣末さんの作品を観続けている方には、驚きの新境地をみせられる渾身の力作です。

廣末さんのことを紹介していると、どうしても思い出すエピソードがあります。それは、2003年就寝中にアパートが火事にあった話。着のみ着のままで部屋を飛び出し難を逃れたものの、部屋には『ある朝スウプは』のビデオテープ(懐かしの8ミリビデオ)が入ったままのカメラが・・・・諦めるしかないと煩悶するなか、鎮火後の瓦礫の中から出てきたカメラの中身が奇跡的に無事で、PFFアワード2004に応募できた。と。嘘のような本当の話です。
そして、その火事は、階下にひとり暮らしの老婆が、電気代が払えず蝋燭の灯で暮らしていたことが発火原因でした。夜中に起きたときに灯がなければ不安です。そのために灯していたのでしょう。アパートは、『ある朝スウプは』の舞台にもなっている、一部屋と台所にトイレのみついた造り。かつては学生や新婚夫婦の生活場所として活躍していたタイプのアパートですが、1980年代後半からは、独居老人の入居が増え続けている、先日新宿で火災にあい多くの被害者を出したアパートと同じ系列の、"風呂なし低家賃"のアパートです。
1980年代からと書いたのは、橋口亮輔監督が90年代中盤まで同様のアパートで暮らしており「新規には一人暮らしの老人しか入ってこない」という話に驚いた記憶があるからです。すでにその頃から、老人の居住可能な住宅問題は始まっていたことを、改めて思い出しました。
かつては社員として生活を保障されていた「映画監督」という職業。現在ではフリーランスとして生きていくわけで、新たな立場での老後生活のサンプルケースがまだありません。ひとごとではない課題です。
また、かつては「社員」だったと同時に、「スタジオ」という職場に出勤していた映画監督。こちらも遥か昔の夢のような暮らしです。が、しかし、たまにスタジオで撮ることの出来る映画もあります。内田けんじ監督の新作は、フルセットでスタジオ撮影、35ミリ2キャメと聞き、いにしえの映画製作の日々を体験できるというだけでも感嘆しました。完成が大変楽しみです。

話がまたそれてきました。やっと拝見できた「エンディング・ノート」です。
一流大学を卒業して、一流企業に入り、役員まで務め退職し、専業主婦の妻としっかりした3人の子供と、仲のいい会話のある家庭を築き、これからゆっくりしようという矢先に末期がんが発見された父の死の準備を、末娘である砂田麻美監督が追う作品です。この一家を観ていると、とても懐かしい感じがするのです。多分、ここに「想定される日本の家庭」の象徴のような一家が登場するからではないかなと。あらゆる日本の家族のイメージ、消費者としてメーカーやメディアから想定される家庭、学校で語られる「家族」、そんな姿がここにあるなと思いました。日本では6000万人位という就労者のうち、大企業と申しますか、上場企業と申しますか、そんな職場にいるのは1200万人位だとか。この1200万人余りを前提に社会「イメージ」がつくられているのだなあと、妙に納得したのでした。「現実」は勿論違うのですが。
そして、もうひとつ、この映画ではっと気づかされたのが、「カメラを向けられることに慣れている主人公」です。監督のお父様、砂田知昭さんは、若いときは8mmカメラで、監督の麻美さんが成長されてからは彼女が常に持ち歩くビデオカメラで、膨大な映像を記録されています。記録されることが日常になっていることも、その発言が整理され、明確で、他者に向かう態度もオープンであることに繋がるのではないか?と感じられてならなくなりました。砂田知昭さんの世代では珍しい「記録される」暮らしですが、現在ではもっと頻繁に生まれています。今後の人々のメンタルが、撮られることで変化する=しているのではないかと、改めて考えはじめています。


2011/11/18 10:37:48

完売・・・それは甘美な響き

ぼやぼやしていたので、東京フィルメックスのチケット購入が駆け込みになってしまいました。平日昼間3回券の販売は一足先に終了していて、あわわわ~と涙。チケット販売の注意事項はちゃんと読まなくちゃね!と自分に注意。そして、購入中、完売回が次々告げられ、ひゃ~!と嬉しくなりました。イベントをやっていると、「完売」とか「売り切れ」ほどゾクゾクする言葉はありません。「いいな~」とうっとりしてしまいます。
完売、それは、①公開されるかどうかわからない作品。あるいは、②公開決定しているけれども、少しでも早くみたい作品。に生じがちです。PFFの場合、「PFFアワード」作品はあきらかに①なのですが、いわゆる一般映画のように完売が難しいのが現実で、毎年告知に工夫を重ねて改良を目指しています。いつか、軒並み完売!となりたい。
と「いつか」という言葉を使いながら、自分が結構長く映画祭に関わっているなあ、結構長く生きてるなあと思うことが最近ちらほらあります。
たとえば、佐藤雅子さんという方の料理本が復刻されました。「私の保存食ノート」「私の西洋料理ノート」の二冊。これは、私が少ないお小遣いをやりくりして人生で最初に買った料理の本でした。当時1,000円。復刻版は2,500円。その差に、なんだかものすごく長生きしてる感じがしてしまいました。確かロッキンオンでどなたかがこの本に触れていたので買った記憶があります。久しぶりにみてみると、当時、スパイスやら食材やらが今より遥かに入手困難だったことを思い出しました。そのあと、山のような料理本を試してきましたが、子供時代に本屋で悩んで一所懸命やりくりして買った本や物は、何度の引っ越しでも手放さないものだなあと、改めて確認したのでした。一方で、現在では料理本を読めば、おおよそその味がわかるかも・・・という料理本読み(ちょっと自慢かも)。何でも数を重ねれば、見識が生まれると信じたい、年月を重ねるほど賢く鋭くなると思いたい今日この頃。映画もたくさんみなくちゃね、と映画祭をおすすめする次第でございます。
神戸近郊の皆様、「PFFin神戸」チラシ配布が始まりました。神戸は座席指定制ではないので「パスポート」があります。毎日KAVCに通うことの可能な方には、お薦めしたいお得なチケットです。

2011/11/15 15:37:39

ベルリン・香港来日中

ベルリン国際映画祭のフォーラム部門ディレクター、クリストフ・テルへヒト氏は先月来日しましたが、今月は、パノラマ部門のディレクター、ウィーランド・シュペック氏がコンペ部門や他のセクションの候補作品ピックアップも兼ね来日です。近年、韓国、日本、台湾、中国と、アジアプログラミングの旅に同行する香港国際映画祭のプログラマー、ジェイコブ・ウォン氏も同時に作品を選びます。
PFFはベルリン国際映画祭ではフォーラム部門との縁が深く、パノラマ部門やジェネレーション部門への出品は数度しかありませんが、現在、ベルリン国際映画祭で最も長くディレクター職に就いていることになるこのパノラマ部門のウィーランド氏とは、最も長いおつきあい、と言えるかもしれません。
映画監督への道を探して、俳優としてスタートし、ミュージシャンでもあったといウィーランド氏は、自身が運営するパノラマ部門の「テディアワード」に象徴されるように、セクシャルマイノリティーの映画紹介にも力を入れています。ご本人もゲイで、パートナーと落ち着いた暮らしをしておられます。と書いていたら、10年ほど前まで、映画祭運営に携わる人には、セクシャルマイノリティーな人々が今よりずっと多かったなと、思い出しました。
ディレクターも、プログラマーも、映画祭スタッフも、配給や宣伝の方も、評論家も、マジョリティーがセクシャルマイノリティーで、マイノリティーが、ヘテロという感じですらあったような・・・ちょっとオーバーかなあ・・・いや、ほんとにそんな感じだったのですが、昨今、逆転している気がします。近年、さまざまな職業に就くチャンスが拡がっているのだと理解していますが、どうなのでしょうか。
と、そんなことを考えたのは、本年のPFFアワード入選作品『僕らの未来』の上映が、21日に精神科医の針間さんをお迎えして監督の飯塚さんとの対談つきでアップリンクファクトリーで行われると聞いたからです。
かつて、飯塚さん自身が「性同一性障害」の専門家である針間先生のカウンセリングを受けておられたということですが、今回は、針間先生から飯塚さんが作品の感想を聞く初めての時間になるかもしれないという話も企画者から伺いました。飯塚さんが映画監督としてこれからどんな作品をつくっていくのか、第一作である『僕らの未来』を目撃して、その先も多くの方が見続けてくれるきっかけになるといいなあと思っています。ひとりのつくり手の変化を見続ける人が増えること、が映画祭運営の喜びでもあり、つくり手自身の励みにもなるのではと思うのです。

話は戻りますが、ベルリンと香港のおふたりと話をしていて、劇的に増加したデジタル作品、減少した35ミリフィルム作品の話になりました。
本年は世界的に急速にデジタル化がすすみ、日本でも、待っていた約30本の候補作品中、1本しかフィルム作品がない、と。メジャー系劇場のデジタル化驀進中ですので、それに合わせて世界で一斉に起きていることなのですが、これは同時に、デジタル装備を導入できない(予算がない)アート系小劇場にとっての危機的状況にも繋がっているという話になりました。ドイツでは、既に切実な課題になっているそうです。
そして、話はどんどん飛んで行ったのですが、今、ヨーロッパでは「イタリアの若者と日本の若者が怒りを表明する日」が期待されていると。両国とも同じような経済的苦境に陥り、同じような歴史を持ち、どちらも若者がじっと黙っている。と。60年代&70年代の学生運動が激しかった日本とイタリア。どちらもその時期に公務員(機動隊とか警官とか公安とか)を大幅に雇用拡大し、昨今、その人たちの退職時期が重なりいわゆる"天下り"先創造のために、むちゃくちゃなことが展開されている。つまり「公務員最優先社会の肥大化に伴う未来ある若者への顧慮のなさ」が同じ状況だと。そういえば、イタリアと日本、うつ病患者の多さや、母親依存の高さも共通と言えないこともないか・・・など、思わずイタリアについて考えた、ドイツ・香港・日本の会話でした。
もうひとつ話が飛びますが、今回、311関係のドキュメンタリーが、少なくとも12作品完成しているということです。まだ制作中の作品もあるでしょうし、テレビ作品もあるでしょうから、きっと膨大な数生まれているのです。これらの作品を一挙上映というだけでも、1週間でも足りない企画になるのだあなあと、つい映画祭モードでカウントして驚いたのでした。


2011/11/14 00:05:30

自分のことより他人のこと

ただ今公開中の『ハラがコレなんで』(略称ハラコレ)は、言葉足らずな映画だなと、いろんな人たちの反応に触れて改めて感じています。
おしなべて、うまく自分のことを伝えることのできない人が、映画の主人公には多い。つくり手もそんな人が多い(?!)ので、おのずと言葉で語るのみではなく「伝える」工夫をしていきます。映画には、画があり、音があり、時間があり、語らずとも語るところが、他の表現との差異となるわけです。つまり、映画が「総合芸術」と呼ばれる所以でもあります。
ハラコレは9月の第33回PFFで特別上映をさせていただいたように、今、多くの方にお薦めしたい映画です。何故なら、主人公は「自分のことより他人のこと」だから。今、21世紀のキーワードは、そこにあると思うからです。
が、あまりうまく伝わらないようで、もどかしく感じているところです。未見の方も多数おられるでしょうから、漠然とした言い方になってしまいますが、常に他人のことを考えることが、ひいては自分の人生を豊かな未来に向かわせる、という単純かつ明快なこれからの世界の行方を描くことに挑戦した映画です。
この映画のエンディングから10年後、あるいは20年後、主人公は間違いなく、新たなコミュニティで、いわゆる"幸福"な日々を送っている、少しづつ、世界は豊かになっていく、と思います。が、その姿を想像できる人は、能天気な楽天家だけなのかもしれません。しかし、見えない未来の不安に脅かされ日々疲れて行くよりは、見えない未来の希望を具体化する日々のほうが、何かを生むことは間違いないでしょう。映画は、見えない何かを見せる道具。映画祭は、そこに向かう映画を、より多く紹介していける場所でありたいと思っています。
(見えない未来の不安に脅かされる日々、とは、たとえば、柔らかな脅しと化した宣伝で煽られる、将来への不安や健康への不安などが、とてもわかり易いかと。あるいは、他人と比較して自分を劣っている、遅れている、損している、と思わされる広告を浴びる、とか。ここ1,2か月でまた増えてきたような。そんなことやってる場合ではないのではいかなーという人が、映画をつくっていると思います)
ともかく、公開中のハラコレをご一見いただければ嬉しいです。幸福への近道、結構簡単だな~と。
そんなことを考えながら、今、来春の所沢での映画イベント「世界が注目する日本映画たち」ラインアップの大詰めにかかっています。対象になるのは、この1,2年、国内のみならず海外でも話題の日本映画です。チラシの制作も目前ですので、再見できるものは再見してと務めているのですが、なかなかこの時期にスクリーンでみることは難しく、DVDでの再見となる作品もあります。
数日前には、『奇跡』のDVDが発売されたので再見しておりました。ふと気づくと、この作品と『ハラコレ』の制作時期は近いのです。どちらも震災前に撮影され、その後の社会を予見しています。そして、『奇跡』も、自分のことより他人のこと。と、ちょっと強引に言ってしまえば、そんな映画です。
来春の「世界が注目する日本映画たち」は、3月16,17,18日の三日間。都内に映画を観に行くのはなかなか難しいという方々のために、一挙に必見の国際的話題作をお届けしようという企画で12回を数えます。今回からは、デジタル作品の上映も可能になり、プログラム対象作品の幅が広がったことで、傑作の山に悩む日々です。11月中にラインナップを発表し、年内にチラシを完成です。
こうして、仕事柄年々邦画を観る割合があがり続けています。今の目標は、週に最低一度は欧米作品をみに行く!アジア映画は映画祭でまとめてみる!と、中学生の目標日記みたいなブログで失礼しました。

この週末からはTOKYO FILMeX。監督自作自演の『ムサン日記』自主映画作家の皆様是非みて欲しいです。そして、特集される相米監督作品のラインナップをみていると、プロデューサーとの幸せな共犯関係をしみじみ感じます。プロデューサー志望者に是非通っていただきたいです。
と、よその映画祭宣伝してみました。
(相米作品、海外に紹介される機会少なく来ていますので、これをきっかけに変わってくるかもですね!)

2011/11/06 03:26:51

不覚にも行けなかった山形

山形国際ドキュメンタリー映画祭。前回は多忙で伺えなかったので、本年こそ!と意気込んでおりましたら、まさにそのとき風邪でダウンしたので「・・・寒いところはやめておこう・・・」とまたまた断念。そんな私に、親切にもカタログを一式送ってくださった事務局。感動して早速拝見しましたら、もう、涙、涙。悔し涙に暮れる日々です。
最大の涙は、市岡康子さんが審査員を務められると伺ったときから予想できたのに、改めてすごいテレビドキュメンタリーの特集!!!!のけぞりました。観たかったもののオンパレードです。勿論牛山さんの作品の数々.そして、実は、高倉健が壇一雄の愛したポルトガルの村を訪ねる「むかし、男ありけり」をみたかった!と、チラシを見ながら泣く土曜日。「這ってでも行け!映画祭」という声がはっきり聞こえました。
実は東京国際映画祭も、夢見た何割かしか通えていません。コンペなんて、一作品のみ、『デタッチメント』しか拝見していません。とほほ。ジェームズ・カーンが出ていること、トニー・ケイ監督がデジタルについて熱く語っていたこと、主演のエイドリアン・ブロディがエグゼクティブ・プロデューサーのひとりでもあること、などに興味を惹かれたのです。この作品、崩壊する公立高校が舞台なのですが、現役の高校教師の方はどのように捉えるのかなと思いました。早晩来るであろう日本の姿?そうではなくあって欲しいけど。
(唐突ですが、PFFが製作した『家族X』は、東京上映の際に高校生の映画鑑賞授業となる幸運に恵まれました。この作品をご覧になった高校生が、「親とちゃんと話してみよう」と思ってくれれば無茶苦茶幸せですが、まあ、それは置いといて、高校生が映画を映画館で観るチャンスは、もっと増えてほしいなと思います。)
高校生ではありませんが、大学生のつくった映画の話で(PFF関連の話ではないです)『西安の娘』『蟻の兵隊』の池谷監督が今立教大学で教えておられ、その教え子である赤崎正和さんの、『ちづる』というドキュメンタリーが話題です。監督の赤崎さんは、長く、重度の障害を持つ妹ちづるさんのことを人に話すことができなかった。が、この映画製作を通して、ご本人が変化した。これが、学校の課題を含む自主制作の存在価値でもあるなと思わされます。『ちづる』は、母という存在の奇跡に気づくことなく甘える子供の記録の部分もあるのですが、「人に話せない」という状況がなければないだけ、人生ラクだよ~ん!と、早く多くの人が開き直って欲しいなあと、しみじみ思う作品でもあります。
(「人に話せないことなんてないのだと気付くと人生ラクだよ」と大人は言おうキャンペーン!を繰り広げたいですね)
あ~、だんだん何言ってんだか~になってきましたが、別の話として、多くの映画監督が多彩な学校で教えておられることが、PFFにとって苦しくなってきています。と言うのも、応募作品のある学校で教えておられる方に、審査員を頼むことは出来ないからです。これ、予想以上に厳しい現実です。すごく困っているのですが、ふと自分を振り返って考えてみました。
海外の映画祭の審査員をお願いされたとき、そのラインナップにPFF関連の作品が入っている場合は、お断りしてきました。フェアではないから、と。が、もし、引き受けていたとして、「自分の知っている作品に、何らかの特別配慮をしたであろうか?」と問うと、「有り得ない」と即答できます。作品を作品として観る訓練は十分に出来ているからです。では、何故断るのか。それは、「そのことを理解しない人たちがいることがわかるから」としか言えないのかな.....と。つまり「あらぬ憶測をされたくない」という面倒回避の判断かと思った次第です。.同じく、PFFで審査をお願いしたい監督たちも、自分の教え子の作品がラインナップにあったとしても、そこに惑わされず審査に向かわれると思います。しかし、そこに疑いを持つ人をどうするか?これが映画祭に問われているなと、しみじみ思うのでした。
え~、どんどん話が飛んでますが、「審査は厳正。そこに裏取引はありえない」このことが映画祭世界は常識なのですが、そのことをしっかり理解してもらう努力が必要なのかと、また新たな課題です。

話は戻りまして、行けなかった山形ですが、実は審査に参加なさったアトム・エゴヤン監督とは監督が日本を去る前日に東京で、山形の東京ディレクター藤岡さんのお誘いで楽しい時間を共有できました。(監督の初期長編であり、海外への展開のきっかけともなった『ファミリー・ビューイング』の上映にかつてPFFが関係したいたことも効果あり?)奥様で監督の映画にも多数主演なさるアルシネ・カーンジャンさんも勿論ご一緒。二人合わせて何か国語喋れるの?というお二人ですから、日本語への興味、日本文化への興味も並大抵ではありません。
そんなお二人の一番印象に残るお話しは、ある国際映画祭でのエゴヤン監督のハラハラした体験。
某、超アートな映画作家の回顧展を成功させた某小さくない映画祭の話。クロージングのスピーチに登場したそのアート監督。気難しい彼にしては珍しく喜びもあらわに感謝のスピーチをなさって、それを受けて、その映画祭開催国の首相登場。締めの言葉を言うわけですが、そこで「○○監督の特集が成功して誠に嬉しく誇りに思う。○○監督には近い将来ハリウッドで大成功して大監督としてまたここに戻って来てほしい」と言ったそうな。
しーーーーーん。としちゃいますね。
エゴヤン監督は言葉がわかったので、優秀な通訳に眼で一所懸命にサインを送ったら、勿論優秀な通訳、うまくすっとばして話をまとめて「めでたしめでたし」だったと。
通訳。ほんとうに大切です。
それはともかく、少なくとも、スピーチするなら特集監督の作品を観ておくとか、資料で知識を入れとくとか、最低のマナーでは?
しかし、世界中の政治家、官僚、エスタブリッシュメントのアメリカ崇拝、度が過ぎているというかナイーブですね。呆れて誰も注意しないのが世界の衰退につながったのかなあと、大人として反省しました。
ともあれ、「一方的な片思いは未来なし。相手に追いかけてもらえる魅力をつける。」これが恋愛のテキストブックでは常識ではないでしょうか?
がんばれ恋愛道!・・・・って、そんな世界ですかね?

年内最後の都内で開催される映画祭「東京フィルメックス」開催も間近。
今度こそ、這ってでも行きます。

2011/11/04 14:22:25

お金持ちはドリーマー?

東京国際映画祭会期中は、同時に世界の映画人が東京に集合していた時期でもありました。
海外に作品を紹介する仕事の山が大きくなる日々も一段落し、今は一番胃の痛い「年明けの各国映画祭からの結果連絡待ち」の日々に入ってます。明るいニュースを近日中に発表したいものです!!
同時に、神戸のPFF開催の詳細が決定し、ただ今発表の準備中です。
今回、第33回のPFFは東京開催時期の変更に伴い、各地の開催時期も再検討。神戸12月、京都は年明け、福岡と名古屋は春になる見込みです。公共の施設は予算削減が、映画館は動員の低下が変わらず重い話題という、映画に関連する会話に、お金の苦労が入らないことは皆無な現代。「お金」ってとても大切だと思います。それを使ってできること、沢山ある。勿論PFFも資金の苦労なく運営してみたい・・・でも、「今この現実でできることをやる」のが仕事です。
映画祭の資金集めについて、海外の方法を伝授くださる方々もいます。アメリカでは「寄付」、ヨーロッパでは「公的援助」が大きいのですが、自分で昔から感じていたことを相談したりもします。たとえば、ロッテルダム映画祭の行っている「ヒューバート・バルスファンド」。サードワールドの映画作家の製作援助ファンドです。ここに、日本の監督も対象として入れてもらえないかな~という相談。無理だと知りつつですけれども。勿論、海外の映画人は、日本が驚異的に平等な国で、誰でも映画監督になるチャンスを持ち、映画人たちが世界でも珍しい生活のすべてを映画に費やし経済的に不安定な状態を続けている人たちであることを知っています。精選された一種のエリートで、それなりに経済的に恵まれている人たちが監督になるケースの高い欧州及びサードワールドの監督たちより、はるかに経済的に苦しいことを知ってます。が、国家の経済で言えば、日本はやはり高水準で援助の対象にならないのです。サードワールドは貧富の差が激しすぎて、たとえ映画に関わる人が日本の映画人より遥かに高収入でも"平均値"でぐっと下がる訳です。別の側面からみると、日本の監督はそこそこ食べて行けるから、映画に関われるという見方もされているということですが・・・国家と個人は"国際的"にはいっしょくたなのを粉砕できない無力さを感じる瞬間です。
とはいえ、別の見方をすれば、内需でそこそこ生きていける基盤を持つ日本であるとも言える訳です。
そして、世の中「お金」のために変になっていくとことに無自覚でいるのはもっと怖い。
目的があってお金が欲しいのと、「お金」それ自体が目的になるのでは、ちょっと事情が違うのは、こつこつ働いている人たちには当然わかっていること。お金を集めること、回すこと、増やすことしか興味のない世界の大金持ちの皆様は、世界が、未来が、自分たちの為のお金回収マシンだと思っているのだなあと、何度も何度もため息の出るニュースが続く毎日。少なくとも日本に於いては「大切なこととそうでないこと」がくっきりと明確になった3月のあの日からの体験があるはずなのに、まだまだ夢見る人の数は減らず、どこまで現実逃避するのかな~金持ち!(ここで"お金"から"お"をとってみる)、と心から驚愕する日々です。例えば期限の迫るTPP。一瞬PFFと紛らわしい(そんなことないか・・・)ところが更に気になるわけですが、世界経済とかグローバルとかいう言葉の元に世界を一括してコントロールしたいって、漫画か映画の中だけにしてください!です。考えれば考えるほど、『ダイハード4』か、『ターミネーター』か、が現実にやって来てますが、しかし、現実の世界に、超人ジョン・マクレーンも、ジョン・コナーも、無敵のターミネーターもいない。オソロシイ。「資産について考える合間に週に一本は映画をみて、夢想と現実の堺をちゃんとできる大人になってくれ!」という気分です。
TPPが具体的な恐怖として迫ってきたのは、昨年小さな報道がされた「ミツバチが消えている。原因不明」が気になってからです。ミツバチ。それは映画を観る人には甘美な響き。タイトルに「蜂」がある映画で忘れ難いのものは数ありますが、エリセの『ミツバチのささやき』アンゲロプロスの『蜂の旅人』は誰でも思い出すのでは?そして、花を追って旅する養蜂家の暮らしにイマジネーションの刺激されないクエイターはいないでしょう。(昔の漫画でちばてつやの名作「風のように」もありますね)その蜂が消える。なにごとか?とニュースを追っていましたら、ヴェトナムで使用された枯葉剤でも有名なモンサント社の殺虫剤ネオニコチノイドにより蜂の免疫不全が起こり、中枢神経と方向感覚の麻痺した蜂が帰巣できなくなった結果だと。そして、モンサント社はTPPをとってもとっても推進運動中とか。と、具体的な会社名を挙げる性格ではないこのブログなのに、なんという場違いなことをしている私。でも、こんな話って、『ターミネーター』を思い起こさせませんか?
まあ、現実が映画よりすごいので、映画産業衰退中でもあるわけですね。がっくし。
そういえば、先日の「ディズニーワールドに行きたかったので資金づくりに子供を100万円で売った」というアメリカの母親の話も仰天でしたね~。ぱ~っと『ミリオンダラーベイビー』のヒラリー・スワンク扮するマギーの母を思い出しました。(マーゴ・マーティンデイル。すごい女優です。)と言いながら、「ディズニーワールドってそんなに素晴らしいところなの?初体験しなくちゃ~」と思わされるところもあり、危険です。「あれ?なんだこれうまい宣伝だったの?」とかね。
『トゥモローワールド』『ソイレントグリーン』『日本沈没』『ターミネーター』『ダイハード4』思い出しすぎて気持ち悪いくらいの毎日です。
で、今週末公開作品では『ハラがコレなんで』お薦めです。いろんなことから解放される話。監督はまだ20代。これからの時代は1980年代生まれに委ねたほうが賢くない?密かにそう感じる人たち多くないですか?いやま~「ハリウッドチャンネル」とか読んでいると、とほほな20代も山盛りではありますが・・・

*有名なブログですが一応ご紹介です。
「サルでもわかるTPP」

2011/10/24 01:20:17

東京国際映画祭が始まりました

先週、金曜夜は、激しい雨に驚きながら、翌日の初日の準備に忙殺されているであろう東京国際映画祭(TIFF)のことを考えていました。現場の施工はじめ、大がかりな対策が必要な大規模な映画祭ですから、無事好天で迎えた初日の安心はいかばかりかと思います。他人事ながら「よかったな~」と。天気が気になる仕事、それは映画祭です。いや、殆どの仕事はそうなんですけど・・・("好天"と"荒天"は一字違いで同じ音なのが皮肉ですね)
土曜日は『家族X』トークイベントがあったりで、まだ参加できていないTIFF。折角の都内での映画祭ですから、会期中できるだけ多くの映画を観たいものだと考え、遅ればせながらプログラム検討に入っています。(また今年も出足が遅れました)
TIFFでは、26日13:20から、TOHOシネマズScreen6にて、PFFアワードグランプリ作品『ダムライフ』の特別上映があります。その上映前のシンポジウムでは、昨年の「日本映画・ある視点」部門の作品賞を受賞した『歓待』のプロデューサーを迎え、その後の作品展開についてじっくりお話を伺うそうです。昨年は"自主映画"というテーマのもと、私もシンポジウムに参加したこともあり「日本映画・ある視点」部門の作品は全て拝見したのですが、『歓待』傑作です。このブログをお読みの方で、多分未見の方はおられないとは思いますが、近年の日本映画で、国内外で素晴らしく評判となった作品のひとつですので、世界展開を目指す方々には参考になるお話が聞けるのではないでしょうか?
また、本日、19:00からは、六本木アカデミーヒルズ49オーディトリアムにて、「海外映画祭プログラマーサミット」が開かれるそうです。「ユニジャパンエンターテインメントフォーラム2011」の一環です。二時間に渡り、日本映画を頻繁に招待する海外映画祭のプログラマー5名が日本映画について話をするそうです。
そもそも、直前に開催される釜山国際映画祭に参加して、東京国際映画祭までの日々を近隣国での作品探しに使う、という<韓国・日本を含むアジアの旅>を設定するプログラマーは少なくありません。こんな企画がもっと増えるとパネラーにとっても経済的に助かる、お互いハッピーな企画だなあと思いました。今回のパネラーには、ベルリン国際映画祭のフォーラム部門ディレクター、ロッテルダム映画祭のアジア・アフリカ担当プログラマーも。どちらもPFF作品を長年招いてくださっている映画祭ですが、開催時期の近い映画祭ですので、近年はプレミア合戦がヒートアップしており、どちらにどの作品を観ていただくか、私の悩みのひとつになっています。
あるパネラーに「今回のサミットでは"共存共栄"をテーマにどう作品を分け合うかを話しあうのはどうか?」と冗談を言ってみましたら、「まず私の映画祭が欲しいものをとるので、残りをみなさんで分けるのはどうですか?という話になるだろうねえ~」と、予想どおりの冗談が戻ってきて、一緒に笑いました。ああ、どれだけ映画を獲ってこれるか、が大切な映画祭プログラミングの仕事。そことはちょっと違う映画祭PFF。他の映画祭のディレクターと立場が違うなあといつも感じる、いささか仕事内容を説明するのが難しいPFFです。

それはさておき、PFFでは、映画祭を運営しながら、映画祭に出品もするということを続けています。作品をディレクターやプログラマーにみせることの出来る時期と、その映画祭の監督や作品に対する扱いについて、とをあわせて、これまで20年以上の経験を元に、積極的に作品を出品したい、監督を招待していただきたい映画祭のリストめいたものができています。
プレミア上映に伴う監督招待の場合は、旅費、宿泊費、通訳、上映のクオリティ、観客の反応などさまざまな要素を元に考えますが、PFF関連作品の監督は、殆どの場合「初めての海外映画祭体験」となるのでそこが重いポイントになります。つまり、前提として「海外体験の少ない、言葉に不自由な、経済的に豊かでない、若い監督の参加。もしかしてひとりで参加する。」という条件を想定してすすめます。更に、その作品は、制作会社も宣伝会社もついていない、自主映画です。
現在のところ、上記の前提の監督にとって、完璧なサポート体制は、バンクーバー国際映画祭ではないかと思います。極端なことを言うと、お金を持たず、英語を喋れず空港に降り立ったそのときから、帰国の途に着くまで、経済的にも心理的にも全くぜんぜん心配のない映画祭です。
次に、ベルリン国際映画祭フォーラム部門も、上映のクオリティはもとより、言葉の面でのゲストサポートが素晴らしいです。更に、ここは、「アルセナール」という会員制の映画館(2スクリーン)を経営しており、フォーラム部門の上映作品からいくつかが、アルセナール含む、ドイツ語圏のアートシアターネットワークで公開されるチャンスがあります。つまり、ドイツ語字幕つきプリントを作成し、上映し、その収益分配がその後継続して行われるのです。実は、PFFも、ぴあフィルムライブラリー(PFL)を、このフォーラムの運営に感化されて始めたのです。多くのPFF作品を、アルセナールで上映していただいています。ただ、ここ数年、監督招聘予算が削減され、往復航空券の出ない場合があります。
ロッテルダム映画祭はベルリンの直前ですが、活気溢れる、若い監督には大変楽しい映画祭です。映画を浴びるように観るという点からも、狭い場所に20スクリーンあまりがひしめき、チケット発券ルールも結構ゆるく、映画漬け可能な映画祭です。ロッテルダムはホテル代が高いので、そこが、もし招待日数以上の滞在をする時は、悩みかもしれません。
釜山国際映画祭。観客の黄色い歓声とサインください!攻めに、「映画監督はもてる」と思わせてくれる映画祭です。この熱気は、全州映画祭もそうですが、韓国でしか得られないと思います。
このあたりの映画祭で最初の上映を設定できるといいなあと思っています。
勿論、他にも素晴らしい映画祭がたくさんあります。作品や監督の条件で、ベストの映画祭は全く変わるでしょう。そして、何より一番大切なのは「最初に作品ありき」。作品を熱望されて、がスタートラインです。

と映画祭の話をしてきましたが、しかし、東京は毎日が映画祭とも言えるなあとしみじみ思います。
22日土曜日の『家族X』トークの隣では、富田克也監督の(空族の、と書くべきか)『サウダーヂ』初日が熱気に包まれて展開されていました。毎回舞台挨拶ということで、ロビーは、関係者というかスタッフというか、上下左右に走り回る走り回る。興奮が伝わる伝わる。その様子をみていると、2階のオーディトリウム渋谷と、3階のユーロスペース、この3スクリーンで展開される一週間のイベントの数、ゲストの数は、映画祭よりすごかったりするのではないか?改めて考えました。4階のシネマヴェーラも入れると、更に。しかし、映画館ですからスタッフの数は限られています。運営の苦労を思うと、しみじみ感服です。全国的に、映画館運営の業務は増え続け、人は減り続け、みな、ものすごい労働量なのが伝わります。映画館で映画をみることに、少しでも貢献できたらと思います。

映画祭と映画館公開で映画をみよう!と言ったばかりなのに~!なんですが、恒例の渋谷TSUTAYAでのPFFコーナー企画の更新が迫りました。10月25日からは、先日、ベネチア映画祭で新人俳優賞を受賞した染谷将太さんと、ただ今ユーロスペースで公開中『サウダーヂ』富田克也監督のおふたりの選ぶ<冬でも熱くなる映画>です。必見の作品が並んでいます。ご期待ください。

2011/10/15 23:54:17

スペシャルメンションとは何か

映画祭のコンペで「スペシャルメンション」という授与が起きることがあります。
これは何なのか。日本語に直せば何がいいのか。長年考えているのですが、適当な言葉を見つけられず、「スペシャルメンション」という英語をそのまま使っています。もしかすると「審査員特別表彰」などが、一番近い日本語かもしれません。
近年、スペシャルメンションもオフィシャルな表彰として、証明証(表彰状のようなもの)が用意されたり、審査員コメントが公式に出されたりしますが、10年前くらいまでは、表彰式でアナウンスされるのみだった記憶(スカラシップ作品『BORDER LINE』がいただいた頃)があります。
スペシャルメンションは、つまり、審査員からの「私たちは、賞を一つに決めなくてはならないかったので、決断をしましたが、あなたの作品は受賞作品と遜色がありませんよ」という意思表示です。ですけれども、賞ではないので、「受賞」ではなく、「授与」という表現を使います。*殆どの映画祭は、コンペの審査員にグランプリ一本を選んでもらうので、他の作品にも触れたくなるのが審査員の心情と言えます。

昨日ご紹介した吉野耕平監督の『日曜大工のすすめ』は、なんと、釜山国際映画祭の短編コンペでスペシャルメンションだったそうです。そのことをツイッターで知ったという吉野監督。最先端?と申しましょうか、本人にいち早く知らせる方法はなかったのかな?と思うのですが、そのお話しを聞いた後に出かけた、ぴあが主催する落語のイベント「rakugoオルタナティブ」シリーズで、同様の話を聞きました。間もなく真打昇進となる春風亭一之輔さん。決定は、やはりツイッターで知ったそうです。なぜそうなったか、を調べてみると、師匠の一朝さんの携帯が電池切れで、何度も試みられた、協会からの真打決定電話を受けられなかったからだとか・・・その間に、協会のHPに発表された真打決定ニュースを見た人からのツイッターで昇進を知ったと・・・・
昨日今日と、いろいろ賞の発表について考えさせられることが重なり、ちょっと不思議な気持ちです。

本日の落語会は、立川志らく師匠の「名人の噺とは江戸の風が吹く噺なのではないか」(←乱暴なまとめですいません)という言葉に触発されて企画されたもので、昼、夜と立川志らく師匠が二席づつ登場なさいました。昼のゲストは故・桂枝雀さんのお弟子さんの桂雀々さん、夜のゲストは、春風亭一之輔さん。この落語オルタナティブシリーズは、ちょっと違った視点からの落語会企画で、とても刺激的。毎回通うことは全然できていませんが、できるだけ参加したいと思っている企画です。落語初体験の方をお誘いしたい会でもあります。

そしてまだ風邪が治らず、鼻声でふがふがしてるのですが、PFF東京開催準備佳境な頃から現在まで数か月、ちょっと世の中の動きから隔絶されてたかも?と慌てている昨今です。で、発令されてましたね。暴力団排除条例・・・・詳細把握できていませんが、なんだかすごい・・・そんなときに、新・文芸坐で行われる岡田茂プロデューサーの特集上映。チラシをしみじみみちゃいました。殆ど観てるけど、またみたい。やくざ映画の灯よ永遠に!です。未見の方、必見です。映画は「何が起きてもOK」「何を描いてもOK」な創造物でいて欲しいと、青臭いことを改めて思います。こんなときですから、『青春墓場』シリーズの奥田庸介監督の新作でありメジャーデビュー作品となる『東京プレイボーイクラブ』、未見ですが、期待が高まるばかりです。

2011/10/15 02:04:17

ああ釜山

今日は(もう"昨日"ですね)釜山の閉幕だなあと考えながら、水キムチの作り方を書いた本を読んでいました。好きなのにめったに遭遇できない水キムチですから、自分でつくってみようと思った次第です。米のとぎ汁からつくるとは知りませんでした・・・
そして、釜山滞在中の北川仁監督(『ダムライフ』でコンペに参加中)から、クロージングセレモニー途中にPFF事務局に届いた連絡で、受賞はないようだと知りました。
・受賞者には内示があるらしい
・受賞者とそうでないものは、入るゲートが違うようだ
・受賞者でないものには、通訳がついていないようだ
それらを考えあわせて、受賞はないようだ。
という、ここには箇条書きしましたが、なかなか臨場感あふれるメイルでした。
PFF制作の『タイムレスメロディ』が釜山でグランプリをいただいたときには現地にいた私ですが、内示は一切ありませんでした。あれからもう12年。そういえば、その時代は、グランプリ作品は韓国での配給が行われるという特典もありました。会場も、今の海沿いのリゾートタウン、海雲台ではなく、釜山タワーのある街中でした。今は遥かに大きな映画祭となった釜山。オーガナイズに効率が求められるようになり、いろいろとやり方を変えてきたのでしょう。何はともあれ、内示のある映画祭はそれほどないと思います。通訳がついているかついていないかで、受賞があるかどうかバレる、というケースは、何度か体験したことがあります。ああ、そういえば、こんなことやら、あんなことやら、そんなことやら、いろいろありましたね。PFF作品と一緒に世界の映画祭を旅してみて、賞の発表を待つ身になった体験が、表彰式の構築のアイデアを与えてくれたとも言えるなと再確認です。

釜山には、今年もたくさんの日本の映画人が参加していたわけですが、15分の短編映画『日曜大工のすすめ』が短編のコンペティションに招待された、PFFの予告編や、映画祭の先付映像を近年創って下っている映像作家、吉野耕平さんも、2泊3日の駆け足滞在をしてきたと聞きました。初めての海外映画祭参加は、なんだか凄い体験になったようで、映画祭スタッフに「多分賞とってないと思うから最後まで居なくていいよ」と言われたとか・・・。「目がシロクロする」って、こんなときに使うといい表現かなあ・・・と申しましょうか、ぶったまげました。すごすぎる釜山。ワイルドです。

その『日曜大工のすすめ』は、先日お伝えしたNO NAME FILMSというタイトルで上映される10本の短編の一本です。公益財団法人ユニジャパンが「若手映像作家育成」のために行う制作で、監督とプロデューサーとペアで参加し、映画製作を一貫して学ぶという趣旨。15分という長さは厳しく決められています。こちらはデジタル作品ですが、もうひとつ、同じ趣旨でVIPO制作の30分の短編映画制作プロジェクトがあります。こちらは35ミリフィルムでの制作を経験するという趣旨で、予算もぐっと上がります。
どちらのプロジェクトも、共通するのは「公的資金で制作されている」こと。それが何を意味するかと申しますと、「収益をあげてはならない」ということ。つまり「商品としての映画」として、市場に出してはならないのです。となると、ものすごくアヴァンギャルドで過激な作品が出現してほしいのが、映画祭上映作品を探す私の望みです。が、一方、どちらも「若手映像作家育成」のためのプロジェクトですので、それなりに、市場で通用する作品が期待されるという、非常に難しいポジションを持つわけです。さはさりながら、NO NAME FILMSと題された10作品上映は、監督たちが自主上映を行うことを決めた訳です。

今、映画で最も困難な過程は、作品の公開を多くの人に知ってもらう、観に来てもらう。ということです。これは、予算のない映画にとっては、砂漠で道に迷うような途方に暮れる行程です。書きながら胃が痛くなります。今週、風邪から8割がた回復して、まず、渋谷ユーロスペースで公開中の『家族X』のトークを見に行きました。佐々木敦さんと吉田光希監督の対談。すごく面白かった。前作の『症例X』で何か"自分の映画"を掴んだ
と感じた吉田監督が、『家族X』では、誰もが知っている俳優さんたちと、『症例X』と同じつくり方ができるかどうか、も、ひとつの挑戦だったと。そして、次作では、全く違うことをやってみるかもしれないと。楽しみになりました。が、この対談、満席でのトーク、とはいきませんでした。そして、外に出てふと気づくと、2階のオーディトリウム渋谷ではワン・ビン特集が。ちょうど監督のトークがあったようで、東京っていろんな人がいっぺんに集ってるというの、久しぶりに街に出て再認識です。星の数ほどあるイヴェントから、どうやって自分の作品を選んでもらえばいいのか・・・う~ん。
あ、ワン・ビン監督の新作『無言歌』は、昨年の東京フィルメックスで上映され、それを観た配給会社ムヴィオラが公開を決定しました。「公開プリントで観ると、細部までくっきり状況がわかって、全然印象が違うので必ず再見するように」とムヴィオラの方に言われていますが、まだまだ強烈に記憶されている映画です。『無言歌』と『一命』、今の日本に、効くと申しましょうか、どちらも強烈です。

あ、なんだか話が飛んでしまいました。
作品をつくる、公開劇場を探す、というところまでは、随分とチャンスが増えたと思うのですが、その後の、公開=宣伝する。人を映画館に呼ぶ。ということは、更に困難になってきています。ここには、映画をつくることとは、別の情熱、別の仕事が必要なので、エネルギーを振り絞って一度は出来ても、複数回はなかなかハード。いい方法はないものだろうか、と、このことも、いつも頭を離れない課題です。

また話は変わりますが、ユーロスペースでは、フレデリック・ワイズマン特集も始まりますね。これまた3時間当たり前~という長い映画ばかりですが、ウッディ・アレンも欠かさず観るというワイズマンのドキュメンタリー。「俳優として演技のアイデアを盗みに行くのかな?」という話になるほど、普通の人々の顔、行動、たまりません。それと、関係ないですが、ワイズマン監督、お顔がですね、ヨーダに似ておられるのです。それでファンな私かも?しかし、ご本人は、びっくりしたのですが、大柄なんです。勝手に小さい人と思っていた自分を反省しました。


2011/10/12 14:21:18

そして『サタンタンゴ』台北へ

第33回PFF東京開催終了から10日があっという間に過ぎました。事務局は映画祭の後片付けに集中しています。そんな中、会期中にひいた風邪を押さえこんだと思ったら、終了後に復活して珍しくダウンしてしまった私。健康だけがとりえだったのに、とほほです。これを人はエイジングと呼ぶ・・・・のだとしみじみ実感中。そしてやっと今、年内開催の決まった神戸会場の準備、来春の「ミューズシネマセレクション 世界が注目する日本映画たち」のプログラミング、そして、今月更新の、TSUTAYA渋谷店PFFコーナーの展開に着手しました・・・・遅い・・・
と言ってる間に、PFFアワード入選作品が招待されたバンクーバー国際映画祭と、釜山国際映画祭が始まりました。バンクーバーのアジア映画を対象にしたコンペ「ドラゴン&タイガーアワード」は、前半に展開され、結果の発表がありましたが(ニュースをご参照ください)、釜山はまだ数日を待たなければなりません。
コンペの発表を待つのは、実に辛いものです。両映画祭に参加しなくなって3年。現地で結果を待つのと、日本で待つの、どちらが辛いかと申しますと、実は日本にいるほうが、気が重いことを発見しています。実際コンペに並ぶ作品を観ることができること、異国の喧騒や人との交流を楽しむこと、など、現地のほうが、気持ちを整理できるチャンスが多いからでしょうか。健康だったら、ここで早速山形国際ドキュメンタリー映画祭に飛んでいって、気分転換と映画漬けになりたいところだったのですが、その山形ももう終わりです。なんということでしょう。こちらも2回連続不参加です。
「健康に勝る宝なし」を実感する秋。寝てる間におそろしい小説を読みすぎて、悪夢ばかりみてたのも、敗因でしょう。あまりにリアルな夢の数々に、「予知夢?」とか呟いている私です。思い出すたびに怖い。いっそ脚本にでもしてみようかと思うくらいです。

そんな無駄話はさておき、『サタンタンゴ』のプリントが、台湾の台北に旅立ちました。
11/3~26に開催の台北金馬映画祭での上映です。インターバルのところで、3つのプログラムに分けて(part 1,2,3という表記にしてました)上映するそうです。なるほど。
かつては、金馬賞(台湾映画アカデミー賞と申しましょうか・・・)を持つ、この映画祭しか台湾にはなく、90年代にはPFFの作品も上映していただいたものですが、昨今はすっかりご縁の薄くなってしまった映画祭だっただけに、名前を聞くにとても懐かしい映画祭です。
そして、台北、加えて北京。近年私の愛する美味二都。名前を書くだけで行きたくなります。
健康回復すると、食欲も出るってことでしょうか・・・

話は突然変りまして、緊急連絡です。渋谷ユーロスペースにて11月19日(土)より始まる「NO NAME FILMS」。PFFアワード入選監督含む、10監督の15分の短編映画が一挙に上映されます。次代の新鋭を求めるプロデューサーたちに是非目撃して欲しい10作品です。


2011/10/01 17:55:37

そして34回へ

昨夜、コンペティション部門「PFFアワード2011」各賞を発表する表彰式をもって、「第33回PFF ぴあフィルムフェスティバル」の東京開催が終了しました。このあと、「PFFアワード2011」入選17作品は、年明けのPFFin名古屋、神戸、京都、福岡開催で上映されるとともに、国内外の映画祭出品をすすめていきます。それらの情報は、随時PFFのHPにて、ニュースとしてアップします。
そして、本年の表彰式での各賞へのコメントは、ただいまHPにアップしております。加えて、最終審査員からの総評も、追って掲載していきます。

昨夜のフィルムセンターでの表彰式には、現在来日中のドバイ映画祭とサンダンス映画祭のプログラマーが客席におられました。同時通訳で表彰式の様子をご覧になっておられましたが、檀上で賞を発表する皆様の、作品に対するコメントの正直なこと、誠実なことに、非常に感動したとのこと。「PFFの審査は若者の人生を変えてしまうかもしれないので、ものすごく緊張する」と、最終審査員の皆様が毎回おっしゃいますが、私たちは大変な重課をお願いしているのだなと、改めてありがたく、感謝した次第です。
また、塚本監督、阿部プロデューサーの指摘なさった「似た作品が多い」という現実。これは予備審査の段階でも話題になります。ある種の均質化が促されている現実を破壊する作品、これが更に切実に求められている昨今。34回にはどんな作品が登場するのか、期待が高まります。
そして、たまに話題になるのが、入選監督たちの表彰式でのスーツ姿。2008年の30周年から、びしっと決めた写真が残るように、「特別な、自分にとってのフォーマルな服装で参加して、表彰式で日常と違う特別な気分になろう!」と話している表彰式。スーツを選ぶ監督が多いのは、私たちには不思議はないのですが、「若いクリエイターが何故スーツ?」と思う人がいるのも確か。「スーツ=クリエイティブではない」とは全く思わない私たち。むしろ、非日常的で面白いと思ったりするのですが、いかがでしょうか?

表彰式の後は、入選監督たちと、全ての作品をご覧いただいた、予備審査員、パートナーズ各社審査員、最終審査員との懇親会がフィルムセンター内特設会場で行われます。その後、監督たちは、各人のスタッフやキャストの皆様と打ち上げに、PFFスタッフはスタッフ打ち上げが待っています。海外や東京を遠く離れた土地での映画祭では、合同での打ち上げも可能ですが、PFF入選作品はほぼ東京近郊在住者による作品群。膨大な人数になるであろう打ち上げは、PFF事務局体力の限界で実現できません。それぞれいい夜になることを祈って、三々五々フィルムセンターを去るのでした。

*やはり表彰式後にオーディトリウム渋谷に駆けつけて『サタンタンゴ』を観るのは無理でした。オーディトリウム渋谷からの報告によると、上映はつつがなく終わり、PFFでの上映前売り券をお持ちながら、台風で来場できなかったお客様も参加できたそうで、ほっとしているところです。


2011/09/30 00:37:52

本日4:30pm表彰式

コンペティション部門「PFFアワード2011」の5賞、7作品がいよいよ本日発表されます。
結果を待つ入選監督の気持ちになると、どんどん重くなる私の気分。17本の入選作品から、最大でも7作品、だぶったりすれば、5作品しか賞には該当しないのですから、胃が痛い。
しかし、人生いくらでもチャンスはあります。今日残念な結果になった人も、明日には明るいニュースが待っている可能性は大!です。本日出会う人たちとの交流を深めていって欲しいと願っています。

そして、表彰式のあと、深夜の0時からは、渋谷円山町のオーディトリウム渋谷で『サタンタンゴ』上映です。オールナイト上映ということもあり、今回の上映では、2回ある休憩時間をたっぷり取る予定だと劇場から連絡いただきました。詳細は本日オーディトリウム渋谷のHPにて告知されるそうです。
先日も書きましたが、一巻めに多少ノイズが乗りますが、プリント状態はかなりよいです。このラストチャンス、掴んで欲しいと思います。


2011/09/29 12:29:39

本日上映最終日

いよいよ明日30日は表彰式とグランプリ作品の上映が残るのみとなり、本日が、プログラム上映最終日です。
ただ今、監督始めゲストを迎えてPFFアワードプログラムを上映中。そして、クロージングナイトを飾るのは、『恋に至る病』です。
PFFの始まった20日にはまだ夏だった季節も、今日はすっかり秋。大人の汗疹に悩んでいた初日が、急激な気温の変化にひいた風邪にかみすぎた鼻まわりが痛くて終わるという、なんともロマンのかけらもない四季の移ろいを感じる、初めて会期を9月に移したPFFです。
本日も、明日のグランプリ上映のみの参加も、当日券があります。
更に、グランプリ作品は、東京国際映画祭「日本映画ある視点」部門での上映もあります。
明日の表彰式での賞の発表は、PFFのHPで随時行って参ります。明日の表彰式、私たちも緊張してきました。


2011/09/28 05:05:52

あと3日

第21回PFFスカラシップ作品『恋に至る病』のお披露目(総勢7名で舞台挨拶です!アーバンも登場予定!)と、表彰式の準備に突入したら、はっと気づけばもう28日です。第33回PFFもあと3日を残すのみ。PFFアワード作品も、残るは11作品の上映。本日は3プログラム6作品、明日は2プログラム5作品をご覧いただきます。毎回上映後に、ご来場くださった監督と、短いながらトークの時間を持っています。私か、時に事務局の江村がご紹介させていただいておりますが、29日は、共催の東京国立近代美術館フィルムセンターの研究員の方に初めてご登場願う予定でおります。私たちとは全く違う環境で映画に日々触れておられる方々が、どのようにPFFアワード入選作品をご覧になるか、どんなトークが交わされるか楽しみです。
今年のPFFアワード17作品、「ぴあ映画生活」とも協力して、作品紹介を厚く展開しております。それらを始めとする作品情報からも、作品が気になっていたけれども見逃した方は、今後のPFF全国展開での上映や、国内外の映画祭上映情報を随時HPでお知らせしますので、チェックしてください。

今年の招待作品は、昨年までと比較して、予測不可能なプログラムを増やし過ぎたかなあと今、ふと考えています。『サタンタンゴ』7時間半がほんとうの嵐とともに始まり、終わったのが象徴的だったように(お知らせ:30日深夜よりオールナイト上映がオーディトリウム渋谷であります。プリント状態は、8割強大変美しく、ところどころ、傷とノイズがありますが、是非!今度こそ最後の上映です!)、長谷川和彦監督をお迎えしてのトークも、終わってみればゴジさんの健在ぶりがはっきりわかって嬉しくなる時間となりましたが、やはり、先に繋がることを祈ってしまいます。黒沢清監督をお迎えした回は、「教える、というのはなんて大変なんだろう・・」ということをしみじみと実感する時間となりました。非常に深い話に突入できたかもしれない話題が時間切れになったのは惜しかった。黒沢監督には、「映画長話」へのサインまでご快諾いただき、恐縮しています。
・・・・って、主催者がまた感想書いてしまった・・・

この「映画長話」(リトルモア発行)。ほんとに映画の長話です。楽しそう。そんな中、202ページにある「日本の個人の金融資産の七五パーセントぐらいを六十歳以上の老人が持っている。ほぼ八百兆円です。その人たちを映画に投資させなければならない。これほどの資産の偏りは日本だけでしょう(略)」という一節は怖かった。最近、部屋探しをしたときの怖い思い出が甦りました。自分が古いアパート好きなのがよくわかった部屋探し。とあるかつての高級マンションでは、自転車置き場に埃だらけの自転車が満載。しかし、「自転車置き場に空きはない」ということで、新規の持ち込みは不可能。不動産屋の話によると、アパートの会議で議題に上がる度に、既得権を持った住民が「あの自転車は必要」とがんとし撤去に応じないそうな。老夫妻の居住なのに、埃の積もった子供の自転車が3台、とかね。「守る」「手放さない」のは別のものにしてほしいなあ・・と思ったものです。
あ、話題が別の方向へ行きそうなので終わりましょう。
第33回PFF、今日28日と、明日29日は当日券がございます。30日、表彰式は完売ですが、式のあとのグランプリ上映のみに参加可能な当日券の発売を行います。
まだPFF未体験の方、是非一度ご参加ください。

2011/09/24 14:23:11

折り返し地点に到達しました

今日は開催五日め。丁度中間地点に到達しコンペティションプログラム一回目の上映の八つのうち四つが終了。これから五つめのプログラムの上映が始まります。同時に招待作品部門最後のプログラムが、今夜、黒沢清監督と廣原曉監督を迎えて行われます。また、今日はカルトブランシュの日でもあります。3時から、地下小ホールで、『生きてるうちが花なのよ死んだらそれまでよ党宣言』を見て、河瀬直美監督が語る時間です。
2階はPFF、地下一階はカルトブランシュ。涼しい風が秋を感じる土曜日。ひととき浮世を忘れて映画三昧いかがでしょう。銀座の歩行者天国もいい気分で散歩できますよ。ご来場をお待ち致しております。

2011/09/23 09:01:28

当日券あります

前売り券は、上映日の2日前までの販売で、残りは当日券に回ります。例えば、本日のプログラムの前売りは21日で終了しました。間の一日は、当日券に回すためのシステム上どうしても必要な時間です。そして、表彰式を除く全プログラムが、当日券販売を予定しています。本日の3つのプログラムも、当日券ございますので、是非お越しください。

さて、共同開催のフィルムセンターの力なしには集められない状態のいいプリントで傑作を上映できた招待作品部門も、明日24日で終了し、後半のPFFはコンペティション部門のPFFアワード一色になっていきます。全回、監督、スタッフ、キャストの来場が予定されています。大スクリーンで日本の最新映画を堪能してください。HD作品の急増により、8mm作品時代が遥か昔のような感覚に陥り、スクリーンを見ながら茫然としたりする私です。
そして、クロージングナイトを飾る第21回PFFスカラシップ作品『恋に至る病』のお披露目には、木村監督はもとより、我妻三輪子さん、斉藤陽一郎さん、佐津川愛美さん、染谷将太さんと4名が揃い、賑やかな舞台挨拶が実現します。
30日はいよいよ表彰式。こちらのみはチケットが売り切れですが、式が終了したのち、グランプリ作品の上映のみの当日券を発売する計画があります。発売時間など詳細は追って会場および、HPのニュースとして発表しますのでお待ちください。

いよいよ中盤となる第33回PFF。本日の招待作品は14:30『青春の蹉跌』と長谷川和彦VS岩井俊二、そして17:30『太陽を盗んだ男』と長谷川和彦VS河瀬直美。二度とない映画と人の組み合わせの一日となる予感。お出かけください。


2011/09/22 01:13:32

いよいよコンペティション部門「PFFアワード2011」上映開始です

初日&二日目と招待作品部門の上映が続いた第33回PFF。
本日からコンペティション部門の上映が始まります。
ノミネートは17作品。各作品とも、二回上映で、一回は土日あるいは夜の回、もう一回は平日昼間の回の上映です。毎回、監督がお越しくださり、トークを予定しています。また、お配りするアンケート用紙(今後の宣伝のために、みなさんがどこで上映情報を得ておられるのか知りたいのです)の裏面には、作品への感想をお書きいただく欄を設けていますので、当日直接お話しなさるか、書いていただくか、つくり手へ何か伝えていただけると嬉しく思います。会場の様子は、本年も、昨年に引き続きカメラマンの内堀さんが報告してくださるフォトブログを特設しました。アワード監督たちの来場の様子も素早くあげていきますのでお楽しみに!

そして昨日は、ものすごい暴風雨の中、『サタンタンゴ』上映を完遂しました。が、実は、万が一、上映中断を余儀なくされる事態に備えて、代替上映の場所を探しました。"字幕投影"という、通常の会場では対応の難しい課題のある上映ですのであまり希望は持っていなかったのですが、渋谷に新しく誕生した「オーディトリウム渋谷」が名乗りを上げてくださり、ほっと安心。更には、フィルムセンター上映が無事終了の見込みになったにも関わらず、上映を希望してくださり、緊急上映を決定することになりました。
9月30日、深夜零時からスタート。朝8時終了?という計画です。詳細は、本日アップ予定のオーディトリウム渋谷HPでご確認ください。当日券のみ。値段はPFFと同じです。
しかし『サタンタンゴ』、今の日本で観ると、異様に浸みます。資本主義社会における棄民の話として読むと、あまりにもタイムリーでぞっとするほどです。夜こそ元気になってしまう方など、是非30日の天使の贈り物のような上映にご参加いただければと思います。

今日はコンビニで2857円の電気代を支払ってきました。最近出現した「太陽光促進付加金」という項目。ちょっと前までは他の名目だったな~、と、また「カムイな現代」を考える夜。そんなことを考えてる場合ではない始まったばかりのPFF。今日から本格的に多くのつくり手が集います。ぜひ一度ご参加ください。

2011/09/21 09:08:50

『サタンタンゴ』上映します

本日の『サタンタンゴ』上映行います。
昨夜からお問い合わせいただいておりますが、今日も変わらず第33回PFF開催します。
正午から始まり、7時間半で間に2回15分程度の休憩ですから、8時見当の終了です。
昼食を済ませてお越しいただき、「映画を4本ほど続けてみる」、という気持ちでいてくだされば、あっというまに終わりましょう。(念のための首枕のご用意などもいいかもしれません)

昨日は、PFF初のピアノ演奏つきクラシック映画の上映を行いました。柳下美恵さんの演奏による『限りなき鋪道』『陽気な巴里っ子』。『陽気な巴里っ子』は85年前、『限りなき鋪道』(当時の銀座の街が目がくらむほどしっかり記録されています)は77年前の作品とは俄かには信じられないフレッシュさ。撮影技術も息をのみます。
そして、ピアノ演奏つき上映って、素晴らしいですね。と再確認。また、画面にあわせて片手でピアノ演奏、片手でちょっとした小道具を使っての効果音の制作など、ピアノ奏者とは演出家でもあることと、その技術にもほれぼれしました。
そして、『陽気な中尉さん』の日本語字幕の日本語が、現在、俄かには理解できないこと!日本語の変化にも、改めて気づかされます。劇中の手紙も、手書きの日本語に変えている素晴らしい工夫に溢れているのですが、達筆すぎて、読めない・・・80年という年月で、言葉とはこんなにも変わるのか・・・と実感しました。
「映画とは教養である」「映画とは歴史の記録である」と言われることを実感した午後のあとには、最新作『ハラがコレなんで』で石井裕也監督をお迎えしました。この回では、「映画は出来たときすぐ観る、リアルタイムで観る」ことのできる幸せを、改めて実感しました。
って、主催者が感想文かいてどうする!とつっこまれそうです。

本日の『サタンタンゴ』は、ドイツでみつけたドイツ語字幕つき上映。ニュープリントのような状態のいいものではありませんが、貴重な機会です。是非ご体験ください。


2011/09/20 01:39:56

始まります!

というわけで、9月20日PFF初日がやって参りました。
本日は、映画史に輝く名作『陽気な中尉さん』で始まります。ルビッチをPFFで上映する日が来るなんて、嬉しい!ありがとうフィルムセンター!とワクワクしてる(主催者なのに)私です。
そして追いかけて、ルビッチと成瀬のサイレント作品二本立てプログラムを大盤振る舞い(と自分で言う)!。『陽気な巴里っ子』と『限りなき鋪道』。いつの時代も、山ほど国内外の映画をみて自分の映画を追及していた日本の映画監督たちの息吹、が伝わるプログラムになるといいなと、そんな企画です。ピアノ演奏を柳下美恵さんにお願いしました。

そんな優雅で楽しい午後の後、オープニングナイトには石井裕也監督の最新作『ハラがコレなんで』の特別プレヴューです。『ハラがコレなんで』は仲里依紗さん主演。今回の石井作品は"奇跡"が起こります。11月の公開を前に、海外映画祭からの招待も相次ぐ『ハラコレ』ですが、カナダのバンクーバー国際映画祭では、今年一番面白いアジア映画ということで、アジア映画特集のクロージング上映作品に決定しました!監督もカナダに飛びます。勿論、今夜、PFFにもお越しいただきます。

石井監督と言えば満島ひかりさんとかえってくることが多いわけですが、満島さんも出演なさっている『一命』を先日ひとあし先に拝見しました。今回最終審査員をお引き受けくださった瑛太さんと夫婦役を演じておられます。ご存知のように、こちらは小林正樹監督の『切腹』のリメイク。白黒映画がカラーの3Dになることも話題です。昔、『切腹』にあまりにも驚いた私は、滝口康彦さんの原作を探しました。「異聞浪人記」。同時に、同じ小林監督の『上意討ち』にも茫然として、読みました。同じく原作となった滝口さんの「拝領妻始末」。そして、「江戸時代、暗黒・・・江戸時代ひどい・・・」と思いながら、他の"江戸もの"を通し(池波正太郎、杉浦日向子、藤沢周平などなどなど)「江戸在住の一部の人たちはそうでもない暮らしを得ていたのかも・・・」とも感じ月日が経ちました。
が、今回、『一命』を拝見して、再び甦るあのショック。同時にもっとショックだったのは、「あれ?今って江戸時代とかわらないかも?」という現実。江戸時代が終わって150年が経とうとしているのに、この400年、実際の政治や社会の構造は何も変化してないのでは?と愕然と気づかされる映画でした。『一命』。思わず「カムイ」を読みたくなりました。

なんて、これから公開される映画のことに話してる場合ではないのです!
本日から30日までの10日間(26日月曜日はフィルムセンター休館ですのでご注意ください)展開します第33回PFF、ぜひお越しください。


2011/09/19 10:06:16

明日開幕!第33回PFFぴあフィルムフェスティバル

 「節電解除」で会場運営に心配がひとつ減ってほっとし、最終審査員の瀬々監督、塚本監督、そして『恋に至る病』に出演いただいている染谷さんのモントリオール&ベネチアでの受賞を喜び、ユーロスペースや山形や東京など大小さまざまな秋の映画祭の情報の到来にときめいているうちに、あっという間に初日が・・・
ここでお知らせです。
フィルムセンターで開催する映画祭では異例の「全席指定制」のPFF。前売り券発売は、上映2日前までチケットぴあにて可能です!つまり、明後日、21日の『サタンタンゴ』はまだ前売り券購入可能です。今回は、主催者側(私たちです)には残念ながら、まだ表彰式しか完売してません・・・是非前売り券をお求めになり、ゆったり気分で会場へお越しください。
というのも、フィルムセンターには厳しいルールがあります。映画を最初から最後まで十全に満喫していただくために、上映開始と同時に、当日券の販売は終了。つまり、遅れて会場に到着すると、当日券は購入できないのです。が~ん!
そんなストレスから解放されるためにも、前売り券の購入をお薦めするPFFです。
*そして、前売り券で完売となりますと、当日券の発売はありません。

明日はPFFでは珍しい、ピアノ演奏つき上映です。初日20日と翌日21日は、「BLACK &WHITEの誘惑」企画。白黒映画を満喫です(余談ですが、英語と日本語では色の並びが逆になるのが面白い)。実は3日目、22日の『七人の侍』は、この「BLACK &WHITEの誘惑」企画に半分重なり、塚本監督のトークが、もうひとつの企画「映画のレッスン」に重なるという、翌日からの「映画のレッスン」へのブリッジのようなダブル企画でもあります。とっくにお気づきだったでしょうか?更に、『七人の侍』は、昔も今も、世界で最も有名な日本映画。世界を視野に入れる活動が必須となるこれからの日本の映画人にとって未体験では済まされない作品として、スクリーンでこの作品を観るチャンスの少ない新世代へのブリッジとしての上映でもあります。
そして、白黒と塚本監督というと、思い出すのが、数々の塚本作品とあわせて、『ウルトラQ』。60年代初期テレビシリーズの傑作です。勿論、白黒。塚本監督の『ウルトラQ』愛は有名ですが、なんと『ウルトラQ』着色版が発売になりました!うわ~観たいような怖いような・・・実は『ウルトラQ』偏愛の私の心は揺れる・・・と同時に、映像着色の技術が、放射能汚染をひとめでわかる着色、につながる部分はないのか考えてしまいます。
色、あるいは臭いを着けることができれば、現在私たちの生活を脅かす"みえないもの"のひとつが確実にわかるようになれば、改善そして改革への状況は大きく変わると思えてなりません。

ともあれ明日から30日までのPFFで、映画と人と新しい出会いと新しい発見が訪れることを願って、ただいま会場準備真っ只中です。

2011/09/06 22:20:47

長谷川和彦監督に2プログラム登場いただきます

第33回PFF招待作品部門「映画のレッスン」に、長谷川和彦監督が2プログラムに渡り参加くださいます。9月23日金曜祝日、午後2時30分からの回と夕方5時30分からの回です。
まず、最初の聞き手は、岩井俊二監督。長谷川監督の脚本作品『青春の蹉跌』上映後のトークです。
岩井監督にとって、『青春の蹉跌』は青春映画の金字塔、オールタイムベストの一作だそうで、長谷川監督に当時のことを含め、映画製作や世相、そして、映画監督作品について様々にお話を聞いてみたいということです。
そして、長谷川監督は、岩井監督の『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』を93年の日本映画監督協会新人賞に強く推したときから、ずっと注目なさっていたそうです。
そんなお二人の初めての映画談義。きっと映画のみならず、広く深く拡がっていくのではないか・・・と予想します。
二番目の聞き手は、河瀬直美監督。長谷川監督の『太陽を盗んだ男』上映後のトークです。
河瀬監督の『沙羅双樹』は、長谷川監督旧知の山崎裕カメラマンによる撮影。それを観た時に「かつて草月ホールで観た自主映画を現在にみているようだ・・・」と驚かされたという長谷川監督。一方、河瀬監督にとって、長谷川監督は、伝説の人。今、一番興味のあるフィクションにおける俳優の演出について聞いてみたいことが多いそうです。

岩井監督、そして、河瀬監督。どちらも強烈な個性と美学を持ち、パイオニアとして道を切り拓くおふたりと長谷川和彦監督がどんな時間を展開するか、企画したこちらもスリリングで、日に日に期待が膨らんでいます。
また、『青春の蹉跌』と『太陽を盗んだ男』を連続でスクリーンで観るチャンスも、かなり稀少。多くの人に参加いただきたいと願っています。
あ、最後に、長谷川監督には、1981,1982,1984,1985,1986年の5回、PFFアワードの審査員を務めていただきました。当時は審査員がマイベスト1を選ぶシステム。当時長谷川監督が推薦した作品も後日ご紹介いたします。


2011/09/03 17:49:39

『生きてるうちが花なのよ死んだらそれまでよ党宣言』一週間に3回上映!

あらら。上映を決定した時には全く予定のなかった『生きてるうちが花なのよ死んだらそれまでよ党宣言』が、同じ週に3回都内で上映ということに・・・
まず、9月19日敬老の日に、池袋・新文芸坐での「追悼・原田芳雄」にて。次に、9月23日、渋谷・ユーロスペースにて「イメージ福島」特集の1作品として。そして、9月24日、京橋・フィルムセンター地階小ホールにて「カルトブランシュ」で「男と女」というテーマのもとに。全く違うテーマで3か所で上映される、恐るべし『生きてるうちが花なのよ死んだらそれまでよ党宣言』!です。

9月24日は、PFFの企画です。昨年から参加している学生のための映画イベント「カルトブランシュ」。映画の上映+選者による対談で、映画を更に楽しむ時間を提供する企画。今回は、第33回PFF開催期間を含む、3回の土曜日の、午後3時あるいは3時半から開催です。
●9/17 15:30~ 『さらば愛しき大地』(柳町光男監督)富田克也監督と城繁幸氏がセレクトして対談。テーマは「ロード"サイド"ムービー」
●9/24 15:00~ 『生きてるうちが花なのよ死んだらそれまでよ党宣言』(森崎東監督)河瀬直美監督がセレクト。木下雄介監督が聞き手。テーマは「男と女」
●10/1 15:30~ 『スワロウテイル』(岩井俊二監督)VERBALがセレクト、窪田崇監督が聞き手。テーマは「インターナショナライズされ続ける日本の未来を綴る、プロティック・ムービー」
河瀬監督は、この、カルトブランシュと、PFFの招待企画「映画のレッスン」での、「太陽を盗んだ男を観て、長谷川和彦に聞く!」回にも登場くださいます。奈良在住の河瀬監督。東京滞在の短い日々にハードワークさせているPFFです・・・

『生きてるうちが花なのよ死んだらそれまでよ党宣言』は、名古屋のキノシタ映画製作。DVD発売の予定はありません。旅の踊り子(倍賞美津子・本作で日本アカデミー賞主演女優賞を受賞)と、原発ジプシー(原田芳雄)を中心とした濃厚な群像劇。主な舞台は、もんじゅくんの福井です。
『生きてるうちが花なのよ死んだらそれまでよ党宣言』をみたいと常々思っておられた方、是非24日のカルトブランシュへお越しください。と宣伝してみました。
(6回も作品タイトル書いたのも、初めてかもです・・・)

話はかわりまして、昨日タル・ベーラの名前について書き漏れていた追記です。
英語での表記は「BELA TARR」それで、翻訳されると「ベラ・タール」となるのでした。


2011/09/02 15:09:33

タル・ベーラという名前

第33回PFFで、『サタンタンゴ』7時間半の上映が決定しました。
9月21日(水)正午から、間に2回の休憩を入れ、午後8時終了予定で組みました。
フィルム上映で、日本語字幕はビデオ投影です。
そして、上映可能なプリントを世界中に尋ねて、遂に見つけたのはドイツ語字幕つきプリント。
ですので、ドイツ語字幕もついています。ドイツ人のご友人お知り合いにも、是非お薦めください!

PFFでタル・ベーラ作品を紹介したのは、1984年。『秋の暦』です。日本で最初のタル・ベーラ紹介でした。そのとき私はPFFに居ませんが、話を聞くと、ハンガリー大使館の全面的な協力のもと、プリントの手配や、カタログの製作など、進めたそうです。
タル・ベーラという名前も、大使館に相談して、日本語読みを決定したということで、今でも時々話題になる「どう読むのが正しいのか?」について、PFFでは「タル・ベーラ」を採用です。

ハンガリーは、日本と同じく、姓が先で名前が後。「タル・ベーラ」は、この習慣を踏襲して、苗字のタル、名前のベーラ、という順番です。「タール・ベラ」という音のほうが近いという説もあるそうですが、ご本人が来日したときに、「タル・ベーラさん」と紹介されることに異議は唱えなかったということです。しかし欧米では、名前が先で苗字が後という習慣の国が多く、英語からの翻訳では、「ベラ・タール」と記載されること多いですね。

今年は9月のPFFの『サタンタンゴ』(日本でDVD発売の予定はないようですから、貴重なチャンスになりますよ!)、12月の東京フィルメックスでの新作『ニーチェの馬(原題直訳は『トリノの馬』)』お披露目と監督の来日、と、タル・ベーラな年末になりそうです。
自身の最後の監督作と語っている『ニーチェの馬』の劇場公開は来年。盛り上げていければと思います。


2011/08/19 01:24:24

間もなく、公式サイトリニューアルです

昨日から、沢山のお知らせが続くPFFです。

1:「バルト沿岸5カ国と日本との共同制作フォーラム」の詳細をアップしました。
海外在住の日本人でも応募可能です。
必要なのは、まず、つくりたい映画の企画と、熱意です。そして、英語で展開される日々ですので、言葉のコミュニケーションの出来る人が望ましい。
2:間もなく、PFFアワード2011の最終審査員を発表します。
3:追いかけて、第33回PFFの詳細を網羅しリニューアルした公式サイトをアップします。
&映画祭チラシも完成が近づいています。8月25日から、都内への配布を開始します。

いよいよ開催一ヶ月前となった第33回PFF。
現場の運営準備はこれから本格的に始まります。今年は初めてのボランティアスタッフ募集も行っています。多くの出会いを期待しています。

2011/08/10 23:06:46

日本映画がすごいことになっているのです

招待作品発表と口走りながら、まだ発表できてないのは、まるで天使か悪魔かに魅入られたように、プリント探しに翻弄されている某作品の存在からです。
心臓に悪い日々ですが、もう後がない!明日には決定です。

同時に本日は、11月に遠くリトアニアで開催されるワークショップの打ち合わせをして、いっとき、プログラミングの深い穴から逃避していました。
リトアニアに、バルト海沿岸諸国と、日本の才能が集合し、合作映画のワークショップを三日間に渡り実施しようという企画で、PFFが日本の窓口を務めることになりました。応募締切を今月末とし、来週には公募告知の予定です。

その打ち合わせの席で、この二か月PFF漬けだった私がうかつにも見逃していたことを教えられました。今、日本映画がすごい。と。
5月のカンヌ国際映画祭に2本、ただ今開催中のロカルノ映画祭に2本、間もなく開催のモントリオール世界映画祭に2本、ベネチア映画祭に1本、サンセバスチャン映画祭に1本、と、これだけ多くの映画祭のコンペティションに、日本映画が選出されているのは、前例がないのです。驚愕の数字と言えるでしょう。更に付け加えまして、手前味噌のようで恐縮ですが、来月のPFFでご紹介するPFFアワード2011作品から3作品が、10月のバンクーバー国際映画祭と釜山国際映画祭のコンペティション部門への招待が決定しました。各映画祭の情報解禁日にはお知らせ致します。
と、ここまでで11作品。これからベルリンも選定に来ます。一体一年間でどれだけ国際映画祭のコンペティション出品記録を更新をするのか日本映画!
映画祭は映画の世界の一部ですが、時代を少し早く反映する場所です。ジャーナリストの方々に、是非、この新記録を取材してもらいたいなと思いました。

が、やっぱりPFFに思考が戻ります。
少しでも早く皆様にプログラムを発表できるよう邁進します。

2011/07/30 01:59:53

PFFプログラム、かなりみえてきました

今週は結構必死でした。・・・なんだか間抜けなこと言っててすいません。
ここで「決定です!」と晴れやかにプログラム発表することが目標でしたが、未決部分があり残念な夜です。
本年のプログラム、新作映画の上映は、PFFアワード17作品と、PFFスカラシップ作品、そしてもう一作を間もなく発表します。
恒例となりました、旧作を参考上映しながら映画をより深く知るプログラム、も、今年は充実しそうです。長谷川和彦監督、黒沢清監督、岩井俊二監督、河瀬直美監督らから次世代へ伝承する企画、を練っています。
また、ふたつ、びっくりプログラムを実行できるかどうか、予算との戦いも進行中。こんなときに「国会運営年間予算一千億円」という桁の違う話を聞かされると、利子の一部でいいからわけて~!と涙がぽろ~りこぼれてきます。(←国会運営予算貯金されてるわけではないので利子はないですが)

先日お話しましたが、週末に岩手県田野畑村岩泉町、宮城県南三陸町歌津、東松島、など廻り、その直後に「東北三県から自衛隊撤収」のニュースを聞き、大変な作業が地方自治体にかかっていることを痛感しました。瓦礫の撤去は生半可な重機や人手では足りないと実感しました。瓦礫にしろ、放射性廃棄物にしろ、ゴミの捨て場に茫然とする日本の現状。実は私もゴミ問題に直面。放射能除去機能を持つ浄水器を設置するか?と考え、しかし、そのフィルターを廃棄する場所が決まらなければ、単なる汚染源を増やすだけだ~、と実行できません。汚染されたものの安全な廃棄場所が無い、が、さまざまな除去装置は販売されている・・・・生活って、ほんとに難しいですね。映画祭のプログラミングは、比べて何と明快なことでしょう。みせたい映画+みせたい映画祭、の結びつきですもの。
というようなことを、今週来日した釜山国際映画祭アジアプログラマーのキム・ジソクさんと話しながら考えていました。9月のPFFのあとは、10月のバンクーバー、釜山、山形、東京国際、11月の東京フィルメックスと、PFFと縁のある映画祭が立て込んでいます。国内の映画祭の競争もなかなか熾烈な昨今ですが、大きな国際映画祭は、作品のプレミア合戦がヒートアップし、情報収集に余念がありません。5月のカンヌ、8月のロカルノとベネチア、9月のトロント、10月の釜山に、1月のロッテルダムと2月のベルリン。出品する側も、映画祭が競合するシーズンは、出品駆け引きの季節です。勿論PFFアワード2011作品も、出品営業開始しました。

話は変わりまして、繰り返しのお知らせです。
情報誌ぴあの休刊で、PFFも終わるのではとご心配くださる方、多いです。
PFF事務局は、現在、ぴあ編集部とは別の運営ですので、大丈夫です。変わらず継続していきます。ご安心ください。チケットぴあ始め、ぴあも活動変わりません。更に、私の将来の心配をいただくこともあります。ありがとうございます。恐縮しています。311で変化を余儀なくされた日本。映画も今後変化します。きちんとみていきたいと思っています。


2011/07/24 16:11:34

雑誌「ぴあ」の最終号販売中

雑誌「ぴあ」の最後を飾る特別号が先週書店に並びました。おまけに39年前の創刊号復刻版がついている豪華な一冊です。
「ぴあ」という雑誌名と、「ぴあ」という会社名が同じなために、「ぴあという会社が終わるのでは?ひいてはPFFが終わるのでは?」というご心配をおかけしている気配を感じていますが、終わるのは雑誌だけですので大丈夫です。
無くなると不便を感じる雑誌ぴあ。完全保存版のぴあ最終号是非お買い求めください。
そして、なくなる前にPFFも是非一度ご体験ください。九月二十日から十日間に向け、映画祭貯金をどうぞよろしくお願いします〜!でもPFFまだ続くんですけど。”現在進行形”のときに話題になりたい私たちです!
なんだか宣伝な内容になってしまいました…
ここ数日は、以前少しお話した「映画屋とその仲間たち」の有志との岩手宮城まわりに初参加できました。車を運転しない私には大型車での移動そのものも得難い体験でした。デコトラが皆無なことが淋しかった深夜の高速道路です。

2011/07/23 11:37:04

スカラシップ作品クランクインしました

第21回PFFスカラシップ作品いよいよ撮影開始しました。監督は木村承子さん。PFFアワード2009にて『普通の恋』で審査員特別賞を受賞。このスカラシップ史上二人目の女性監督が挑むのは、作品タイトルともなる『恋に至る病』。四人の登場人物を我妻三輪子さん、斎藤陽一郎さん、佐津川愛美さん、染谷将太さんが演じます。この顔ぶれだけで、ゾクゾクと期待が高まる私です。
そして、本格的な映画製作は初体験となる木村監督をがっちり支えるのは、撮影監督:月永雄太さん、録音:村越宏之さん、美術:井上心平さん、音楽:アーバンギャルド、編集:増永純一さん、助監督:菊地健雄さん、製作担当:和氣俊之さんらです。『恋に至る病』のお披露目は、映画祭の最後を飾る9月29日最終回を予定しています。チケット発売は8月中旬予定。その他の招待作品は、まだまだ練り込みちゅう。すいません。もう少しお待ちください。が、ひとつだけ発表しますと、『太陽を盗んだ男』を、長谷川和彦監督はじめ豪華ゲストをお迎えして上映致します。ご期待ください。

2011/07/19 17:01:49

原田芳雄さんのことで頭がいっぱいです

第33回PFFの会場となるフィルムセンターに打ち合わせに行ったあと、「この風景はどこかでみたぞ・・・」とSALEの看板の目立つ銀座を歩きながら、思い出そうとしていました。あ!とうろたえたのは、なんのことはない、昨年まで、まさにこの時期にPFFを開催していた、その風景の記憶だったのです。
思えば暑い毎日でした・・・・「夏フェスだったのだなあ~」と今頃実感です。
そして、今年の会期は9月20日から30日。何と、もう、開催二ヶ月前になってしまったのに、あまりに高濃度な「PFFアワード2011」ラインナップ決定に押され、招待作品の決定に遅れが生じています。明日にはオフィシャルサイトのプレオープンとして、アワード17作品を写真つきで紹介し、招待作品決定次第アップです。

「2ヶ月前だ2ヶ月前だ」と、呪文のようにつぶやいていたら、原田芳雄さんの訃報が襲いました。自分でも驚くほど悲しい。映画の記憶は原田さんと共にあったと言ってもいいのかも・・・と非常にうろたえました。ご本人にお目にかかったのは、黒木和雄監督の『美しい夏キリシマ』をPFFでご紹介させていただいた時のみで、それはもう話かけるどころではありませんでしたが、監督たち始め、これほど多くの方に愛される俳優はいないのではないかと感じていました。
『美しい夏キリシマ』は、仙頭武則プロデューサーが、黒木監督に「ご自身の一番辛い記憶を映画にしてみるという新たな挑戦はどうですか」とお話になったところから始まったと聞いたことがあります。新たな挑戦をする時に、側に居てほしい俳優。そんな人のような気がする原田芳雄さん。昨年の若松孝二監督の特集では、阪本順治監督が原田さんの輝く『寝盗られ宗介』を選び、この作品に思い入れの深い若松監督は大変喜んでおられました。その阪本監督の『大鹿村騒動記』が原田さんの遺作となりますが、まだ暫くは平静に観ることができそうにありません。

2011/07/08 21:03:45

「PFFアワード2011」入選作品を発表します

ニュースにて、「PFFアワード2011」入選17作品を発表致しました。
作品の詳細は、来週アップする第33回PFFオフィシャルサイトにてご紹介します。

本年は長編の力作が溢れ、最終決定まで誠に悩める日々が続きました。そして、現在の日本で「自主映画とは何か?」について、更に考える日々ともなりました。(余談ですが「PFFアワード」は短編でも中編でも長編でも全てOKの映画祭ですよ!)
まず、近年感じていた「俳優陣の充実」に、驚くべきものがあります。
また、DV、家庭崩壊、近親相姦など、シリアスな題材の映画化への巧みな技に息を飲むことが重なり、自主映画=無邪気な、あるいは稚拙でひとりよがりな映画、という過去からのイメージはほんとうに間違っていることを改めて多くの方に知らせたくなりました。
同時に、エンターテインメントへの挑戦とその成功に感心し、一方で、実験的挑戦的な作品の増加にもときめき、ひとことではお伝えするのは難しい、誠に多彩な映画を浴びるように拝見できました。
そして、入選作品は、もし言葉にすれば、「この作品を超えた豊かな未来」がみえる、「可能性が強く匂う」映画たちなのかもしれないと思いました。
勿論、これら17作品には、それぞれ美点と同時に、欠点も溢れています。が、「もしかしたら誰かを驚嘆させる力」を持つ可能性が少し高い作品たちであると言えると考えています。

応募いただいた作品の多くが、しっかり地に足をつけて、何かを伝えようとしていました。
コンペティションという定めのもと、作品を"選ぶ"のは、16名のセレクションメンバーにとって、重い毎日でしたが、ここには今みるべき映画が全てあると言っても過言ではないと思います。
これから、HPや映画祭チラシでの作品紹介で、ご自分の肌にあいそうな作品を選び、9月20日~30日の第33回PFF(ぴあフィルムフェスティバル)で、是非体感して欲しいと願っています。

2011/07/08 12:40:34

いよいよ今夜

今夜零時までに「PFFアワード2011」ラインナップの発表をすべく、事務局一同準備に邁進しています。
まずニュース欄で作品の発表を行い、このブログで今年の傾向をお伝えし、ご応募いただいた皆様には、郵送で詳細をお送りし、そして来週、いよいよ「第33回PFF」のオフィシャルサイトをスタートし、作品スチル含む詳細をお披露目します。

本年はかつてない力作の溢れる年となり、ラインナップ決定に至るまで嬉しくも辛い日々が続きましたが、自主映画ならではの熱と想いを、9月20日から始まる第33回PFFにて是非体感して欲しいと願っています。未体験の興奮をお約束します。

2011/06/19 14:40:55

知りたい

雨の多い季節になり、福島にも降る。「このままでは汚染水が溢れる」と発表され続けてはや何日・・・の福島第一原発の水の行方が、よくわからない。ということは、メルトスルーにあわせて、落ちて行ってるのかな汚染水?
映画の見過ぎ、想像しすぎでしょうか?
地下に浸みた汚染水は、どのようなルートでどのようなスピードでどこに拡がっていくのかを予測し、最悪の事態に備えるための対策団はつくられているのでしょうか?
その前に、汚染の拡がりを防止するための、土木建築による手立てを講じる部隊は作られているのでしょうか?
汚泥の保存場所("廃棄"とか"投棄"ではなく、数百年に渡る"保管"ですよねこの場合)確保の道程は?
それがどんな公式発表をみてもみえません。
多分、気を揉んで、何とかしたい専門家がたくさんいると期待しているのですが、どうすれば結集できるのでしょうか?

たとえどんなに深刻であろうと、現実を知りたい。
今、何が起きていて、最悪の場合どうなるのか。その想定される最悪を回避し、最善にするために、どんな対策と具体的な行動が行われているのか。
過去のレポートはいらないので、今の現実と対策と実行案を知りたい。と切実に思っています。
その上で、未来を安全にするためにかかる経費については「税金」という形で出してもいいけれど、過去の失敗の尻拭いに使われる増税はお門違いだなあ、責任者で何とかしなくちゃなあ~仕事だからな~って、もはや民意ではないかと思うのですがどうでしょうか?不詳の子の失敗に、仕方がないとお金を出す、哀しい親の図でしょうか日本国民?でも国政は子供には出来ないですからねえ・・・責任ある大人、それもものすごく重い責任を果たすことを期待された大人が何万人と取り組んでいる、対価も高い仕事です。衆参両議員722人&国家公務員94万5千人。そして地方公務員398万7千人。三人寄れば文殊の知恵と言いますから、これだけいればそのネットワークにも期待です。

と中学生のようなブログを書いてるのは、「若い映画作家が海外で生き延びるにはどうすればいいのか?」を応募作品を拝見する合間に考えてしまうからです。
映画のマーケット縮小は何年も前から言われており、共同制作もこれから益々盛んになるでしょう。その気があれば、どこで暮らしても映画を創ることは可能です。
まず「つくりたい作品があること」が大前提ですが、一緒に動く「プロデューサー」(あるいは自分がプロデューサーを兼ねても)と、「言葉」の問題を何らかの方法で解決できればOK。その前に、日本以外で暮らすことを楽しめるか楽しめないか、があるでしょうが、そんな悠長なことを言ってる場合ではないかもしれない現実です。近年、映画は世界的に「つくりたい」という根源的な欲求に立ち返る、そんな自主映画の王道の時代がやってきた気がしていますし、新たな一歩を踏み出してほしいと思います。
そして、言葉は、映画のためには圧倒的に「英語」。
企画書を日本語と英語で用意することを習慣付けることを是非お勧めしたいです。言葉で助けてくださる人、きっといます。探してみてください。


2011/06/16 21:53:20

ここでも即戦力が求められている?

NHK朝のヒロインに堀北真希決定というニュース。尾野真千子、井上真央、多部未華子、宮﨑あおい、池脇千鶴(敬称略)と、映画を観てきた人には「おお!」というキャスティングが続く近年。「新人発掘を映画に託し、安心できる女優を登用?」という図に見えなくもなく、いろんな場所で「即戦力」が求められる昨今だなあと感じます。テレビドラマをきっかけに、彼女たちの出演した映画を遡って観る視聴者が増えると嬉しいと同時に、映画もテレビも、次世代育成のゆとりを持てる状況を工夫しなくてはなと、自らの足元をみてしまいます・・・
 
今、渋谷ユーロスペースで公開中の『スリー☆ポイント』。自主映画作家の代名詞のような山本政志監督の新作に、明日は柴田剛、富田克也、真利子哲也のこれまた根性入った3監督のトークがあるそうで、「引き継がれる自主映画魂?」という感があります。歴史の伝承を目撃しに、明日、渋谷へ!みたいな感じでしょうか。
*富田克也監督の新作『サウダーヂ』は吉祥寺バウスシアターの「爆音映画祭」で、真利子哲也監督の『NINIFUNI』は東京テアトルで体験できます。
先日、生きる映画史のような犬塚稔(1901~2007)の自伝(ほぼ100歳で執筆)を遅ればせながら読み、脚本家、そして映画監督として、サイレントから映画の黄金期、そしてテレビ映画の時代まで知るその生涯が如何に稀有なものかを感じました。「歴史」。そこから発見できるものが多いなと昨今感じています。本年、第33回PFFは、映画の歴史を裏テーマに、プログラムを構成できなかと考えはじめています。
勿論、有無を言わさぬ歴史の"最先端"は、PFFアワード2011作品。これら作品を中心に、10日間でどんな映画の歴史を紡げるか、刺激的なプログラムを目指します。
そして、いよいよ仕事が切羽詰まってきたので、このブログ更新もプログラム発表まであまりできないことを予測。
また、これからは映画祭に集中なので、最後に、先日お名前をあげた菅谷昭松本市長のインタビューをご紹介します。

http://www.fng-net.co.jp/itv/index.html

 
インターネットの情報を検索してるとき、文字で起こされたもののほうが、映像をみるより時間がかからず助かる、と感じてる自分のゆとりのなさを知る昨今。文字起こしをしてくださっているサイト(「ざまあみやがれい!」や「みんな楽しくHappyがいい♪」「小出裕章(京大助教)非公式まとめ」など)はありがたい存在です...って、映画映像を生業にする身で、とんでもない発言すいません。
第33回PFFでは、た~っぷり映画映像の力、お見せします!

2011/06/15 02:31:55

映画の命は長い

岩波ホールで、伝説の『原発切抜帖』が上映されることが話題です。3年前に逝去された土本典昭監督の作品をここから体験なさる方が増える可能性を想像して、嬉しくなりました。また、ポレポレ東中野では、先月、伝説の『夏休みの宿題は終わらない』が上映されていました。そのほか、九州の熊本にある素敵な映画館、DENKIKANで、映画祭が始まるニュースをもらいました。

全国各地で、原発に関連する映画の上映企画が次々と生まれて来ている様子です。

そして、こんな時にしみじみ思うのは、映画の「保管」「保存」の大切さです。
制作されてから10年20年の時間はあっと言う間に過ぎていき、いざ、久々の上映となったときに、「作品の行方がわからない」「上映に耐えられない状態になっていた」ということは珍しくありません。
PFFでも、かつて、8ミリフィルムで制作された(=ネガとポジが同じなため、この世に一本しか存在しない)作品が、どこかの上映会に貸したまま紛失した。という悲しい話を何人かの監督たちから聞いたことがあります。

作品さえ残っていれば、今やその命に終わりがないようにできるのではないか?とすら思える昨今の修復や保管の技術。生まれた作品の命の継続に意識的な製作者が、この機に更に増えるのではと期待します。

話は変わりますが、ドキュメンタリー映画『蟻の兵隊』の主役、奥村和一さんが亡くなられました。PFF事務局が毎年3月に所沢ミューズで企画参加する三日間だけの映画祭「世界が注目する日本映画たち」で過去にご紹介した作品です。
この「世界が注目する日本映画たち」、本年は311の影響で中止となりましたが来春は再開です。ご期待ください。

2011/06/14 00:58:27

試験前の中学生のように

切羽詰まっているときほど、全く関係ないことをやりたくなりますよね。
今、現実逃避に、映画館で観たい映画リストや、新居のインテリア案なんかつくちゃって、「中学生か?」と反省している深夜です。悪くすると色鉛筆探しそうです。「小学生か?」です。シールも貼るか?そんな馬鹿をやっていると、暫く自分に禁止を誓った福島第一原発情報収集の封印を解くようなサイトが送られてきました。妊婦の友人から「辛いけど最後まで読みましたが、ご存知でしたか?」と。

カレイドスコープ http://kaleido11.blog111.fc2.com/

視覚に訴える力の大きさを実感する、直視するのに勇気が必要な写真。
妊婦や幼児を持つ親たちにとって、この現実はどれだけ重いかと想像します。子供の給食を断る手続きや、プールの日を休ませる手続きなど、都内でそれがいかにマイノリティーな行動か知るという体験談も耳にします。長野県松本市の菅谷昭市長のように、知識と経験と現実把握力と決断力と行動力ある首長に恵まれた市民の幸せを羨む声も多いです。
「知識と経験と現実把握力と決断力と行動力」のある、今、現実を改善できる人材が、そこまで枯渇しているはずはないと信じたい日本ですが、そもそもそんな人物を「探し出す」術がないのかも・・・「今何が必要か」わかっている人が探す立場にいないとそうなるなあ・・・う~む、仕事はしみじみ何でも同じだなあ、問題点も同じだなあ、と、改めて身に沁みます。
しかし、21世紀の子供たちを20世紀の価値観の犠牲にしては国が滅びますから、ここは知恵の集めどころです。大人は常にそこを考えて生きていかなくてはですね。
ああ、しかし、国が"滅びる"とか"亡びる"とか、ここまで現実感を持って言う日が来るとはなんだか嘘みたいです・・・・

ところで劇場公開中の映画ですが、『NINIFUNI』是非!

2011/06/13 18:59:55

のんびり上映、どうでしょう

フィリピンのマニラから、バスで6時間ほどの高地に、バギオという文化芸術活動の盛んな都市があります。山形国際ドキュメンタリー映画祭でもお馴染みの、キッドラット・タヒミック監督の住む土地でもあります。そこに移住した日本人の友人と15年ぶりに再会しました。
私自身はフィリピンはマニラとケソンに20年近く前(ひゃ)、インディペンデント映画の状況をリサーチに行ったことしかありませんが、そのとき、一日に何度も遭遇した「無計画停電」が印象に残っています。自家発電を導入している場所もありましたが、映画学校など、停電中は上映中止(試写をしてもらっている最中でした)で、庭の、マンゴーがたわわに生る木の下で、のんびりおしゃべりをしました。
今もフィリピンでは、無計画停電は当たり前(工場や病院など、切実に困るところには自家発電装置完備)、上水道完備なし水汲み当たり前、自然災害からの自己復旧当たり前、の暮らしを、無理せずゆったり過ごしているそうです。健康であることや、助け合いが重要な生活でもあるでしょう。
この夏、日本各地で強制的な節電や停電が実行されるかもという報道がされています。個人的には極小の電力消費生活なので、健康を害してない限り不便は殆どないかと思っているのですが、仕事のほう、「第33回PFF」会期中に、残暑厳しい日があるかもと想定しなくてはなりません。タイムテーブルを思案しながら、これまで想定しなかった場面をあれこれ想像します。「電気のない映画祭はどうなるか?」「万が一の災害避難はどうするか?」「情報発信方法はどうするか?」などなど。危機管理は、刺激的でとても面白い仕事です。
安定した変わらない日常をキープすることに使うエネルギーが、「必要な場面」と「そうでない場面」がある、としてもいいのでは?と、フィリピンの体験を思い出しながら、考えます。
世界で一番時間を正確に守る国という冠の揺るがない日本ですし、勿論、映画を予定通りご覧いただけるよう、万全を期して臨みますが、万一停電になったなら、「PFF会場でのんびりおしゃべりしたなあ・・・」とあとから懐かしめるような、そんな映画祭にしたいなと、考えました。「電気がないと大変なことになるぞ」と脅かされながら暮らすより、不便を楽しめる状態をつくりたい。映画祭に集うのは、そんな人たちでは?とも思います。

ところで、最近ぽかーんとしたニュースはこれでした。

 党のイメージ刷新を検討する自民党改革委員会(塩崎恭久委員長)は10日、中間提言をまとめた。「古い自民党」から脱却しようと素案で首相経験者の公認禁止や派閥政治との決別を明記したが、派閥幹部や首相経験者の反発に加え、石原伸晃幹事長も認めず、これらの項目は削除された。

 塩崎氏は10日の同委で「どれだけ改革のメニューを盛り込んでもつぶされる」と委員長を辞任。谷垣禎一総裁直属の同委による改革が骨抜きに終わり、派閥やベテラン議員による支配をかえって印象づけた。

 同委は5月26日に発表した素案で首相経験者の公認禁止と派閥政治との決別を目玉に据えたが、「塩崎君が派閥を抜ければいい」(伊吹派の伊吹文明会長)、「無所属でも勝つ。お好きなように」(首相経験者)と反発が相次いだ。
.
漫画みたい・・・
「これまで慣れ親しんだ暮らし」を「変える」ことを楽しんでいける、その変化の恐怖を和らげるサポートができるのが、エンターテインメントであり、文化芸術なのだろうなあと思いながら、あまりの現実のとんでもなさに、企画書や、脚本を書いておられる方々はお悩みではないかと想像します。
こんなとき、もしかしてはっ!とその悩みから解放される映画は、『ふゆの獣』?ドロドロ恋愛映画by内田伸輝監督。
何故か今、この映画が浮かんできました。

2011/06/13 12:10:36

ハラがコレなんで

いよいよ今週末公開のハッピー映画『あぜ道のダンディ』に続き、11月公開を控え仕上げ作業中の石井裕也監督の『ハラがコレなんで』。この新作の国内外映画祭への窓口をPFFが行うことになりました。昨年は『川の底からこんにちは』『君と歩こう』、今年は上記2作品と、複数の長編作品公開が続く石井監督。PFFのHPでも、過去に入選なさった監督の新作公開を紹介するコーナーがありますが、年に数本の公開が続く人たち、おられますね。是非、その秘訣を知りたいと思い、第33回PFFで何か企画できないかと考えています。
毎年なんとかしたいと思いつつ「PFFアワード」のセレクションと、PFFの招待作品の決定時期が重なることを避けられません。本年もいよいよ数種類の企画を推進するため、寝食を忘れ痩せることを願う日々がまいりました。あわせて本年も、カルト・ブランシュ企画をご一緒することになりました。第33回PFFの初日9/20まで、ざっと3か月。いよいよ企画のラストスパートです。アワードの入選発表は7/10までに、招待企画も、7月に順次発表を目指しています。
そんな中、インドのデリー来春開催されるアジア女性映画祭から、日本の女性ドキュメンタリー監督の特集をしたいという相談が来ました。日本のドキュメンタリーには女性監督が多い。フィクションより遥かに。拝見できてない作品も多く、推薦などおこがましいことです。同時に、レンタルショップや図書館で立ちすくむように、自分の観ていない作品の山に途方に暮れるとき、映画を仕事にする重さと、未知の世界を外からひらかれる喜びが湧いてきます。一種のマゾ?と自問自答する瞬間です。

2011/06/08 15:39:01

3兆円を6211万人で割ってみる

「PFFアワード2011」応募作品を拝見しています。作品と作品の間のリフレッシュに、ちょっとニュースをみてみたら、「原発を全て止めた場合のエネルギー生産必要経費年間3兆円」という試算が政府発表されたとの読売新聞ニュースが出てました。その経費は、電気代として国民負担になる。とも(←でも、それって現状と何ら変わらないんですけど・・・)。
統計局の本日時点での発表によると、実態の掴めない岩手、宮城、福島の3県の就労者データを除外して、現在の日本の就労者人口が、6211万人とのこと。
3兆円を試しにこの数で割ってみると、ひとり年間約5万円弱。月間4千円強。
しかし、今後送電網の自由化が早急になされれば、安全でずっと割安な小さい発電を私たちが個別に選択できる未来が間違いなくやってきますし、既にその未来は夢レベルではない確実なものですから、落ち着いて長い目でみれば、安心と安全を買う金額として、5万円をどう判断するか?の私たちの価値観にかかってくるなと思いました。
「3兆円」と言われれば、ひゃ~!と冷や汗でちゃいますけど、就労者が増えれば、金額も下がりますね。就労率は、決して高くない日本の現状を、ちょっとこの計算でも認識してしまいました・・・56パーセントです。新たなエネルギー産業が生まれれば、就業率も上がる可能性がありますし、新しいことを始めるときの幸福感は、更に何かを生むのでは、と期待できます。
やっぱりここでも「さよなら20世紀」進行したいです。自分の中の勝手なキャンペーン名ですけど・・・
と、そんなことを書いている私は、実は、文化芸術に時間とお金を使って惜しくないと感じる社会を望むものです。そのために働いているものです。ですから、社会のインフラが壊れて、その再生が最優先の状況に、文化芸術の可能性をどう導入できるのか、実は涙がぽろりとこぼれる毎日でもありますが、とりわけ40歳以下、特にこれから母親になる人たちと、10歳以下の子供たちがさらされている危険と、それが更に悪化する可能性を想うと、背筋が凍り今起こっていることから目を逸らすわけにはいきません。
同時に、映画を中心としたクリエイティビティの力についても、考えずにはいられません。
たとえば先日お伝えした、渋谷TSUTAYA4階のPFFコーナー6/25変更ですが、今回は、雑誌「ぴあ」休刊も記念して、「雑誌で知ってみに行った映画、あのときみてて、ほんとうによかった映画」ということで、『東京公園』の公開迫る青山真治監督と、『監督失格』話題沸騰の平野勝之監督に登場願います。
毎回不思議であると同時に感動するのが、作品をセレクションしてくださる方々のリストが、決して重なることがないことです。それはそれは見事に違います。こんなときにも、映画の豊かさと可能性を実感するのです。100人いれば100種の人生。それを昇華する映画という媒体は、多様な社会の賜物ですから、生まれ続けて欲しいと願います。

*青山監督が初めて舞台演出に挑戦する『グレンギャリー・グレン・ロス(GGR)』天王洲銀河劇場にて、明後日10日が初日です!


2011/06/07 00:39:05

雑誌の「ぴあ」が休刊です

紙媒体の「ぴあ」を定期的にご覧になっていらっしゃる方が、今これをお読みになっておられる方の何割かは不明ですが、ぴあ誌の1972年から約40年に渡る存在が消えるのは、ひとつの時代の終わりを象徴することは確かだなあと感じています。また、この、雑誌「ぴあ」創立者が、もともと映画監督志望の映研の学生たちだったことから、創刊5年後の1977年にPFFが始まるのですから、たとえ、インターネットの「ぴあ」は続いても、歴史上のある寂しさはぬぐえません。同時に、雑誌「ぴあ」がなくなることで、PFFもなくなるのでは?とご心配くださる方々がおられるのは、この雑誌とPFFが一体化したイメージだったのだと再認識させられました。

ご安心ください。PFFは続きます。

休刊の発表以来、さまざまな方々が「雑多なエンターテインメントの情報をまとめてみることによって、思わぬ映画、演劇、音楽など、自分の得意分野でないエンターテインメントに出会うことができた」という体験を語っておられました。私自身も、幸い雑誌「ぴあ」が傍にあるオフィスにいたことで、食わず嫌いに陥らなくてすんだかな?と思うところがあります。また、現在、第一線で活躍する映画監督の多くが、雑誌で情報を得ていた世代だと感じています。6月25日に更新する、渋谷TSUTAYA4階のPFFコーナーでは、その世代の監督に、たとえば「ぴあ」で偶然見つけて、「あ~あのときこの映画をみておいて、ほんとによかった!」と今でも思う作品を紹介していただく予定でいます。企画詳細決定次第お知らせします。

ところで、先日、海外映画祭関係者が相次いで来日する季節だとお伝えしたのですが、いくつか情報が抜けていました。
まず、ロカルノのディレクターの名前が抜けてました。昨年ディレクターに就任したオリヴィエ・ペールさんです。また、ニューヨーク・リンカーンセンターのリチャード・ペニャさんは、今回は、ND/NFの選定ではなく、秋のニューヨーク映画祭の選定のための来日でした。ちなみに、ND/NFは、「ニューディレクターズ ニューフィルムズ」と読み、春に、まだNYでは馴染みの薄い、少数厳選された世界の精鋭監督を紹介する企画で、非常に注目度&重要度が高いものです。

この季節、海外の方と会い、自分の英語力の低下を突きつけられる厳しい季節でもあります。英語に触れる時間が減ると、英語力は衰えていきます。観る映画が圧倒的に邦画になっているのが、いささか辛い原因のひとつでもありますが(ある外国語の映画&音楽を浴び続けるのは、かなりの語学訓練になります)、仕事柄、邦画圧倒的多数は止まらないでしょうから、あとは勉強です。大人になったほうが勉強しなくちゃいけないなんて、子供の時は考えてもみなかった・・・なんだかこの20年、このことばかり思います。子供時代は、勉強の習慣を着ける時期だったんですねえ・・・あんなに時間のあった子供時代に、このことを知っておきたかった・・・

2011/06/02 13:31:19

エンターテインメントの力

今ちょっと私怒っています。それはもちろん、馬鹿馬鹿しさ1万パーセントの内閣不信任案提出です。怒るとますます中学生化してくるので、幼稚なブログですいません。国の危機を何とかしたいというより、自分たちの存在の危機を何とかしたいという感じに、茫然とさせられます。更には、漫画や小説にあるように、「これって、大きな問題から私たちの目を逸らすための大芝居?」とまで思えてきます。映画の見過ぎですか?
全く報道されませんが、三日前にはコンピューター管理法=サーバー法案が通過していますし、3月には、年間2000億円の「思いやり予算」を5年間米軍に支払うことも決定しています。「過去からの声を継続する」ことと、「管理をすること」が仕事と思ってるんだろうなあ・・・という現実を感じます。具体的に、国政に携わる人々は一体これからどんなことをしたいのか、どんなビジョンがあるのか、具体的に何が失敗だと認識し、何をどう改善するのか、明確なものが見えません。そこが怖くてたまりません。何故なら、ビジョンのない人たちは、過去に固執し、変化を恐れるからです。そして、国政に携わる人たちは、権力と国家予算を持っているのです。

映画の学校などで、たまにお話することがあるのですが、繰り返し伝えたいと思うのは、「映画の仕事」も他の仕事も、この世の中の仕事は全部同じであるということです。目的があり、それに向かう準備と実行と結果がある。そのプロセスをより早く、安全に、確実に、そしてよりよく進めるために、技術と経験を身につける。あるいは、秀でた人の力を借りる。全ての仕事は、コツコツとした地味な作業の集積です。でも、どうも、映画の仕事には特別なものがあるという幻想がある。勿論「幻想があるうちが花」とも言えますが、そこにある「特別なもの」は、多分、映画に限らず、「どんな苦労も苦にならない」かどうか、ということなのではないかと思います。そして、そのことも、まず、コツコツと仕事してみないと、発見できません。
でも、政治の仕事は、このプロセスのない場所?と感じるのです。それも怖さの原因のひとつです。いや、どんな場所にも、まともに仕事している人はいます。まとめて一括りにしてはいけないですね。ごめんなさい。

そんな「仕事のプロセス」というものを、具体的に目撃できるのが、もしかしたら、日に日に拡大を続ける「シルク・ド・ソレイユ」かもしれません。1984年にモントリオールから始まって、現在、世界各地に常設劇場を展開するこの新しいサーカス。映画のサーカスのイメージから、その"哀しみ"(フェリーニの「道」とかね)が少々辛く足を運ばず、誠に遅れてきた観客となった私ですが、彼らの非常に高度な仕事の技術に感服しました。
人を幸せにするために、自らの肉体と技術を使い、素早く、安全に、確実に、そして見事なチームワークで表も裏も仕事する姿を、多くの人に見てもらいたいと、今頃言ってる私です。(小学生の時にみたら、きっと中学校では新体操部に入ったね!と一瞬思ってしまいました。まあ、有り得ないでしょうけど・・)
そして、エンターテインメントの力は「命がけの仕事に必ず伴う哀しみ」にあるのでは、とも同時に思いました。古いタイプのサーカスにある哀しみは「漂泊者の哀しみ」という面が強いのですが、「シルク・ド・ソレイユ」のパフォーマンスにも、ある種の哀しみが漂います。それは、人前で肉体をさらし緊張と美を持続する高度な仕事=エンターテインメントにおける特有の哀しみではないかと思います。そこが、エンターテインメントが、一過性の楽しみでなく、観客の人生の投影を受け得る、持続性のある喜びをもたらす、人類に不可欠なものであり続ける由縁ではと思いました。

ところで、最近は、映画『トゥモロー・ワールド』のことが年中頭にぐるぐるしてます。311以来、あらゆるディザスター映画が記憶の底から浮かんできてるのですが、最近はこればかりです。

2011/06/02 10:03:24

さよなら20世紀

「ざまあみやがれい!」というサイトが、日々充実してきています。
このサイトをみていると、心臓が痛くなって、呼吸困難を感じることもあります。何故そうなるのか、考えてみると、それは、認識するには困難すぎる現実と、死の恐怖、への体の反応なのではないかと思うに至りました。現実が、あまりにも怖い。しかし、現実は消えてなくなってくれません・・・
しかしこのサイト、タイトルだけみると「何?」とひいてしまいます。が、忌野清志郎のステージでの一瞬を記録した言葉だという説明に、安心します。
清志郎がエンディングテーマを歌っている映画を昨年続けて2本みて(『ちょんまげぷりん』と『酔いがさめたらうちに帰ろう』)清志郎のプロフィールに、逝去という言葉が出てこないことを知りました。この世界認識、すごいと思うと同時に、その存在に改めて打たれました。
怖いものは何もないように振る舞った20世紀は終わり、21世紀は、20世紀的手法は全く無力だと思い知らされることが相次いで起こっています。現実を再認識せずには、何も生まれません。過去の経験は、役立ちません。「黙って俺の言うことを聞け」的体質は、過去の遺物です。
PFFアワード2011の応募者は、1980年以降生まれが圧倒的です。これからの人生の人たちばかりと言っていいでしょう。まだ子供がいない人が多いでしょう。責任を先送りして、問題を先送りにする体質の仕事に、つかない、つけない人、受動的ではなく、能動的に生きようと志している人、ゼロから何かをクリエイトすることができる人が多いでしょう。しかし、主に昨年制作された今年の応募作品には、「何かが起きることを待っている」世界が多い。が、今、私たちはそれらの作品を「何かが起きた」あとで見ています。何かが起きたあとに生まれる映画。それは、来年、あるいは再来年に見ることができるわけです。私は、私たちは、今からそれが楽しみでたまりません。同時に、この状況で観てもすごい映画、との出会いも、楽しみでたまりません。
9月の第33回PFFでの上映作品、7月中旬には、招待作品も含め、ラインナップの発表を目指しています。ご期待ください。

2011/06/01 00:30:16

海外からプログラマーの来日する季節です

ただ今PFFアワード2011審査真っ最中の私たちですが、昨年まではこの時期、アワード作品のラインナップ決定後ひと月が経過し、英語字幕のあるものはそのまま、ないものは、同時通訳しながら、海外のプログラマーにお見せしていました。
ということを思い出したのは、6月、7月に来日する海外の映画祭の方々からの連絡が届き始めたからです。
バンクーバー&ロンドンの作品探しにトニー・レインズさんが、ロカルノ国際映画祭のディレクターが、NYのニューディレクターズ・ニューフィルムズのためにリチャード・ペニャさんが、釜山国際映画祭アジア映画プログラマーのキム・ジソクさんが、連続して来日します。追って、トロント国際映画祭、モントリオール国際映画祭と、続くことでしょう。どうやって各氏に作品をみてもらうか、これから取り組みます。

昨年10月のブログで、私自身の海外の映画祭参加の居心地悪さについて告白してしまいましたが、映画祭運営と、映画祭への作品出品との両立という自分の仕事のおかげで、映画祭を客観的にみる訓練もされているのかな・・と感じることもあります。
映画祭、特に国際的な大きい映画祭を使いこなすことが出来る人は、それほど多くはありません。そんな中で、河瀬直美監督は、ひとつの確固たるポジションを持った大きな存在だなあと、カンヌの報道をみながら、改めて思いました。同時に、世界の注目が集まる場所で、自分の創作活動のアピールをきちんとすることができる日本人のクリエイターが100人いたら、これからものすごく大きな力になるなあと、切実に思いました。
そんな人が増えるための活動の一端にどう寄与できるか、PFFの課題はまだまだ増えていきそうです。

2011/05/27 01:13:38

まさか我が身にこれが・・

起きるとは予想もしてなかったことが起きました。
国民年金支払いの確認書が届きましたら、見事にこれまで支払った年月の三分の一しか記録されていませんでした。かつて加入していた厚生年金に至っては、全く記録されていませんでした。
「これか~」とため息が出ちゃいました。
追い打ちをかけるように、クレジットカードの請求書が来たら、日本にいた日に、海外での買い物が記録されていました。
「出た~」と声が出てしまいました。
どちらも、解決までにどのくらい時間がかるのやら、やれやれです。
引っ越しも控え、仕事との両立に人生で二番目くらいに慌しい数か月が予想される昨今の私ですから、そんなときのいつもの妄想「家事をしてくれる人がほしい・・・」が湧いてきます。「執事いたらいいな~、『バットマン』シリーズのマイケル・ケインみたいな、夢のような執事~」とかね。そういえば、執事映画のベストの一本と言える『日の名残り』をモチーフにしたという最近の舞台『鎌塚氏、放り投げる』面白かったです。

が、まさか我が身にこんなことが起きるなんて・・・と茫然とする、なんて言葉じゃ全然足りない、そんなことを言う余裕もない、今回の震災と原発事故。3か月近くを経ても、正確に現実を把握して、対処方法を決めて、長期的な展望を構築して、ということにすら困難を極めている政府の様子をみると、年金問題と同じく、長い長い自民党政権時代に仕事の仕方を忘れてしまったんだなあ・・・硬直してしまったんだなあ心も体も・・・という現実を知らされます。そのうち仕事のカンを取り戻すことができる人もいるのでしょうが、そもそも仕事したことがない人の層のほうが厚い=取り戻すカンもない状態なのかもしれない~と笑うに笑えず、泣くに泣けません。とりあえず、議事録のない会議も多いことがわかってきましたし、震災と原発に関するすべての会議は、生中継いかがでしょうか?

今夜、「映画屋とその仲間たち」のボランティアバスが出発しました。
これから隔月で一年間、映画関係の有志がそれぞれ被災地で行いたい活動を持ってこのバスに乗り合い、それぞれ、現地との関係を結んでいくのです。発起人は二人の映画プロデューサー。ボランティア活動には団体名が必要なため、上記の名称です。PFF事務局からは、今回は1名参加しています。来週その体験報告を受け、次回7月から、この先長く続くことになるであろうPFFにとっての被災地訪問計画を固め、実行していく予定です。


2011/05/25 01:26:11

食い倒れが趣味です

無趣味な人間だと自分を思うのですが、もし"趣味"というのが「どんなに時間やお金をかけても惜しいと思わないこと」だとしたら、食べることが一番"趣味"に近いかな?とふと思うときがあります。
すごく健康に悪いですが、「食い倒れツアー」とか組んでしまって、国内外で「地元の人より詳しい!」という驚嘆の言葉をいただくことも度々あります。外食の機会には、つい店を選ぶ役を引き受けることが多いです。身を以て申し上げることができますが、健康にはよくない趣味です。バランスをとろうとか考えてしまい、自炊はとっても健康的なものをつくるんですが、まあ、根本的に食べ過ぎ飲み過ぎで、役にたちゃしません。

そんな私ですから、住むところ、旅するところには、美味しいものがあってほしいと願うので、美味しいもの率の高いアジアの映画祭に行くチャンスには、心が弾みます。一方、映画祭のメッカ、ヨーロッパは、あまり食指の動かない街が多いのが正直なところです。
しかし、流石にパリは美味しい店の多いこと多いこと。その期待でフランスの他の都市に行くと、美味しい店の少ないこと少ないこと。が、フランスと言えばやはり映画祭はカンヌ。「毎年PFF作品の出る映画祭がパリにあれば、少しは行く機会もあるのにな~」と、ちょっと残念であったりします。が、既に思い出になってしまったパリの美味しかった店の数々を思い出させた店が、人形町にありました。美味しい店の多い人形町(住もうと思っていたこともあります)ですが、その店は、フランス人のおかみさんがいるカフェで、おかみさんのご両親がパリで経営していたカフェの雰囲気をそのまま日本で再現したかったのだそうです。素朴でいながら繊細で温かい料理や、お店の人の人柄に触れると、食いしんぼうなら必ず通過している池波正太郎氏のエッセイに登場する、思い出のジャンの店は、こんな感じだったのではないか?とひとり想像したりします。

・・・美味しい、とか、思う、とかだらけの文章になってしまいました・・・・とほほ。
フランスのことを考えてしまったのも、まだカンヌのことを考えているからだと思います。特に、ラース・フォン・トリアーの記者会見をみて、映画監督の質疑応答について考えていました。
「質疑応答に答えることは、誰にでもうまくできるということではない」というのが、私がこの20年の映画祭生活で学んだことです。今回のトリアーに対する質問が聞けていないので、あの質疑応答について把握できているとは言えないのですが、映画祭運営の立場から言えば、「質疑応答が下手すぎる」監督です。
質疑応答はうまいほうがいい。なぜなら、素晴らしい話は作品をより一層輝かせるだけに留まらず、広く、映画監督や、映画というものへの敬意を生む、からです。
そもそも「監督は映画の完成責任者である」と「映画祭世界」では定義されています。プロデューサーではなく。
そして、監督の話を、その作品を観た上で更に聞くのは何故か?と言えば、映画監督という人は、その映画に現れた世界を更に超える、豊潤なもの持つ人であるとの期待があるからです。歴史、哲学、美学のみならず、今この世界への感応力や、ある種のシックスセンスも期待されていると言ってもいいかと思います。
映画監督、大変です。
企画から完成まで血を吐くような思いをした数か月のあと、更に、宣伝で、映画祭で、質問責めの数か月がある。
けれども、質疑応答の経験は、映画監督にとって、客観的に自分の作品を再把握できる、稀有なチャンスでもあると、映画祭は考えています。

2011/05/23 15:01:15

気づくとカンヌ終了していました

また一か月以上更新していませんでした。
(この科白、多すぎますね・・・)
その間に第64回カンヌ国際映画祭終了しました。
今年は、日本経済新聞の古賀重樹さんのレポートで、行かなくても行った気分になれるという評判です。
カンヌがらみでは、『一命』公開に向けて、現在ごく一部しか入手できない原作者・滝口康彦さんの著作が復刻されることを願っています。

年明けに家族に不幸があり、それに続く311と、歩いて戻った自室のモノのすさまじいでんぐり返りなどで、なんだか薄闇の中にいるような茫漠とした日々が続いていたのですが、このところ、やっと、光の中を歩いている実感が湧いてきました。
幸い、本年のPFFは会期を秋に移行しておりましたので、第33回PFF、9月20日の初日に向け、いよいよ本格的に準備開始です。「PFFアワード2011」も、15名の予備審査員の情熱をもって、遂に審査佳境に入り、7月初旬に入選作品の発表です。

そして、ふと気づけば、昨年『キャタピラー』で前夜祭を飾ってくださった若松孝二監督が、すでに『三島』『ホテル海燕ブルー』の撮影を終わろうとしています。すごいパワーです。
実は、生身の人間のエネルギーに触れたいと、最近は、本多劇場、コクーン、明治座、王子小劇場、草月ホールなど、舞台を巡る時間の多かった我が身をいささか反省しました。

しかし311では、人間の、社会の、組織の、設備の、弱点や隠されていことが、次々と露呈して唖然とすることが多く、だんだん感覚が麻痺しそうで怖くなります。
一方で、核廃棄物の廃棄場所がないことが、一般常識になったことは、よかったなとも思っています。
まさか20世紀型社会に逆送して、困ったことは弱い場所に押し付け自分は安泰、という発想をする40歳以下の人たちがいるとは思わないのでちょっとつぶやくと、各戸にひとつ、厚い鉛の箱を用意して、廃棄物を引き受ける。もちろん企業や役所は、消費電力に応じ、巨大な箱分を引き受ける。あるいは、建物内に廃棄場所設置をする。そんなリアルなことが必要な時代ではないでしょうか。
耳に入ってくるのは、「あれ?中国や東欧の映画に繰り返し語られてきたような、もしかして共産主義的官僚的中央集権国家なのかしら日本?」とのけぞる話の数々。映画をたくさんみる利点は、いろんな社会事情を知って、自分の生活の解釈に引用できることもひとつありますね。

2011/04/18 00:35:46

台北滞在中

人口2300万人の台湾からの膨大な義援金に驚いて、突然お礼の旅にやってきました。
仕事含めて4回目の滞在ですが、回を重ねる度に、しみじみとその暖かさ、人の心のゆとりが身にしみる街です。(台湾では台北にしか来たことがないのですが、他の街は更に良いとも聞いています)
これまで一度もゆっくりした自由時間がない台北滞在でしたので、今回は、気候も散歩にまさにうってつけの薫風ですし、最新アート探訪というテーマもつけてみました。

例えば、「崋山創意園区」という、廃酒造所を改造したギャラリー・ショップ・レストランを含めた広大な芸術空間へ行きました。ここは、まだ劇場や野外音楽堂などを建造途中ですが、既にオープンした一角に触れるだけでも、北京の芸術村を連想させる新しい息吹を感じる場所です。
とても画になる空間ですから、結婚記念写真を撮るカップルがそこかしこにいました。
余談ですが、記念写真は、巨大なサイズにして飾るのが決まりだそうです。*玄関を開けた正面の壁一面がその写真、という新婚夫婦の姿が映画に出てきたりしますね・・・

「台北当代芸術館」も訪ねました。
ここは、現代美術館で、1930年代に建てられた赤煉瓦作りの小学校(終戦後は市政府が使用)を利用した趣のある場所です。コンセプチュアルアートの企画展をやることが多いそうで、今回も「芸術は爆発だ」的なテーマで若い作家たちのグループ展が開催されており、あきらかに芸術系の学生のクラス集団での来場もありました。
クラシックな外観に、メタルとガラスのフィーチャーチックな内装のギャップが面白い入り口ロビーで購入したチケット(入場料は日本円で約150円)が、まず、傑作。携帯の写真でぼやけてあまり役に立ちませんが、銀色の、手榴弾を模った、キーホルダーにもなる厚手のチケットです。Image033.jpg
これ、日本でつくったら、多分単価500円は下らず、実現の可能性ゼロです。
更に、このチケット、手榴弾のピン部分が折れるデザインになっており、入場の際は、ピンをもぎられます。そのアイデアに心から感動しました。
香港でも台湾でも、印刷物の凝っていることにいつも驚かされますが、今回もすっかり参りました。考えてみれば台湾は、韓国と同じく徴兵制を敷く戦時下体制の国。手榴弾を使ったことのある男性が国民の大半でした。ディテイルにも詳しいですね。

今回は市内にある松山空港という、もともと国内線の為の空港に到着しました。
聞いてはいましたが、日本からのフライトは、放射能チェックがあります。試しにこの一ヶ月頻繁に着ていたコートのままチェックゲートを通りましたが、問題ありませんでした。
地元のコンビニやスーパーでは、まだ義援金の呼びかけが続いており、そのためのポスターも貼られています。瓦礫の前で呆然とする親子のシルエットです。あるスーパーでは、「日本製品を買おう」という棚を設定していましたが、売り上げははかばかしくなさそうで、「この製品は全て2/27以前につくられたもので安全です」という張り紙がありました。
夕方のニュースでは、福島第一原発からの、東京(250キロ見当)、大阪(500キロ見当)、北海道(600キロ見当)の距離を説明する図が示され、近年台湾から、いえ、中国語圏からの旅行者人気No.1(スー・チー主演の北海道が出てくる映画『狙った恋の落とし方』の大ヒットから)の「北海道」の人々にインタビューしていました。「北海道は安全なので、是非訪問してほしい」と地元は訴えますが、海外からみると、その距離の違い、危険度の違いがイメージしにくいことを改めて実感しました。確かに、普通の暮らしをしてたら、日本の地図は全く頭に入ってないだろうと思います。日本でも?ましてや、海外ですから・・・


映画関係者の間で、今回の震災に対して出来ることから始めようという動きがあります。山形国際映画祭では、山形映画センターと一緒に映画の巡回上映を始めたそうです。東京の映画人グループ(呼称未決定)はボランティアバスの定期便を出す計画をすすめています。詳細決定次第、お知らせしたいと思います。

2011/04/11 17:04:10

音楽とともに1万5千人デモ

kouenji_4p_2.jpg昨日の午後2時から6時まで続いた、高円寺反原発デモの写真を、内堀さんから受け取りました。

映画祭を生業にしている私ですから、全く政治的な人間ではありませんが、人類の危機には無関心ではいられません。これまで、ロンドンでロックフェスと連動した反原発デモ、デモの根付いたベルリンでラブパレードと、無差別爆撃反対デモと、3回参加したことがありますが、日本では昨日初めての体験をしてきました。そして、警官や公安など、警備の多さに驚きました。

高円寺はピースなデモだったのですが、「デモ」というだけで「怖いもの」、「危険なもの」という前提があるのが日本なのかなあと、海外での明るく気楽な雰囲気を思い出しました。
・人の集まる広場をなくす
・大学を郊外に分散させ学生の集会をなくす
という政策が日本では70年代から着々と進められてきたことは聞いていましたが、集会を徹底的に嫌悪する社会が長い年月かけて形成されたのだな~と、昨日改めて納得しました。

デモって、気軽に「こんなこと考えてる人がこんだけいますよ」と示す行動ですので、例えメディアで報道されなくても(この報道のされなさっぷりも凄いですけど・・・)、その場にいた人の記憶や感覚が拡がることが重要だと感じています。「反原発だから、東京電力に抗議しなくては意味が無い」「代替エネルギーを提示できないのに反対してはいけない」という考えも多いそうですが、問題は東電のみならず原発推進の国を支持してきた、今20歳以上の投票権を持ち、様々な方法で考えてを伝えられる私たち全て。そして、エネルギー源としての原発をやめる選択をすることは、ちっとも難しいことではないのですが、様々な不安からこれまでの価値観を変えることの難しい人が多いこと、その不安の排除が難しいことを痛感しています。

と書いていたら、今、また大きな地震が起きました。
福島と茨城です。
福島には、危機的状況の原発があります。素人には手に負えません。
そして、茨城以北には、まだ実態が掴めないほど多くの、不安な暮らしをしている人がいます。
「危険なものを何らかの事故や悲劇の前に取り除く」それは普通に人のとる行動だと思います。
危険なものがすぐそばにある不安。そのことのほうが、これまでの暮らしを変える不安より大きい、と感じている人は、多いと思います。

2011/04/09 14:29:05

数字

ブエノスアイレス国際インディペンデント映画祭での『家族X』コンペティション部門出品にあわせ、吉田光希監督がアルゼンチンへの旅に出ました。カナダ・トロントでのトランジット数時間をあわせ、片道30時間を超える旅です。往復で3日が費やされると思うと、ちょっと腰が痛くなりました・・・
ブエノスアイレスまでの「作品」の旅は何度かありますが、「監督の招待」は初めていただきました。得がたい体験であることを祈っています。

私の南米体験は、10年前のブラジルのサンパウロ(短編映画祭に参加しました)しかありません。LAで乗り換えて向いました。映画祭への海外からのゲストは集団行動をさせられること、車の窓にも鉄格子がつけてあること、休日に開かれた骨董市の価格の驚くほど高いこと、などから、よく聞く「南米の貧富の差は激しい」という印象は変らなかったのですが、実は南米の中産階級層は拡大を続けており、現在貧富の差が最も大きいのはロシアとアメリカとイランだという話を聞きました。特にアメリカの変化は大きいらしい、と。

米総人口の1%の最富裕層が、全国民の年間収入合計額の25%を稼ぎ、全資産の40%を持所持している、と。1985年にはこの1%の最富裕層は、総収入の12%の稼ぎで、総資産の33%を所持していた。つまり、1%の最富裕層の収入はそれから18%増加し、同時に中産階級の所得が減少している、と。
そして、この「18%」という数字は、米国の経済成長に近い数字であり、つまるところ、経済成長の果実はすべてトップ1%の金持ちの懐に入った=富の独占が加速している、と。
また、この独占状況は、19世紀より悪くなりつつあるのではないか、と。
更に、連邦議員のほとんどが1%の富裕層に所属している、と。
平等、チャンス、という言葉がアメリカの形容詞につかなくなって久しいのも、むべなるかな、と納得する数字です。

お金ついでに、原子力安全委員会の委員報酬がひとり約1,650万円(年収)ということを聞き、「この金額の制作費もない映画が沢山ロードショーされるてるよう~!」としみじみしました。
本来"億"単位欲しい映画製作費を、その10分の1,100分の1で乗り切るのは、もう珍しくない現実は苦いのですが、しかし一方で、同じ1,650万円という金額で、もっと多彩で可能性のあることが映画には出来ますね。そのことを追求して行こうと改めて思います。

もうお金の話は置いておいて、少しほっとした数字です。
東北大学には、夏目漱石の幼少からの書籍資料が驚くほどの数収蔵されています。実は私は漱石ファン。できれば東北大学図書館で漱石資料の番をして残りの人生を過ごしたいと妄想したりするのですが、残念ながら司書の資格も、学芸員の資格もありません(映画祭ディレクターは資格のいらない仕事です)。それで、ずっと漱石資料の損傷がどの程度がが気になっていたのですが、仙台の友人が親切に確認してくださったところ、5冊ほど補修しなくてはならないものが出た程度だとのことでした。
二度と大きな地震が東北地方で起こらないことを改めて祈ります。

東京は、ここ数日の強風と本日の雨で、折角の桜が花見に興じることも出来ずに散っていっています。被災地の蔵元から、宴会をしてお酒を飲んで欲しいというメッセージが出ていましたが、本日は利き酒会に参加します。また好きなものの話で恐縮ですが、東北の日本酒はしみじみ美味しい。振り返れば、一番愛飲しているのは福島のお酒で、奥の松、飛露喜、大七など、呑み飽きることがありません。

ところで明日、高円寺でおおきなデモが予定されています。
近年PFFの会場でオフィシャルカメラマンをやっていただいている内堀さんが写真を撮るそうなので、週明けにご紹介します。
http://www.magazine9.jp/matsumoto/110406/

2011/04/08 18:43:14

「PFFアワード2011」へのご応募ありがとうございました

3月31日の消印有効で締め切りました「PFFアワード2011」公募へ、602作品のご応募をいただきました。
沢山のご応募、ありがとうございました。
応募受付の終了した作品は、随時、エントリーフォームに記された"応募責任者"宛に、作品受領の葉書を御送りしております。ご確認ください。

現在、一次審査が始まっています。
15名の審査員が1作品を最低3名で観、討議の上推薦する「一次審査会議」にて一次通過作品を決定。続き、一次通過作品は15名全員で拝見した後、長い時間をかけて行う「二次審査会議」にかけられ、入選作品が決定します。
7月上旬決定予定の入選作品は、応募の皆様へ郵送でお知らせすると共に、HPにて発表します。

昨夜の揺れは東京でも強く、怖い時間を過ごしました。東北地方では、深夜の激しい揺れや警報に、どれだけ長い恐怖の闇夜を過ごされただろうかと、胸がふさぎます。また、原発に対する海外の敏感な反応のニュースも今後更に増えそうです。
世界がすっかり変化する前に創られた作品を、変化の後に拝見する本年のPFFアワード2011のセレクション。審査する側の眼が一層問われる日々になりそうです。

2011/04/05 17:26:35

東京の夜・ベルリンの夜

昨夜香港から帰国し、東京の夜がぐっと暗くなったのを再確認しました。
多分、1960年くらいの雰囲気では・・・と数々の映画を思い出しながら予測する、映画原理主義の私です。その頃に都内でロケした映画の街並のように、ぱっとみたところ、どこにどんな店が展開しているのかわかりにくく、なかなかエキゾチックで素敵で、ヨーロッパの街のようです。

香港映画祭の昼食会で、アメリカのインディペンデント映画特集「REDISCOVERING AMERICAN INDIES」で上映される『Jess + Moss』の監督&スタッフと同席になりました。ベルリン国際映画祭でも上映されたこの映画、同じテーブルにいた『FIT』の廣末監督や『世界グッドモーニング!!』の廣原監督も、同じくベルリンで上映された奇遇もあり、暫くベルリンの話をしていました。監督のClay JeterはLA在住。ベルリンに魅せられ、3週間滞在したけれども、もっと居たかった、と。「3週間旅せずベルリンだけで退屈しなかったの?!」と驚くと、地元の知り合いが出来て、街の様子がわかってきた数日めからは、毎日夕方5時くらいに起きて、夜の映画祭上映映画を2本ばかりみて、そのあとは、地元の人と一緒でなくては場所がわからないような店に入り、世が更けるにつれて盛り上がる店、夜中に開く店を、次々にはしごして朝が来て、ホテルに戻って朝食を食べて、寝る。という毎日を送り、その、決して旅行者にはわからない店と、集う人々に、すっかり夢のような時間をもらったそうで、LAに帰りたくなくてしょうがなかったそうです。
なるほど。
私のベルリンの日々とはあまりに違います。

でも、今の東京の夜の町並み、Clayの魅せられた秘密の店が隠れているベルリンに似た雰囲気が、いいですね。


汚染された水を海に流してしまったのね・・・という驚きにうちのめされた一日が過ぎています。が、放射性廃棄物をドラム缶に詰めて海底に沈め続けたイギリスはじめ各国の前例もありますし、海に捨てるということを、普通の方法と考えている層があることを再認識させられた感があります。
イギリスといえば(なんだか無理やりな続け方ですね)、イギリス映画復活といわれるように、現在公開中の『わたしを離さないで』『英国王のスピーチ』は、確かに大変見ごたえがあります。


2011/04/03 01:05:44

ジャッキー・チェンと香港国際映画祭

香港ではやけにブログの更新が頻繁なのですが、それは、宿泊場所にごく近い上映会場がふたつあり時間にいささか余裕があるからです。こんなことが可能な映画祭は、あまりありません。

本日の最後は、石橋義正監督の新作『Milocrorze-A Love Story』で締めくくりました。「I SEE IT MY WAY」という特集の4作品の一本で、ひとことで言えば、"ちょっと変わった映画を、若い観客向けに特別上映する"企画で、英語がまだ堪能ではない若年層の為に、中国語字幕投影のサービスつきです。(香港国際映画祭は基本的に英語字幕のみの上映です)、本日はイースター休暇を控える週末の夜でもあり、オープニングやクロージングに使われる大劇場が満杯の盛況。日本公開はこれからの、この『ミロクローゼ』、山田孝之さんのひとり3役が素晴らしい!ファンになります。鈴木清順監督も拝めます。(注・マイキー一家は出てきません)

既に報じられましたが、ジャッキー・チェンの呼びかけたチャリティーコンサートで、2億円の義援金が集まった香港。そのほかにも、ショッピングモールの入り口に、「日本のために祈ろう」と書かれた愛の木(←勝手に命名。写真を撮る習慣がないため、これまた写真なしですいません)が置かれていたり、スターバックスで、ある時間帯の売り上げを義援金にすると発表すると長蛇の列が出来るなど、さまざまな善意をいただいている香港。石橋監督は、上映後のQ&Aの最後に、「お伝えしたいことがあります」と、香港からいただいたさまざまなサポートに、深くお礼を伝えて、舞台を去りました。大人な監督の行動に感動しました。

ジャッキー・チェンは香港国際映画祭とは殆ど縁がなく、映画祭スタッフからはあまり話しが出ません。また、昨今香港でジャッキーは「テレビで養毛剤の宣伝をしているおじさん」という認識で、10代20代はジャッキーの映画をみたこがないのが普通、という話を数日前に聞いて、ちょっとうろたえたばかりでした。・・・・しかし日本でもそうですね。冷静に考えると。
かつて映画の中で、ジャッキーが縦横無尽に駆け回った街も、殆ど面影がない近年の香港。更に香港を象徴するフェリーも廃止の方向と聞き、寂しさが増します。

311まではテレビを全くみない生活をしていた私ですが「もしかして速報はテレビニュースが一番早いかも」と、一生分(ちょっとオーバー)みていたこの数週間。印象的だったのは「わからないことを喋るとすぐばれる」ということがよくわかったこと。そして「コントロールされた情報しか流れない」のは本当なのだな、と確認できたことでした。
また、この3週間続く「わからない者が発表し、わからない解説者が解説し、わからないメディアが質問し」を海外でみると、その不思議さが際立ちます。そこだけ「平和な日本」が脈々と生きてるのを感じるのです。
数々の映画の中で、危険地帯はフリーランスのジャーナリストしか行きませんし、わかっている専門家は、必ず"狂っている"とパージされますが、「現実も同じかも~」とか口に出したくなったりして、映画原理主義になりそうなので、この辺でテレビにお別れです。それは、今、集中的に映画をみることが出来たことで、映画の力を、再確認できているからかもしれません。
テレビと映画、その役割は完全に別であり、比べるものでは全くありませんが、ひとつのメディアとして、映画は世界の変化に敏感で有り得る、人類の信頼に応える強靭さを持ち得る、時間と思考の詰まった媒体になりえる、と確認できてきた気がします。
そしてあと一日で香港国際映画祭ともお別れです。

付記:韓国映画『The Journal of Musan』は、日本公開が決定しているそうです。迂闊ですいません。必見作品です。


2011/04/02 09:52:55

台湾映画特集など

全く違う話題で、エドワード・ヤン、ホウ・シャオシエン、ツァイ・ミン・リャンという台湾の3監督の話を、イギリスの映画評論家トニー・レインズさんとした矢先に、台湾からの義援金が100億円を超えたと知り、あの小さな国の日本への親愛に、たじろぐほどの感動を覚えました。どんな風に感謝を伝えればいいか、考えています。
近年、台湾映画がまた興味深くなってきたと盛んに言われています。上映日と滞在日があわないため、拝見できていませんから恐縮ですが、香港国際映画祭でもTAIWAN CINEMA RETURNSという小特集があり、「The Forth Prortrait」「Hotel Blackcat」 「Return Ticket 」「When Love Comes」の4作品が上映されています。そして、素晴らしいタイミングで、台湾映画を多数収蔵している福岡市総合図書館の映像ホール・シネラで、丁度昨日から一ヶ月かけて、台湾映画の歴史をたどる特集が展開されています。貴重な作品満載ですので、是非多くの方に観ていただきたいです。
http://www.cinela.com/#f

PFFの福岡開催会場であるシネラは、通常通り上映が行われておりますが、仙台での会場であった仙台メディアテークからは、施設の復旧にどのくらいの時間がかかるか不明との知らせがきています。
3月11日は、西と東をふたつの別の国にするような天災、と続く人災、だったと海外にいると改めて感じます。東京あるいは、静岡から東は、恐怖を体感し、今後の生活を変えていくことが必要であり、同時にそれが新しい大きな希望という実感がありますが、そこから西は、これまでの日常を継続可能ですので、感覚に大きな違いがあり、それが今後の日本だと思います。福岡市総合図書館と仙台メディアテーク、この二つのホールの状態の違いが、東西の差異を象徴しているかもとふと思いました。

そして、昨日の話題に繋がりますが、香港では、日本の状況を日本人に聞く人は、殆どおりません。気遣いもあると思います。が、こちらから積極的に話をしたほうが、自分たちの状況を客観的に整理できますし、現状は知られていないことも、同時に理解できて役立つとも感じます。
最も知られているのは、勿論、津波、そして最も恐れられているのは、原発事故です。一方、エンターテインメントの自粛は、全く知られていません。が、映画祭世界では、「沖縄コメディ映画祭」の開催で、日本は大丈夫だという理解もあり、エンターテインメントは対外的な印象付けに役立つことを改めて実感しています。

これから、東は、放射能という静かな見えない脅威との向き合い方を探しながら、静かに生活の改革をすすめていく必要がありますが、西は、別の道を進んで欲しいなと思っています。「大丈夫」だと国内外に伝えるためには、西の平常化と、東の福島への遷都が、私が非常に効果的だと思う国の再建です。
311前には戻れないことを前提に、子供たちに危険のない社会をつくるための方法を構築しなくてはなりませんが、人類にかつて例のない今回の状況ですから、どこにも何のマニュアルもありません。私たちがゼロから始めるしかないのだなということをしみじみ再認識するのも、海外という距離を置いた場所にいるからこそだという気がします。そして、月末のイギリス王室の結婚式に日本の皇族が参加しないことをいささか残念に思ってます。日本の状況を、広く伝える得がたい機会だからです。
海外に出る機会をお持ちの方は、出来るだけ計画を変更せず、出来るだけ外に出て交流を続けることが日本のために有効だなとも感じる香港滞在です。


2011/04/01 09:47:04

PFFアワード2011公募締め切りました&香港

日本も暖かくなってきたそうですが、香港も本日は珍しく青く輝く、暑くなりそうな空です。
「PFFアワード2011」の公募は昨日3/31の消印有効で締め切りました。ご応募ありがとうございました。これから、1作品を3人で拝見する一次、全員で拝見する二次、と続く審査を15人で取り組み、7月にはご応募いただいた皆様に入選作品の決定をご連絡できる予定です。
暫くお待ち下さい。

さて、3月11日のあと初めて参加した国際映画祭となる香港ですが、「邦画の上映後の質疑応答で、災害のことを聞かれるか?」ということを日本にいるある監督に尋ねられました。
私が目撃できた質疑応答はまだ『世界グッドモーニング!!』のみですから、事例がなさすぎるのですが、観客からの質問は、そこからはじまることはなく、監督のほうから話す。というケースが多いのではないかと予想しています。
例えば、今回、『世界グッドモーニング!!』の廣原監督は、上映前の挨拶から、「災害前につくられたこの作品を、災害を体験したあとでどう感じるか確認したいから皆さんと一緒に見る」と話しました。
そして、上映後には、「すごく古い映画をみているように感じた」と。
この作品に、何かに対する恐れや、崩壊の予感を込めていたことが、現実のものになってしまったことがまだ自分でも整理できていないこと、また、自分自身でもそして観客にも満足してもらえていたラストシーンが、災害のあと、非常に辛いシーンになったと。それは、鳥瞰で主人公を捕らえていくシーンです。
製作当時は、そこには優しく見守る視線があると自他共に感じていたが、今回、ヘリコプターから撮られた助けを求める人々の姿を見たあとは、残酷なシーンにみえたこと、など、言葉を捜しながら、もどかしげに話していました。

また、一昨日の授賞式での想田監督の受賞コメント、以下をご覧ください。↓
http://documentary-campaign.blogspot.com/

職業柄、映画監督と言葉を交わすことの多い私ですが、優れた映画監督(のみならずクリエイター)は、未来を感応すると実感しています。3月11日以降やりとりのあった監督たちは、皆残らずこれまでの日本の価値観が大きく変容することを、極端に言えば、これまでの生活はありえないこと、変えなくてはならないことを当然として受け止めています。また、過去の企画や脚本が、全く別世界のものにみえる感覚を持っている様子です。自分にとって映画とは何なのか、自分はこれからどう活動していくのか、を、多くの人と話して整理していく場所を持つことが、今とても重要なのではないかと感じますが、映画祭はその場所のひとつだと、今これを書きながら思っています。

香港国際映画祭は、バラエティに富む映画祭です。プログラムのセクション数、コンペの数、イベントの数はアジア1.2を争う規模ですが、特に、若い観客の創造に力を入れていることを、昨今強く感じています。
今年面白かったのは、「Festival Tour」。映画ファン10~15名で構成されたグループを20組構成し、映画批評家や研究家が一組づつに担当配備(?)され、映画祭から5作品をセレクト、鑑賞したあと、その映画についてディスカッションする。というツアーです。映画をみて、語る。その行為が、観客を育てることになると同時に、映画監督にとっても、得がたい機会なのだなと、改めて映画祭の役割を感じる今回の滞在です。

さて、本年はロッテルダム国際映画祭に行けなかった私。昨日、ロッテルダムのコンペティションでグランプリ(タイガーアワード)を受賞した話題の韓国映画『The Journals of Musan』をやっと拝見しました。
「喧嘩のシーンを本気でやりたかったので、人に頼むわけにはいかないから自らが主演を演じたが、顔を腫らし、鼻血を出しながらの撮影が多くなり、かえってスタッフに心配をかけて、やりにくくさせて申し訳なかった」と話していた人気沸騰になりそうなPark Jung-bum監督。きっと日本でもいづれかのアジア映画祭で上映されるでしょうから、是非ご覧ください。この作品含め、脱北者を取り上げる作品の増加が興味深い韓国映画です。
ほんとに日本にはたくさんアジア映画を上映する映画祭があって嬉しいなあ~見逃しても何とかなるな~と実は思ってしまう不埒な私。プログラマーの皆様、よろしくお願いします。
そして、チベット映画の『Old Dog』と『The Sun Beaten Path』も是非上映してください。(見逃したので・・・)


2011/03/31 12:43:44

香港国際映画祭に来ています

3月20日に始まり4月5日に閉幕する、香港国際映画祭に参加しています。
所沢で開催する「世界が注目する日本映画たち」が終了してからの渡航を組んでいたので、終盤の参加となりました。が、丁度コンペティションの表彰式も昨夜だったので、ノミネートされた監督たちとも同じ時期の滞在が可能となりました。

コンペティションの結果としては、PFFから出品した『世界グッドモーニング!!』は国際批評家連盟賞のスペシャルメンションに留まりましたが、ドキュメンタリー映画を対象にした「人道賞(HUMANITARIAN AWARD FOR DOCUMENTARIES)」グランプリを、想田和弘監督の『Peace』が受賞しました。
日本公開が迫る『Peace』。是非ご覧ください。

香港も異様な寒さが続いており、道行く人々はすっかり冬支度です。
が、元気な中国本土からの買い物客が観光バスを連ねてショッピングモールを埋め尽くし、ホテルの近くのシャネルのお店では、入場制限をして長い列をさばいています。
ああ、この購買意欲に溢れる人々を日本に招聘できたらなあ・・・と思わずにはいられませんが、日本を避ける雰囲気は日に日に高まり、キャセイパシフィック便で招待された監督たちの帰国フライトが、関空行きに変更になるかもしれないということで、今、気を揉んでいます。

見えない恐怖の中どう暮らしていくか、どう映画に向きあっていくか、考える香港の日々です。

2011/03/24 12:27:08

PFFアワード2011締め切りまで1週間です

東京では水パニックが始まっていますが、乳幼児と、母体となる女性たちを最優先に、おおざっぱに言って、30歳代までの人たちに、安全な水を確保してもらいたいです。
日本に潤沢に水はありますから、近日中に東京も落ち着くと思います。そして幸いにも、私は水道水を飲んでも心配のない年齢です。年とることは、気楽になる側面も時にはありますね。

さて、「PFFアワード2011」の応募締め切りが、来週に迫りました。
3月31日木曜日の消印有効です。作品の確実な到着のために、郵便書留でのご応募を御願いしていますが、郵便事情が困難な地域もあると思いますので、ご確認ください。
が、皆様に覚えていただきたいのは、PFFアワードは続くということです。今回を逃しても、次回があります。落ち着いて作品に取り組んでいただけることが、私たちの望みです。


2011/03/23 14:55:08

東北に首都を

仙台でPFFを開催してくださった仙台メディアテークが建物の損傷で閉鎖されていると聞きました。頻繁な避難訓練の成果か、怪我人なく退避できたそうです。
東京で、各地の様子を見聞きしているのは大変居心地の悪いものです。
同時に、「復興」を思うとき、首都を福島あるいは宮城に移すのが最も力強い、効果の高い方策なのではと思えてなりません。
私たちの生活のあらゆる面が、大きな転換期を迎えていると感じます。

が、日常は続いています。
20日から始まった香港国際映画祭に、PFFから『世界グッドモーニング!!』と『FIT』がアジアン・デジタル・コンペティションに選ばれています。廣原監督と廣末監督が上映と表彰式に参加します。
両名ともキャセイパシフィック便の渡航招待をいただいているのですが、出発が成田空港から羽田空港に振り替えになりました。羽田と成田、ふたつの国際空港の話題が出るたびに、三里塚闘争を考えます。そして、三里塚を撮り続けた監督のひとり、小川紳介作品の数々が、アテネフランセで収蔵され、観る機会が整ったのはしみじみ素晴らしいことだと思い出します。

「PFFアワード2011」の応募作品が例年より早いペースで集まっています。昨年までの「12月1日締め切り」を目指して製作されていた方々からのご応募だと想像しています。審査準備も整い、開始を待つばかりです。

本年の芸術選奨文部科学大臣賞の映画部門に、『ヘヴンズ・ストーリー』で瀬々敬久監督が、新人賞に、『トイレット』で荻上直子監督が選ばれました。両作品とも昨年のPFF招待作品だったこともあり、嬉しいニュースでした。

そしてまた、「復興」という課題に戻ってきます。長くたゆまない活動が必要だと痛感します。遷都は効果的だと、やはり思います。


2011/03/17 22:37:07

何も言葉がみつからず・・・

東北地方太平洋沖地震により被災された皆様と、ご家族の皆様に、心からのお見舞いを申し上げます。
出来ることなら1週間前に戻りたい、と、日本中が願っている今、何を書かけばいいのか内臓がねじ切れるような苦しさを感じています。

PFF事務局スタッフは、全員大丈夫です。PFF関係の各地の方々とも連絡がとれました。
事務局の入っている建物も安全で、お預かりした作品は万全です。ご安心ください。

世界中から、お見舞いメイルが届いています。
国内外への映画の紹介と上映への働きかけは、継続して行っています。
PFFは、変わらずこれからの映画のつくり手のために活動しています。
PFFアワードの公募も、映画祭も、変わらずあります。
今回の一時休業のような、震災の影響から活動に何らかの変更が生じる際は、随時お知らせします。

多くの想いの詰まった作品の数々を預かり、不特定多数の方々が集まる映画祭運営、に従事する者として、改めて責任を考える日々であり、映画の力について想いを巡らす日々であり、力ある映画祭を構築することを模索する日々です。

被災された方々の想像を超える体験、寒さ、不安、無念、悲しみ、そして希望の発見を思うと、ほんとうに何も言葉がありませんが、これからもPFFは映画に向き合って行きます。

そして今、福島原発事故の収束を強く祈っています。

2011/03/04 00:45:52

ベルリン国際映画祭に行ってまいりました

古い話題で恐縮です。
そして、1ヶ月以上の更新なし、恐縮です。

昨年の、吹雪による空港閉鎖と、哀しく夜汽車に揺られ二日間かけてのベルリン入りの悪夢はもう繰り返されず、心底ほっとしましたが、やはり寒い寒いベルリンの冬。
建物の中はぬくぬくですから、会場移動のたびの厚いコートの始末が面倒で、丸めてバッグに入れられる薄いコートにしようと、つい、東京で思いついたのが墓穴。戸外を歩くのに泣けました。ベルリンでは、暖かいコート必須を再学習しました。

今回は、3作品と5名の監督スタッフキャストと揃い、さまざまに点在する会場を廻りました。
「家族x」の吉田監督と「世界グッドモーニング!!」の廣原監督(本年のベルリン国際映画祭上映作品中最年少監督でした)が上映後の質疑応答を体験したのですが、会場ごとの客層の変化、反応の変化に大いに刺激され、巨大な映画祭を肌で感じる毎日になったようです。
詳細は、これから各人のレポートにお任せするとして、
到着して最初に「話題作だな」と実感したのは、ヴェンダースの3Dピナ・バウシュドキュメンタリー「Pina」と、タル・ベーラの「the Turin Horse」。
両作とも日本公開決定の様子ですので、是非ロードショー体験してください。

the Turin Horseは、少ない英語字幕上映に参加したのですが(コンペ上映作品はドイツ語字幕上映がメインになります)待ちかねた世界中の映画祭関係者が一堂に会しましたね・・・という会場風景で、観客の期待が熱く渦巻く時間でした。この作品が公開される日本。ほんとに日本の映画ファンと、上映環境はすごいなあと誇りに思います。
ニーチェの神経に深刻なダメージを与えたエピソードをタイトルに持つthe Turin Horse、ニーチェへの再注目が高まる現在を実感します。

そして、岩井俊二監督と瀬々敬久監督という、高い作家性と技術と人気を持つ監督たちが、殆ど自主映画と言っていい挑戦作(「Vampire」と「へヴンズズトーリー」)を製作していることが改めて世界に伝わるのを目撃できたことも、今、映画を志す人たちにとって、今回のベルリンの刺激体験となることを感じました。
ベルリン国際映画祭。もしかすると、世界三大映画祭の中で、最も現在をあらわす、先鋭的な映画祭となっていくのではと期待しました。

*瀬々監督の「ヘヴンズストーリー」は、再々ロードショーが始まります。


2011/01/26 18:57:33

PFFアワード2011公募間もなく開始です!

新年のご挨拶を多くの方にいただきながら、あっというまに1月が終わりそうな、慌しい毎日で失礼を重ねています。
ちら、ほらと、PFF終わるという噂が・・・という言葉が年賀状にあらわれていますが、いいえ大丈夫です!ちゃんと続きます。
ご心配をおかけして恐縮です。
コンペティション部門「PFFアワード2011」の公募受付開始も2月1日に迫りました。
これからは、3月31日を、PFFアワードの新たな応募締め切り日としてご記憶くださると嬉しいです。

そして間もなく、オランダのロッテルダム国際映画祭が始まります。
1996年以来、欠かさず通って多くの世界のインディペンデント映画をみせてもらったロッテルダムですが、遂に連続参加記録をストップして、本年は参加を断念します。残念です。多種多彩な映画を、確実に、そして便利に観ることができるロッテルダムは、大量に映画をみたい人には気楽で嬉しい映画祭です。多くの人に参加して貰いたいと思っています。
しかし、2月のベルリン国際映画祭には参加できるよう、ただいま鋭意努力中です。本年のベルリンには、PFFからフォーラム部門に3作品が招待されていますが、そのうち、『家族X』と『世界グッドモーニング』は監督&スタッフが参加します。
昨年は寒波で辛いヨーロッパでしたが、本年は温暖な気候を期待したいものです。

最後になりましたが、12年ぶりに会期を変更する2011年のPFF。どうぞ皆様、本年もよろしく御願い申し上げます。

2010/12/28 17:29:43

PFFアワード2011公募期間決定しました

本年も残すところあと4日という、この年の瀬の発表になってしまいましたが、「PFFアワード2011」公募期間が決定しました。
2011年2月1日(火)から応募受付を開始し、3月31日(木)当日消印有効で締め切りです。
応募要項などに、変化はありません。
作品の確実な受け取りのために、必ず郵便書留でのご応募を御願いします。
そして、この、3月31日締め切りは、これから暫く変らず継続の予定です。

公募期間が従来の"12月1日締め切り"から、三ヶ月後になったことを示すように、「第33ぴあフィルムフェスティバル」の開催も、夏から、秋に変更します。1999年から12年間、年末年始返上で展開した審査が、これからは、ゴールデンウィークを返上で、ということになりました。
入選作品の発表は、初夏を予定しています。
作品のご応募をお考えの皆様は、3月31日の締め切りを覚えてください。
応募用紙は、現在最終準備中。
1月中旬までにはPFFのホームページにアップします。

ただいまPFF事務局は渋谷へと引越しの最終準備中。今度はぐっとコンパクトなスペースになるので、自宅に引き取るものの山とも格闘中です。
公私ともに、整理整頓の2010年の最後の日々。新年をさわやかに迎えられる予感がします。

それでは皆様、よいお年をお迎えください。


2010/12/07 13:16:19

嬉しいことがたくさん

ミヒャエル・ハネケの新作『白いリボン』が全回満席でスタートしたそうです!
すごく嬉しい・・・・。銀座テアトルシネマです。
そこから歩いて約10分の、ヒューマントラストシネマ有楽町では、「ミヒャエル・ハネケの軌跡」と題して、これまでのハネケ監督映画を全て集めることに成功した映画祭が展開されています。
凄いです。
ハネケの存在が、ごく普通にそこにあることが、やたらと嬉しい12月の東京です。

そして、熊切和嘉監督の新作『海炭市叙景』が、フィリピンのシネマニラ映画祭で、グランプリの「リノ・ブロッカ賞」を受賞したというお知らせをいただきました。更に、最優秀俳優賞が、『海炭市叙景』に出演した全ての俳優に対する「アンサンブル」賞として贈られたそうです。なんとも粋な審査員ではありませんか!いや、勿論映画のあらゆる出演者が光っているからですが、審査員の悩みと、「アンサンブル」賞という解決法をみつけたときの悦びを感じます。

リノ・ブロッカは、91年に交通事故で不慮の死を迎えたフィリピンの伝説の巨匠です。その作品は、フランス人プロデューサーの管理のもと、なかなか観ることが難しいと言われていますが、日本では、今はなき国際交流基金アセアン文化センターで展開した「東南アジア映画シリーズ」や、アセアン文化センター廃止後の、国際交流基金アジアセンターでの「アジア映画講座」で90年代に数度紹介されました。そのときのプログラマーが、現在、東京国際映画祭「アジアの風」プログラミング・ディレクターの石坂健治さんです。PFFでは、その運営を担うことで、多くの東南アジア映画を体験する幸運に恵まれました。
(と書いていて、80年代~90年代は、圧倒的にアジアとの交流が日本のテーマだったのに、21世紀のこの対アジアへの急速な撤退が怖くなりました・・・・)

ブロッカ作品は、世界中の映画祭で現在もぱらりぱらりと上映が行われています。どこかの映画祭でブロッカの名前をみつけたら、是非体験してください。『マニラ・光る爪』が圧倒的に有名ですが、実は私は、『スター誕生』にかなり呆然としたことを、思い出します。

そして、この『海炭市叙景』のブロッカ賞受賞ニュースを石坂さんにお伝えしたところ、香港アジア映画賞の新人監督賞は「エドワード・ヤン賞」だし、フィリピンは「リノ・ブロッカ賞」だし、各国が偉大な監督の名を冠した賞を出しているが、日本はどうかしら?という話しが出ました。

"新しい世代の監督に贈る賞に冠されて、世界中の映画監督が悦びを感じる名前"
・・・・う~む。日本には素晴らしい監督が多すぎて、ひとつに絞るのは難しそうですね。日本の全ての映画賞に映画監督名を!というのもあるかもしれません。

と、そんなことを考えているときが、一番気楽なのですが、実はただいまPFF事務局は、年末の渋谷への引越し準備で修羅場なのに重ね、短編映画の製作、来春の所沢イベント「世界が注目する日本映画たち」準備、嬉しくもおそろしい恒例になってまいりました、1月のロッテルダム国際映画祭と2月のベルリン国際映画祭への作品出品準備と、バタバタと追われています。

1月4日から、PFF事務局は東京都渋谷区東1-2-20 住友不動産渋谷ファーストタワーに、ぴあと一緒に引越しです。電話番号も03-5774-5296にかわります。1月4日には新オフィスの片付けを終えて、馴れない渋谷生活が始まります。


2010/11/26 15:08:52

独身男

フィルメックスに別れを告げて、PFF名古屋開催に向います。
見逃した一本『独身男』が大層面白いらしいです。
コンペの1作品なのですが(私は10本中4本しか拝見してないのですが)、北京電影学院を卒業したハオ・ジェ監督の長編第1作で、故郷を舞台にした独身の老人たちの物語だそうです。

現在中国のオフィシャルな人口比は、女性1に対し男性1,2とのこと。
色々な統計を集めた『世界の国 一位と最下位』という岩波ジュニア新書で知りました。
この本が、面白い。
たとえばこの数字。世界初の老人大国になった日本の大きな課題は、小子化の歯止めですが、一組の夫婦がつくる子供の平均数は、1977年の統計で2.19人。そして、2005年は2.09人(国の発展の為には、2.1人が最低目標だそうです)。つまり、27年間の変化は、それほど大きくありません。
一方、30歳~34歳の未婚率は、1975年から2005年までの30年間に、男性は14.3%から47.1%へ、女性は7.7%から、32,0%へ、と、明らかに大幅に増加しています。
つまり、晩婚、非婚が珍しくない社会となっているわけです。
というわけで、現在世の中では婚活という名のもと、「結婚の奨励」がされている様子ですが、婚姻に関係なく、子供を持ち、育てることの出来る社会になることも、効果的なのではないかと感じます。

話しは戻って『独身男』ですが、この作品のみならず、フィルメックスで拝見した作品は、素人の、そこに住む人たちが演じるという映画が多かった。近年の日本の自主映画に、俳優を使う作品が増えていることと対比して、非常に面白く感じました。
それから、24日にデジタル上映が機材の問題で中断するアクシデントがありました。私も丁度会場で体験したのですが、最初、プロジェクターのオーバーヒートかと思いました。同じ現象が起きるからです。が、デッキの問題と聞き、ますますデジタル上映は怖いという感を強くしました。
デジタル上映は、上映素材、デッキ、プロジェクターのみっつの相性によって、全く動かない、音が出ない、画が出ないということが、簡単に起こります。高機能になればなるほど、面倒です。バックアップ機材を用意する費用も膨大です。映画祭世界では、実は、フィルム上映が一番シンプルでありがたい気持ちです。
上映中断、中止、払い戻しなど、映画祭にとって一番胃の痛い問題を乗り切るスタッフの皆様を労いたくなる夜でした。
あ~、デジタル問題を考えていたら、私も胃が痛くなりました・・・

2010/11/22 18:48:57

PFFもボランティアの募集を始める気持ちです

東京国際映画祭期間はびっしりと他の仕事に覆われ、全く作品を観ることが出来ず、ほんとにかなしかったため、少しゆとりの生じた東京Filmexは出来るだけ参加しようとしています。久しぶりの映画祭参加に、ちょっと緊張したりして・・

東京Filmex

今回初めて開会式から参加しました。初日だけ東京国際フォーラムで開催する!その仕込みと撤収の大変さを想像して眩暈がしたり、藤岡朝子さんの通訳に改めて感動したり、ボランティアの活躍に感心したりして、「PFFも"ボランティア無し体制"を変える必要があるなあ」と、しみじみ感じました。時代は変る。これまで"責任"の意味でボランティアは登用せず、スタッフを雇うことを続けてきたPFFですが、来年の開催は、ボランティア募集できるよう準備します。
実は私、東京Filmex第一回の審査員だったのですが、そのとき、アピチャッポン・ウィーラセタクン作品と、ロウ・イエ作品の競り合いとなり、『ふたりの人魚』がグランプリとなりました。今回オープニングの『ブンミおじさんの森』をみながら、両監督とも活躍していてよかったな~と感慨深いのでした。が、しかし、それ以来コンペ作品を全てみることの出来た年のないだめな私。折角日本で、日本語字幕つきでその年の話題作見ることができるチャンスである「映画祭」を、もっと自分に生かさなくてはです。

そして、『ブンミおじさんの森』に加え、ジャ・ジャンクー監督の『海上伝奇』、『鉄西区』のワン・ビン監督の初フィクション映画『溝』と、3作品の製作クレジットの思いっきり重なっていることに、改めてしみじみと欧州の映画製作援助の重要性とにその対象外の日本を再認識しました。日本のプロデューサーの資金獲得の困難さを、折々に痛感させられます。
また、今日まで拝見した作品は、「皆、自分の道を行くのだ!」と繰り返し告げられる作品群でした。同時に、各作品には、いかにして各人が切り取ると決めた瞬間を残すかの創意工夫があふれています。そうして、世界の映画監督たちが挑む挑戦は、非常に近しいということにも気付かされます。「集中的に映画をみる」ことの意義を再認識すると共に、映画祭の存在理由の数々を改めて考えます。

ところで、最近「日本再鎖国はどうか?」と耳にすることが多くなった気がします。ほんとに鎖国したら、現状では飢餓が起きますね。一部の特権者たちを除くと、生活は激変でしょうが、どうも多くは現状維持が可能という夢想に成り立っているのではと思わされます。ワン・ビン監督の『溝』は、飢餓、抑圧、思想や言論の統制、などを具体的に描き、言論、思想、表現、信教などの自由が保障される生活を送れる我が身の幸運を感じさせます。

というわけで、東京では、幸運にも、大小問わず絶えず映画のイベントが展開されています。
本日知人から送られてきたこの情報は、墨田区でのイベントです。
廃校を会場に、映画と音楽とで構成されるようです。
http://pia-eigaseikatsu.jp/news/0/41374/

一方で、観たい映画をそう簡単に観ることができない土地があります。
しかし、各地で積極的に映画上映を実現しようと活動している人たちがいます。
例えば本日(過去に北九州でPFFを開催していたことがあるご縁から)2週間後に北九州で、イ・チャンドン監督と青山真治監督の対談もある映画祭が開催されるお知らせをいただきました。
http://kitaqcinema.jugem.jp/

ここで日本で東京Filmexに次ぎ2番目となるイ・チャンドン監督の新作『詩』の上映もあります。告知時期が遅れたため、非常に苦労している様子です。是非多くの人に伝えていただければ、そして参加していただければと思います。

また長くなってしまいました。
最近の映画以外の驚きは、やっと読んだ『鞍馬天狗』が倉田典膳というアナキストの物語で、革命以後の社会構築の難しさを描いた物語であることを知ったことと、世界のベストセラーになった『肥満と飢餓―世界フード・ビジネスの不幸のシステム―』に描かれた状況の多くは、既にかなり早くに映画に描かれていることを知ったことです。
21世紀に次々と表出するおそろしいことは、ほぼ全て20世紀には気付かれていたのだなと改めて思いました。(紀元前に既に気付かれていたことも多いでしょうが・・・)また、前世紀のSF小説も現実を先取りしていて、怖かったなと。例えば映画になった『ソイレント・グリーン』(1973年)は、間近なのかも・・・と、ちょっとぞっとしたりするのでした。

そして木曜日からは名古屋でPFFが始まります。
是非ご来場ください。PFFアワード2010監督大集合で今年最後の上映を飾ります!

2010/11/18 19:25:02

ミヒャエル・ハネケ映画祭が実現するそうです

haneke01.jpg昨年のカンヌ・パルムドール受賞の『白いリボン』公開にあわせて、ミヒャエル・ハネケの過去の全作品を堪能できるハネケ映画祭が実現するそうで、ものすごく驚き&感激してます。
す~ば~ら~し~
未体験の方は、是非、この機会に見知らぬ人々とスクリーンでハネケ作品を鑑賞していただきたいなあと願わずにはいられません。
ハネケ作品ほど、ひとりで部屋で観ることが似合わない作品はない、と、心から思います。
(ひとりで観てしまった人も、是非再体験していただきたいです)

このチャンス、多分、最後になるのではないかと思えますので、12月4日の『白いリボン』(銀座テアトルシネマ)公開と同時に、ヒューマントラストシネマ有楽町で始まるというハネケの特集、駆けつけてください。

と、思わず言ってしまいましたが、実は、詳細の発表は今週末だそうです。あと数日、全貌の発表を待ってください。今、問い合わせされても現場は困ってしまうかと思います←じゃあ、話すなってことなんですが、すいません。早くお知らせしたかった・・・

今週はフィルメックスと、仙台でのPFF作品上映、来週はPFFin名古屋、再来週はハネケ、と、盛りだくさんな年末がひたひたとやってきています。


追伸:詳細発表されました
http://www.ttcg.jp/human_yurakucho/topics/2010/eigasai_contents/


2010/11/16 16:18:18

40日ぶりに更新いたします・・・

はっと気付くと、11月中旬でした。
この40日で、「暑い」から「寒い」に季節は完全に移りました。
春と秋がなくなるって、ほんとうかもしれません。

40日を振り返ると、今年初めての休暇で北京に行き、4年ぶりに風邪を2回ひき、渋谷TSUTAYAのPFFコーナーを更新し、来春の所沢ミューズでの企画をし、PFFの京都開催、福岡開催、神戸開催が終了し、東京国際映画祭も終了しました。
今週は東京FILMEXが始まり、仙台でのPFFアワード作品上映他があり、来週はPFF最後の開催地名古屋での3日間が始まり、そして、年明けのロッテルダム国際映画祭とベルリン国際映画祭へのPFF関係作品の出品が決定し、11月が終わる予定です。
12月は、眩暈がしますが、いよいよ事務局の引越し準備修羅場です。

例年、12月1日はPFFアワードの公募締め切りでした。が、来年度、「PFFアワード2011」の公募発表はまだ準備が整いません。多くの人の合意の必要な来年度の開催時期の最終決定がまだだからです。ただ、単純に"10月1日から12月1日"という、この12年間の公募スケジュールが、数ヶ月後ろにずれていくことになる予定です。
そして、新たなスケジュールを11月末には発表できるかと予測していましたが、それも少し遅れそうです。ともあれ、発表から数ヵ月後の締め切り設定になるのは間違いありません。

ところで、一年か二年に一度、北京への旅を楽しみにしています。
今年は二年ぶりとなってしまいましたが、食べることに集中する人たちとの食べ物だけが目的の単純明快なツアーです。今回は現地の友人入れて総勢10名参加を実現できた、かつてない充実の旅となりました。
日程が、反日デモ勃発を報じられる日々と重なったため、驚いたことに帰国のフライトはこれまで経験したことがないほどの空席だらけでした。多分、どのフライトも総勢20名しか搭乗していないと思われました。驚きはしましたが、のびのび座れてラッキーでした。
そして、現地の人々は、冷静でした。大きな問題から眼を逸らすために、色々な情報が利用され、上のレベルに押し上げられていることを知っているからです。
それはともかく、北京の食は凄いと思う私に、台湾の食が一番と常に言う友人がいます。
台湾も色々な面で違う素晴らしさに溢れていて、先日観た『トロッコ』(遅くてすいません)で、台湾にもまた行きたくなるのでした。


2010/10/02 14:25:21

PFF来年も開催ですよ

先日スタッフから、公募についての問い合わせの際に「来年もありますよね」と小さな声で聞かれることがある、と聞きました。
ほ~
あります。来年も。
しかし、会期が少し後ろになる予定です。
あわせて、公募の締め切りも少し延びます。
11月末の発表をお待ちください。

年末に、ぴあの移転に伴い、PFF事務局も一緒に渋谷に引越しします。その準備もあり、11月12月は大騒ぎです。年明けに、新しいオフィスで(ほんとに新築のビルです)色々新しくスタートです。

2010/10/01 00:33:35

ポン・ジュノとジャジャンクーが・・・

うわ、前回からまた一ヶ月経ってしまいました・・・・
そしてもう映画祭の季節、秋。PFFも全国を旅しますが、
東京では、東京国際映画祭と、Tokyo Filmexのラインナップが発表されました。山形国際ドキュメンタリー映画祭の開催は今年はありませんが、近年の作品上映が行われています。行けないままに、ポルトガル映画祭は終わってしまいました。

そして、PFFからも作品を3本出品しているバンクーバー国際映画祭が始まります。今年も一足先にカタログが送られてきましたので読み始めましたら、コンペの審査員に、ジャジャンクーとポンジュノが!本年のPFFアワード入選作品から『世界グッドモーニング!!』と『白昼のイカロス』がコンペに選ばれたのですが、彼等に作品を観てもらえるのは、何と素晴らしいプレゼントでしょう!2007年以来バンクーバーには出かけていませんが、しみじみ懐かしくなりました。
また、アピチャッポンの短編プログラムが、「アピチャッポンと平林勇」と題して、本年のPFFで招待作品としてご紹介した平林勇監督とふたりの特集になっているのにも感動。
一方で、近年海外映画祭への参加がめっきり減っている自分を改めて痛感しました。それは、ラインナップにかつてなく未見の作品を多く感じたからです・・・・

少なくとも、年間6~8箇所の海外の映画祭への参加が普通だった日々は遠く、ふと気付くと本年はまだ3箇所のみ。更に、そのまま増えずに終わる予感がします。
特に、今年は釜山国際映画祭のディレクター、キム・ドンホ氏がいよいよその役を去る年。世界中から映画祭関係者が集まると予測しますが、その釜山に行く予定もありません。なんということでしょうか!我ながらびっくりです。
で、色々考えてみました。

多分、大きな原因は、その「居心地の悪さ」かなと思いました。
私自身の、他の映画祭への参加ポジションがいささか複雑になりがちなこともあり、海外の映画祭との付き合い方に困難を感じることがあります。
海外の映画祭に参加する際に、私の立場は、映画を観る場合は映画祭のディレクター&プログラマー、 作品を提供する際は映画プロデューサー、となります。というのも、PFFという映画祭を運営していると同時に、PFFアワード作品や、PFFスカラシップ作品を中心に、作品を映画祭に出品するという、他の映画祭にはない活動をしているからです。
また、PFFは、日本の自主映画がコンペティション応募の9割以上を占めるため(「3名以上が応募作品を最後まで必ず観る」という審査のプロセスを考えると、応募本数の多さを競うことは不可能なため、長く海外への積極的な公募を行っていないので当然なのですが)、日本語での上映をメインとし、英語字幕をつけることを国内上映では優先していません。

さて、世界の映画祭での交流とは、「作品を招く」「人を招く」という交渉が大きな割合を占めますが、PFFの場合、簡単に言えば、私が招かれて、それに対して招き返すということを設定するのが非常に困難です。PFFのコンペの審査員は、日本人優先。招待作品部門は、年によって企画を変え、明確に定期的な招待枠を設定していない。上映は日本語中心。海外のジャーナリストや映画祭関係者の招待枠はない・・・・と挙げていて、改めて、ありゃりゃ~と頭を抱えました。
おおざっぱに言えば、映画祭予算は優先的にPFFアワード作品とPFFスカラシップ作品の上映のために注ぎ、人的国際交流が優先されない現状では、「招かれたら招きかえす」という基本的な交流が、日に日に重荷になって足が遠のくというのがある、という現実を噛み締めました。

映画祭は映画関係者にとっての社交場。そしてもうひとつ、ビジネスや政治の世界と同じく、欧米人の価値観で構築された場。そこでの交流にエネルギーを使うことを、再度考えなくてはと考えながら、他にも色々考えなくてはならないことが多すぎて、考える時間をつくることにしました。
映画祭開催期間の変更は、PFFではこれまで1989年と1998年とに2度行ってきましたが、色々な環境の変化に伴う業務のスムース化をはかる為にも、2011年、第33回も、多少会期の変更を計画しています。発表は11月下旬を予定。あわせて「PFFアワード2011」の公募期間も締め切りが先になります。

さて、この一ヶ月は、PFF全国展開のプログラミング、チラシ製作、宣伝準備などに忙殺されていましたが、間もなく一段落します。HPもアップし、各地でチラシ配布も始まりました。来春の所沢でのイベント「世界が注目する日本映画たち」の企画始めました。来年は、3/18,19,20日の開催で、3/18(金)は初めての試み"前夜祭"として、異色の企画をすすめています。TSUTAYA企画10/25更新回始めました。映画専門大学院大学で、市山尚三さん、高橋洋さんとシンポジウムに参加しました。映画祭は"特別"な仕事ではなく、"普通"に仕事なのだと伝わるといいなと思いました。キネマ旬報のインタビューを受けました。変化し続けるキネマ旬報を感じました。こうして時々人と話すことで、自分の仕事が整理されることを痛感したふたつの体験でした。無料上映でカンパだけで成立するということに興味をひかれ「911映画祭」に参加してみました。911の朝トロント映画祭からの帰国ができなくなった体験があるからかもしれません。11の演劇や音楽や芸能の舞台を鑑賞しました。いくつかの舞台で"技術"は表現を高みに上げることを痛感しました。そして10月。京都のPFFです。Twitterやらなくちゃ駄目だよと言われてます・・・・


2010/08/29 22:03:45

あの監督がこんな作品を推薦しています

『悪人』
『ゲゲゲの女房』
『あんたの家』
TSUTAYA渋谷店4階のPFFブースをリニューアルしました。 これから2ヶ月は、「その本気さにやられました」というテーマで、『悪人』の公開を控える李相日監督、『ゲゲゲの女房』の公開を控える鈴木卓爾監督、そして、各地で上映されるPFFアワード2010入選監督から、『あんたの家』の山川公平監督の3名に、強烈な印象を残した映画を5作品づつ推薦いただきました。 実はこの企画、今年2月から二ヶ月ごとに展開しています。「何をみようかな」と迷ったときに、ともかくこのブースにある作品を片っ端からみるといいよという企画です。 ここで、これまで推薦いただいた作品を一挙にご紹介します。 非常識に長くなってごめんなさい。お暇なときに、ちょこちょこご覧いただけると嬉しいです。 さて、現在展開中のPFFブースでは、3監督がどんな作品を推しているか、是非渋谷TSUTAYAを覗いてみてください!


TSUTAYA PFFブース企画2010 vol.1
おすすめします!
今、元気の出る16作品。
未来の映画を担う4名が、新生活を始めるあなたを元気にさせる
とっておきの作品教えます。

2月25日より展開

◉市井昌秀監督 『隼』『無防備』

『聴かれた女』 山本政志監督
「変態」の対義語は「常態」?いや違う。「普通」か。「普通」って何?
引越し先の部屋の壁の薄さから思わず隣室の盗聴を始める男。
そんな男に感情移入していくオレって変態?
俗に言う「変態」が許容される映画。変態バンザイ!

vibrater.jpg『ヴァイブレータ』 廣木隆一監督
「誰かと触れ合いたい」って感情は孤独である自分を再認識させる。
孤独な女にさりげなく差し伸べる男の手。
からからの心をそっと、優しく撫でてくれる。
ほんのちょっと元気出ます。

◉井上真行監督 『死ねない奴』『一秒の温度』

『飛べ!フェニックス』 ロバート・アルドリッチ監督
人間、なんとかなるんじゃないかと思わせてくれた、ような気がする映画。
汗ばんだ手を握ってワクワクして観た、ような気がする映画。
映画がいつか断片的な記憶になっていく時、生き抜く力をもらった事だけは確信してる映画です。

grand.jpeg『グライド・イン・ブルー』 ジェームズ・ウィリアム・ガルシオ監督
不信!不安!不自由!
現実に行き場を無くした時、
ここで一人、白バイ警官は戦ってる。
その姿が荒野と溶け合い、とてつもない安心感に包まれる映画。
大人だって信用できる大人が欲しい!
迷わず観ずに、迷ったら是非観て下さい。

◉石井裕也監督 『剥き出しにっぽん』『川の底からこんにちは』他

olive.jpeg『オリーブの林をぬけて』 アッバス・キアロスタミ監督
ブッシュ政権時に「悪の枢軸」とまで言われたイランで作られた映画。でも本当に優しくて良心のある映画。核兵器云々よりも、こんなにもあたたかくて深い眼差しがイランにある事の方が僕らにとっては重要だと思います。

『イエロー・サブマリン』 ジョージ・ダニング監督
『アバター』を観た直後に、どうしてもこれが観たくなってDVDを買いました。この心地良い想像力の世界に漂うような感覚が僕は好きです。誰もが言いたいのに言えない「All You Need Is Love」を、しれっと歌い上げたレノンはやっぱり素敵です。

『河』 ツァイ・ミンリャン監督
暗くて深い闇を抱えた崩壊寸前の人間達を、愛の眼差しをもって傍観的に観察するような、そんな映画です。意味化を拒むかのように進んでいくストーリーの中で、ワケも分からず時たま感動させられます。人生なんて、そもそもワケが分かりません。

kakko.jpeg『カッコーの巣の上で』 ミロス・フォアマン監督
とにかく人間の臭い(駄目さ)をビシビシ感じます。そういったものに触れると、本当に勇気づけられます。安心もしますし、愛おしい気持ちになります。イケメンもいいですが、欠陥人間だって、視点を少し変えればすごくチャーミングに見えるんです。

『黄金狂時代』 チャールズ・チャップリン監督
チャップリンには憧れています。軽いユーモアの中に隠された哀しみ、哀しみの中に隠されたユーモア。この人は「人生」というものを完璧に悟ったんじゃないか、その上で極上の娯楽映画を作ったんじゃないかと僕は勝手に想像しています。

◉満島ひかりさん 女優

『乙女の祈り』 ピーター・ジャクソン監督
まるで作品の中に何かが宿ってしまったかのように、全ての瞬間が瑞々しい。
作品の中の人々は、人間というよりも、生き物と呼ぶ方が、ふさわしいと思う。

『サマリア』 キム・ギドク監督
こんな映画は観たくなかった。16歳の時に観て、衝撃を覚えた。
キム・ギドク監督の作品はほとんど鑑賞したけど、この作品に、最も心が痛んだ。

koisuru.jpeg『恋する惑星』 ウォン・カーウァイ監督
フェイ・ウォンがもの凄く可愛い。魅力的過ぎて、恋してしまいそうなくらいに
想像力が、好奇心がみなぎる映画です。多分、50回は観たような。

『ローズマリーの赤ちゃん』 ロマン・ポランスキー監督
信じられないほど怖い。ミア・ファローを始め、役者が皆本当に素晴らしい。
音楽も、演出も、素晴らしい、他に類をみない作品。ただ、信じられないほど怖
い。

lolita.jpeg『ロリータ』 スタンリー・キューブリック監督
夢うつつな、哀しい愛の話。観る時によって、状況によって、感じ方が様変わり
する。優しさと虚しさが、作品中に煌めき、漂っている。


TSUTAYA PFFブース企画2010 vol.2
悩んだ時はこれをみる!
~私の人生を明るく照らす秘密の映画たち~
3人の映画監督がこっそり教えます

4月28日より展開

◉石井裕也監督 『剥き出しにっぽん』『川の底からこんにちは』他

straight.jpeg『ストレイト・ストーリー』 デヴィッド・リンチ監督
悩んだ時は、シンプルなものが一番。主人公のお爺ちゃんが兄貴と十年ぶりに再会するラストシーンは、この上なくシンプルで、だからこそ胸を打たれる。静かでやりきれない、孤独な夜に一人で観るのが乙だと思います。

『アンダーグラウンド』 エミール・クストリッツァ監督
悩んだ時は、楽しいものが一番。ただ楽しいだけのものは馬鹿げているし、腹が立つ。だがこの映画は、人間に課せられた宿命のような悲しさを吹き飛ばそうとする、人間の根源的な明るさ、パワーを感じさせてくれる。

garp.jpeg『ガープの世界』 ジョージ・ロイ・ヒル監督
悩んだ時は、ファンタジーが一番。原作者は、僕が高校生の時から大ファンであるジョン・アーヴィング(映画監督よりも昔から作家に憧れます)。想像力さえあれば、人生のどんな苦しみや悲しみをも乗り越えられる。

『モダン・タイムス』 チャールズ・チャップリン監督
悩んだ時は、チャップリンが一番。「教師も政治家も、大人なんて誰もが嘘をついているんだろ」と疑っていた中学生の時、チャップリンだけは「本当」を真摯に語っている気がした。それは今でも変わっていない。

◉塚本晋也監督 『鉄男』『双生児』『ヴィタール』『鉄男THE BULLET MAN』他

shichinin.jpeg『七人の侍』 黒澤明監督
高校生のころ、劇場中の観客がどよめくというすごい体験をした。それ以来、そんなどよめきのほんの少しでも起こせないかと映画を作り続けています。

『ブレードランナー』 リドリー・スコット監督
ご存知サイバーパンクの金字塔。「鉄男THE BULLET MAN」のお父さん的存在です。今回は特にこの映画へのオマージュが強い。映像美を追求する徹底的なパワーに力をもらいます。

taxidriver.jpeg『タクシードライバー』 マーティン・スコセッシ監督
何度見たことか。見るたびに新しい発見がある。「タクシードライバー」のようなエポックメーキングな映画が作りたくて、映画作りの旅を続けていると言えます。

『青春の蹉跌』 神代辰巳監督
ショーケンのなんとかっこいいことか。井上堯之さんの音楽のなんといかしたことか。中学生のとき、はじめて怪獣映画でない日本映画を映画館に見に行った作品。僕の青春そのものです。

『赤い殺意』 今村昌平監督
本当のできごとがカメラの前で起こっているのかと思ったほど衝撃を受けた。ヌーヴェルバーグの映画を見るような、俳優の体から発するエロティシズムを含んだパワーを感じた。

rainman.jpeg『レインマン』 バリー・レヴィンソン監督
心が落ち着くので、何回でも見る。ぼくにとっては癒しの映画です。俳優の演技に、深いメソッドがあるようで、映画を勉強したことがないぼくはそれはどんなメソッドなんだろうと興味がわく。



◉深川栄洋監督 『自転車とハイヒール』『60歳のラブレター』他

et.jpeg『E.T.』 スティーブン・スピルバーグ監督
初めて映画館に行ったのは、子供会での体験。スクリーンの迫力、音の振動、大勢で一緒に観る環境に、同じく映画初体験の姉二人と圧倒され、終演後も放心状態。深川家は無言のまま、帰路に就きました。僕の原点です。

『グーニーズ』 リチャード・ドナー監督
母にお小遣いを貰って初めて友達と観た映画。ロードショーでは無く、何度目かのリバイバルでした。プロになり、深川くんはどんな映画が作りたい?と聞かれたら、いつもグーニーズの様な子供が活躍する冒険活劇が作りたいと言ってます。

kazoku-game.jpeg『家族ゲーム』 森田芳光監督
映画の専門学校に入った時、実は監督は無理だと思って、録音部志望でした。色んな映画を観る内に、僕の様な人間がスクリーンに居た。『なんでもない、普通の人々』。僕はこの映画から『お前でも良いよ』と言われた気がする。

『百貨店大百科』 セドリック・クラビッシュ監督
大人になり、僕はフランス映画に人生を教わりました。そして映画はフランス映画に学んだように思えます。僕には夢がある。数年後、ヨーロッパに旅立つ。今まで作った映画を仏訳して、上映会をしていた頃のように映画館を回る旅を。

『スティング』 ジョージ・ロイ・ヒル監督
日本では無い映画。お洒落で、ユーモアに包まれ、人生を語り、出演者は素直、音楽は豊かに流れ、痛快な物語。あのメロディーが聞こえてくると、その世界にひき込まれる。誰にもあると思いますが僕には特別な一作。


TSUTAYA PFFブース企画2010 vol.3
スクリーンでみたい!
映画祭でみたい!
はじまる!
第32回PFFぴあフィルムフェスティバル

6月25日より展開

◉石井裕也監督 『剥き出しにっぽん』『川の底からこんにちは』他

ba-ton.jpeg『バートン・フィンク』 ジョエル・コーエン監督
中学生の時、深夜のテレビ放送で観ました。思春期に抱えていた孤独や不安、人生に対する違和感のようなものが、この映画の中に描かれている気がしました。あくまでも「気」ですが。だからこそ非常に勇気づけられた覚えがあります。

『真夜中のカーボーイ』 ジョン・シュレシンジャー監督
ビデオで観ました。「よく分からない人達」が「よく分からない世界」の中でもがきながら、戦って負ける話です。この「よく分からない」感じがとても印象的で、リアルなんです。この「よく分からない」は、時として「よく分かる」よりも貴重です。

『短編集ヤン・シュヴァンクマイエル』 ヤン・シュヴァンクマイエル監督
高校生の時、美術の先生がビデオで見せてくれました。「衝撃」以外の何物でもなかったです。世界は広い、と思いました。映画で人生観が変わったのは、これまでチャップリンとシュヴァンクマイエルだけです。

『赤い橋の下のぬるい水』 今村昌平監督
18歳の時、深夜のテレビ放送で観ました。ああ、ここまで自由に映画を作ってもいいのかと、背中を押された作品。女の「潮」が高く高く噴き上がる場面では、人間の「自由」を感じました。以後、自由を感じられる映画は偉大だと確信。

jack.jpeg『ジャック』 フランシス・フォード・コッポラ監督
BSのテレビ放送で観ました。人より4倍のスピードで成長してしまう少年の物語。少年とその周囲の人達が楽しそうに笑えば笑うほど、どこか哀しげに見えるという、不思議で優しい世界観。同監督の『ゴッド・ファーザー』より素敵です。

◉荻上直子監督 『かもめ食道』『めがね』他

『モーターサイクル・ダイアリーズ』 ウォルター・サレス監督
革命家チェ・ゲバラの若き日の旅行日記。親友とふたり、バイクに二人乗りして旅をする。青い空とまっすぐに続く道。この映画を見ると、明日、旅に出たくなる。若者だけがもつ自由で
尊い時間を満喫してください。

cho-noshita.jpeg『蝶の舌』 ホセ・ルイス・クエルダ監督
涙です。素晴らしいラストシーンです。人と馴染めない少年が老いた先生からいろんなことを教わります。自然のこと、蝶のこと、人生のこと。しかし、スペインの内戦が少年から大好きな先生を引き離す。ああ、涙。

『イル・ポスティーノ』 マイケル・ラドフォード監督
詩は、ときにどんなものよりも強く心を動かされる。イタリアの小さな島で、詩人と地味な郵便配達員が交流する。島の美しい風景とうっとりするような詩が重なって、見てるこちらもう
っとり。耳元で囁かれたい。

『天国の口、終りの楽園』 アルフォンソ・キュアロン監督
エロイ!すばらしくエロイ!美しくエロイ!17歳の少年2人が年上美人と「天国の口」を目指して旅をする。メキシコの暑くて青い風景の中、酒飲んでセックスして、少年たちは大人になる。ラストはジーンと切ない。

『グッバイ、レーニン!』 ヴォルフガング・ベッカー監督
ドイツ統一直前に倒れた母。昏睡状態から覚めた母に、ショックを与えないよう、統一された事実を隠そうとする息子。その奮闘ぶりが優しくて悲しくて可笑しい。空に浮かぶレーニン像に重たい歴史を想う。

◉平林勇監督 『TEXTISM』『SHIKASHA』他

suika.jpeg『西瓜』 ツァイ・ミンリャン監督
やりきってるところが素晴らしい!怖じ気づかず、やりたいことを、やりたい放題にやっている。ストーリーで追わず、絵画や彫刻と同じ見方で見ると、ゴロッとした強烈な印象が残る。

『楢山節考』 今村昌平監督
やりきってるところが素晴らしい!人間という動物の陰影がギッシリ詰まった作品。カンヌ映画祭のパルムドールを2回も獲った今村昌平監督作品。

『ダーククリスタル』 ジム・ヘンソン監督
やりきってるところが素晴らしい!人間は1人も出てこないけどアニメじゃなくて実写映画!すべて想像上の生き物!ここまでやりたい放題作れるなんて!

『オアシス』 イ・チャンドン監督
やりきってるところが素晴らしい!扱いづらいテーマや設定を、堂々と真正面から逃げずに作っている。ここまで出来る女優がすごい!それをやらせる監督もすごい!

karune.jpeg『カルネ』 ギャスパーノエ監督
やりきってるところが素晴らしい!馬肉!肉!肉!肉体!40分という中編で、ここまで肉な世界観を構築できるのが凄い。うらやましいのひと言。

プロフィール

PFFディレクター
荒木啓子 Keiko Araki

雑誌編集、イベント企画、劇場映画やTVドラマの製作・宣伝などの仕事を経て、1990年より映画祭に携わる。1992年、PFFディレクターに就任。PFF全国開催への拡大や、PFFスカラシップのレギュラー化、海外への自主製作映画の紹介に尽力。国内外で映画による交流を図っている。

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