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PFFディレクターBLOGRSS

2014/03/21 13:43:24

本日より仕事に復帰します

骨折→手術→入院生活の約2ヶ月を経て、本日初日を迎える「ミューズ シネマ・セレクション 世界が注目する日本映画たち」にて現場復帰いたします。
まだ松葉杖を持つ姿をご容赦下さい。

思わぬ入院生活で様々な学びに恵まれ、自分が脚本家であったなら、こんなに素晴らしいヒントに溢れた体験はなかなかなかろうと、しみじみと思うのでした。

それにしても、入院生活と監獄生活は、たぶん似ている。
許可なくしての行動が出来ないこと、自ら隣人を選ぶことは不可能な集団生活であること、などをはじめ、筋肉が一気に衰える寝たきり生活からの脱却方法を考えるとき、次々と思い出すのは、トム・クルーズが、シルベスター・スタローンが、そしてクリント・イーストウッドが、黙々と窓の鉄格子や、ベッドの縁を使ってエクササイズする姿。病室にも、鉄格子が一部ついてればいいのにと思いました。
そして、棒のような足に力が入ることを願うとき、最初に思い出したのは、『キル・ビル』のユマ・サーマン。植物状態から甦る彼女がしたように、まず足の指一本づつから気を送ってみたものです。
映画って、実生活にも役立つなあと実感です。

そんな思い出話より、本日からの「ミューズ シネマ・セレクション 世界が注目する日本映画たち」です!
14回目を迎える本年は、「初」を目指しました。

日本のみならず、海外でも評判を呼んだ、メジャー系ではない日本映画を3日間で一挙にご紹介するこのイベント。
北野武、黒沢清、三池崇史、是枝裕和、青山真治、塚本晋也、河瀨直美(敬称略・順不同)ら、高い国際的評価を得る映画監督たちに続く人材が、芳醇に息づく現状をご紹介することを意図し、本年のゲストには、初参加の皆様をお招き致します。

3日間で、9本の作品と13人のゲストを迎え、じっくりとお話も伺い、劇場用パンフレットの販売(『桐島、部活やめるってよ』のみパンフレット完売で残念です)や、そこへのサイン会も実視する計画です。

当日券発売も勿論ございます。是非フラりとお立ち寄りください。
スクリーンは見事に大きく、もともとコンサートホールである会場の音響も映画館とひと味違います。
最寄り駅は、西武新宿線「航空公園」。駅から徒歩約10分。バスも頻繁にでています。

では会場で!


ミューズ シネマ・セレクション 世界が注目する日本映画たち
2014年3月21日(金・祝)~23日(日) 所沢市民文化センター ミューズ マーキーホール
http://www.muse-tokorozawa.or.jp/event/detail/20140321/

2014/02/05 10:00:52

ベルリン国際映画祭が始まります、が、

オランダ・ロッテルダム国際映画祭が、『山守クリップ工場の辺り』グランプリ受賞!の嬉しいニュースとともに終了し、引き続き、ドイツ・ベルリン国際映画祭が始まります。

今頃、欧州滞在10日になろうとしているはずだった私ですが、出発直前に人生初の骨折をし、嬉しい滞在になるはずだったロッテルダムも、20回を越えるベルリン通いの記録もストップしてしまいました。

大人になって初めての入院生活を送っています。
幸い、時を重ねれば快癒に向かう人が集まる「整形外科病棟」入院ですから、明るいさよならで同室者を送ることが出来る8人部屋。修学旅行以来の大部屋生活も、骨折も、病院で働く人々とその仕事も、発見と驚きだらけで、毎日があっという間に過ぎていきます。

しかし知りませんでした。
骨折がこんなに痛いということを。
完治のプロセスがなかなか複雑だということを。
治療そのものが、傷との力合戦だということを。
「ジャック・バウアー、骨折した足でで捜査継続は無理だぞ!」と映像の嘘について憤慨したりしました。

さてこれから、私にとっての映画祭シーズンを逃した埋め合わせをどうやっていくか工夫しなければなりません。

*余談ですが、今回のベルリン行きは、ベルリンフィルのサイモン・ラトルの最後を体験するチャンスでもあり、一層残念でもあります。

そして、映画祭とは何かという根元的な問いかけについても考えたかった、日本を離れて遠く海外の映画祭滞在。

例えば、今、中国で相次いで映画祭が生まれようとしています。
ある映画祭では、年収50万ドル=5000万円で映画祭ディレクタ―募集中です(勿論最低限、英語と中国語の出来るひと)。米資本の映画祭です。

その話を先月香港の友人から聞き、解放直後のチェコで会った映画祭関係者が米人だらけだったことを思い出しました。

5000万円...「映画祭の全体制作費ではないのね!?」という金額を年収として提示する米映画産業の豊かさと構造を思い知らされます。
つまり、米メジャー映画を恒常的にみつづける観客創造のために行う映画祭の創設に注力する仕事です。

もともと映画は文化の伝導に高い効果を発揮する創作物。
そして、そもそもの映画祭は、米映画の席巻から、文化・芸術としての映画を守るために欧州で発達してきた機能でした。が、「興行」という方法をメインとしてきた国が、新たな観客創造の見込める場所で映画祭に着目していることを、更に興味深く思うと共に、2014年に於ける映画祭について考えるのでした。

私たちは何故映画祭を続けるのか。
消灯10時、起床6時というかつてない健全な病院暮らしで、頭も体もデトックス出来たらと思っています。
...今のところ大変な睡眠不足ですが...

2014/01/02 15:13:00

『天国の門』『エレニの旅』『さよなら、アドルフ』そして『悲情城市』

新文芸坐での『天国の門』完全版レイト上映に間に合い、「やろうと思えば何でもできるぞ映画!」と非情に爽やかな気持ちに満ち溢れ幸せに帰路をたどりました。
全人類必見の映画と言えましょう。
同時に、本年も目標のひとつは「ひとりで映画に行かない」ということかとも再認識。
私含め、一人客が圧倒的多数で、これはまずいと痛感&反省です。こんなとき子供がいれば、どこにでも連れ歩くのに残念無念~とつぶやきつつ、ともかく面倒でも誰かを誘って映画に行く運動を始めるのが、現在の必須課題であろう映画人口増加のためには・・・と再確認するのでした。

実は『天国の門』は特製前売り券を持っています。使えないまま日々が過ぎ、今後の地方公開で、例えば温泉に近いとか、例えば行きたい美術展が近くであるとか、そんな街への旅を構築して使うという新たな楽しみも思いつき、そこにも無理やり人を誘うってのも考えてみました。もれなく映画のついてくる(それも3時間半!)1泊旅行であります。ふふふ。

「映画は教養である」という側面が語られない風潮が加速してるなあ、とも、夜道を歩きながら考えました。
映画にとって、好きとか嫌いとかって、実はとっても小さなこと。映画は、歴史なんだなあと、しみじみ確認です。
それはある個人が切り取った歴史ですが、歴史こそが物語であり(一日あるいは数日の記録でも、歴史であり物語であるということなのですが)歴史こそが教養。
観客がその映画に流れる歴史を知らなくてもみせきることができる、それが映画の力です。
内容がわからなくても、楽しむことができ、終って、あれこれ考え、あれこれ知りたくなる、そんな映画が素晴らしい映画です。
・・・お!断言しております・・・・

『天国の門』をみながら、『悲情城市』を思い出していました。
知らない歴史が胸を打つ。いてもたってもいられなくなる。
映画としての技術も、卓越した両作品。
何度みても心に迫る傑作『悲情城市』。台湾に行けばいくほど思い出すこの映画の、DVD発売もそろそろ可能に、という話を耳にし(ぴあが制作に関係しているのです)大変楽しみにしているのです。

これから公開される映画では、『さよなら、アドルフ』と『エレニの帰郷』も強い映画です。
『さよなら、アドルフ』はPFFに16mm短編で2度入選しているケイト・ショートランド監督の長編第2作です。原題は主人公の名前である『ローレ』ですが、なるほど邦題はこう来たか~と感心しました。
オーストラリアの監督ですが、本作は全編ドイツ語。パートナーのトニー・クラヴィッツ(PFF最初の入選、95年の『ストラップ・オン・オリンピア』でも制作を務めています)がドイツ系でユダヤ人で、暫くドイツに住んでいたときに始まった企画だと、昨年のロッテルダム映画祭の上映時に話しておられました。彼女自身もユダヤ人です。
『さよなら。アドルフ』は、親衛隊の家族が、ヒトラーの死後、どのような歴史を辿ったかを題材にした映画です。
大人は、自分の暮らしが永遠に続くと思いたい。子供たちの未来まで、実は考えるゆとりがない。その今も変わらない哀しさと愚かさが迫ります。誰がいいとか悪いとかでなく。

第二次世界大戦に関連する映画は、これからも絶えず生まれるのではないかと感じます。
最後の肉弾世界大戦である。映像記録が文字記録が膨大にある。驚くべきドラマが無数にある。
戦争映画としてでなく、多彩な映画をつくるフックとしての機能が開拓され続けるでしょう。
そして近年、ユダヤ系の女性監督の活躍が目立ちます。乱暴なまとめみたいですが、歴史認識が強靭だからこそなのではと思ったりします。

そして『エレニの旅』
いわずもがな、テオ・アンゲロプロス監督の遺作(09年の作品ですが)となってしまった豪華キャストで贈る愛とイデオロギーの物語です。
人生を賭けて信じ続けるものについての、哀切な物語。
映画も、イデオロギーも、幸せには結び付かず、この殺伐として傲慢な世界で、愛だけがそこに・・・とひとり納得した私ですが、観客全てが自分の物語を発見する映画です。そこが、強い。
7年前に『テオ・アンゲロプロス特集』を行ったPFFですから、思い入れはひとしおです。
是非、過去のあの作品、この作品も、ひとりでも多くの新しい観客にみてほしいなという気持ちも高まる今回の公開。なんといっても、東映なんです!配給が!そこが更に感動で、ぼーとしているのです。
アンゲロプロス特集時に作成したパンフもまだ在庫があり(増刷したのです)、公開時に販売できないかなとか考えてみたりもしました。

強靭な歴史認識力は、すなわち、教養ある大人への歩みに繋がる。
その最も手軽なテキストが映画です。
今、イギリスで起きている駐英中国大使と駐英日本大使の罵倒合戦。英語力に圧倒的差があるという話が聞こえていますが、教養も差が出ているらしいという話も・・・・やはり、学校で勉強してるより、映画を山のようにみているほうが、修羅場には絶対に役に立つと多くの公務員、政治家に私は叫びたい。
更に、朝から晩まで英語の映画をみてれば、英語力もアップするよ~んとも伝えたい。
世界平和へのキーは、映画をたくさんみることではないかと思うのでした・・・・あ、でも、独裁者って結構映画マニア多いなあ...困った・・・ん?だからこそ?

最後に、
すいません。大晦日に間違いをしでかしました。
宮沢賢治の「雨ニモマケズ」の詩の中に出てくる玄米の量は、一日4合が正しいのでした。5合ではなく。
・・・・それでもお茶碗10杯見当?
玄米だから、噛みしめること数千回?
しみじみしました。昔の人の顎の強さ。

「5合」は、宮崎県の伝承歌にあるのでした。~焼酎5合の寝酒の酌に嫁が欲しくなった~という歌詞。
子供の頃、バスガイドが唄うのを聞き「5合って飲みすぎ・・」と「嫁は酌婦か?」というふたつの憤りが湧いたものですが、子供の記憶というものはしっかり根を張る大変なものであることを再認識しました。

というわけで、4号と5合量が混同してしまいました!失礼しました!
以下、おまけの詩の全文です。
そして、大変遅くなりましたが、
本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

・・・・・・・・・・・
雨ニモマケズ
風ニモマケズ
雪ニモ夏ノ暑サニモマケヌ
丈夫ナカラダヲモチ
慾ハナク
決シテ瞋ラズ
イツモシヅカニワラッテヰル
一日ニ玄米四合ト
味噌ト少シノ野菜ヲタベ
アラユルコトヲ
ジブンヲカンジョウニ入レズニ
ヨクミキキシワカリ
ソシテワスレズ
野原ノ松ノ林ノノ
小サナ萓ブキノ小屋ニヰテ
東ニ病気ノコドモアレバ
行ッテ看病シテヤリ
西ニツカレタ母アレバ
行ッテソノ稲ノ朿ヲ負ヒ
南ニ死ニサウナ人アレバ
行ッテコハガラナクテモイヽトイヒ
北ニケンクヮヤソショウガアレバ
ツマラナイカラヤメロトイヒ
ヒドリノトキハナミダヲナガシ
サムサノナツハオロオロアルキ
ミンナニデクノボートヨバレ
ホメラレモセズ
クニモサレズ
サウイフモノニ
ワタシハナリタイ


2013/12/31 16:49:49

2013年を振り返ってみると宮沢賢治があそこにここに

2013年は、初体験をできるだけと思いつつ、意外に達成できていなかったかもと、今、ふと思っています。
35回となる東京で、初めて渋谷、シネクイントを会場に開催したことや「特撮」に焦点を当てた企画を行ったこと、名古屋開催で初めての「PFFアワードノンストップ上映+寝転んで鑑賞もOK」、を実施してみたこと、などなど思い出しながら、やはりどこか日々の仕事に追われて走り続けるだけで精いっぱいだったのではないか?という感触も・・・
ちょっと整理して、2014年はどんどん自由な試みをやってみたいと想う年末です。

個人的には、キネマ旬報の★とり参加は、色々な学びがありました。
自分で選ぶのではなく、課題のように毎回渡される担当映画リスト。「みなくてはならない」というこの"仕事感"は、なかなかない体験。
自分の仕事では、PFFアワード応募作品を観ることと、招待する監督作品を網羅することは、当然みなければならない映画となりますが、「劇場公開作品」をみることでそんな体験をする日が来るとは予想してませんでした。

また、仕事柄、映画祭で映画をみる体験は人より多く重ねている気がしますが、試写室で公開映画をみる体験は殆どない私。
更に「洋画」の試写は大変縁遠い世界ですので(★をつけるという責務をはずせば)これはとても大きな発見と学びの宝庫でした。
映画祭と映画配給(=劇場公開映画を扱う仕事)、の温度差というか、基準の差も、体感できる貴重な時間、乱暴に言えば、それぞれ別世界となっているのが(予想はしておりましたが)実感できました。

同時に、「観てすぐは、どんな映画も面白い!」ということを確認することができたのも、よかった。
数か月経って心に残る映画、人にすすめたい映画は意外に少ないと知るのですが、あらゆる映画が観るとどこかしら心動かす瞬間がある。
同時に、感じたことを即伝える宣伝と、じっくり熟成されたものを評論として提示する宣伝と、2つの道があるほうがいいこともしみじみ思います。
特に求められるのは、時間をかけて評論する場所でしょうか?

実は私たちもPFFスカラシップで制作した映画を劇場公開する大きな仕事があります。
その方法についても考えることの多い、この新しい体験でした。
といってもまだ暫くは続きます。一年でおよそ80作品を強制的にみるという、自分では一生みないかもしれなかった作品をみることのできる貴重な日々。数年後には楽しい思い出、でも今は、必死にこなしている仕事です。

物凄い量の映画が公開されている日本。
多くの人が映画に携わっている、映画で食べている。そしてそれは、配給も宣伝も劇場も媒体も観客も、どの場所でもとても忙しい、追われている毎日であることを、肌で感じる、いささか悩みでもある体験のひとつでもあります。

あら、タイトルの宮沢賢治の話題から遠のいている・・・
昨年のPFFアワードグランプリ作品『くじらのまち』。現在も国内外の映画祭で招待の続く人気作品ですが、上映に立ち会うことで劇中で唄われる「星めぐりの歌」を何度も聞きました。
宮沢賢治作詞作曲です。

あかいめだまの さそり
ひろげたわしの つばさ
あをいめだまの こいぬ
ひかりのへびの とぐろ
オリオンは高く うたひ
つゆとしもを おとす

アンドロメダの くもは
さかなのくちの かたち
大ぐまのあしを きたに
いつつのばした ところ
小熊のひたひの うへは
そらのめぐりの めあて

この歌の影響で、名古屋でのPFF開催空き時間には名古屋市科学館に駆けつけ、プラネタリウム体験しました。
*余談ですが、この「名古屋市科学館」素晴らしいです!プラネタリウムの見事さも勿論ですが、体験アトラクションも感激!「明治村」と並ぶ名古屋の逃してはならない場所です!是非!*

その後、「あまちゃん」の中で何度もこのメロディーを耳にし、
先日、テレビマンユニオン45周年プロジェクトで行われた今野勉の「勉塾」-第二期ー『<撃つ>と<耕す>』でも「あまちゃんを考える」というテーマでこの歌が取りあげられて驚きました。
正月の宮沢賢治の旅。その駅に「種市」があることも含め宮沢賢治とあのTVドラマとの関連についてです。

同時に、やっとコミックスで読んだ「重版出来!」に、殆ど国民的なこの詩が全文登場してびっくり!
雨ニモマケズ
風ニモマケズ
(続きは是非、お手許の賢治の著書やこの漫画でお読みください。「一日5合の玄米」というところで、昔の人は米をたくさん食べたなあとといつも感心する私であります・・・)

そして、またまた同時に齋藤久志監督の新作『なにもこわいことはない』では、「ひかりの素足」が重要なモチーフに!
・・・・と驚きの宮沢賢治3段重ねの秋でした。
私で3度の体験ということは、世間では更に宮沢賢治が語られているのか?と、思わず法華経についての本を買ってみたりしたのでした。
宮沢賢治と2013年。何かあるかも?

さて、2014年のPFF活動ももう始まっています。
「PFFアワード」の公募は3月25日が締切です。
是非、映画ができたらPFFへ。
そして、春から所沢、新宿、福岡(こちらは第35回PFFです)と、9月の東京での第36回PFFまでイヴェントが続きます。秋と冬は、名古屋、京都、神戸と巡回です。
海外の映画祭含め、旅の毎日は2014年も続きそうです。

個人的には、来年の楽しみは『スノーピアサー』
ティルダ・スウィントン(出演者ですが)激賞というニュースからして心躍りましたが(単なるファンですが)
ワインシュタインとの権利裁判にも勝てそうだという話を聞き、更に更にポン・ジュノ監督とこの映画にエールを送りたい!!
(*ご存じない方のために、『スノーピアサー』は全米及び英語圏公開に向けてプロデューサーバージョンがつくられた。「全く教育のないアメリカの片田舎の住人にもわかりやすく」という理由のバージョン。勿論オリジナル版での公開を目指す監督は、孤立無援の中、力を貸してくれそうな世界の映画人に相談し、オリジナルヴァージョンでの評論を真っ先にNYタムズに掲載=勿論激賞の名評論。同時にパリでそのヴァージョンで公開し、大ヒットを記録。現在、英語圏での権利を自分の手に取り戻すべく格闘中)
自分の望むものを知り、それを手に入れる暴力的でなく、知的な方法を使う、そんな仕事はほんとうに勇気を与えてくれるなあと、しみじみしながら新年を迎えたいと思います。

よいお年をお迎えください。


2013/12/12 10:17:47

映写機と音設計の重要さが骨身に沁みた夜

7日から京都に入っています。PFFin京都開催です。
今年のPFFin京都は2週間開催。だがしかし、やはり全日程滞在は不可能で一旦帰京するのですが、本日から始まった「さよなら?8mmフィルム」企画での上映状態が素晴らしすぎて、驚愕してしまい「3夜全て観て帰りたい~」と心で叫んでいます。

ほぼ新品に近く非常に安定した映像を送る映写機と、素晴らしい音響設計の「京都シネマ」ならではの音が相まって、「こんな作品だったのか...」(←ちょっと言い過ぎ)と心震えた昨夜の『スバルの夜』と『はなされるGANG』上映でした。
両監督におみせしたかった...

お客様の反応もこれまた素晴らしく、近年のベスト映画という声も...いやいや、最新の映画もみてください!と思わずひとこと告げる私。
ただ、改めて感じるのは「意志は映像に宿る」とでもいいましょうか、「課題」提出ではない「自主映画」の底力と申しましょうか、そこには「何か」がある。
その「何か」を評論する、自主映画評論の土壌が更に開拓されねばならないことを、改めて実感する夜でもありました。
ともあれ、<これは13日の「さよなら?8mmフィルム」企画最終日まで滞在し終電で戻ろう>と密かに決意しつつスケジュール調整中です。

会場の京都シネマには3つのスクリーンがあり、ただいま『ブルーノの幸せガイド』『ハンナ・アーレント』『ペコロスの母に会いに行く』『ジ、エクストリーム、スキヤキ』『恋する惑星』『21グラム』、そして『PFFin京都』を上映中。到着した日の<このチャンスに全部みてから帰ろう>という野望は、既にもろくも崩れ去り、なんだかんだ仕事に追われるホテルの部屋ですが、『恋する惑星』今みると香港の変化が身に沁みるだろうなあと、とても心残りです。
ロビーで様子をみていると、『ハンナ・アーレント』が強い。
会場で販売中の書籍「イェルサレムのアイヒマン」もどんどん売れているとのこと。すばらしいですね。しみじみタイムリーな映画です。

上映作品を数えてみると、PFF以外に23作品が上映される12月の京都シネマ。
全国のミニシアターでは、朝昼晩とプログラムを変えて、何十本と映画が上映されるのが、当たり前の風景になりつつあり、その宣伝も、上映準備も、映写室での架け替えも、物販も、スタッフィングも、大変な仕事量であろうと想像します。
年間に、数百本にもなろう上映作品数に加え、特集や映画祭や(余談ですが、京都は映画祭が多いことにも驚愕)と、一体何作品を扱かうことになるのか映画館...現場の人たちが自館の映画を観る時間すらなく過ぎていく場合も生じているだろうなあと、昔の映画館運営の常識が通用しない時代であることを、しみじみ感じる映画館開催のPFFin京都です。
(というのも、映画祭を映画館で開催できるチャンスは意外に少ないので、いちいち発見なのです)

またまた久しぶりのブログでした。
最近、是非皆様にご紹介したい話題がいくつかあるのですが、折をみて少しづつ書いて行きたいと思います。

2013/11/03 00:05:10

みたい映画をみることはそれほど簡単ではない

前回の続きみたいな始まりですが、実はだいぶ違う今回。
釜山国際映画祭では、「日本語字幕付きで上映される、東京FILMEXや劇場公開でみよう!」と後送りにし帰国した作品多く、山形国際ドキュメンタリー映画祭では、6年ぶりの参加も嬉しく、マルケル特集を全力でみる気合も含むすべてを仕事に回すことになる、哀しい夏休みとなり、東京国際映画祭では、チラシにものすごく力強くマークをつけた映画たちよさようなら...逃したあの映画、この映画を、今、映画祭カタログをみながら肩を落とし呼びかけてみて、連絡網が便利になって、いつでもどこでも簡単に仕事場になるこの悲劇よ!と、色々考える3つの映画祭体験。同時に、一期一会の映画体験を改めて覚醒させられる体験でもあったな、と。
今回は、ずっと気になっている「映画をみるチャンス」についてすこし

渋谷TSUTAYAの4階にPFFの棚があります。
インディペンデント映画の紹介に力を入れたいというお店の意向を受け、自主映画を広く紹介するコーナーとして始まりました。PFFの入選作品がDVD発売を実現できた時期もあり、「自主映画」が並ぶ棚として展開していたのですが、ある日、
「映画をつくるということは、映画をみるということと切っても切り離せない」
ということを、この、映画の溢れる夢のような空間で伝えていくことはできないだろうか?
と、改めて想いが高まりました。
そして、およそ4年前から、映画監督を中心としたクリエイターに、あるテーマに沿って、ご自身の心を震わせた作品を挙げていただく、というコーナーへと移行してきました。
以来、隔月でテーマを替え、年に6回、各回約20作品づつを紹介させていただいております。

◎ここでお知らせです
これまでこのコーナーで紹介してきた作品は、昨年からPFFの映画祭カタログに記録することにしました。お読みいただけると嬉しく思います。
特に、今回、第35回のカタログは、上記TSUTAYAコーナーで紹介してきた作品のみならず、PFFが1976年から現在まで映画祭を通して紹介してきた作品も網羅した、一大歴史記録となっております。手前味噌ながら、相当貴重な映画資料になると考えます。

さて、以下の作品リストをご覧ください。結構な数にのぼります。
*並び順は、アトランダムです。

「阿賀に生きる」1992年/監督:佐藤真
「そして人生はつづく」1991年/監督:アッバス・キアロスタミ
「愚かなる妻」1921年/監督:エリッヒ・フォン・シュトロハイム
「サンライズ」1927年/監督:F・W・ムルナウ
「周遊する蒸気船」1935年/監督:ジョン・フォード
「生きるべきか死ぬべきか」1942年/監督:エルンスト・ルビッチ
「レディ・イヴ」1941年/監督:プレストン・スタージェス
「カルメンという名の女」1983年/監督:ジャン=リュック・ゴダール
「クリスマスキャロル」1970年/監督:ロナルド・ニーム
「天使」1982年/監督:パトリック・ボカノウスキー
「修羅」1971年/監督:松本俊夫
「プレイタイム」1967年/監督:ジャック・タチ
「盗まれた飛行船」1966年/監督:カレル・ゼマン
「8 1/2」1963年/監督:フェデリコ・フェリーニ
「オーソン・ウェルズのフェイク」1974年/監督:オーソン・ウェルズ
「ストーカー」1971年/監督:アンドレイ・タルコフスキー
「カメレオンマン」1983年/監督:ウディ・アレン
「牯嶺街少年殺人事件」1991年/監督:エドワード・ヤン
「エル・パトレイロ」1991年/監督:アレックス・コックス
「フェイシズ」1968年/監督:ジョン・カサヴェテス
「レニングラード・カウボーイズ・ゴー・アメリカ」1989年/監督:アキ・カウリスマキ
「女は女である」1961年/監督:ジャン=リュック・ゴダール
「コミックストリップヒーロー」1967年/監督:アラン・ジェシュア
「ハート・オブ・ダークネス コッポラの黙示録」1991年/監督:ファックス・バー、ジョージ・ヒッケンルーパー、エレノア・コッポラ
「金融腐蝕列島[呪縛]」1999年/監督:原田眞人
「愛と哀しみのボレロ」1981年/監督:クロード・ルルーシュ
「鬼火」1963年/監督:ルイ・マル
「パリ、テキサス」1984年/監督:ヴィム・ヴェンダース
「秘密と嘘」1996年/監督:マイク・リー
「霧の中の風景」1988年/監督:テオ・アンゲロプロス
「ZOO」1985年/監督:ピーター・グリーナウェイ
「女相続人」 1949年/監督:ウィリアム・ワイラー
「クローズ・アップ」 1990年/監督:アッバス・キアロスタミ
「Unloved」2001年/監督:万田邦敏
「レディバード・レディバード」1994年/監督:ケン・ローチ
「絞死刑」1967年/監督:大島渚
「ウディ・アレンのザ・フロント」1976年/監督:マーティン・リット
「街の灯」1974年/監督:森崎東
「赤い砂漠」1964年/監督:ミケランジェロ・アントニオーニ
「情事」1960年/監督:ミケランジェロ・アントニオーニ
「奇跡の丘」1964年/監督:ピエル・パオロ・パゾリーニ
「ノスタルジア」1983年/監督:アンドレイ・タルコフスキー
「リリー・マルレーン」1981年/監督:ライナー・ベルナー・ファスビンダー
「ケレル」1982年/監督:ライナー・ベルナー・ファスビンダー
「カリフォルニア・ドールズ」1982年/監督:ロバート・アルドリッチ
「動くな、死ね、甦れ!」1989年/監督:ビターリー・カネフスキー
「恋々風塵」1987年/監督:ホウ・シャオシェン
「こわれゆく女」1975年/監督:ジョン・カサヴェテス
「にっぽん昆虫記」1963年/監督:今村昌平
「ケス」1969年/監督:ケン・ローチ
「愛を乞うひと」1998年/監督:平山秀幸
「秘密と嘘」1996年/監督:マイク・リー
「人間蒸発」 監督:今村昌平
「ミツバチのささやき」 監督:ビクトル・エリセ
「オープニング・ナイト」 監督:ジョン・カサヴェテス
「友だちの恋人」 監督:エリック・ロメール

人生変わるかもな必見作品群としか言えないタイトルが並んでおりますが、これらは全て、TSUTAYA渋谷店での在庫がVHSのみだったものです。
「DVDでのレンタルが、全ての映画で実現しているわけではない」
という現実を強く印象付けるリストと言えはしないかと、この2年間、ふと気づいて記録してきました。
同時に、クリエイターの皆様から作品リストをいただいたものの、レンタルされていない、という場合も、上記リストほど多くはありませんが、存在します。しかし、VHSプレイヤーを処分した人の多さを痛感する昨今、DVD以外は再生不能な環境は驚くほど多いかと...その場合、VHS在庫はあっても無いと同じ環境の方がいるという現実が...

「レンタルがなければ、セルのDVD購入、TV放映のチェック、映画館での上映チェック、あらゆる方法を試み、追いかけてみる。それでもだめなら、映画祭チェック、それでも無理なら書籍でその映画を読んで、見た気になってみる」
そんな「映画を必死にみる」という感覚は、とても楽しい。なのに、近年その楽しみから遠ざかりつつある自分に喝を入れてみる、このリスト。これらの作品を観る機会に恵まれていた過去の自分の幸福。「初心忘れずに」とそっと自分につぶやくのであります。

気付けば11月。
今月は名古屋へ参ります。「PFFin名古屋」。チラシ製作時にはまだ来場監督の確定ができませんでしたが、今、続々と来場予定の報が入っています。随時HPで発表します。
初めての試みを満載した今年の名古屋開催。マラソン上映とか、寝転び観賞とか、2年分一挙上映とか、実験冒険開催です。
楽しい思い出づくりにご参加いかがでしょうか?

12月には、京都と神戸での開催です。
京都では、8mmフィルム作品を、8mm映写機で上映する特別プログラムを実現するべく、映写機を東京からも運びます!
神戸では、PFFのプログラム終了後の夜は、ファズビンダー作品の上映が続くという、個人的に楽しみなこともございます。
間もなくプログラム発表する「PFFin京都&神戸」も是非ご期待ください!

2013/10/25 10:11:02

釜山+山形+東京。久方ぶりに3つの国際映画祭はしごしてみました

「始まります」って、一体いつ、何が始まるの?
と我ながら突っ込みたい、長期すぎるブログ無更新でした。
いやはやお恥ずかしい...

そして、8月のPFFプレフェスティバル以来、延々と今日まで睡眠不足でふらふらですが、相変わらず痩せない。不思議。その原因は、深夜の酒盛りか?とつい思うような日々も、確かにあったこの3か月でした。ああ無情。

9/20に第35回PFFが終了し、その後始末もまだまだ継続中ながら、PFFは11/12-17の名古屋開催、12/7-20の京都開催、12/21-23の神戸開催と、ツアー準備驀進中です。
名古屋開催は、すでに詳細を発表しました。チラシもアップしてます。⇒チラシはこちら

今年の名古屋は初めて尽くし。寝転んでみてもいいPFFアワード上映もございます!
次いで、年末の京都神戸では何が起きるか、来週の発表をお楽しみに!会場ごとのオリジナルな上映を企画しています。

そして今月は、久方ぶりの「映画祭の秋」一色でした。
東京のPFF終了後、珍しく映画祭初日(10/3)から一週間、釜山国際映画祭(略称BIFF)に参加しました。今回は、昨年と違い、事前に参加申し込みをして行きましたから、ホテルもとれました。ほっとひといき。部屋での仕事もすいすい。
が、そのホテルがstar hotelと書かれているように、韓国のスターたちの宿泊場所にもなっておりまして、出待ちの人々の渦にびっくりすること度重なり、「ファン」という人たちのエネルギーに、全く関係ない私が狼狽えて落ち着かない日もありました。あの熱気を受け止めることの出来る「スター」という存在に、改めて感心するのでした。

今回BIFFへは、PFF事務局から、第22回PFFスカラシップ作品『HOMESICK』、PFFアワード2013作品『山守クリップ工場の辺り』、そして、お預かりしている『ロマンスロード』の3作品の上映がありました。日本から程近い釜山です。沢山のスタッフ&キャストがいらっしゃいます。そして、釜山の食べ物は飲み物は、安くて美味しい!
それはもう、深夜の宴会が繰り広げられましょうとも!
昨年の、『くじらのまち』鶴岡監督との二人旅とはうって変わり、映画祭のパーティー訪問より、大勢での食事のほうが圧勝した今回の釜山。それは私に、第1回(1996年)から5回くらいまでの、初期の釜山国際映画祭(昔の略称はPIFFなのでPFFと似ていたからよくからかわれました。「釜山」の英語表記は、その後PuasnからBusanに改められたのです)の日々を思い起こさせる、懐かしいものでした。

かつてBIFFは、解禁されていない日本映画と、まだ概念の薄い「インディペンデント映画」を紹介する、韓国の新しい窓となる映画祭でした。
役人から映画祭ディレクターとなったキム・ドンホさんは、数年前名誉ディレクターとなりその座を後進に譲られましたが、まだまだその存在は大きい。今日の海外への韓国映画のプロモーション成功は、ひとえに彼の功績であると、讃える声は途切れません。確かに、私も海外でその手腕を何度も目撃しました。いつのまにか韓国映画に注目しなくてはまずいぞと思わせる、そのふわりとした語り口とデータの開陳は、名人芸のようです。

近年の釜山国際映画祭は、オープニングとクロージングの"派手な"セレモニーがクローズアップされがちというか、視察者はそこばかり行く傾向にありますが、「それよりも、ドンホさんの<世界各国映画祭へのひとり旅>についていってみるというのはどうか?」とよく考えます。自国映画の宣伝マンとして、映画祭の資金調達の名手として力を持つ方であり、学ぶところは多い。今年もある作品(ドンホさんが学長を務める新しい映画大学院の初のメジャーとの共同製作作品『10minits』のお披露目があったのです)のこじんまりとしたパーティーでお会いしましたら、いつものように、PFFの運営状況を聞かれたあと、「BIFFは、来年国家予算が大きく削減されるのが決定しているが、それと同じというか少し多いくらいの一般企業のスポンサーがつくので、何も変わらない」と自慢された私でした。まあ、淡々と事実を話されただけなんですが、この、淡々とゆっくり事実を話す、というところに、何かの魔力がある感じがします。

しかし、17年前、始まったばかりの釜山国際映画祭では、「あらゆる飲み会に現れては、その代金を払ってくれる素敵なおじさま」として、印象深かったのです。「生活費は妻の収入、自分の収入は全部映画祭期間の飲み会の支払いに」というのは、有名な話でした。
...「ああ、そんなことをしてみたい」と、思ったことを思い出す、宴会復活な今年の釜山の夜でした。※東京では、飲食費の桁が違うので、夢のまた夢であります。

で、そのキム・ドンホさんを追いかけたドキュメンタリーを、モフセン・マフマルバフ監督が撮ったと聞いてびっくりしたのですが、伺いました、上映に。
最初に、マフマルバフ監督から、何故ドンホさんを撮ろうと思ったのかという話があり(「いつも静かに微笑んでいる、こんな人になりたいと自分が願っているから」)上映。その後、そこに出てくる、「人生を1:役人期、2:映画祭ディレクター期、3:アーティスト期として、現在の3の段階で、映画監督に挑戦した」そのキム・ドンホ監督デビュー短編『Jury』 の上映が続いたのです。
『Jury』。ご自身の数ある審査員体験からヒントを得て作ったというこの短編。審査員役のひとりに、日本からイメージフォーラムの富山さんが出演しておられるほか、映画祭関係者ならくすりとくすぐられるマニアックなキャスティングがされています。(日本ではすでにイメージフォーラムフェスティバルで上映されました)

さて、上映が終了し、質疑応答になりました。
最初に手をあげたのは、韓国映画界最大の巨匠イム・ゴンテク。びっくり。次は、ジャ・ジャンクー。びっくり。みんな嬉しくてしょうがないという、笑顔に溢れた上映会。最後には、映画祭に参加してる全イラン人監督はじめ、ゲスト監督大集合、ここに爆弾投げられたら困るというメンバーでの記念撮影が始まったのでした。
(勿論、写真を撮る習慣のない私は「あら~」と眺めているだけでした。すいません。)
いや~、数ある映画祭体験の中で、「ああ、映画祭というのは、監督のためのオアシスなんだなあ」ということを、静かにゆっくり骨身に沁みさせられるこの上映会でした。

昔、大島渚監督から、「かつてカンヌ映画祭というのは、めったに会うことのできない同志たち=監督たちですね=が、リゾートで、ゆったりと、思う存分映画について語る場所だったが、今はその影もない」とおっしゃっていましたが、その「かつて」の感じ、監督たちのための理想の空間、というものをつくれる可能性のあるのが「映画祭」なんだなと、改めて思うのでした。

その会場を出て、釜山映画祭広場に行くと、監督たちの巨大なバナーがたっていました。
イム・ゴンテク、ホン・サンス、ポン・ジュノ、イ・チャンドン、黒沢清、青山真治、是枝裕和、そして、今年手形を残すニール・ジョーダン。(敬称略)
この人選、なんかすごい。彼らを含んだ、200人くらいの映画監督が集うこの場所で、このひとたちだけがこのディスプレイか~と、しみじみとした私。そのしみじみの理由を探しているところです。
(関係ないですけど、韓国に来ると「ホン・サンスごっこ」したくなりませんか?安い、煙草の吸える酒場で、焼酎を延々飲むってだけですが)

この時期、晴天が続くので有名だった釜山は台風に襲われ、暴風雨のまっただ中を歩くという、人生で初めての体験もしました。
地下鉄駅からホテルまでの徒歩15分の距離を冗談抜きで飛ばされそうになりながら「看板でも飛んできたらアウト」と怯えながら、傘崩壊、全身ぐっしょり、靴の中に雨が入って、子供の長靴遊びみたいにガポガポ言わせながら、自然の驚異を全身体験してきました。
と思ったら、次に、ようやく6年ぶりで訪れた山形国際ドキュメンタリー映画祭でも、台風に遭遇。またもやブーツがぐっしょり。釜山でも山形でも、部屋履きに持って行ったビュルケンシュトックで、足先心細く帰宅したのでした。
旅の必需品、それはいざとなったら外履きできる部屋履きですな。
ああそして東京国際映画祭(略称TIFF)も、台風襲来とのうわさ。
台風を避ける時期に映画祭開催を変えるところも出てくるかもしれない、最近の変な天候です。

TIFFでは、「日本映画スプラッシュ」と名前を変えたセクションで、PFFのグランプリ受賞作品を特別上映してくださっています。
コンペでもあるそのラインナップを拝見して、今年は相当驚きました。PFFアワード2013でもう少し枠があったら上映させていただきたかった2つのパワフルな作品を発見し、是非受賞して欲しいと願い、はっと気づくと、過去にPFFで入選なさっているヴェテランとも言える方々の作品が3本あり、同時に、実験的な若手の作品もあり、そのヴァラエティにクラクラと...・ああ、自分が審査員だったら、これは大変な悩みになりそうだ...と息を呑むのでした。

その審査員のおひとりは、瀬々監督と昨日知りました。遅い。
瀬々監督は、最近大島渚監督の再現ドラマを監督なさいました。困難な仕事だったろうと想像します。友人から借りた録画でやっと拝見した私。豊原さんの監督なりきりに感心し、合津さんのつくられたNHKのドキュメンタリーはじめ、数々の映像に心揺さぶられ、また大島監督作品をみたくなります。その友人に一緒に渡されたのが、つい最近発見され話題になった小津安二郎脚本ドラマ『青春放課後』。こちらも絶品。小津もまたみたくなります。

映画祭の話なのに、全然映画のはなしをせずにきてますね...
本日TIFF上映の、ウルリヒ・ザイドル監督の「パラダイス」三部作。
これは、今年のPFFの企画書に最初からずっと書き続けていた、上映を実現したかった映画です。最終的に他の企画に力を入れたのですが、どこかの映画祭でやってもらいたいと願っていました。そしたらここに!更に、ユーロスペースでの公開も決まったということで、嬉しくなっている私です。是非お出かけください!

それから、初めてTIFFCOM(TIFFのマーケット)にブースを出したPFFです。
便利さにびっくりしました。これまでの道順の説明も困難な東京で「何時にどこで会う?」という約束をしていた日々が、すっかり過去のものに!ただ、マーケットブースにはそぐわない、作品売り買いの話より、新人監督の紹介ばかりになるPFFですから、最後に提出する「商談の成立報告」に何を書けばいいのか当惑したりします。同時に、知らない世界を体験できた、新鮮なTIFFCOMです。

できることなら、ずっと映画祭を廻ってみたい秋。遅い夏休みのつもりでいった山形では、丸二日自主ホテル缶詰で仕事している自分に自分で呆れましたが、山形の、遮る建物のない、空と山とがすいっと目に入るあの街の感じ、観客の楽しみ能力の高いあの会場の感じが、どれだけ素晴らしいものかを改めて感じることが出来たのも、追いかけてくる仕事からくる苦しさのおかげかもとも思うのでした。

うわ~長い。
次からは、毎日少し書け!ですわね。
失礼致しました。

2013/09/14 08:17:04

始まります!

怒涛の仕込みを終え、現場に突入です。
応募招待制の特別講座「今、改めて特撮」で14日に始まり、招待席の多い「PFFアワード2013表彰式」で20日に幕を閉じる第35回PFF。

初日である本日14日は、招待作品部門4プログラムのうち、3プログラムは、当日券を発売する普通のプログラムです。
そのうえ、その3プログラムは、多分、日常ではあまり近くにいないであろう、異なったタイプの観客がそれぞれにご来場くださるような
そんな、ヴァラエティに富んだラインナップなのではないか、と今しみじみしています。

15:00『シンドバッド7回目の航海』は、冒険活劇ながら、それは小さなお人形劇でもある、という、不思議なファンタジー。
こればっかりは、見た人としか盛り上がることの難しいレイ・ハリーハウゼンならではの映画です。
みて!スクリーンでみて!
と叫ぶしかないのであります。

17:00『A2-B-C』は、勿論、日本の現実を描いたドキュメンタリーです。
今、そこにあること、ここで起こっていることがこんなにも話し辛い現代社会において、誰でもカメラを持って記録ができることの素晴らしさも伝える映画です。
なぜアメリカ人が日本で映画を撮り続けるのか、ということへの興味も大きく、
色々と監督にお話を伺っていきます。

19:30『あした家族』は、群青いろの新作です。
「群青いろ」と言われてもピンとこない方は、染谷将太さんが実際に14歳のときに主演した映画『14歳』の監督&脚本の映像ユニットという説明はいかがでしょうか?
コンスタントに自主の長編映画を生み出し続ける群青いろの最新作は、「家族」についての考察。
その映画づくりの方法含め、今、彼らの考えていることをじっくり聞いてみたいと思います。

明日、明後日は、コンペティション部門、PFFアワード2013作品を一挙上映+招待作品を1本づつ、という構成です。
毎回、当日券を充分ご用意致しております。
是非是非、「ふらっとPFF」気分で、渋谷PARCO Part3 8F シネクイントにお立ち寄りください。
場内飲食も可能ですよ!

&毎朝10時から、その日の当日券を一斉発売しています。つまり、朝でも夜の回のチケットが買えるのです。
完全指定席制ですのでチケットを持てば、開演時間近くに劇場に来ても大丈夫(8階までのエレベーターの所要時間はありますが)
いろいろ、昨年の開場、東京国立近代美術館フィルムセンターとは勝手が違いますので、一度ご体験ください。

是非気楽に当日券で楽しみ、が今年のPFFの特徴かもです。

2013/09/12 14:57:25

あっというまに2日前となりました!

怒涛のように日が過ぎまして、あらららららら、もう2日前・・・
今年は、会期が一週間と短くなったこともあり、シネクイントでは最大一日5回上映可能なこともあり、つい、プログラムを詰め込み過ぎてしまいました第35回PFF!
ひゃ~
モーニングショーから終電まで、映画三昧!な今回のPFFです。

そうすると、どうなるかと申しますと、
連続でご覧になるお客様おられましたら申し訳ありません。長めの休憩設定がございません。
また、一日中劇場におられるお客様を想定してつくられた会場ではないため、ロビーにソファや椅子がございません。インターバルには、是非、PARCOの他フロアで、現在の流行チェック!をしていただければと・・・
また、PARCO全館禁煙で、喫煙所がありません。愛煙家のお客様は、付近のコンビニ喫煙コーナーを使っていただくことになります。8階から下まで降りていただきまして。
ただ、これまでの会場とは変わりまして、シネクイントは飲食可です!おお!
音の出ない包装で、匂いのきつくないメニューでお持込いただけるとうれしいです。劇場売店ではドーナツも販売しておりますよ。

そしてただいま事務局は準備大詰め。
カタログなどの印刷物、Tシャツや先付け映像など、多種類の製作物の事務局到着が始まり、オフィシャルカメラマンとの打ち合わせが終わり、ゲストへの最終連絡が終わり、最後の宣伝活動を行い、と、バタバタしています。

初日、14日は、まず「今、改めて特撮」と題した特別講座で始めます。朝10:45から。
ついついあれこれ詰め込んでしまい、お昼時間にかかるにもかかわらず、一部と二部の間の休憩が、15分しかありません・・・本日、ナビゲーターの犬童監督と打ち合わせを終えてきましたが、やはり盛りだくさんの講座になる予感です。朝食を多めにしてご来場くだされば万全です。

その講座直後15:00には、レイ・ハリーハウゼンの『シンドバッド7回目の航海』で、心躍るダイナメーションを堪能いただきます。投影字幕も無事完成しました!
17:00からは、福島の気付いてしまった母親たちと、現実を冷静にみつめている子供たちの姿が迫る『A2-B-C』。外国人観客の来場が少なくない様子に、イアン・トーマス・アッシュ監督には、英語と日本語バイリンガルでお話いただく時間になりそうです。
初日最後を飾るのが、群青いろ最新作『あした家族』。なんと、予定の90分を大きく超える、110分作品として完成しました。あらら。群青いろの新境地をご覧下さい。

朝から晩まで、一日14時間以上シネクイントにいることになりそうな私たち。
PARCO Part3に詳しくなれるというおまけのついた一週間になりそうです。
皆様のご来場をお待ち申し上げております。

2013/09/04 09:55:56

噂の?特別講座「今、改めて特撮」詳細を発表しました!

お待たせしました!! 第35回オープニングを記念する特別講座「今、改めて特撮」。
本年の招待作品部門の企画のひとつ「素晴らしい特撮の世界~手仕事の楽しさ、手作りの映画」のための特別講座の詳細を発表です。
自分のつくりあげたい「映画」のために、特撮をどう生かしていくのか。映画づくりの神髄ともいえる、創意工夫の方法について、ご自身の特撮映像を交えながら4人の監督たちが語ります。
内容の詳細とあわせ、無料の招待制となりますので「参加申し込み方法」をアップしました。
9月14日朝10:45から、約3時間半に及ぶ、しかし、あっという間に時が過ぎること間違いなしの、刺激と楽しさに満ちた本企画に、是非ご参加ください。

先週、この講座の第二部の内容について、登壇者である樋口真嗣監督、尾上克郎特撮監督、矢口史靖監督、そしてナビゲーターの犬童一心監督と打ち合わせを持たせていただいたのですが、皆さんの映画の知識の深さたるや!子供の頃から映画館に通い詰めていたであろう4人の、少年の日の面影を感じる時間でした。
特に、80年代日本映画のどん底期に、現在では名作と呼ばれる邦画がどれほどコケていたのか、閑散とした劇場で、どんなに寂しく映画をみたのか、そして、その当時、常に大入り満員だった映画のひとつが、「トラック野郎」シリーズで、どれだけこの映画を愛していたのか、という話には、その時代「外国映画しかみない」という「典型的な女子」であった自分をしみじみと思い出し、逃したリアルタイム体験を悔やんだのでした。
そう、かつて邦画は男子が、洋画は女子が通ったものでした。少ないお小遣いをやりくりして。「隣が映画館でこっそり裏口から入れてもらい、浴びるように映画をみた」体験を語る映画界の人々が羨ましかったことなど、思い出すのでした。

・・・・と追想に浸っている場合ではありません。
特別講座「今、改めて特撮」第一部では、昨年現代美術館で開催された「特撮博物館」に高座の合間を縫って駆け込み、その感動を語っておられた柳家喬太郎師匠を聞き手にお迎えし、「特撮博物館」実行メンバーでもある樋口監督と尾上監督に、「特撮博物館」のあんな話、こんな話、ここだけの話、を伺っていただきます。
落語家の方を聞き手に迎える、PFF史上初めての企画。私も大変楽しみにしております。

3時間半では多分短すぎる、ま・さ・に・一期一会の特別講座「今、改めて特撮」。
映画をつくることに日々悩める皆様には、特に参加いただきたい、明日への希望の拡がる9月14日オープニング記念企画です。

そしてPFF開催準備もいよいよ大詰め。
招待作品監督たちへ、当日進行の案内を始めます。
映画祭カタログが、印刷に入ります。
スタッフTシャツ、出来上がります。
表彰式の表彰状やトロフィーの発注も終わりました。
PFFアワード応募作品の選考スタートから考えれば、「1週間の開催のために半年間の準備」を費やす映画祭というイヴェント。かなり贅沢な活動です。

第35回PFFまであと10日。
是非シネクイントへお越しください。

2013/09/02 09:41:05

PFFまであと12日!PFFアワード最終審査員そして特撮講座決定です!

前回のブログから34日経過しました...大変ご無沙汰致しております。
その間に、プレフェスティバルである『PFFスカラシップのすべて』及び『HOMESICK』公開記念イベントを終了しました。ご来場くださった皆様、ありがとうございました。
特に、8mmオールナイト上映は、きらきらと眩しい朝までお付き合いくださいまして感謝致します。

TSUTAYA渋谷のPFFコーナーを更新しました。今回も、「あの名作がレンタルなし?」という驚きがありました。最近大変多い、名作のレンタル版廃盤です。*どこかにこれまで廃盤と言われたリストを溜めていますので、見つけ次第お知らせします。意外なタイトルが入っています。

そして今、いよいよ第35回PFF開催目前です。

大変お待たせしておりました「PFFアワード2013」最終審査員5名を本日発表します。
また、追って、チラシに告知のみ掲載しました、初日、オープニングを飾る特別講座「今、改めて特撮」の詳細をお伝えします。
本講座は、入場無料の招待制とし、9月6日金曜締切(!)でインターネット公募の計画です。
オープニングを飾る、といえば、そうです14日に実施する講座です!
それも朝10:45~14:30を予定しています。そして応募締切日は6日!
なんということでしょうか。
がインターネットのおかげで、直前の告知が可能になることに驚いています・・・時間がなくてすいません。しかし、内容は盛り沢山。映画づくりに役立つ発見の宝庫になることでしょう。

映写環境整備、上映素材集約、ゲスト対応、制作物進行、スタッフィング、宣伝、など、次から次に課題の出てくる猫の手も借りたい映画祭開催直前ですが、例年この時期は私の担当事項の多くは終わって、ひといきつける週末のはず・・・という甘い考えのもとに、8/30,31,9/1の三日間、伝説のテレビディレクター今野勉さんによる「勉塾」に参加申し込みをしてしまっていました。PFF事務局から徒歩5分のテレビマンユニオンで開催だったのも便利です。
しかし自分の終わってる<はず>だった仕事は、絶賛継続中でしたので、一日4時間のこの講座、直前まで逡巡したのです。が、行ってよかった。とてもいい経験ができました。「自主映画とは何か」という私自身の課題にとっても、「映画映像産業界に於ける、PFFの位置」ということについても、何かが見えてきた実感を、今、整理しはじめています。

そして、物凄い喜びとして、期待通り、テレビ勃興期の名だたる作品も多数目撃することができました。ゲストの是枝裕和さんや高見順さんと今野さんとの会話に、自分自身の課題が整理できたことも大きかった。

以前、ベルリンの映画博物館から、ハリーハウゼンの多数のミニチュアを含む「特撮コーナー」が消えてしまい、テレビのアーカイブに生まれ変わっていたショックをここに書いたかと思うのですが、何故そうなったのかも合点がいく塾でした。

そして、テレビディレクターの仕事とは、つまり、プロフェッショナルであること、技術者であることであり、それは、映画監督という仕事が、スタジオ制作時代、プロフェッショナル集団の中にあったことと呼応すると申しましょうか、趣味ではない、職業であること、を前提のすべての話なのであると、基本的なことをしみじみと感じたのでした。

ひるがえって、PFFは自主映画を上映する場所。まだこの先が未知数のつくり手のための場所です。映画作家と呼ばれる仕事をしていくのか、何らかの別の職能を発見していくのか、まだ柔らかく光る各人の中の何かを発見するきっかけとなる場所です。

3日間の話を聞いていくと、「既にプロフェッショナルな人たち(あるいはそうなりたいと志向する人たち)がテレビというメディアをどう考えていくのか、というためにある」塾であることを実感し(遅いですね)場違いな自分を認識すると同時に、別の場所から自分の場所を検証する醍醐味にはまってしまったのでした。

と言われても、なんのことやらわからないですよね。
すいません。まだ言語化できていません。
ひとつだけわかるのは、映像の力というものです。
このおせっかいと親切がちょっと足りない現代社会で、映像がその役割を担うことができるな、と、そんなことを漠然と考えています。
カメラを誰かに向けることによって、何かが変わる。そのふんだんな実験ができる場所が自主映画ではないかと。生の姿を恐れず掴み、映像が「目を閉じる」ために発達する現在、本来の機能である「目を開く」ことに入っていける可能性が、自主映画には高くあるのではないかと考えました。

第35回PFFのラインナップは、つまりそんな部分を持つ作品たちなのかもしれません。

いよいよカウントダウンに入った第35回PFFぴあフィルムフェスティバル。本日からは、真面目にこのブログで、上映作品やゲストのあんなことこんなことをお伝えしていきます。

2013/07/28 11:51:30

第35回PFFまであと46日

9月14日。第35回PFF初日までの残りの日々を数えて愕然として、つい「失踪しちゃおっかな」と心で呟く夜です。
もう大人ですからしませんが。

先週末には、恒例のPFFアワード入選監督の皆様にお集まりいただいてのオリエンテーションを実施しました。これから起きることの説明を兼ね、入選監督間の交流をはかる会です。

年々、増々、商業映画と自主映画の差がなくなっていることを痛感する、入選監督の皆さんから伺う制作体制。フィルムコミッションの力、スタッフ&俳優の力、映画制作参加者の本気度の高さを、作品を通してのみならず、このオリエンテーションで伺う話から、目が眩むように感じます。

自主映画、いま、ほんとにおもしろいから、是非、PFFでアワード16作品体験してほしいのですが、さてこれを、どう伝えていけば映画祭会場に足を運んでもらえるのか。これからどんどん開催告知に力を入れなくてはです。

また、シネクイントで初開催となる今年のPFFですから、何が起こってもいいように現場の準備を慎重にしなくてはなりません。が、その前の、招待作品プログラム発表、ただいま追い込みです。

本年は、映画状況の厳しさばかりが取り沙汰される現在、一体どんな方法をもって映画をつくり続けることができるかのヒントになるような、講座形式の映画紹介プログラムを計画しています。
例えば、海外という選択。
例えば、配信という選択。
例えば、自主制作を極めるという選択。
などなど、未来に繋がる選択でつくられた作品の上映をするとともに、監督をはじめとする製作者に、つくり続ける秘訣を伺うという、「連続講座仕立て」で企画をしています。
勿論、映画をみたい!!というその為の来場大歓迎!です。

また、本年逝去された特撮の巨匠、レイ・ハリーハウゼン監督の代表作のいくつかを、小さな追悼特集として上映し、あわせて、特撮という素敵に手作りな映画の技術と、CGという技術との融合について未来を提示できるプログラムも企画中です。

うわ!
46日前なのに、この不吉な「企画中」という言葉は何でしょうか・・・と、またふっと失踪したくなる現実が襲う・・・

加えて、間もなく、8月11日から、35回開催記念&『HOMESICK』公開記念イベントも、オーディトリウム渋谷と映画美学校エクランで始まります
この開催にあわせて、第35回PFFのチラシ完成配布を計画しています。
その前に、このHPに、第35回の特設ページもオープン準備中。
今暫くお待ちください。


え~このブログ、またもや一か月以上更新されていませんでした。
一体何をしていたのかと申しますと、「PFFアワード2013」ラインナップを決定し、8月のイベントを完成し(あ!追いかけまして本日、8/17土曜日の、8mmフィルム作品オールナイト上映ラインナップを発表しました!園監督と平野監督に焦点を当てるプログラムです)、第35回の招待プログラムを構築していました。
最終審査員の交渉、更には、「PFFアワード2013」作品の海外映画祭への営業も既に始まっております。

正直なところ「第35回PFF開催一か月前の8月にプレイヴェントを入れる」というのは、かなり無謀だったなと今しみじみしていたりしますが、同時に、初体験の会場が増えていくのが、どうしようもなく楽しみだという、イヴェント中毒な自分も感じるのでした。

そして、実は、そんな中、突然関西巡りにも行ってきました。
東京を離れると、地方で映画興行に携わる方々の危機感がそくそくと伝わってきます。
未来に向けての工夫や連帯した行動も、とても伝わります。
危機感が、そのまま具体的な行動に繋がっている感がある。
一方、そんな場所から東京を眺めると、正直、なんだかちょっと変。
ふっと今いる場所を離れて、自分のやっていること、やれることを考えてみることの必要性が、ますます重要に思えてくる旅です。

興行の悩みとは、つまるところ、映画も「習慣」にならなければ、映画館でみることは難しい。という現実。映画館でみるときは、「必ず誰かを誘って出かける」それが私たち、映画館に行く習慣が少しでもついている人たちの果たすべきことではないのかな、とますます強く思う昨今です。

(つい、ひとりで行ってしまうのよね。そして、ひとりで何本かみてるのよね。
ということは、日本人の平均映画館での映画鑑賞本数が年に1本だというのは、完全に平均という数字の怖さで、一生に一度も行かない人が殆どだということなのよね)といつも心で呟いている私は、ともかく「ひとりで映画館に行かないぞ」運動を始めようと思うのでした。
理想的には、小学校の前の駄菓子屋のばばあになって、子供たちが集まったら毎日でも映画館に連れて行くという暮らしでしょうか?
とそんなアイデアを話してましたら、友人から「すぐ誰か騒いで映画館の前に警察が張ってるなんて状況になるのが現代」と言ってましたが、「映画館に連れてくぞおばけ」というおせっかいなばーさん、じーさん、かーさん、とーさん、にーさん、ねーさんが増えればいいなと思うのです。

全く話が飛んでしまいました。

そして、今回、会場を東京国立近代美術館フィルムセンターからシネクイントに移すことになって、フィルムセンターで過ごした5年の間に、一般劇場はすっかりデジタルに移行したことを、浦島太郎のように(ちょっとオーバー)に知るのです。

フィルムセンターは、映画のオリジナルフォーマットを厳守する場所でしたので、上映作品のプリントを探すのに苦労しましたが、シネクイントでは、DCPが主流。35mm映写機は1台のみですので2台使っての架け替え方式は不可能です。

映画祭使用フィルムの交渉をする海外のアーカイブはどこも、「プリントは繋いではならない=架け替え上映に限る」という誓約を求めるのが普通ですので、今回、恐る恐る、「一巻に繋いでの上映」の許可を貰えないか交渉したところ、なんとOKが!!
更には「DCPもあるけどどっちがいい?」とも!
(そして、DCPのほうがレンタル料が高い!!)
変わる変わる、あっという間に変わる状況。
逆に言えば、過去のフィルム作品のDCP変換予算がつくれなければ、これから古い映画の上映チャンスが大幅に減っていくという現実もあるわけです。

例えばPFFスカラシップ作品。
時代によって制作フォーマットが違います。
16mmフィルムでつくられたものの損傷が激しいので、ニュープリントを焼くとなると早く手立てしなくてはなりません。

今、現像といえばすぐ名前の浮かぶIMAGICAの、フィルムに関する運営がすべてIMAGICA WESTに移行ちゅうです。京都の研究者の方々を中心に定期的に、「映画の復元と保存に関するワークショップ」も開催されるそうで、本年第8回も夏にあるとのこと。
PFFからも是非参加したいワークショップなのですが、いかんせんその時期は身動きとれず残念です。

実は今年、PFFアワード2013入選作品に2本、16mmフィルム作品があります。
映写機持ち込んで上映します。
8月は8mm,16mm,35mm,デジタルフォーマット作品の上映。9月は、16mm,35mm,DCP含むデジタルフォーマット作品の上映、と、「映画祭上映は効率と無縁にあるな」としみじみするのでした。

「効率」
なんだか近年、あまりいい意味に使われているとは思えないこの言葉。
効率→均質→無慈悲な世界、というイメージがどうにも湧いてきます。
話はちょっと飛びますが
「フェアトレード」とか、「新人」とかいう言葉に私はいささか弱い。
そんな告知が出ている店とかギャラリーとか、ふらふら~と入る傾向が高い。

「フェアトレード」という言葉のことをぼんやり考えていたのですが、
それって、平等取引。"平等"というのは、つまり、植木等。
無責任シリーズの主人公は、平等=たいらひとし、でした。
無責任シリーズの平等は、実は働き者で、誰もやっていない交渉を成功させ、前例のない新たな仕事を生み出す人でした。
戦中にあらわになった、ヒステリックな精神主義で実は具体的な仕事のノウハウのない組織主義で空威張りでいじめが趣味なひとたちの牛耳る世の中に対する痛快な反撃だったのではないかと、あの映画のことを考えました。
またみたくなりました。

なんだか結局話が遠くにきてしまいました。
どうか皆様第35回PFFプログラムお楽しみに!
シネクイントでお会いしたいです!

2013/06/17 21:04:01

NIPPON CONNECTIONのこと

前回少しだけ書いたNIPPON CONNECTIONのこと。
公開の迫る『賢い狗は、吠えずに笑う』が招待された渡部亮平監督の体験記が、間もなく「海外映画祭レポート」にアップされる予定ですので、そちらも是非ご覧ください。

そう。そこにあるように、自由時間がこんなに不安なく充実する映画祭もそう多くはありません。
更に、日本語のできる人に囲まれ、言葉が出来なくてもほぼ大丈夫。
しかし残念ながら私は、滞在中ずーーーーと仕事が詰め込まれておりまして、一週間で食事をしたのは3回、飲んだのは最終日、という素晴らしいダイエットライフが送れましたが(痩せない)、あまりの強い日差しに、肌がひりひりのぼろぼろのしわしわの史上最悪の乾燥地獄になり、焦った焦った。
ただいま、祝!ヒット公開中のインド映画『きっと、うまくいく』主演のアーミル・カーン(44歳)が、18歳の役づくりにやったことのひとつに、「一日に水を5リットル飲んだ=肌にハリが出る」という言葉があり(胃液が薄められすぎて危険そうですけど・・・)「そうだ!水分で乾燥は緩和するはず」と水を飲んでみても、なんといってもドイツは硬水で更に炭酸水ですから、そう多くは飲めない。そして硬水のシャワーも、なんだか乾燥促進剤のように、痒みが増すばかりでございました。
「次回からは水をスーツケースに入れてくるかな~」とか、バカなことを考えるのでした。
そういえば、フランクフルトのスーパーには、ベルリンのように水の種類が多くなかったなあ・・・いえ、スーパー一軒しか行ってないですけど・・・

同じドイツのベルリン国際映画祭は91年から毎年通っていますが、NIPPON CONNECTIONは04年に来たっきり。
第13回の本年、会期も会場も大きく変わった新展開年に立ち会えました。
以前は駅を挟んで反対側にあるゲーテ大学校舎を会場に、3月末か4月に開催していた、学園祭な雰囲気の強かった記憶があります。
04年参加時は、丁度ホテルの部屋に『運命じゃない人』のカンヌ出品決定の電話を貰ったのです。そこから内田監督に電話して(当時の携帯からの国際電話はなんだか音がぼやぼやと通じにくかったことを思い出しました)ふたりで意味もなくただ笑っていた記憶が甦りました。
その内田監督の最新作、『鍵泥棒のメソッド』が、今回、観客の人気投票で決定する「NIPPON CINEMA賞」を受賞し、不思議な縁を感じました。

「NIPPON CINEMA賞」は、商業映画の人気投票と言えます。
一位『鍵泥棒のメソッド』、二位『横道世之介』、三位『テルマエ・ロマエ』と笑える映画が上位を占めていました。世相でしょうか。
前記の『賢い狗は、吠えずに笑う』は、渡部監督の自主制作長編で、ひとりでゼロから始めた力作なのですが、自主映画を集めた「NIPPON VISION」ではなく、プログラマーの熱狂的な感動から「NIPPON CINEMA」部門にラインナップされていました。
エンターテインメント過ぎるからかしら?でも感激です。

同時上映作が、同じく昨年のPFFアワード2012入選作品から、加藤秀則監督の短編『あの日から村々する』。英語タイトルがMORE FUKUSHIMAとあるように、FUKUSHIMAの原発事故で生まれ故郷を離れることを余儀なくされた曾祖母のためにつくられた、怒りを込めたコメディです。「コメディ映画にする」その表現方法が賞賛されての招待です。

今回私は、1:NIPPON VISIONSの審査員を務める 2:『あの日から村々する』と『賢い狗は、吠えずに笑う』の上映後のトークに渡部監督と出席する 3:現在の日本の映画制作状況についてのシンポジウムへ、東京芸術大学のみなさんと一緒に出席する 4:映画に描かれる福島について、『おだやかな日常』の杉野プロデューサーと、『A2』のイアン・トーマス・アッシュ監督と、加藤監督に代わって参加する 5:PFF CLASSICSという特別プログラムの解説をする
と、5つの仕事がびっちり詰め込まれていることを現地で知りびっくり仰天。
同時に驚いたのは、ヨーロッパ中、日本からも、日本映画の専門家や優秀な通訳を招聘していることです。

シンポジウムのモデレーターとして、日本からトム・メスさん、ベルギーから、ロッテルダム映画祭の通訳としてもお馴染みのリュックさんが登場しましたし、廣木隆一監督、西川美和監督、沖田修一監督をそれぞれフィーチャーしたディレクターズ・トーク進行には、お二人のほか、ロッテルダムの日本映画祭「カメラアイ」のアレックスさんがいらっしゃいましたし、各地の日本映画通大集合です。
更に、後半にはベルリン国際映画祭フォーラム部門で、毎年素晴らしい通訳をしてくださる梶村さんが登場。他に5名、すごいなあと唸る通訳が集められ、いやはや通訳の充実にもびっくりです。

ボランティアスタッフも日本語の堪能な人が多く、ひとりひとりに「日本に興味持ったのはなぜ?」と聞きたくて仕方なくても時間なしで涙をのみました。

ドイツは、小学校から英語が第一外国語として義務教育となってから(15年位前と聞きましたが、確認してない情報です)急速に英語の通じる場所になっています。
ここ数年、ベルリン国際映画祭がすっかり英語字幕での上映と質疑応答に切り替わったのを茫然とみていましたが、今回のNIPPON CONNECTIONも英語一色。スタッフにはドイツ語の出来ない人もいて、英語で全てが回っている感を強くしたのでした。

これまでの映画祭訪問体験からは、スカンジナビア半島や、スロベニアなどの小国、そしてオランダでは昔から当たり前に英語が使えましたが、大陸の大国のこの英語化のスピードには、毎度驚かされます。
また、EUになって国境を超えるとき、一番簡単な英語が自然と浸透することになったのか、自国を離れて働く人たちの共通語は、英語になっています。
タクシーに乗る時も、言葉の変化を切実に感じます。
近年ベルリンに多いのが、ポーランドから来たタクシードライバーたち。
英語通じます。スペインやギリシャからの労働者も同じく。

ベストシーズンのフランクフルトだったからでしょうが、極寒の2月しか体験していないベルリンと随分雰囲気の違う街に感じました。おだやかで、優しい。心がほどけます。
上映の環境は決していいとは言えない~本来はダンス劇場である会場と、石鹸工場をリノベした特設会場での映画祭ですので~NIPPON CONNECTIONですが、そこが気にならない人には、世界で一番安心して参加できる映画祭と言えることを改めて確認しました。

そういえば、今回の上映130作品のうち、35ミリフィルムが2本、16ミリフィルムが2本、他はすべてデジタルでした。
これまた驚きの現実です。
2本の16ミリは、PFF CLASSICの作品でしたが、この上映のために、映写機を用意してフランクフルト一の映写技師を手配してくれたことには感激です。

ベルリンの話と交錯した書き方ですいません。
共和国ドイツは、土地によって随分とカラーが違うことを感じたものですから。
ところで、前記、ベルリンで通訳をしてくださる梶村さんから伺ったのですが、ベルリン映画祭フォーラム部門が経営する映画館「アルセナール」の設立50周年パーティーが先日行われたそうです。
ウルリッチ&エリカ・グレゴール夫妻の創設したこの小さなアートシアター。現在では
2館となっていますが、グレゴール夫妻を讃えるとても暖かな会になったとのこと。
フォーラム部門は、スタッフを大切にすることも有名ですが、歴代のフォーラム関係スタッフも集まり楽しい時間だったそうです。
50年。半世紀。あっという間に過ぎていくのかもしれませんね。

私もなんだかんだでもう20年この仕事に携わっているのを、今回、ソウルとフランクフルトの旅で実感しました。昔会った人たちとの再会が多くて。
同時に、映画祭世界での上映作品や、登場する監督たちに、明確な世代交代を感じて、頼もしく思います。
カンヌでの、是枝監督とジャ・ジャンクー監督の受賞には、特にそのことをしみじみと思いました。
常に、新時代が生まれているからこそ、この仕事を続けられるんだなあと実感しつつ帰国しました。

2013/06/17 02:05:25

駆け足で、九州、関西、ソウル体験を記してみます

あらま!どしどし旅のレポートをする心積りが、すでに帰国から5日経過・・・
慌てて、九州から記憶を甦らせてみます。

初めてGWに実施した「PFFin福岡」。休日のイベント開催はいいなあと実感です。
遠方から駆けつけてくださったお客様もいらした様子(上映作品の関係者ではないかと推定・・・)だったのですが、お話できず、気楽な雰囲気をつくれていなかったかなあと反省しました。
例年より活気のある会場に、来年もGWの福岡開催が決定しそうです。
嶺監監督と廣原監督が東京から来場され、廣原監督は憧れの青山真治監督が観に来てくださり大感激していました。

福岡での会場「福岡市総合図書館 シネラ」は、いささか博多駅や天神から距離があるのですが、日本でも指折りの装備の整った稀有な場所ですから、上映のクオリティーに自信があります。
来年のGWには、是非九州の旅+PFFを計画して欲しいなあと思うのでした。
福岡からなら、佐賀、長崎、鹿児島、熊本、あっというまの距離ですので、九州旅の拠点としてもばっちりです!

そして、同時期に開催されていた「北九州映画祭」も訪問しました。
『任侠外伝 玄界灘』上映に惹かれて出掛けたのですが、つい、続けて『斬り込み』と『一条さゆり 濡れた欲情』もみてしまいました。
北九州の古い映画館「小倉昭和館」を会場に、地元出身の監督たちに彩られた濃い映画祭です。もしかしたら、湯布院映画祭に似ている?・・・と言っても、私は湯布院映画祭未体験ですので、人からの又聞きですが。

『任侠外伝 玄界灘』の壮絶なラストシーンに「誰か止めて~~~」と心で祈りました。命がけの撮影です。
まだご健在と聞いた安藤昇さんが劇中で詩を呟く、その素晴らしさも忘れ難く、唐十郎さん唯一の映画監督作品として、情念の込め方、尋常ではありません。
プリント状態はかなり劣化しておりましたが、ここでしか観ることの出来ない作品でした。

『斬り込み』は始まってから、吉川潮さん原作の映画化であることに気付き、これまたみたかった作品でした。菅原文太さんが現在ほぼ引退状況なのが残念でなりません。
勿論、『一条さゆり 濡れた欲情』はいつみても大傑作。ちなみに、神代辰巳監督は佐賀出身です。

そして九州から、神戸アートビレッジセンターで開催の「第2回爆音映画祭in関西」へと移動です。今年も東京会場に行くのは難しそうでしたので、神戸と京都で体験です。

かつてとんでもない衝撃を受けた『汚れた血』を再見するのが一番のドキドキだった今回のラインナップ。結論としては、「今観ると更に更によかった!」
こんな複雑な撮影を可能にしている当時の技術と予算の大きさをしみじみと感じたのは、自分が映画の仕事をするようになったからでしょうか。
これ、大作ですよ。今みると。

未見作品では、『湖畔の2年間』と『ブルース・ピックフォード作品集』がとんでもなかった。是非みてほしい・・・と書きながら、すいません。東京の爆音終了してましたので別のチャンスに是非是非!
そして、みるたびに新たな発見と感動の『ディア・ハンター』。
モブシーン右に出るものなしのマイケル・チミノ!としみじみしたと同時に、クリストファー・ウォーケンしか記憶に残らなかった初体験から、今回は、ロバート・デニーロの凄さを心から認識するまでに成長した我が身。遅いですかね。これからもチャンスの度に観る予感がしますが、爆音上映でこれまで気づかなかった何かが刺激されるのを感じます。

会場のギャラリースペースでは、GOMAさんの画も飾られ、『フラッシュバックメモリーズ』も2D上映ながら大変盛り上がりました。この作品で、松江監督やスタッフの技術の高さに感動したのですが、半月後、フランクフルトのNIPPON CONNECTIONで一緒にお仕事することを、このときはすっかり忘れていました。
余談ですが、後日、松江監督から、立川での上映が自分の立ち会ったなかでは史上最高の音と画だったと聞き、俄かに立川への興味が高まるのでした。

2週間おいて、大雨続きの韓国のソウル国際女性映画祭へと飛びます。初めての参加です。
発起人の中心は大学教授を中心とした女性学を専攻する知識人たちと女性監督たち。プログラマーは、映画専攻の女性たち。という、日本ではなかなか起こらない動きから生まれた映画祭です。

釜山国際映画祭も、そういえば、釜山大学の映画研究会の先輩後輩で構成され、大学で教えてもいましたし、他の韓国の映画祭も、映画研究者からのルートが主流です。いえ、既に、そのルートが確立されている感もあります。
いろんな映画祭の成り立ちがあるなあと、近年感じることが多々あり、もう少し系統立てて整理してみたいものです。

ここには明治学院大学の斎藤綾子先生が毎年通っておられるそうで、めったにない機会にお話させていただいたのですが、日本では女性学が映画と繋がっていないことを少しだけ伺いました。
日本のアカデミックと映画祭と映画産業の分離は、それはそれでアナーキーで面白いのですが、これはつまり映画のポジションのバラバラさを表しているのか、女性映画祭に特化しては、根本的なところで、社会に於ける女性の意識が違うのか、これまた考えてみたい課題満載の刺激的な滞在でした。

今回10年ぶりのソウルへの旅に、私をパネル・ディスカッションのパネラーとして招聘してくださったプログラマーのMiyojo hwangさん(うまく発音できないのでカタカナで書けずすいません)は、非常に情熱的な人で好きな監督の作品を見るためなら、インタビューする為なら、どこにでも飛んでいくようです。
近々では、映画祭が終わったら、すぐ大阪に『リアル』の封切りをみにいくと物凄く楽しみにしていました。

彼女の親友で、映画祭の通訳をしてくれたユミさんの日本語力が素晴らしく、昨年の釜山に続き、韓国の映画祭の日本語通訳レベルのアップに感心です。
彼女は、なんと、大島渚監督への憧れが嵩じて京都大学の院に進んだそうで、大島監督が住んでいたと聞いた学生寮でネズミや虫に大いに悩まされる学生生活を送ったとか・・・(結局それはガセネタで、大島監督は住んだことがなかったそうですが・・)
今は、シンガポールで引き続き学んでおられ、英語もばっちりです。

そんなふたりの情熱に、「私は純粋に、熱く、誰かを追いかけたことがあるだろうか・・」と我が身を振り返ったソウル滞在。
更にソウルでは、つい東京の仕事を部屋で続けたり、上手なマッサージ屋さん情報を聞きつい出かけたり「毎日朝から晩まで劇場で映画三昧」になっていなかったことも、深く深く反省しました。

そして今年の開催は、韓国最大の企業であるサムソンの労働状況を撮影したドキュメンタリー(たくさん生まれているようです)を1本上映する、と決定したこの映画祭から、映画祭最大のスポンサーであるサムソンが手を引く、という直前の大きな経済的打撃があったそうですが、映画祭の存在を世界に広めるべく、各国の女性映画祭ディレクターを招待したり、映画祭会期を、学生が来場しやすい試験後の6月に移動したり、さまざまな試みをやっていました。

韓国では「国際映画祭」という名称を許可され、予算を貰う為には、100本以上の上映作品を持ち、半数以上が外国作品で、海外からの招聘ゲストの数の規定もあるとか。あまり細かくヒアリングしていなかったので曖昧ですが~
ですので、どんな状況でもやることはやらなくてはならず、予算によって内容を変えるのが難しいという現実もあるようです。
・・・という曖昧なことを無責任に言ってるのもいけませんので、今度きちんとレポートしたいと思います。

日本からは、昨年のPFFアワード2012入選の山戸結希監督が、コンペティションに『HerRes~出会いをめぐる三分間の試問3本立て』招待作品に『あの娘海辺で踊ってる』と2作品が招待されて参加。フランスの監督が大層山戸ファンになっていました。
他に、西川美和監督が、Japan Foundationの援助で招待が実現し、皆さん感激していました。
2監督とは、その後、NIPPON CONNECTIONでもお会いすることになります。

ひゃ~!写真もなく(撮るのも撮られるのも習慣がなくてスイマセン)こんな長い文章になって、読む人いなさそうですので、ここまでに致しまして、次は記憶のあるうちに、先週訪れたNIPPON CONNECTIONを綴ってみます。

NIPPON CONNECTIONには、審査員として参加しましたので、勿論朝から晩まで映画三昧で、一年間で一番気候のいい、素晴らしい6月のヨーロッパを体験できずちょっと悲しかっった。ソウルのように雨ならよかったな~とか、罰当たりなことを思ったのでした。
そこでは、山のような日本研究者が集合し、さながらヨーロッパの日本語堪能映画大好きな人のメッカと化しておりました。面白いバックグラウンドを持つ人も多く、10年ぶりのソウルに続き、これまた10年ぶりのNIPPON CONNECTION。驚き満載でした。

2013/06/11 15:45:15

ドイツから帰国しました。旅また旅の46日間でした。

タイトルでいきなり"ブログ無更新記録の言い訳"をしております・・・
今日から暫く時差ぼけ出そうです。
*以前は帰国日に徹夜すると改善すると思っていましたが、今では効果はないことを実感しています。

GWの「PFFin福岡」開催と「北九州映画祭」への参加後、神戸と京都で「爆音映画祭」に参加(東京ではなかなか出向けないので)しながら、ゆるゆると東京に戻り、5/26から4日間、10年ぶりのソウルで、「ソウル国際女性映画祭」に参加し、6/3から本日まで、フランクフルトの「NIPPON CONNECTION」に参加してきました。
気づくと、旅と、第35回PFFの準備とあいまって、「いつどこで何をしていたか?」記憶の時間軸が交錯しそうなこの46日間でした。
そして、韓国もフランクフルトも、どちらも羽田発着だったことも、成田闘争を思い出すと、なんとも複雑な気分なのでした。

ホテル暮らしの楽しみは、「他人が毎日掃除してくれること」にあります。
「こうして毎日掃除しないと部屋ってきれいにならないのよね~」と毎度毎度実感しますが、何故か習慣付かない自分の暮らし・・・
では習慣になってる、ってことはなんだ?と検証してみたりします。

わざわざ言うまでもなく、現在、概ねどのホテルにも大型テレビが置かれています。
実は人生で初めてNHKの連続テレビ小説(しかし「テレビ小説」ってすごいタイトルですね)『あまちゃん』の"録画"をみている私。テレビアンテナ繋いでない暮らしなので友人の好意のおかげです。
旅に出る前には「ホテルではテレビで毎日『あまちゃん』放映チェックができるのでは!人生初リアルタイム鑑賞!?」と楽しみにしていたのですが、見事に「テレビをつける習慣ゼロ」を痛感する日々になりました。全く一度もスイッチをいれなかった・・・

というわけで、『あまちゃん』のこの一か月の展開をみずに日々は過ぎて、このままでは、7月にオンエア2か月分を一挙鑑賞することになりそうです・・・2か月分って、どんだけ?そもそも録画入手できないかも・・・

そんな中、キネマ旬報社から出た松田龍平さんのインタビュー本(泣けるほど映画に誠実です)をいただいたので、早速読みましたら、どうも松田さん演じるマネジャーによって、主人公のあきちゃんは芸能界に入るらしい。
ここで大島弓子さんの『クレイジーガーデン』のテルちゃんを勝手に想像したのは私だけでしょうか。どうもかぶってしまい、いろいろと今後の展開を想像するのであります。

しかし『あまちゃん』のキャスト&スタッフはすごい!素晴らしい。
あれだけの芸達者に長い間囲まれる新人の幸運をしみじみおもうのでした。
とりあえず、7月の楽しみは『あまちゃん』という気分に、それでいいのか?と自問自答中です。

と書いていて、ふと思い出したことがあります。
「アイドル」という日本語の翻訳に困っている人は多い。
「アイドル」という職業(?)は、日本独自のものですから、その言葉はそのままでは全く通じない。
以前、映画祭の通訳さんに「どう訳せばいいんでしょう」と相談されたことを思い出します。同時に、私自身がよくわかっていないことを知ったのでもありますが・・・・
「文化」って、確立されたもの=翻訳が難しいもの、なのかもしれないな~

『あまちゃん』をリアルタイムでみなかった体験によって(あらま!ここまで6回もタイトル書いてますよ・・・)、映画をみる習慣についても考えてしまいました。
現在、映画館に行くのも、習慣の成せる技とも言えそうです。
子供時代に年中誰かが映画に連れて行ってくれた人は、確実に映画館通いが習慣付けられる。映画監督には、その習慣を持つ人が圧倒的だと感じています。
そして、映画祭に通うという習慣を持つ人も、確実に生まれていると感じます。
北九州、爆音, ソウル国際女性映画祭、NIPPON CONNECTIONと、印象的だったことや驚いたことなどをこれからご紹介していきたいと思います。

そして、もちろん、第35回PFFの開催準備も進行中です。
進行中というより、むしろ、「PFFアワード2013」のセレクションは佳境です。
本年は、第35回を記念して、渋谷シネクイントでの開催となることで、開催期間は1週間と短くなりますが、たくさんプログラムを詰め込む計画です。
決定次第、ご紹介していきます。

話は変わりますがご報告です。
「キネマ旬報」の★とりコーナー参加をすることにしました。
映画の「★」つけには正直興味はありませんが、自主映画と邦画最優先生活が加速し、外国映画を観る機会が増々減っていることに危機感を感じていたこともあり、「他人の選んだ作品を強制的にみる」ことを自分に義務付けてみました。
一年間で100本弱の洋画をみることによって、何かの発見があることを期待もしています。
もうひとつ、私個人はfacebookもtwitterもやっていないことをお知らせしておきます。
どなたにも友達申請できずに失礼しております。すいません。

2013/04/26 02:45:10

カンヌではなく、福岡であり、北九州であり、

「カンヌ出発前でご多忙でしょうが」のひとことから始まる連絡の増える昨今ですが、カンヌには行かないので、ぼやーと「ああ、そんな季節だな~、また一挙に人が捉まらなくなるな~、やれやれ・・・」とぼやいてる私です。

「カンヌ前に終われ交渉事!」というのが合言葉のこの時期。
そのうえ、日本のGWも重なり、仕事にはとても困った季節。逆に、カンヌにいけば、一挙に世界中の方々に会うことが可能なので、「営業上は行くといいよ・・・」と心で呟きながら、通常時は一泊7,000円の安宿が、「最低1週間分支払で1泊30,000円の210,000円(一例です)」とかの高騰となる、宿の確保に苦労するカンヌには、いやはや、よういけません・・・(小声で言うとね、映画祭パスもね高い~のです・・・・窓口のお姉さんはむっちゃきれいなんですけどね・・・)
てなわけで、もう長くご無沙汰しておりますカンヌ。

そんなとき、河瀬直美監督が、カンヌ・コンペティション部門の審査員になるというお知らせが届きました。
審査委員長がスティーブン・スピルバーグ監督で、他にニコール・キッドマンとか、アン・リー監督とか・・・・余談ですが、アン・リー監督って愛されています。台湾で。『ライフオブパイ』(3D映画の至宝!)で、大型プロジェクトを台湾撮影にして、地元の経済効果や技術伝達が大きかった功績だけでなく、そのラブリーな人柄にみんな夢中。お兄様も、台湾の若手監督サポートに熱心なプロデューサーですね!
・・・・で、話を戻すと、
思わず聞いてしまいました、河瀬さんの事務所の方に「映画祭会場から離れた豪華リゾートホテルに泊まり、ファーストクラスで移動ってほんと?」と。(ファーストクラスチケットより、その分製作費もらう方がうれしいよね・・・というニュアンスも込め)そして、恐縮なことに、そんな下らない質問に答えてくださいました!「ビジネスクラスで、眺めはちょっといいけど普通のホテル、だそうですよ~」ということでした。
誠に、ありがとうございます。

プライベートジェット、あるいは、豪華プライベート客船以外では移動しない人も沢山集まるカンヌです(最寄のニース空港には、プライベートジェットが沢山停まっていて、結構驚きます)。「高級リゾート地で開催される映画祭」ってことを、ふと思い出すのでした。
ともかく、河瀬監督の体験談楽しみです!!
日本映画2本がコンペの審査対象に入ってるということも思い出しました。審査には作品の国籍関係ないですけどね。

そして私は、カンヌより九州です。
この週末、「PFFin福岡」が始まります!!
数ある公共の映像施設の中でも、会場となる福岡市総合図書館は、東京のフィルムセンターと同じく、アーカイブ連盟に認可されている、フィルム保存も行う施設。
字幕投影システムを持ち、映画に対する知識や、上映の技術、音の装備も素晴らしい、日本のベスト3に入る公共の会場です。
が、しかし、市内の中心地(天神や大名や博多や中洲)からいささか離れているので、なかなか集客に苦労する場所。
PFFの開場である、福岡市総合図書館の映像ホール「シネラ」の認知向上も、私たちの悲願であったりします。

それはともかく、4/27,28,29と、初のゴールデンウィーク開催となる「PFFin福岡」。
28日には、『故郷の詩』で嶺豪一監督が来場し、熊本弁でガンガントークします。出演者や制作スタッフも大勢お越しになるという噂もあり、当日どんなことになるか、予測不可能でございます。
また、各地で評判が高まるばかりのPFFアワード2012グランプリ受賞作品『くじらのまち』、審査員特別賞受賞作品『魅力の人間』、劇場公開の決定した『賢い狗は吠えずに笑う』、人気爆発の山戸結希監督の『Her Res~』など、「PFFアワード2012」16作品がハイクオリティで大スクリーンに踊ります。
そして、最終日、29日には、公開を8月に控えるPFFスカラシップ最新作『HOMEICK』上映に、廣原暁監督が来場します。
新作のロケハンをここにあわせての急な来場決定。国内上映では、昨秋の第34回PFF会場でのお披露目に次ぐ、2度目の監督来場です。

はたまた、全く同じときに、この廣原監督が敬愛する青山真治監督が企画に関わっておられる、お隣、北九州市での「第3回北九州映画祭」が開催されます。
北九州出身の映画人は多彩です。北九州映画祭運営メンバーであり、過去にPFFin北九州を実施くださっていた吉武あゆみさんによると、今回の映画祭ゲストとなる青山真治、タナダユキ、福岡芳穂、平山秀行の4監督以外に、古海卓二、足立正生、川原圭敬、松尾スズキ、竹清仁、松居大悟、と合計10名出身監督がおられるそうです。更に今回は、俳優の光石研さん、国村隼さんもご来場で、曽根中生監督もお客様としてご来場という噂も。
・・・と書いていると、北九州映画祭の宣伝が高まってしまいますのでこの辺で・・・
個人的には『任侠外伝 玄界灘』をみたくてたまりませんし、会場は昭和の香る「小倉昭和館」ということですし、期待が高まります。

自分自身は転勤族に生まれ、既に転居20回に近づく人生ですので、故郷を殆ど動くことのない生活、故郷を愛する暮らし、といったことが、いまひとつ想像できていませんが、映画の豊かに息づく九州の誇り、輝きに、ノックダウンされそうなGWのPFF開催です。

2013/04/18 14:51:31

群青いろ作品を大量にみすぎて他の映画が物足りなくかんじられ真っ青に・・・

「ルネッサンスPFF」も、残すところあと2夜となりました。
今夜は、「群青いろのすべて」最終夜の特別上映作品として、高橋さんが撮影で、廣末さんが主演で、そして、群青いろ映画に参加しておられる俳優さんたちもたくさん協力している、南部充俊監督の『パッション』が登場です。
廣末さんの旧友である南部さんが「人生で一度は映画を撮りたい」というご自身の夢を実現させた本作『パッション』は、群青いろ作品同様の、高い熱気を孕む、緊張感の高い作品です。監督はじめ、高橋さん、廣末さんもご来場です。

この『パッション』を、PFFアワード2011の審査員特別賞に強く推したのが、近年のメガヒット作品『Limit of Love 海猿』や『Always 三丁目の夕日』、過去には『Love Letter』のプロデューサーでもある阿部秀司さんであり、そのコメントが「これこそエンターテインメント」であったことが、大変印象に残っています。つまるところ、「人間が描けているか」それがエンターテインメント映画の永遠の神髄である、と言われているような推薦理由なのです。
(阿部さんに、群青いろ作品を是非ご覧いただきたいとそのとき思ったことも、今思い出しました・・)

さて、私ごとですが、「ルネッサンスPFF」で、群青いろ作品を全てスクリーンで再見して(『ある朝スウプは』『さよならさようなら』『14歳』は、職業上数度拝見しておりますが)全て驚く程新鮮で、加えて、初見時には逃れ難く包まれる緊張感が、今回は無いことにより、楽しめて楽しめて、困りました。
そして一番困ったことは、「普通に公開している映画がみられない体になってしまう・・・」という、職業上の大きな問題です。
奇しくも、昨夜『あたしは世界なんかじゃないから』の上映後の質疑応答で、客席にいらした相田冬二さんが、まるでインタビューのような質問をくださいましたが、そのときに相田さんも、昼にみたある高名な監督の作品が、一昨日の『むすんでひらいて』を観たあとにはゆるく感じられたという発言をしておられましたが、そう、その「ゆるく感じられる」という感じが困るのです。「なぜこれでOKなの?」と、心で呟くかんじ・・・
私も、昼間に別の映画を観たときにかんじました・・・「本気か?」と・・・

つまり、
「群青いろ作品は、たまにみることにしろ」
という教えを得た私です。
幸い、彼らの作品をみることができるのは、年に1度か2度。
そういえば、日本人の平均的な劇場での映画鑑賞数が、ひとり1本を切ると言われて久しいですが、その1本が彼らの作品になると、世の中、今とは随分違うだろうと想像します。

今回は、レイトショー枠での企画ということもあり、上映が終われば終電間近。
加えて、群青いろのおふたりをフィーチャーする企画でしたので、その映画を支える俳優の皆様を紹介することを割愛せざるを得ませんでしたが、毎回熱心に参加いただく方も多く、強いつながりを感じました。
今夜上映する南部さんもそうですが、群青いろに関係する皆さんの中から、監督を体験してみる方々が生まれてくるといいのに、と、日を追うごとに、無責任なことをだんだん考えるようになってしまいました。
「自分の中にあるもの・誰かの中にあるもの・人間の中にあるもの」それをきちんとみつめて、対象化していく作業から、ギミック無くドラマが生まれ、リアルな登場人物が生まれる。
「見つめ、想像し、具体化し、俯瞰し、息づかせ、映像におさめる」。この一連の作業(勝手な想像ですが)を体験した方々が、それぞれの視点で、独自に作品をつくっていけば、映画は更に豊かになるでしょう。あるいは、思わぬ進化を遂げていくのではないか、と感じます。

また、今回「群青いろのすべて」という企画を通し、彼らの歴史をみた感じを持ち、整理してみました。
第一期 『ある朝スウプは』以前の「映画」を生む実験を重ねていた時期
第二期 『ある朝スウプは』及び『さよならさようなら』で映画を掴み、積極的に制作を続けていた時期。『14歳』まで。
第三期 高橋、廣末、それぞれの「映画」を探し、別々の道に別れる気配もあった時期
第四期 「群青いろ」の原点を確認し、『あたしは世界なんかじゃないから』で新たなスタートを切る。この第四期は、今までとは違う何かが生まれそうな予感がします。

ふたりの原点の確認が、『あたしは世界なんかじゃないから』に具体的に示されていると昨夜伺いました。
原点。「迷ったとき、困ったとき、辛いときは原点にもどる」この作業は効果があると、私もたびたび実感します。

さて、映画を仕事とする私は、多彩な映画がこの世界にあることを推奨する者です。
つまり、「〇〇の作品しかみない」という状況は、なくしたい者です。
1億の人間がいれば、1億の「自分の映画」を持ってほしい者です。ですので、1億にそれぞれの映画を発見してもらう工夫をするのを仕事とする者です。
前提として、山のような映画をみてほしいと願う、違う場所の、違う言葉の、違う世代の、違う人種の、あらゆる映画をみて欲しい者です。
ですので、言わずもがなですが、群青色の作品だけを観てほしいということはありません。
ただ、彼らの作品にみる、数々のうまく生きられない人たちをみていると、映画をたくさんみることで、楽になる方法をみつけることができる可能性は高いよ、と改めて思うのです。その1本は、群青いろの映画だろうな、とも思うのです。

が、その前に、あらゆる映画にみる生き辛さを解決するひとつの方法として、「自分が嫌だと思っていることをやめる」という選択肢がひとつ大きくあるのでは、とも思うのです。
大人である私の視点から言うと「辛い」という前提で語られる代表である「仕事」は、やり方次第で辛くない。
「仕事」は、日常生活の延長線上です。日常生活で行っていることを導入する、自分なりのやり方で、片づけて行くしか、やり方はない。朝起きて顔洗って、歯を磨いて、身支度して、戸締りして、ごみ出しして、みたいな作業と同じで、自分の力で進めるのです。そこに「特別な何か」が必要だと思うのは、幻想であり、同時に、「特別に見せたがる人」「ルールを作りたがる人」などは、実は「何をしていいのかわからなくて困っている人」であると思って、まず間違いないでしょう。

だんだんなんだか話があらぬほうにそれてきてしまいました・・・
とりあえず終わらせます。
辛いときには映画をみる、映画をつくる。
そこから始めていただいても、私は嬉しいのでした。

2013/04/16 02:53:47

VHSをブラウン管でみることを諦めなければよかったと悔やむとき

狭い部屋を使いやすくするために、先日、遂に、スペースをたくさんとるブラウン管のモニターを手放したのですが、今、深く後悔の念に襲われています・・・
というのは、名作のレンタルが、意外にVHSしかないことを知ったから。そして、VHSを美しく観るには、ブランウン管がベストだから。

今月末に模様替えするTSUTAYA渋谷4階にあるPFFコーナー。
毎回、映画監督をはじめとするクリエイターに、今、映画を志す人に是非みてほしい映画を、テーマに沿って推薦いただいているこのコーナーの、次回のセレクターは、ワン・ビン監督と、市井昌秀監督です。
両監督からの推薦リストが届き、TSUTAYA渋谷店の在庫を調べていただいたところ、ワン・ビン監督の選んだ作品は大半が、VHSでの在庫のみでした。そして、その作品は、全て、映画史に輝く名作なのです。

つまり、BOXやセルでは発売されても、レンタルになっているDVDは存在しない名作たちが、厳然としてある、という現実を改めて突き付けられたのでした。
ああ、VHSの再生機は残しているのですが、それに適したモニターが私にはない・・・失敗でした。
そのうえ、はっと気づくと、一番これら推薦作品をみていただきたい方々で、VHS再生の不可能な環境の方の割合はとても高いのではないかという現実もあるのでした。
困った困った。

というわけで、ワン・ビン監督の推薦された作品を、是非チェックしにいってほしい今月末からのTSUTAYA渋谷4階PFFコーナーです。そして、もしVHS再生が不可能な方は、その作品の劇場上映(名画座、映画祭、特集上映などになるでしょう)を見つけていただくという、これからの新たな楽しみを持ったと思っていただければ・・・と願う次第です。

が、更に、そのコーナーでは、推薦者の作品も紹介しているのですが、ワン・ビン監督の過去作でDVDレンタルされているものがない!
が、しかし、5/25に公開される新作『三姉妹~雲南の子』にあわせ、過去作『鉄西区』と『鳳鳴~中国の記憶』が特別公開されるとのことで、そちらのチェックを是非この機会に!なのです。
14歳から10年間働いた後に映画を撮り始めたワン・ビン監督。現在のところ、スクリーンで体験するしかない監督です。

「簡単にみたい作品を観ることが出来る時代になった」という気分にどこかでなっていた迂闊な私ですが、まだまだ困難なことは多いな・・と改めて気づかされる「映画は一期一会」を噛みしめる出来事でした。

そして昨夜「ルネッサンスPFF」で上映した『むすんでひらいて』も一期一会でした。
群青いろの作品は、あまりに緊張感が高いので、2度目で初めて"楽しめる"という感を強くする毎日ですが、本日の客席からは『ゲームの規則』を思い出したという声や、「人生の失敗者になるほうが幸せなのではないかと思わされる俯瞰した視線を感じた(意訳)」「透明なものを感じた」という感想なども出て、自分たちのつくった作品に対する評論をまだ充分得ていない群青いろのおふたりは、大変喜んでおられました。

作品を生んだ本人たちも、その作品を完全に掴むこと、わかることは難しい。
それほど「作品」というものは、多面的で、隠された何かを孕む。
その、本人たちにも不明な「何か」の力こそが、作品を普遍的なものにする力ではないか。
その「何か」を見つけることができるのが、観客であり、評論家であり、全ての「観るひと」であり、「観るひと」による発見を通して、つくる人は、更に普遍的で強い大きい何かを生み出す自信と力を持つのではないかと、質疑応答の際に、よくそんなことを考えます。

ところで、お箸の持ち方、使い方を考えてしまった『むすんでひらいて』。
日本の箸は、横で持つ。つまり、口と箸は、"水平"に並んだあと、わずかに口に向かって手前斜めに動かされることで、食べるという行為になる。
口の前に手首を回し、口に対して"直角"に箸を入れるのは、西洋のカトラリーの作法で、大きな間違いである。
と、かつて私は市川準さんに教わり、暫くは箸使いを注意していたのですが、最近油断してるなと、『むすんでひらいて』をみながら反省したのでした。
そういえば、高橋さんの作品は、食事のシーンが多いかもしれませんね。


2013/04/14 02:51:34

後髪引かれながらオールナイトから帰宅し、村上春樹について考えてみる

ただいまテアトル新宿では、「PFFルネッサンス」オールナイトプログラムの2夜め「グランプリ!グランプリ!」にて、グランプリ6作品の上映中です。
実は別の仕事の締切を一夜過ぎてしまった私は、後ろ髪引かれながら帰宅しました。
観はじめると止まらない6作品なのです。映写状態を確認、という理由で場内に入り、ついつい見入ってしまい、必死に離れたのです。

『電柱小僧の冒険』の創意工夫の塊!塚本監督がご来場くださり、お話をしてくださいましたが、新作も長い長い構想の果ての実現だそうで、塚本監督の頭の中には、いったいどれだけの映画の萌芽が詰まっているのだろうかと、思わずビジュアルで想像してしまい慌てました。
『夕辺の秘密』の、俗と聖のコントラスト。橋口監督ならではの漲る緊張感。
スタッフに、斎藤久志さん、鈴木卓爾さん、成島出さんがおられることを再認識し息をのみます。
『雨女』の先の読めない展開。電柱に昇っての撮影中に転落して骨折した矢口監督の回復を待って再開されたものの、製作は丸2年を費やし、生活費を削るために農家の作業小屋を借りて暮らし、トイレは駅や公園で借り、食事は冗談抜きでパンの耳だったという話などを、くっきり思い出しました。
その『雨女』の途中で帰宅してきたのですが、後に続く『5月2日茶をつくる』も、『青~chong~』も、『モル』も、最終審査員全員一致のグランプリだったことを思い出しました。
『5月2日茶をつくる』は、ぼーと口を開けて茶畑にいる気分になっている自分に驚いたことを、『青~chong~』は、「4賞も独占する?」とむっとしたことを、『モル』は、故・筑紫哲也さんが大変感動しておられたことを、思い出します。個人的には、『モル』のあと「ろくでなし」が入ったCDを買いに行ったことが懐かしい・・・

それはともかく、先週末のオールナイトをみてから、しみじみと実感したのですが、時代順に自主映画をみることが、これほど映画制作の変容をみることにも繋がること、驚くほどです。
意外に変化のないのが、服装。
大きく変化があるのが、電話と、俳優陣。
身の回りの人を配役するのではなく、キャスティングをすることが普通になっていきます。

明日日曜は、「21世紀のPFF」企画として、近年のオリジナリティ溢れる作品3本を上映します。
その後、月、火、水、木、と4日間再び「群青いろのすべて」企画が続き、
金曜の「21世紀のPFF」で、「PFFルネッサンス」が終了します。

「群青いろのすべて」トークでは、来週はどこかで、村上春樹についてお話を伺いたいと考えています。というのも、高橋泉監督は、海外で、何度か「あなたは村上春樹を映画化すべきだ」と言われたというのです。
何が海外の観客にそう言わせるのでしょう。

その高橋さんは、リアルタイム読破は「ノルウェーの森」からだそうです。
村上春樹。その影響力は計り知れない。
今この地球の全域に、村上春樹ファンがいますし、書かれた言語のままで読める幸せを享受する日本では、勿論更に濃く影響はあるでしょう。
個人的には、先週のオールナイトで上映した、奥原浩志監督の『ピクニック』には、村上春樹的なものを色濃く感じたのを覚えています。
そういえば、15年くらい前に香港に仕事で行ったときに、現地の春樹ファンのスタッフと春樹世界について話が盛り上がり、帰国に際し、春樹作品に出てくるジャズを集めた香港製のCDを貰いました。ジャスファンを増やす貢献もしているのは間違いない気がします。

「原語で読める」幸せ。
改めて考えると、すごいことです。
原語で読んでみたくても叶わず、翻訳を待つしかないことは多い。
しかし、私たちには、世界が愛する「日本語で表現活動をする」作家や映画監督、芸術家が多々いることに気づきます。
小津安二郎監督もそのひとりです。
年々歳々、世界に小津ファンが生まれています。
先日も、韓国の監督から、その熱い想いを聞きました。
死後半世紀以上を経ても尚、新しいファンを生む小津映画。
すごいですね。

もしも最愛の映画作家が、同じ言語を使う人であれば、そのニュアンスは理解しやすく、そのロケーションは空気を想像しやすい。それは、実にありがたいことだと突然実感するのでした。

2013/04/12 14:24:10

理不尽と 悪意の巷に 傷だらけで それでも 生きていく

タイトルは、円朝全集第3巻のキャッチコピーです。
第2巻は、
「大事な人を 犬死に させて たまるかってんだ」
第3巻は
「幽霊はなぜ 現れるのか 人はなぜ 懸命に 生きるのか」

全13巻刊行予定の「円朝全集」。岩波書店100周年記念刊行だそうです。
これまで、数冊の文庫収録作品しか読んだことがなく、「生涯全作品を読むことは叶わないだろうなあ・・・」と思っていたので、この刊行には驚きました。「全集で書架の埋まった大人になりたいものだ・・・」という子供の頃の理想はとっくのとうに忘れることにした私ですが、夏目漱石も高座に通ったという円朝を、現代の物語の祖とも言える円朝を、じっくり読んでみたいという誘惑に心が乱れております。

しかし、このコピーをみてると、「人って、かわらないのね・・・」と改めて思うのでした。
「"人類の進歩と調和"って、いつ成し遂げられるのかしら~」と言いたくなると「日々の暮らしを大切に」というこれまた永遠に変わらないキャッチフレーズが思い浮かびますし、「人間って、なにもかもわかって生まれてきて、だんだんばかになっていくのかしら・・・」という長年の疑惑が再燃すると、ばかになってない人の作品をひっぱりだし心を静めますし、まあ兎に角、やっかいなことが多いですが「ああ、生きててよかった」という瞬間もあります。

私の仕事は「映画」に特化しておりますので、力ある映画が生まれること、その映画をより多くの方に観ていただくこと、を続けます。その中で、映画を通して出会う「人」からの刺激が生きる力に一番大きくなるのだなあ・・・と、イヴェントのたびに感じています。
力ある映画(あるいは、他の多くの創作物も同様ですが)は、そこにそれを生み出した人たちの"何か"が強烈に詰まっている。それを、「才能」と呼ぶのか、「本気度」と呼ぶのか、「奇跡」と呼ぶのか、何にしろ、「人」が生み出すものは、限界がないなとしみじみするイヴェントの日々なのです。

ただ今開催中の「ルネッサンスPFF」。本日で1週目が終了し、残すところあと1週間となります。
明日、土曜日はまたまたオールナイトでお贈りし、コンペティション形式となった1988年の初グランプリ作品『電柱小僧の冒険』(塚本晋也監督が来場します)を皮切りに、さまざまなグランプリ6作品で朝を迎えます。前売りも当日も同じ2,500円というお得なプライスでお届けするのですが、会場で私も久しぶりに作品を拝見していると、当時は気づかなかったことが沢山みえてきます。同時に、力ある作品は永遠に新しいことも再確認します。

「古びない」そんな映画が生まれてくる。
「はからずも未来を予見している」つまりその力が創造力なのだと思わされる監督たちが登場してくる。
会場でエンドロールをみながら「私にとって、才能とは、永遠の今をうつす映画を生み出す人たちをあらわすのかなあ・・」と考えていたりする、折り返し地点のPFFルネッサンス。
なんだか曖昧なことばかり言ってて恐縮ですが、とにかく、いろいろと楽しい発見がありますので、是非一度ご参加いただければ嬉しいなあと思うのでした。

そして、PFFルネッサンスが終われば、あっというまにゴールデンウィーク。
福岡でのPFF開催のあと、恒例の関西爆音映画祭滞在をする計画です。(何故行かないのか吉祥寺に!という感じですが、都内で時間をやりくりするのがちょっと大変・・・・)そこで、勇気を出して『汚れた血』を再見します。
昔感動した映画を再見するのはいつも少し怖い。しかし、昨年は爆音で『ポーラX』を再見し更に感動したので、思い切って実行なのでした。
ただいま公開中のカラックス最新作『ホーリーモーターズ』、しつこいですが、すごいですよ。


2013/04/10 03:34:54

諏訪さんの式辞が素晴らしい

友人から送られてきた東京造形大学諏訪学長の式辞。
読むことができて、しみじみと幸せを感じる夜です。

映画について語ること、映画監督が語ること、時々遭遇する、世界が変わるような素晴らしい言葉にあいたくて、上映後のトーク及び質疑応答というものを設けるのですが(現在進行中のイベント「ルネッサンスPFF」でもその時間を設けているのですが)まだまだ修行が足りずになかなかうまく進行ができません。

そのことを、改めて考えさせられたのが、本年の「世界が注目する日本映画たち」でした。
最終日最終回の『サウダーヂ』上映後、随分沢山の映画を観続けてこられたのであろうご高齢の男性から、非常に刺激的な質問がありました。
とても乱暴に、かいつまんで記しますと、「何かがあるのはわかるのだが、何を言いたい映画なのかよくわからなかった。上映後に監督に質問しなければわからない映画というのはいかがなものか。あるいは、このような、解釈を観客に委ねる映画がこれから主流になり、旧来の物語が貫かれる映画はなくなっていくのか」といったことを、非常に熱く、真摯に伝えてくださり、監督の富田さん、脚本の相澤さんとも、とても丁寧に答えておられました。
その脇で、私が気になったポイントは、上映後のトークが、監督にその作品の内容、あるいは、創作の意図を確認するためのものと思われている場合がある、ということでした。
ここに、自分の力不足を痛切に感じた次第です。

トークは、映画監督あるいは創作者が、どれだけ面白い存在であるか、どんな風に世界をみているのか、感じているのか、切り取っているのか、を紹介する場所でありたいと考えています。
映画は、観た人が自由に自分のものにすればいい「作品」ですが、つくった人は、その作品に留まらない魅力を持つもの。その魅力の一端でもご紹介できる時間になればと考えているのですが・・・

そんなことを思い出しながら、諏訪さんの式辞を読んでいました。
期待と不安とで胸膨らむ新入生にとって、「学ぶ」ということの震えるような喜びと自由が伝わる言葉に胸が躍るのですが、今、この東京で大量に生まれた新入生が、「ルネッサンスPFF」をみにきて、「なんでもありなんだ創作って!」と、いろんな不安や恐怖や不自由さから、少しでも抜け出してくれたらいいのになあ・・と夢想もしたのでした。
同時に、人生の新たな一歩を踏み出すのに、勇気をもらえる映画が揃っていることを、企画側からうまく伝ることが出来ていないこと、具体的な作品紹介が不足していることを思うのでした。
なんでしょうか、反省文ブログになってきてしまいました・・・・

昨日から、連夜「群青いろ」のおふたりとのトークが続いています。
今回特別に作成したパンフレットには入っていない話をしてもらうべく、司会進行しています。つまり、「映画+パンフ+トーク」で、「現実を描きそこを超え美へと昇華する」というふたりの姿がくっきり見えてくる構成を目指しております。

上映イベントを重ねるごとに、「こうあってほしい」という世界を具体化する方法として、映画というのはやはり無限の力があるなあと、しみじみ実感しています。
同時に、会場のテアトル新宿の映写やロビーのスタッフの皆様の働く様子に「映画館スタッフという職につく方は、ほんとうに映画が好きでやってらっしゃるのだなあ」と感服しています。
更に、会場に集まった、多種多彩なチラシをみながら、「ぴあがなくなったのは痛手だなあ・・」とも思うのでした。
ほんとうに、便利でした。紙のぴあ。それを言っちゃおしまいよ、ですが、会員制の特別配布制度でもいいので、また欲しいなあ・・・とよく思います。作品の回転が速い現代に、紙媒体では遅すぎるのかもしれませんが、ひとめで都内全部の上映作品を把握できるということが、いかに便利だったかと実感します。
作品検索に足る情報を、あらゆる人に届けるのは、並大抵の苦労ではない現在の宣伝です。
最後はぼやきブログでしょうか・・・

明日(今日)はPFFのメルマガを発行し、PFFアワードの応募本数や、第35回の会期会場を発表します!ニュースアップも致しますのでお楽しみに!


2013/04/09 02:23:55

火事で燃えなかったのは『さよならさようなら』でした

PFFルネッサンスでの特集「群青いろのすべて」初日を迎え、『ある朝スウプは』を久しぶりに拝見しました。
高橋泉監督も、私と同じく、約10年ぶり「ロッテルダム国際映画祭以来にみた」ということでしたが、しかし、群青いろの「すべて」が詰まっている1作だなとしみじみしました。

上映後のトークでわかったのですが、廣末さんの住んでいたアパート(『ある朝スウプは』の舞台になった部屋)が火災にあい、8ミリビデオカメラの中に残っていた作品だけが焼けずに残っていた、というその作品は、私が聞いていた『ある朝スウプは』ではなく、本日上映する『さよならさようなら』だったのでした!
ああ、早く訂正してほしかった、私の聞いた誤った情報・・・・すいません。

その火事で、『さよならさようなら』以外すべてのものが焼けて溶けてしまったという廣末監督の体験もすごいなあとしみじみしておりましたら、高橋監督が「火災保険ぶとり」だったという衝撃の事実をポツリと・・・・10キロ太ったそうです、廣末さん。
聞かなければよかった話でした。

ところで、『ある朝スウプは』『さよならさようなら』は、「PFFアワード2004」での受賞作品です。その年の最終審査員のおひとりが、若松孝二監督です。*後に、並木愛枝さんが永田洋子を演じるご縁もここに始まったと言えましょう。
ただいまテアトル新宿では、その若松監督の遺作となった『千年の愉楽』を公開中です。
ロビーには、在りし日の若松監督の姿が随所に展示され、黒田征太郎さんの手による貴重な生ポスターが掲示され、数々の取材記事も読むことができます。
そこに、若松監督が大切にしていた4つのことという記事があります。
・群れない
・頼らない
・ぶれない
・ほめられようとしない
この4つをノートに記して毎朝みていたというお話です。
インディペンデントスピリッツを忘れぬための言葉として、しみじみと、誰もが大切にしたい4つです。

「群青いろのすべて」=「群青いろ12」
上映には、高橋さん廣末さんのトークを毎回設けます。
会場で販売する特製パンフ「群青いろ」は、おふたりのロングインタビューや、作品コメントを含め、これまでの群青いろを総括する濃い内容を、美術品のようなデザインに納めた他にはない貴重な文字記録。
是非一冊お手許に置いてください!

本日の上映作品の1本『阿佐ヶ谷ベルボーイズ』は、大変上映回数の少なかった作品。レアなチャンスになります。
明日の『鼻歌泥棒』は実は『ある朝スウプは』に迫る海外人気の高かった作品です。しかし、国内での上映は、これまた少ない作品です。
この機会に、スクリーンで観る得難い群青いろ体験を!
お待ちしております。

2013/04/07 12:25:57

2か月分の長さ?海外で考える日本映画のことなど・・・

「ルネッサンスPFF」初日オールナイト終了し、痛む頭に眩しい青空の日曜日。
8mm,16mm,35mmのフィルム作品上映は、大変に困難が増すことを実感する夜でした。
全国各地の映画館やホールが、フィルム映写機を撤収してDCPはじめデジタル上映機器の設置に切り替わっています。その機材でいっぱいになった映写室に、フィルム映写機の入る余地はない・・・・オリジナルフォーマットで作品を鑑賞するには、今後客席に映写機を設置するしかない・・・という現実を確認しつつ、思わぬアクシデントが史上最高頻発した一夜を終え、改めてご来場の皆様、ゲストの皆様に御礼申し上げます。
ありがとうございました。

そして、映写の皆様の苦労を再確認させていただきました。
&テストで起きないことが、本番で起きる、という経験を数年分積ませていただきました。
一方で、昨夜上映した6作品は、製作の過程で、完成後の上映会で、きっとあんな風に鑑賞者の脇で映写機が廻っていたのだなあ・・・という、不思議なデジャヴにも似た瞬間も感じました。
「自主上映会」の原点なようなものが、ふと実感された個人体験にもなりました。

東京国立近代美術館フィルムセンター始め、いくつかの、映写室を贅沢な広さで確保している施設以外では、「映写室」は大変にコンパクトな設計なのが普通です。
*ちなみに私がこれまでの人生で最も感動した映写室は、NYのMOMAでした。広さと機能と、度外れていました。もっと凄いのではないかと勝手に想像しているフランスのシネマテークの映写室もいつか訪ねてみたいと思っています*
効率的な空間使用の目的からも、現在、多くの劇場がデジタルとフィルムの二者択一を進めています。勿論、デジタルに大きく変わっているのです。テアトル新宿での「PFFルネッサンス」も、本日から完全にデジタル上映になり、映写室での上映となります。13日のオールナイト上映「グランプリ!グランプリ!」もフィルム作品は、デジタルコピーのあるものを集めています。
デジタル上映の場合、「だましだまし上映する」というフィルム上映に伴う技(?)は通用せず、映らないときはパキッと映らず、お手上げになります。映画祭の世界で最も心臓に悪い出来事です。この出来事が起きないように、数種類の上映フォーマットをバックアップするのが重要な準備事項です。

という裏方の仕事の話はこのくらいにしまして、昨夜、6作品を長い年月の後に拝見して、当時は見えなかったことがたくさんあったことを実感していました。
同時に、つくる側も、みる側も、その場では説明できない「勘」としか言えないものをもとに、つくり、みるのではないかということを新たにしました。
言葉では説明できない「何か」。
それは、多分、日常生活でも折々に感じている「何か」。その何かが絶えることなく湧くあるいは湧かせることが出来る人たちが続けていけるのか、映画。と(こんな書き方をしていてはちっとも伝わらないかもしれませんが)6作品をみながら再確認していました。
もしかして、図らずも、PFFルネッサンスは、そんな人たちの紹介の場か?と、発見してみたり。

そして、香港で考えたことに戻ります。
お伝えしたように、Young Cinema Competitionには日本の作品がラインナップされていなかったのですが、それはなぜ?としみじみ考えました。
Youngという名称のコンペティションながら、最年少は32歳、最年長は47歳、ということにも"あれ?"
過去の作品が高く評価されている人、既に数本のキャリアのある人の作品も多く、もしそのラインナップを説明するとすれば、「海外で学んだ経験があり、高い教養を持ち、ロジカルに強靭に映画をつくる力のある人たちの作品」が多かった、ということかと、今、考えています。つまり、それが日本の映画にない部分なのか、と。
奇しくも8作品中6作品が女性監督でもありました。

私が「Youngというからには、初監督作品とか、20代とかの作品が多いかと予想してました」と大人数での雑談で話した際に、ある外国人から「映画監督で20代は若すぎるでしょ!日本は20代の映画監督が山ほどいるけど才能のある人は少ないよね~」と笑顔で言われ、「今度日本にたっぷり映画見に来てね」とむっとしつつ(海外ではなんだかその国の代表団な気持ちになるのは否めず)笑顔で返しましたが、あれ?そういうことなの?と思いました。

現在、もう、自主時代とか、プロ時代とか、垣根がない。
そのことを端的に、極端に言葉にするとそういうことなのか?と、改めてこの会話からみてしまいました。
今、映画で食べて行こうと思っている人たちのガッツはかなり強烈です。映画祭を通しての助成金の獲得や、コンペでの賞金の獲得、世界ネットワークの拡大など、「プロデューサーとしての才能のほうが明らかに高いな・・・」という人の増加も感じます。
以前、「アメリカでは、映画製作という仕事の税制上の見直しが始まり、ドキュメンタリー制作者の間に震撼が走っている」という話を小耳にはさみました。つまり、(特にドキュメンタリーは)長い年月映画製作への支出が続くが、その後の収入が少ない場合が多い。償却期間が長いが支出と収入の差が激しい。では、その赤字ばかりの「映画制作」とは、つまるところ「趣味」というカテゴリーではないか?という話が湧いているというのです。
「趣味」とされるとどうなるかというと、税制上の控除がなくなるということです。趣味だから申告できない。
つまり、趣味にされたら、おしまい、です。

趣味でも道楽でもなく、映画をつくりつづけるために、自覚的な人たちの時代が始まっている。そこに日本の状況が取り残され始めている。のかもしれません。
プロデューサーと組む、会社組織をつくる、海外のネットワークをつくる、などなどの、いわゆる、収入を上げる、チャンスを増やすための活動を、作品の大小問わず行うことが「才能」のひとつでもあることが常識になっている現在。映画のみならずあらゆる場面で、日本があらぬ方向をみていることを突き付けられている、近年の海外映画祭滞在でもあったなあと、今思い返しています。

年明けから、ロッテルダム、ベルリン、香港と3つの映画祭に参加してきました。
そこで外国人から多く質問されたことを簡単に並べます。(結構質問数順)
何故こんな選挙結果になるの?
何故こんなに投票率が低いの?
何故政治の話をしないの?
何故反原発デモに映画人が参加しないの?
何故チャンバラ映画は確実に世界マーケットがあるのにもっとつくらないの?
何故極端な日本ならではの映画(日本映画の血と暴力とセックスは自由レベルが高い)というものがあるのに、それをもっとつくらないの?
何故折角雪もあり灼熱の夏もある四季があって、映画の長い歴史があるのに、海外に向けてのロケ誘致を積極的にしないの?
何故世界的に著名な日本の監督とうまくコラボして海外との共同制作資金をもっと導入しないの?
何故海外の共同制作チャンスにもっと参加しないの?
・・・・日本代表として答えることは難しい質問が多いのであります・・・
同時に、「自分はあくまでも、若く無名の映画を志すひとたちのために働く立場。しかし、あらゆることを知っておかなくてはならないな」とも思わされます・・・・苦しい・・・
更に、今回、香港のドキュメンタリーのコンペティションで池谷薫監督の『先祖になる』がグランプリを獲得すると、その審査員たちとの食事会で、「この映画、日本ではめっちゃくちゃ多くの人がみたんじゃない?」「みんなすごい感動したんじゃない?」と言われました。
「すいません」という感じでした。

何だかちょっとずれてる日本の感覚。
どこにいっても、ホテルの部屋のテレビはサムソン一色。携帯電話も世界的に急速にサムソンに。パナソニックやソニーの時代はとっくに終わっています。海外赴任の経費が削減され、いいアパートに住める日本人はもういません。更に香港では、あらゆるショップの店員が中国語を使い、かつてのように日本語で話しかけられることは皆無。
長年安くてキッチュな食器を見に通った中国製品デパート「裕華国貨」では、骨董品コーナーが劇的に拡大し、数万円の値札が普通に・・・
あれやこれやと「これが現実だな」と知る海外滞在。
「変わらない」という夢の中に生きるより、現実の中で何かを生み出していくほうが楽しいな。特に映画はそうだなということを、再認識できる貴重な日々となるのでした。

今夜のルネッサンスPFFは、昨秋から海外への旅が続く『くじらのまち』と異色SFの『101』のカップリングです。『くじらのまち』監督の鶴岡慧子さんも来場します。海外体験を是非いろいろ聞いてみてください。
明日からは、「群青いろのすべて」が始まります。

ここで話は突然変わります。
書店で平積みされていた「和菓子のアン」という文庫本のタイトルにひかれ読み始めたら坂木司さんにはまりました(ひきこもり探偵シリーズの帯に"テレビドラマ化"とあり、監督が中島良さんだったことを今頃知り恐縮しております・・・)。「まとも」がここにある。入院中の友人へのプレゼントシリーズ、「みをつくし料理帖」シリーズ、「海街Diary」シリーズ、に新たな本が加わりました。
「困ってるひと」が話題になった大野更紗さんの新刊「さらさらさん」の数々の対談も面白く読みました。「困ってるひと」を糸井重里さんは「一家に一冊」とおっしゃってますが、同じく山本譲司さんの「累犯障害者」も、一家に一冊本(文庫にもなってるし)だなと、改めて思います。
これらの本を思う時、群青いろのことを思い出します。
現代の「優しさ」「まともさ」。
優しさを惜しみなく使う、愛を惜しみなく使う、その技術の向上に効く映画がまだまだ日本から沢山生まれていると、私は思いたい。

なんというか、あまりに長いブログ。
たまにしか書かないブログ。
自分のfacebookやtwitterには全く手がまわりません・・・
では、ともかく、また今夜もテアトル新宿で!

2013/04/06 12:16:56

4月6日 ルネッサンスPFF初日に思う

今日から毎夜、「ルネッサンスPFF」がテアトル新宿を会場に2週間続きます。
土曜日の夜は、オールナイト上映をやろうと決め、そのうち1日は、8mmと16mmのフィルムをほんとうに上映しようと決め、今夜がその、8mm&16mm映写機持ち込み上映を実行する夜となりました。
映写さんも緊張、私たちも緊張、予算は破裂(映写機のオーバーホールがなかなかすごいことになりましたが、これで安心です)、という商業的視点で言えば失格な夜になりました。
事務局一同、たくさん働いて、赤字予算を回収したいので、是非お仕事ください!
とここで叫びます。「映画祭運営はお任せください!!!!」いい仕事しますよ!

それはともかく、3日まで香港国際映画祭で「Young Cinema Competeition」の審査員を務めていました。以前ちょっとお話したように、PFF作品がラインナップされていなかったからの依頼でしたが、日本映画そのものがランナップされていませんでした。
不思議・・・
審査員としてご一緒したのは、韓国の映画監督+映画プロデューサー+映画大学教授のパク・キヨンさんと、香港ニューウェーヴの監督、イム・ホーさん。ほかにも5つのセクションがあり、それぞれの審査員といろいろな話をしました。
日本と同じく、天候の大荒れな香港で、日本映画のことを改めて考えさせられました。

そして本日、テアトル新宿で「ルネッサンスPFF」
テアトル新宿は、私が初めてPFFの仕事に参加した1990年の開催会場でした。矢口史靖監督の『雨女』がグランプリを受賞した表彰式にも会場にいました。矢口監督の態度があまりにも子供なので、審査委員長の篠田監督に「君はもっと社会性を持たなくてはいけない」と、厳しくも優しいアドヴァイスをもらっている姿を覚えています。
*その『雨女』は13日のオールナイト上映「グランプリ!グランプリ!」企画で上映します。
その後、1992年のPFF(会場は日比谷シャンテでした)から、ディレクターの仕事に就くのですが、その年のグランプリが、今夜最初に上映する『灼熱のドッジボール』です。
拝見したときのものすごい驚きと、会場でのものすごい人気が忘れられません。
・・・という昔話をしたいのではなく、80年代、90年代、0年代と、確実に映画の何かに変化があることを、日本をちょっと離れると、一層実感することを、皆さんにお伝えできればと思うのです。
「ルネッサンスPFF」企画、「世界映画地図」企画、所沢での「世界が注目する日本映画たち」企画、シネパトスでの樋口監督の8mmオールナイト上映参加を経て参加した、香港での体験は、一層日本の状況を考えさせられました。

日本がだんだん鎖国状況に置かれています。
映画も鎖国してしまったら、経済的に立ちいかない状況が加速し、私たちは映画という喜びを失ってしまう。その危機感もお伝えできればと思う次第です。
と、今ここで漠然とした話をしている場合ではありません。
本日はいささかイヴェント準備で慌ただしくしております。明日ゆっくり書きたいと思います。

「ルネッサンスPFF」。
なんと今週は、レイトの時間帯に都内でイヴェントが目白押し!
お客の奪い合いという状況になっていることを実感していますが(『まほろ駅前番外地』のスクリーン上映もあるし!)ルネッサンスPFFは、日本の誇る「自分の映画」を「自分でつくる」独自のクリエイティブを一挙に実感できるお得で貴重な時間になること確実です。是非ご参加いただけることを願っています。
ではまた明日!


2013/03/14 23:37:40

梅本洋一さん・寺島咲さん・橋口亮輔監督・群青いろ 

また人物羅列のタイトルになっております。

梅本洋一さんの訃報は驚愕でした。
「カイエ・デュ・シネマ・ジャポン」とも、「nobody」とも、横浜国立大学とも深い関わりはない私ですが、その「映画を信じて自分の力を信じて進め」という薫陶を受けた方々を多く存じておりますし、「映画は判ってくれない」の影響力も感じております。そして、20世紀終盤の日本に、映画が素晴らしいものであることを、最も強く示された方であったことも存じており、深く考えるところがあります。

道を示してきた方々の訃報が続きます。
珍しい方からの電話には「今度は誰・・・」と脈拍が乱れがちな今日この頃です。

大島渚監督が、同時代を併走した映画評論家の佐藤忠男さんを評して、「若い監督たちは自分にとっての佐藤忠男を持ったほうがいい」とおっしゃったそうですが、同時代を併走する映画評論家として、今、この時代の監督たちは誰を持つだろうか。
先日来日されたレオス・カラックス監督(『ホーリー・モータース』は既に私の本年度ナンバーワン!と思う)が、学生へのマスタークラスに於いて、映画監督として一番大切なこととして、「自分にとってのケンゾー(堀越謙三プロデューサーのことですね)をみつけること」と教えたように、共闘するプロデューサーをどう持つのか。
21世紀の新たな、映画監督とプロデューサーと映画評論家の関係が、すでに始まり息づいている、その姿を早くどんどん紹介していきたいと改めて思います。

ただいま、閉館を迎えるシネパトスで公開中の『インターミッション』に、PFFスカラシップ作品『水の花』の主演にお迎えした寺島咲さんが出演されています。
『水の花』では、まだ中学生だった寺島さんが、ここで、すばらしくうつくしい女優となって驚異的な女性を演じています。
ため息が出ました。
少女から大人へと花開くとき・・・・という常套句が、初めて文句なく納得できました。

『インターミッション』
失われる映画館にオマージュを捧げ、その場所を舞台に紡がれる映画。
個人的に、中川安奈さんの独自の存在感にも、ものすごく胸躍る作品でございます。
更に、監督の樋口尚文さんの8mm作品をオールナイト上映する週末を組むそうで、行かねばと睡眠時間のやりくりをする私でした。

スカラシップ作品に出演いただいた若い女優では、満島ひかりさんも、舞台『百万回生きた猫』で、大島弓子さんにみてもらいたい、『綿の国星』チビ猫実写版とも言える白猫に変身していました。
美しかった・・・

満島さんには、偶然先日ぴあ社内でお会いしました。別部署の企画で来社されておりました。
相変わらず、華奢で頭が私の四分の一の大きさしかない。
女優さんやモデルさんに遭遇するたびに思う「生まれついての骨格が違う」感。いやはや「すごいな~」とドキドキ眺めるばかりです。

先日は、ぴあで、朝から監督たちとのミーティングが重なりました。
この公式HPでもご紹介している『粗谷物語』の蔦哲一郎監督。
遂に完成した『粗谷物語』を拝見したのですが、ものすごいのです。
製作から公開まで、自分の力でやりたいという蔦監督ですが、公開に際しては、プロの力も入ると更にいいのではないかなあと思え、今後の試写案内の相談をしようとしています。
配給・宣伝にかかわる皆様、『祖谷物語』試写案内ありましたら、この若き監督の力になっていただけたらと思います。

橋口亮輔監督。
新作、『ゼンタイ』の長編と短編が完成しました。
一昨年来、自主映画の審査員や、ワークショップでの映画製作などに積極的に参加されてきた橋口監督。
何をするにも全身全霊で打ち込む愚直とも言える(言いません)橋口監督と、若い俳優さんたちの力が融合する『ゼンタイ』は、胸に迫る瞬間が多すぎる力作。
特に長編は、俳優さんたち自身のエチュードを元にした短編集となっており、その、あまりにも鋭い会話の応酬に、まいってしまうのでした。
「製作過程で、明らかに男と女の差を感じた」という橋口監督の話も面白かったのですが、その日、最後にミーティングした「群青いろ」のおふたりに、その話をしたところ、彼らも現場で同じことを感じていたということに、色々と思うところがありました。

群青いろ。
高橋泉監督と廣末哲万監督の映像ユニット。
4月6日からテアトル新宿で開催するイヴェント「ルネッサンスPFF」で、いよいよ特集が実現します。
ただいま、その会場での販売を前提にした、本邦初の群青色オフィシャルパンフを製作中です。どうぞお楽しみに!

来週は、20日にアテネ・フランセ文化センターにて、同センターと共催で『世界映画地図』という上映と講義のイヴェントを行います。
講師としてお迎えするのが、明治学院大学で教鞭をとる、門間貴志さん。博覧強記です。当日は、たまらなく面白い映画の歴史を伺える予定です。

そして来週末は、『ミューズ・シネマ・セレクション 世界が注目する日本映画たち』。8作品上映中、7作品に監督が来場いたしますので、どんどんいろんなことを聞いてみてください。。
特に『KOTOKO』は、塚本監督が「これが最後のイヴェント上映」とおっしゃるように、スクリーン上映もトークも、もう機会がなさそうです・・・

「世界が注目する日本映画たち」が終了すると、香港国際映画祭に参加します。
本年は、コンペ部門の審査員としての参加になりました。
何故なら、10年ぶり?という感じで、PFF作品がコンペ出品させていないから・・・これって、残念なニュースなのですが、「PFF作品がないので、審査員をやってもらえないか」と言われ、複雑な気分でありつつお受けしました。
浴びるほど世界最新の映画をみてきます。

香港から戻ると、テアトル新宿での「ルネッサンスPFF」企画が2週間始まります。
ただいま事務局では、初日オールナイトに向けて、8mm映写機のオーバーホールはじめ、多彩な準備を行っております。
20世紀から21世紀への映画の変遷をまのあたりにできる「ルネッサンスPFF」
是非1プログラムでもお越しください。

2013/02/24 23:52:34

タイトルを間違っていました

前回のブログで書いたまほろ駅前多田便利軒のテレビシリーズタイトルは「まほろ駅前番外編」でした。失礼しました!監督&脚本も楽しいですし、柴田剛監督によるタイトルバックもいかしてます。
テレビ関係では、現在、NHKでオンエアされている1分間のドラマシリーズ「ブラウン・カーン」。鈴木卓爾監督が脚本を書いているということでいくつか録画を拝見したのですが、これまた無茶苦茶面白いです。
1分だから、60話で1時間・・・まとめてみたいものです。
*NHKアーカイヴ画像が多用されていますので、オンエアでしかみることができないのかもですが・・・

さて、やっと話はベルリン国際映画祭へ。
『くじらのまち』上映とそれに伴う鶴岡監督はじめキャストやスタッフの方たちの参加があり、みることの出来た作品はそれほど多くなかったのですが(レトロスペクティブ部門で、サークとパウエルの未見作品をみることができました!)、今回は、ベルリン参加者とのミーティングや、ベルリンで『くじらのまち』をみたプログラマーからの滞在中の映画祭招待など、「人の多く集まるベルリン」ということを妙に実感した年となりました。

とても好評なのを感じた『くじらのまち』なのですが、しかし、監督が参加した3回の上映のうち、2回「上映後の質疑応答に全く質問が出ない」という、20年に渡るベルリン参加史上初めての体験をして驚きました。しかし、大変多くの観客が、最後まで残っておられるし、ものすごく暖かい雰囲気なのですが・・・
質問が出ないときは、PFFもそうですが、司会進行担当者が、質問をして時間がすすみます。今回も、2回はその形式ですすみました。また、どちらの回も、上映終了後には、監督のまわりに観客が集まってきはするのです。
ドイツ人の映画祭関係者によると、他にも質問の出ない回に遭遇したそうで、その映画はドイツ映画。あれほどディスカッションの好きだったベルリンの観客なのに、変化しつつあるようです。

もうひとつ、大きな変化を感じたのは、日本映画に集まる日本人観客の減少です。
昨年までは、日本映画には、在ベルリンあるいはヨーロッパ在住の日本人が集まる傾向にありましたが、今年はあまり姿を見ませんでした。
現地在住の日本の方によると、この1年、日本人は「有名人がくる」イベント以外、出かけてこなくなったという話で、かなり驚きました。何が起きているのか、もっと知りたくなる話です。

お土産コーナーの長蛇の列や、上映会場の盛況ぶりをみると、新しい観客層も増えてるようで、活気を呈するベルリンですが、少しづつ変化が進んでいるのだろうなあと感じます。と申しましょうか、20年通っていても、まだ、この映画祭を完全に把握してないぞと知るばかりです。
大きいぞベルリン国際映画祭!

私は一貫して映画祭事務局の発行してくださる「映画祭パス」しか取得していないのですが、この映画祭には(カンヌもそうですが)、マーケットパスや、プレスパスがあり、複数のパスを持って上映参加可能作品を綿密に組み合わせ参加する人も多い。(私もそういえば、カンヌではそうしてました)
たとえば、コンペ作品は、プレス上映(とドイツ語作品)は英語字幕付きですが、他は基本ドイツ語字幕付き上映。プレスパスを持ってプレス上映に行くか、マーケットパスを持ってマーケット上映に行くかするのが、英語字幕つきでみるための常識です。

そして、昨年から、ベルリン映画祭は各国新聞からの特派員招待を始めたので、現在、ベルリン初参加の記者さんたちも多くいます。
「初参加」だと、何がここで起きているのかを把握することも大変な労力で、ものすごく慌ただしく日々が過ぎていくのではないかなあ・・ある映画祭には、その変化を知るためにも一定期間通うことで、余裕ある視点が得られないかなあ・・・と余計な心配をしたりして、すいません。

さっきから、「英語字幕英語字幕」といってますが、英語字幕がますます主流な映画祭世界。
そして、今回「航空業界も英語世界だよな~」と感じたことがありました。
鶴岡監督の帰国便が、出発前夜に「キャンセルになったので追って連絡します」とさらっと英語でご本人にメイル来たのです。
しかし、待てど暮らせど連絡はなし。
時差のおかげでまだ昼間だった日本で、PFFの海外担当スタッフに航空会社にコンタクトしてもらい、航空券の振り替えに成功しましたが、「こりゃ、監督ひとりで何もかもやってきてる場合はどうなってたかな~」と想像してしまいました。
まず、英語がわかり、ネットや電話で手続きを行い、などの作業ができることが必要。インターネットの世界では、ますます英語はできないと進まないことが増加しているような・・・
今回は無事帰国となりましたが、最悪の場合を想定した準備は、いつでもどこでも必要ですね。

飛行機といえば、昨年、「来年にはもう新国際空港使用になるから、今年が最後だね」と映画祭のドライバーと話したテーゲル空港は、今年もしっかり使われておりました。
何故なら、新国際空港の完成前点検で、消火器系統の不備がみつかり、オープニングを遅らせる事態になったから。
その工事には、最近「数年あるいは5年くらいが必要」という話となり、来年もまたテーゲル空港に着くのだなあと・・・と思いながら去りました。

消火器とか火災といえば、昨日までおりました京都では、防火の標語が目につきます。
先日火災に見舞われた神田の「藪そば」。人生で5回くらいしか訪れたことがないのですが、注文を詠いあげる声がとても気持ちのいい多彩なつまみのおいしい、素晴らしい空間で、たまたまベルリン出発前に訪問していたので(なんとなく、蕎麦屋か寿司屋に行きたくなる海外渡航前)、一層身にしみました。
京都の方に、「京都で言えば、どこが火災になったという感じなのかしら」と問われ、「柊屋さんとか、瓢亭さんとか、そのくらいのショックだったと思う」という話をしました。
京都を歩くと、「戦禍がなければ、全国に落ち着いた街並みがまだ残っていただろうなあ」と、しみじみします。建築基準法からも、今、昔の家を建てるのは難しいでしょうし、ベルリンはじめ、帰途立ち寄ったイギリスにもある、意地でも昔のままを再現しているヨーロッパの家をみると、日本の木造建築の難しさを改めて知るのでした。

そう。イギリスに3年ぶりに乗り換えついでに立ち寄ったのですが、ベルリンでも、ロンドンでも、一番の驚きは、「食の向上」かもしれません。
特にイギリスは、スーパーの出来合い惣菜の味も大幅アップ!欲しいもの、食べてみたいものの急増加に息をのむかんじです。食に重きをおきがちな私にとって、北ヨーロッパは昔はあまり楽しみのない土地でしたが、今は、そのイメージに「ごめんなさい」と謝罪です。

どんどん映画から話題が離れておりますので、ついでにもうひとつ。
海外への手土産を、毎年新たに発見したものにしようと考えております。
できれば、重量が軽くて美味しいものをみつけて、と。
昨年は、「十火」の不思議なあられ。今年は、山形の「nan jo da be」という最中クッキー。これ、ちょっとすごいですよ。各所で好評です。

2013/02/23 07:36:46

ロッテルダムの話に戻りまして、テレビドラマ特集など

忙しい=心を亡くす、という言葉を使わないように心掛けているのですが、年末からずっと、忙しいと言わざるを得ない状況で、ちょっと困っています。
と、今頃1月の映画祭体験を記すことの言い訳ですけど・・・

事前リサーチの足りない映画祭参加の反省も続いておりまして、ロッテルダム現地でChanging Cannelsと題されたテレビドラマの特集を知りました。
昨年のPFFでも、テレビドラマに焦点を当てましたので(いや、2作品だけで規模が比べものにならないと言われればそれまでですが・・・)「世界中で考えることは同じだなあ」としみじみしてました。
そして、是枝裕和監督の「ゴーイングマイホーム」一挙上映を知ったのでこっそりみにいきました。ちなみに、ただいまイギリスで公開中の是枝監督最新作『奇跡』は、『歩いても歩いても』に続き大ヒット中だそうで、ヨーロッパでの人気も変わらず高い是枝作品です。

実は私は随分長くテレビのない暮らしをしておりまして、みたいテレビ番組は友人の録画をを借りるという習慣です。テレビ版「まほろ駅前多田便利軒」を、2,3話まとめてみるのが、今、日々のものすごい楽しみでございます。ありえないキャスティングに、プロデューサーの孫家邦さんへの敬意が高まる次第です。
テレビ番組をそんな観かたするな~と怒られそうですが・・・

で、「ゴーングマイホーム」。
ロッテルダム映画祭がこの特集のために英語字幕をつけたそうです。ふとっぱら。
これまた豪華キャストで、「猫のホテル」はじめ、小劇場の俳優さんたちの活躍も楽しい作品でした。
一挙にみますと、毎回流れる主題歌(マッキー)を覚えてしまいまして、会場ではインターバルにハミングしてる人がちらほらいたのが、面白かった。日本語の歌詞は、みなさん覚えられないですからハミングですね。
脚本監督を毎回ご自身で完全に続けられたそうで、広告業界の話や、ファンタジーや、過疎地の恋愛や、さまざまなことが詰め込まれており、特に、宮崎あおいさんを中心としたあるエピソードの回には、度肝を抜かれました。また、『歩いても歩いても』ファンなら、阿部寛さんとYOUさん姉弟と家族の会話を、またまた堪能できます。

そして是枝監督がロッテルダムに来るとは知らず、上映後にトークがあってびっくり。
その後、席を同じくする機会があり、このドラマに登場するお料理の本が出るのか確認してみましたら、残念ながらその予定はないということで、特に美味しそうだった、チームナックスの安田さん演じるYOUさんの夫がつくるホタテごはんの作り方を教えていただきました。そして今、宮崎あおいさんのつくるラーメンサラダの作り方も習えばよかったと反省中。
それはともかく、是枝監督はこの特集のための対談に呼ばれたわけで(私は拝見していないのですが)やはり、モデレーターが、「テレビより映画」という話に持っていきたい進行だったという話を伺いました。
テレビより映画、とか、デジタルよりフィルムとか、そういう比較はもういいかなと最近とみに感じています。それどころではない、という焦燥感のほうが高いと申しましょうか・・・「内容」の話をもっとしませんか?という感じと申しましょうか・・・
テレビでも、映画でも、映像作品をたくさんつくって、あらゆる現場経験を積んでということが、誠に大切ではないかと思う次第です。

ロッテルダムでは、みたい映画が多すぎて、各特集をはしごするように過ごしてしまったのですが、ジョニー・トーの新作DRUG WAR(中国大陸撮影で更に度肝抜かれる迫力ですよ!)が完全な満席ではないのには少しびっくりしたことに始まり、アジア映画よりヨーロッパ映画のほうが動員がよくみえたました。
実は、今年のロッテルダムは予算4割減との噂を耳にしたのですが、劇場スタッフの大幅な様変わりなどみると、確かにそれはあるかも・・・と感じたのです。
映画祭と予算。どこでも頭の痛い話題です。ひとごとではありません。

話は突然現在の東京に戻りまして(私は今京都にいるのですが)月曜25日から、TSUTAYAのPFFブースの展開が変わります。25日から2か月間は、「仕事の楽しさ 仕事の苦しさ」と題しまして、春をむかえ、新たな仕事に挑戦する季節に、仕事を描く作品たちを3名の方々に選んでいただきます。
新作『ゼンタイ』公開を待つ橋口亮輔監督、公開迫る石井裕也監督『舟を編む』出演の池脇千鶴さんと、宇野祥平さん。お三方の選ぶ17作品にご期待ください。

また、4月5日から2週間、テアトル新宿で展開する、第35回PFFのプレイヴェントのライアンナップも、週明けには発表すべく、ただいま鋭意交渉中です。(はいすいません。私が遅らせています・・・・チラシ完成が1か月前に間に合いません!涙涙の自業自得状態を今再認識して真っ青です)

ロッテルダムでの話題、そしてベルリンでの話題を引き続きこの数日でご紹介できたらと思います。そして、4月のプレイヴェント、ご期待ください!

高野悦子さんが、ドナルド・リチーさんが亡くなり、ある映画の価値観が、ある映画の時代が終わった感を深くしています。
海外でも、同様の時代の変遷を感じることも多く、いろいろ考える冬の京都です。
個人的な反省書きすぎですね。週末に挽回目指します。


2013/02/20 16:02:48

京都に来ました

ロッテルダム、ベルリンと続いた旅の報告も終わらぬまま、というより、ベルリンはまだ何も書けない慌たださで過ぎてしまい、一昨日帰国して、本日から開催後半となりましたPFFin京都に参りました。

毎日6時半から一度だけの上映で、一週間開催という形式の本年の京都開催。残る3日間に3名の監督がお越しになります。
昼間の時間は、4月のテアトル新宿のレイト枠で2週間開催する第35回PFFプレイベント第一弾のチラシに着手し、ベルリンのことをブログにアップし、と考えています。(ベルリンでは「くじらのまち」の人気にも驚きましたが、他にも色んな驚き満載で、お伝えしたいことがたくさんあります)

取り敢えずPCがあればどこでもオフィスになる素敵な現在。なんだか京都に住みたくなる気がしてしまいます。
皆様のご来場をお待ちしております。

2013/01/31 17:48:53

日本映画の衰退をうつす海外映画祭で大島渚監督のことを考える

かつては、JALとKLMの直行便からどちらかを選んで行っていたロッテルダム。
アムステルダムのスキポール空港からは、列車で約30分で到着する便利なロッテルダムですので、航路も乗継なしでダイレクトに素早く、と思って直行便を選びます。*欧州便で乗り継ぎがあると、荷物の紛失が多いこともひとつの理由ですが・・・
しかし、JALの再生に伴う国際路線見直しで、自分の乗っていた航路、ロッテルダムとバンクーバーに影響が出ました。寂しい限りです。

そんなわけで、これまで数えるほどしか乗ることのなかったKLMでのロッテルダム参加に変えましたら、予約から搭乗までインターネット大活用でほぼ人間対応がなく、驚くことの連続。ロッテルダム映画祭のシステムもあわせて、「超インターネットシステム導入国オランダ」の印象を強くしています。(いや、ドイツと日本がとても遅れている、という説もありますが・・・)
そのKLMで、昨年、今年と、二年連続で機内で倒れた方に遭遇しました。どちらも、成田からの便でした。
昨年は、私の席の真横を歩いていた日本人の中年男性が、突然血の気を失いばたっ!と倒れ、斜め前に座ってらしたアメリカ人の世界一周中(会話から推定)初老のカップルの奥様のほうが「医者だ」と立ち上がり介抱して、数時間後には完全回復しことなきを得ました。今年は、私からみえない席のご婦人が、オランダ到着数時間前に倒れ、機内放送で医療従事者を探していました。到着するとすぐ救急隊員が到着し、病院に運ばれたのですが、二年連続の遭遇と、「あー、ほんとうに機内アナウンスって、こんな感じなんだなあ~」という感慨に、色々考えてしまいました。

ロッテルダム出発直前に執り行われました大島渚監督のご葬儀。
大島監督は、70年代、80年代と長くPFFの審査員(かつては、賞形式のコンペティションではなく、審査員のベストを推薦するシステムでした)はじめ、多くのことに関わってくださり、丁度私がPFFディレクターに就任した1992年には、PFF15周年を記念して、PFFを始めたエグゼクティブプロデューサーらの願いもあり、久々に最終審査員を務めてくださると同時に、PFFの顧問にもなってくださいました。
しかし、まだこの仕事に就いたばかりの私にとって、大島監督は彼方遠くの大巨匠。伝説の存在。もう、アワアワするばかりで、まともに顔もみられない状態で、ほんとうに困ってしまいました。
当時はまだ8ミリフィルムが主流の時代で、審査員は会場でみてくださったのですが、92年の招待作品部門に集まった、世界各国からの監督たちが、大島監督をみつけると、狂喜乱舞して紹介を乞い、ものすごく緊張して話かける姿をみて「私は話すの無理な気がする」と情けなく思ったことを思い出します。なんといっても、まだ、大島作品を気軽にレンタルできる時代ではなく、未見の作品も多かった・・・
この時以来「監督と会うときにアワアワしてる状態にならないよう完璧に準備せよ」という密かな誓いが私の中に生まれたのでした。

その大島監督も、海外渡航で倒れられたことに、その無念と孤独を改めて想いました。
若松孝二監督は、以来、機内で酒を飲まないと決めたとおっしゃっておられましたが、長距離の移動が気軽にできる時代だからこそ、つい忘れている体への負担です。
実は私の母は事故で脳を損傷し、父が中心となって10年の介護を体験しました。介護されるほうもするほうも、どんなにか悔しくかなしい時間が多かったであろうかと、葬儀の席でおもいました。
最初に大島監督にお目にかかってから20年という歳月が過ぎ、その間に作品も全て拝見することが出来、小さいけれども2009年にPFFで特集企画をつくることができました。
今、改めて、映画を志す人たちは、少なくとも、大島渚とジャン・リュック・ゴダールは全作品みておかねばと言いたいなと、葬儀の席で考えていました。
映画について、多方面から考えてみる、その先達として揺るがない作品群です。
全部みてから、自分の映画を考えると、多分、きっとよく自分の道が見えるのでははと思われます。

海外では、いち早くサンセバスチャン映画祭で大島監督の追悼上映が決定し、他の映画祭も企画が進んでいる様子です。
ロッテルダムでは、トニー・レインズさんが急きょ、欧州の人はみたことのない松竹時代の予告編や、『映画監督ってなんだ』の大島監督、そしてご葬儀の写真などを使って、追悼のレクチャーを行いました。

ところで昨夜、吉田光希監督から香川の「さぬき映画祭」のお知らせをいただきました。
「若手自主映画サミット」が行われるということで、吉田監督も参加です。
中島貞夫監督特集があったり、未公開作品の先行上映があったり、本広克行監督がディレクターとなって展開する本年のラインナップはとても豪華。密かに、「行こうかな。。。」と心で呟いている私です。
映画監督がディレクターを務める映画祭として、奈良の奈良国際映画祭があります。奈良と言えば、河瀬直美監督ですね。
ここでは、奈良映画祭の企画である、河瀬監督がプロデュースする海外の新人監督作品最新作『祈[inori]』が上映されていました。満席だったり、他と重なってみることが出来ずに帰国するのですが、日本では公開の予定だそうです。
製作の条件として「奈良を舞台にした映画」でなくてはならず、これは、「奈良」という街を外国人の眼を通して世界に紹介する、とてもいい手法だなと、感心しました。
すくなくとも、日本に興味のない人にも、その監督が同国人であれば、興味を持たせるきっかけになる。
日本映画=アジア映画と言い換えてもいいかもしれません=への興味が薄れつつある海外の映画祭状況で、この方法は新しい扉を開くかもと感じました。

アジア映画にかわって、欧米の映画のパワーがアップしています。
また、インドも何か起きそうです。
でも、私たちは、やはり日本のつくり手に、パワーある映画を生んでほしい。
そう思いつつ、一旦帰国して、またベルリンで世界状況を知ってきます。

2013/01/31 07:33:40

いろんなことがありすぎて最長無更新記録になった年末年始です

一か月どころか、二か月無更新の勢いでしょうか・・・
ただ今ロッテルダム国際映画祭に参加しております。

思い返すと、1012年末は、神戸開催でバタついていたことと、選挙結果の驚愕、そして「大晦日に配達された年賀状」のショックが大きかったのかもしれません。

選挙では、投票率が低いというのは恐ろしいことだという認知が低いことが恐ろしかったですね。「権力の怖さ」を認識し辛い社会の完成を感じました。
年賀状は、なんと大晦日、夕方にはもう配達されており、茫然としました。住んでいるアパートのロビーが、各所配達の仕分け所に成る様子で葉書の詰まった箱が山積でしたから、勢いで配ってしまったのか・・・しかし、いわゆる郵便局からのメッセージカードとともに輪ゴムで留められての配達ですので、みればわかるはずの状態・・・郵便局にクレームを入れても「下請けに頼んだので預かり知らぬ」という「責任者不在」の結末が予想されて無力感にかられ無言でおきました。
折角元旦に届くことに心を配ってくださった方に対し、申し訳なく思いました!
色んな所で、いろんな矜持の劣化が進行中の昨今に、ちょっと心が沈んで新年を迎えました。

しかし、クリスマスイブも含んだPFF神戸開催では、喜びの連続でした。
かつてないゲスト来場の多さに慌てる日々でもありました。
ただいま滞在中のロッテルダムにも『魅力の人間』が招待されたのですが、ここでの3回の質疑応答を含めても、神戸でのお客様との質疑応答が一番刺激的だったと、二ノ宮監督は語っていました。
ちなみに、こちらでも『魅力の人間』は大人気で、嬉しい滞在になった二ノ宮監督でした。オランダの映画評論家の方に「第二の北野の誕生を感じる」と書かれた(オランダ語なので読めない)という話を聞きましたし、一説によると、スパンキングシーンがあるということで話題、とも・・・ですが、毎回盛り上がっていた『魅力の人間』上映です。
基本的に、ロッテルダム映画祭は、たとえば、ちょっとヘンな映画、過激な映画、奇天烈な映画、無謀な映画に広く門戸を開く映画祭です。だから面白く、だから活気がある、とも言えます。ちょっと日本では眉を顰められそうな作品が出来たなら、ロッテルダムが待っています!と言いたくなる楽しい映画祭です。

ところで、今回、ロッテルダムには、かつてPFFに入選された監督の作品が多数あることも発見しました。二ノ宮さんの他に、七里圭さん、小口容子さん、内田伸輝さん、小林でびさん、そして、オーストラリアのケイト・ショートランドさん。
ケイト・ショートランドさんは、過去に2回PFFに入選しておられるのですが、今回ロッテルダムで拝見した『ROLE』は、オーストラリアとドイツの完全合作で、ヒットラーが自殺してから暫くのドイツの物語=時代劇です。全編ドイツ語。ろくにカタログも読まず、勝手に英語だと思って出かけたら、見事にドイツ語映画で、オランダ語の字幕付き上映(つまり、オランダ公開が決まっているのですね)で、まっさおになった私でしたが、みていると妙によくわかりました。
『ROLE』。本年のアカデミー賞外国語賞のオーストラリア代表になった、ロカルノでも、観客グランプリを貰った力作です。機会があれば是非ご覧いただきたい作品です。

間もなく京都のPFF開催があります。京都も、総勢11名のアワード監督来場が予定されています。どこよりも刺激的な会話の会場となるべく、スタッフ一同工夫したいと思います。
いきなり時差ボケで強烈な眠気が襲いますので、続きは明日。
そのほかのロッテルダムの面白い企画についてお話したいと思います。
そして、大島渚監督のことも・・・

2012/12/11 00:52:41

川島雄三・今村昌平・小沢昭一・田中絹代・新藤兼人・市川準・犬童一心・・・歴史の伝承を考える夜

タイトルがやけに長いブログですね・・・人名だらけ。
しかし、週末からなんだか人名で溢れております私の頭のなかです。

8日、土曜日に、横浜のシネマ・ジャック&ベティにほど近いリノベーション・アートスペース&カフェ「nitehi works」にて行われた、映画懇談「映画力!」に参加させていただきました。現在このスペースで展開しているグラフィックデザイナー小笠原正勝さんの展覧会「あの遠い日の映画への旅」と、シネマ・ジャック&ベティの60周年記念上映をリンクした企画です。上映4作品(『さらば愛しき大地』『永遠と一日』『悲情城市』『ゲームの規則』)のポスター始め、公開時のビジュアルワークを小笠原さんがなさっているのです。
4作品とも、超傑作必見ですが、うちから横浜がちょっと遠い・・・

「nitehi works」は、シネマ・ジャック&ベティの斜め前に位置する、信用金庫だった建物を改装した、とても雰囲気のいいスペースでした。シネマテーク高崎や、以前の映画美学校や、馬車道の東京藝大大学院など、古い金融関係の建物のリノベーションは、ほんとにいいですね。うっとりします。

映画懇談「映画力!」は、午後1時から夜8時半まで続く4部構成で、私は2部の「映画っていったい何?」という壮大なテーマにお誘いいただきました。
間抜けなことに、来場者にPFFのことを知っていただくための配布資料を持参忘れました。故に、私がどこの誰やら、何をしてるのやら、不明なままで話をしたことが失敗。そして、映画、特に「作品」についての話題になる映画ファンの集う懇談会において、私たちの仕事は、どうしても「つくり手」それも、「未来の、未知のつくり手」に特化されがちであるため、「映画」という、既に眼にするときには「過去」の作品に関する懇談の中で、どうもズレてしまう傾向を、再確認しました。
つまり、ちょっと場違いな自分を感じました。
あまりこういうお誘いを受ける機会はないのですが、過去のいくつかの経験でも同様の感覚を覚えたことがあり、映画の仕事の多彩さを思いました。

実のところ、映画の仕事をしている人間のほうが、映画を好きで観ておられる方々よりずっと映画について語る機会が少ないのではないかと感じることがあり、大変貴重な体験を得、横浜からの帰途、敢えて各駅停車の電車を選んでいろいろ考えていました。あらゆる意味で「映画を伝える」、もしかしたら「映画の伝承」?というのは、大きな課題だなあ、と。

そして、翌9日は、銀座シネパトスでの、「森田芳光祭」でした。
トークのあと、涙ぐむ森田組の方々や、シネパトス閉館を惜しんで製作された映画『インターミッション』のポスターを眼にして、前日も感じていた、「映画の伝承」ということについて考えながら、『北のカナリアたち』を拝見しました。今頃ですいません。ヒット作品は、つい後廻しにしてしまう傾向があります・・・

すごく感動しました。この映画の、次代への映画の伝承に。
黒沢満プロデューサーも、阪本順次監督も、吉永小百合さんも、猛吹雪の中でのこのチャレンジ、素晴らしい。
吉永さんが与謝野晶子を演じ、有島武郎を演じる松田優作さんと共演しておられる深作欣二監督の『華の乱』や、ふとどこかで、吉永さんが田中絹代さんにみえて思い出す市川昆監督の『映画女優』(新藤兼人監督の「小説・田中絹代」が原作)や、あんな映画こんな映画をば~と思い出す、「映画力」の高い映画に、勿論、出演者スタッフすべてに、感動しました。

なんと申しましょうか、名実ともに「生きる映画史」であり「スター」である吉永小百合、という存在をがつっとみせられました。そして、日活の女優が、東映映画を、東映の俳優が、東宝映画を支える(高倉健さんですが)今日の日本映画の現状も、大変波乱万丈面白い歴史であることを再認識していたら、今度は小沢昭一さんの訃報が・・・

この数日の私のひとり名画座テーマは「脚本・今村昌平」でした。
友人に借りた小沢昭一主演、西村昭五郎監督『競輪上人行状記』がものすごくて、即!今村昌平脚本作品の特集を始めたところでした。
勿論、このような企画がすんなり通る時代への感動と嫉妬が伴う、日本映画黄金期作品です。

そして、小沢さんと今村さんと言えば、川島雄三監督。
「小説・田中絹代」はじめ、新藤兼人監督は、師・溝口健二監督にまつわる作品や著書を残しておられますが、今村監督の川島雄三伝「サヨナラだけが人生だ」も名著。
川島さんといえば、日活。今村さんも、松竹から日活に移籍したことで川島監督に出会えたわけで、映画会社という明確な雇用機関があった時代に、崇拝する監督のもとで腕を磨いたあと、独立プロダクションを設立して、金銭的に苦労を重ねた今村さん(新藤さんも勿論ですが)。50~60年代のそうした独立プロで鍛えられた監督たちの時代のあと、80年代あたりから、自主映画から始まる監督たちの時代が来る訳ですが、では、そこでは伝承は?と思う時に、市川準さんを思い出します。

市川準監督は、最初にPFFの審査員として参加くださった89年には、スカラシップ作品『大いなる学生』のプロデュースをしてくださり、二度目、94年にはグランプリ『寮内厳粛』の佐藤信介監督を脚本家として抜擢くださり、PFF25周年記念のパーティーにお招きした際には、その年の入選作品を観てくださり、また、犬童一心監督の自主映画『ふたりが喋ってる』をみて感動するとすぐ、突然の電話で犬童さんに『大阪物語』の脚本に依頼し、その犬童監督がPFFの審査員として知った群青いろの作品の話を聞いて、早速観て下さり、即出演などの抜擢をくださったりと、「力のある者は、無名の者にチャンスを与える」ということを、常に実行下さる方でした。その偉業を、犬童監督が継いでおられることに感動します。

なんでしょうか、このだらだらと長いブログは。
学校という場所で、映画の技術や経験や思想の伝承をするという動きがピークに達している感もある現在の日本。いえ、世界的傾向でもあるのですが。
商品としての映画が弱体化して、映画の定義も多様化して、伝承のポイントを探している映画の世界、という感を再確認してみたこの数日の私。
「伝承」は、これから一層大きな課題になりそうです。
映画のみならず、映画祭も、あるいは、あらゆる場面で。
「力のある者は、その力を未来の人のために」
ですね。

2012/12/06 02:10:47

うろたえる夜

中村勘三郎さんのご逝去が、時を経るほど残念でかなしくて、狼狽えています。
こころを落ち着かせようと、暖かかった昨夜は、自宅まで、2時間半ほど歩いてみたのですが、昨年来の、立川談志さん、若松孝二さん、中村勘三郎さんと、自分のやるべきことに挑戦し続けてきた方々の相次ぐご逝去を考えてしまい、更に、勘三郎さんは、57歳という若さが、やりきれず。

「自分がやらねばならないこと」に対する強烈な情熱。それがある人は、芸風を超えて、人を魅了すること全く「映画」も同じです。そんな人たちに、どれだけ仕事を教えてもらったか・・と改めて考える散歩でした。
ファン、というのとはちょっと違う、「やるべきことを全力でやることでしか、次の課題がみえてこない」ということを体現する人に対して、ひれ伏さずにはおられない。そんな感じの存在。好き嫌いではないもの、です。

特に"客商売"は、自分の仕事を愛して、その楽しさ、素晴らしさを、人に伝えようと努力する商売。それはゴールのない、変化し続ける仕事で、地獄にも天国にもなるもの。そんなことを感じさせてくれる舞台をみることで、自分の心を引き締めていた気がします。

そして本日は、かねてから参加したかった塩田明彦監督の「映画表現論ー演技と演出」の最終回を体験しました。アテネフランセの皆様との企画打ち合わせを、あわせて置いてくださったので実現しました。今回は、ブロンソンとカサヴェテスと神代でした。期待を超える面白さで、全回を体験できず残念無念です。

現在、来春テアトル新宿で実行予定のイヴェントと、秋の第35回PFF開催にむけて、企画を練っています。企画というのは、人の話を聞くことによって、色んな芽が顔を覗かせ、花開くなあと痛感する実りある一日となりました。

第35回PFFのコンペティション部門「PFFアワード2013」の公募詳細はまだ発表準備が整っておらずご心配をおかけしておりますが、前回と変化なく進む予定です。
正式発表まで、今暫くお待ちください。

2012/12/05 03:28:20

逝かれた人たちが残してくれたものについて考える12月になりました

前回のブログで、北朝鮮北朝鮮と書いておりましたら、国名を北朝鮮民主主義共和国と書いてしまいました・・・・北はいらない・・・・赤面するばかりです。
大変失礼致しました。
イヴェントの実現にむけて行動中です。

さて、いよいよ12月に突入し、一年=365日とは信じられないほどのスピード迫りくる2013年。「一日って一時間?」と、いささか焦っています。
PFF事務局では、PFFのロゴを干支にアレンジした年賀状を、毎年、大島依提亜さんにデザインしていただいています。「12支が揃うまで続けましょう!」と始めて、これまたあっという間にあと4年で一巡です。
全部揃ったら、額装して飾る日を楽しみにしているのですが、そのことを決めたときには、「12年間ロゴが変わることなく続くと疑いもしなかったのだなあ」と、今、その迂闊さに茫然としました。いや、現在PFFロゴが変わる予定は全くないのですが、万が一の場合、を想像してなかった・・・
危機管理能力だけは常に磨いておかねば、と、またまた反省です。
それはともかく、来年の干支の年賀状デザイン、かなり強烈なものをいただきました。
今公表するわけにはいきませんが、年明け早々にお目にかけられるよう、準備したいと思います。

と書いていたら、中村勘三郎さんの訃報が・・・勘三郎、玉三郎、猿之助(先代)の3名が、歌舞伎を変えるまっただ中の時代を体験できた自分を、非常に幸運だったと噛みしめています。スーパー歌舞伎を、コクーン歌舞伎を、平成中村座を体験しなかったら、ここまで歌舞伎を見に行く習慣はつかなかったでしょう。
「きっかけ」そこをつくることの重要さを痛感します。
そして、家族の不幸にも舞台を続けるという役者という仕事。毎日毎日同じクオリティを提供することを求められる多種多彩な仕事の中でも、生身の人間が観客の前に立つという、舞台の持つパワーには、これまで数えきれない程の活力をもらってきたことを、改めて想いました。

昨年12月の愕然とした訃報は森田芳光監督でした。
8日に、ぴあから一周忌のトリビュート企画として「森田芳光祭<まつり>」という特集号が発売されます。PFF事務局がその発売告知をお手伝いしており、内容を少し拝見しました。
眩暈がするほど豪華なラインナップです。秘蔵写真も「おお!」の連続。
そして、丸山健二原作、沢田研二主演の『ときめきに死す』をトリビュートする方、多い。DVD発売の熱望される、幻の映画でもあります。

9月の第34回PFFでは、森田監督の秘蔵8mm作品を上映させていただきましたが、会場には森田作品のポスターをフィルムセンターのご協力で展示しました。
『ときめきに死す』もありました。
PFF初日には、菊池成孔さんをお迎えして「カルトブランシュ」という上映とトークで構成する企画を行ったのですが、菊地さんが、"『クレイジー黄金作戦』と1967年"というテーマにするか、"『ときめきに死す』と1984年"にするか、最後まで悩んだとおっしゃっておられ(結局『クレイジー黄金作戦』でした)、偶然、森田監督企画と重なる年だったこともあり、ポスターをみながら、"『ときめきに死す』と1984年"をいつかどこかで・・・と願ったのですが、ありました!この本の中に。
必読です。
他にも驚きの言葉が溢れる「森田芳光祭」。ぴあで発売だからということ抜きで、大推薦です!


2012/12/02 10:40:49

朝鮮民主主義人民共和国の映画

東京フィルメックスでは、内田伸輝監督が熱く語った通りの結果で、驚いた昨夜でしたが、学生審査員賞を、高橋泉監督の『あたしは世界なんかじゃないから』が受賞したこともうれしい驚きでした。高橋さんも"賞男"という形容詞がつきそうです。
と言いながら、やはり映画祭運営の立場からは、受賞作品以外も、すべてみてほしいコンペティションです。

映画祭が開催されている時期は、「この機会がないと見逃す・・・(職業上、その危機感がいつもあります)」という焦燥にかられ、映画祭作品チェックを最優先になりがちなのですが、一般劇場公開作品も、その、公開期間のめまぐるしい短縮のため、現在では映画祭並みに焦らされます。

半月前に、都内でみることのできる作品の中で、これはみとかなくちゃ・・・と思うものをリストアップしてみると、40作品を超えてしまい、この中からどれを見るか考えている間にどんどん上映終了になる・・・という現実に冷や汗が出ました。
「観たい映画が溢れかえって、どうしていいかわからない・・・」贅沢を通り越して悩みとなる、とんでもない状況がここにも。そして、「もうお手上げ」と観ずに終わり、後悔する。その繰り返しをしてるかもです。

そんな中、有楽町にある日本外国特派員協会で、日本在住のドイツ人ライター、ヨハネス・シュールヘンさんが出版した、北朝鮮映画に関する書籍紹介の夕べがあると、山形国際ドキュメンタリー映画祭の藤岡さんから教えていただき、出かけてみました。

初体験の日本外国特派員協会。古式ゆかしい西洋の「クラブ」形式で、食事もできれば、バーもある。ここで、各国、各社の記者たちが、交流を続けてきたのでしょう。
イギリス映画でもよく見る「クラブ」=男の社交場。
"since1945"とくっきりと書かれているように、多分日本の各組織で1945年に一挙導入されたこの"クラブ"のなかで、夢の中に生きた男たち・・・まんま時間が止まった人たちも多かったのだろうなあ・・・と想像しながら、近年は、使用フロアが3フロアから、2フロアに減り、さまざまな予算も削減になっているということで、インターネット時代の記者の仕事の変化をうつすなあと、ひどくしみじみとしてしまいました。

何故北鮮映画関係の企画を教えてもらったかと申しますと、本年の映画祭世界で話題になった映画のひとつに、イギリス、ベルギー、北朝鮮合作のCOMRADE KIM GOES FLYINGという新作があり、それを釜山で見逃して残念がっているときに藤岡さんが一緒だったからでした。

COMRADE KIM GOES FLYINGは、近年西欧でブームという北朝鮮=ピョンヤン旅行にも象徴されるように、キッチュでノスタルジックな、古き良き=西欧社会では企画の通らない=家族のメロドラマを、北朝鮮映画というフックで実現させようと、イギリスとベルギーの監督が考え始まった企画で、北朝鮮のOKをとり、現地で撮影されたのです。出演は北朝鮮の俳優たちです。(え~、映画の出来は話題にならないところをみると・・・・ですが、日本の映画祭でどこか上映してくれないかな~と夢見てます)

それにしても、開きそうな扉があると、ガシガシ飛び込む欧米人、怖がっておうちにこもる日本人、という図は近年益々くっきりしてきた気がします。チェコで最初に映画祭を始めたのは、そういえばアメリカ人だったなあ、とか、中国語の堪能な欧米人であふれかえる北京のバーとか、映画祭関係での昔の体験を、ふと思い出します。

なんだか、すごく前置きが長くなってますが、
北朝鮮映画は、日本から特撮技術を招聘してつくられた『プルガサリ』の製作体験記を多く読むことができますし、韓国のシン・サンオク監督が誘拐されて、北で多数の映画を撮り、東ヨーロッパ経由で脱出した体験記「闇からの谺」が日本では文庫本になっています。そして、明治学院大学で教えておられる門間貴志さんが、この5月、「朝鮮民主主義人民共和国映画史」という大著をなされ、手に入る情報はかなりあります。

門間さんは、西武グループカルチャーの華やかにひらいていた80年代に、今はなき、渋谷シードホールで「フリクショナル・フィルム」という定義のもと、海外の映画に於ける日本人の描かれ方、に注目した特集上映を行い、その後、社会評論社から「フリクショナル・フィルム読本」としてシリーズ出版されて、更に多くの映画を紹介なさってます。
ごくたまにしかお会いする機会がないのですが、今回、日本外国特派員協会でお目にかかり、そのあと、かねがね興味のあった、シネセゾン、スタジオ200、シードホールという、今に続く映画文化を育てた西武系の場所について、色々とお話を伺いました。
(その話は、またの機会にご紹介します)

ここで話は飛びますが、私がほぼ週替わりで自宅モニター前で開催する特集。最近は「イップ・マンDVD化記念・香港カンフー映画特集」がありました。
衰退する香港映画で、久々のヒットを記録した『イップ・マン』シリーズ。このところ、映画で広東語が聞けると感動してしまう傾向にあり、ついひとり特集してしましました。で、博識の門間さんと話していると、出る出るイップ・マンの話も。イップ・マン映画は「日本人の描き方がよい」ということで北朝鮮で公開されたことや、本人は生涯絶対に日本人の弟子入りを許可しなかったことや、あれやこれや。

そこでも、ふと「日本人の描き方の悪い」映画をみることは難しい日本を思いました。
実際にそこに描かれたことは、みて、考え、議論し、という作業は、「現実」を把握する手段のひとつとして、あったほうがいい、映画はともかく、どんどんみたほうがいい、というのが、私の考えです。

それはともかく、門間さんとのお話は面白い、著書「朝鮮民主主義人民共和国映画史」も面白い、そこに紹介された映画もみたくなる。ここで何か企画を実現したいなあと、その夜強く思った私は、今、道を探っています。

来年、PFFは35周年です。実はそっちの課題は大きくて「他の企画してる場合?」と自分に厳しく問わなくてはなのですが、北朝鮮映画、そして、昨日ちょっとお話しました群青いろ作品、2つの企画は実現したいなと、年末までの残り少ない日々(それも神戸でのPFF開催で、関西に行く)のやりくりを考えているのでした。

勿論、3月には恒例の「世界が注目する日本映画たち」を所沢で開催です。こちらは、チラシもすでに配布中!是非、話題の邦画に漬かる3日間に参加してください!!
3日間で8作品『ヒミズ』『鍵泥棒のメソッド』『聴こえてる、ふりをしただけ』『かぞくのくに』『KOTOKO』『一枚のハガキ』『エンディングノート』『サウダーヂ』が一挙に体験できるお得で便利な3日間なのであります。

2012/12/01 18:40:09

東京フィルメックス

あっというまに、明日の閉幕となった東京フィルメックス。
今は、もう、コンペの結果が発表され、バフマン・ゴバディ監督の『サイの季節』の上映が行われているのでしょうが、本年も「コンペ作品全鑑賞」目標は達成できず、表彰式と一体となったこの回のチケットは事務局スタッフに使ってもらうことにして、溜まった仕事に取り組んでいる私です。

今回は、ゴバディ監督の姉、ナヒード・ゴバディさんとパートナーのビジャン・ザンマンビラさんの監督作品『111人の少女』がコンペに出品されています。この作品は、10月の釜山でもコンペに出品されており、残念ながら拝見できなかった私は、フィルメックスで必ずみようと心に決めていたのですが・・・・

実は釜山で、私と鶴岡慧子監督の『くじらのまち』組と、ゴバディご夫妻とお子さん一家の『111人の少女』組は、映画祭クロージングのレッドカーペットを歩けなかったのです。
昨年、釜山に参加した、『ダムライフ』の北川監督が、映画祭レポートに「別の通路に案内され、レッドカーペットを歩けなかった」体験を記していましたが、それと同じことを体験したのでした。
クロージングセレモニーへ向かうバスに乗せられ、バスを会場入口脇で降ろされ、入口で待つ映画祭ディレクターやチェアマンなどに迎えられ、会場に入るところで、左に向かう通路をゴバディ一家のあとについて歩いて行き、名前の貼られた席につきましたが、他の監督たちが全然来ない。
あれ~?と思いながら、暫く談笑していたのですが、ゴバディさんが、突然「あら?もしかしたら私たち、レッドカーペットへの道ではないところを来てしまったんじゃない?」と叫び、あ。そうかも、と気づいたら、続々とカーペットを歩くゲストの姿が巨大なスクリーンに映し出されはじめたのでした~~~~!!!
正直いって、私は、この長い長いレッドカーペットを歩み、このありえないほど大きなスクリーンに映るということがなく済んだことに、大変ほっとしたのですが、鶴岡監督は貴重な体験を逃すことになって、申し訳なく感じながら過ごすセレモニーでした。
そんな、失敗談を共有した『111人の少女』なのに、みてないなんて、と反省中。
*皆様、今後の体験のために、釜山ではクロージングセレモニー入口で、右に行くとレッドカーペットコース、左は、そのまま客席に続くのですよ!

それでも、フィルメックスで拝見できた映画もありました。
振り返ると何故か中国映画がそろって、我ながらびっくりしています。ワン・ビン『三人姉妹』、ハオ・ジェ『ディエダンのラブソング』、エミリー・タン『愛の身替わり』、ソン・ファン『記憶が私を見る』。あと1本、チョンジュプロジェクトのなかのイン・リャン『私には言いたいことがある』を明日みることができれば、ともかく中国映画は全部みたことになるのでした。

釜山でジャジャンクー監督と話したとき(『記憶が私を見る』のプロデューサーとして参加しておられました)「プロデュースにちょっと飽きたので、次は自分が監督」と言っておられたのですが、今回、ソン・ファン監督が「プロデューサーは撮影には口を挟まず、ポストプロダクションで色々な意見を出す」と答えていたときに、前作もそうだったなあと、思い出しました。
再撮影も厭わない、完璧主義の強烈なプロデューサーだそうです。ジャジャンクー。
ですが、その話はまた。

今回上映された中国映画で、公開が決定している『三人姉妹』。
これはもう、またしても必見作品ですね。
「人間は労働力である=牛馬と同じである」ことを、正視させられます。
朝から晩まで働きづめに働くとはどういうことなのか。頭を垂れます。
「勉強なんかして」となじられ、「笑う」ということを知らず、変な咳をしても誰にもケアされない小学生。それを撮影するクルーの胆力に、茫然としながら、この作品が居住しながら撮影されたのではなく、別の場所への移動の過程を使って、分断して撮られたものであることを聞き、少し、納得しました。
人間の可能性を伸ばすことの可能な環境や状況の見つけにくい場所を前に、どうすればいいのか・・・と思いながら、彼らの一年分かもしれない収入を一夜で使うかもしれない私たち・・・・ワン・ビン作品からは、やはり目が離せません。

邦画のほうは、公開の決定している作品が殆どなので、見逃した作品は後日拝見するとしても、群青いろの作品(今回は『あたしは世界なんかじゃないから』です)は見ることが困難です。どこかで、群青いろ作品一挙上映企画実現をと、考え始めています。
『おだやかな日常』の内田伸輝監督が、開口一番「『エピローグ』が圧倒的に凄い!『記憶が私を見る』もすごい!」と興奮していました。おやおやコンペ監督なのに、言うなあ~と面白がっていたのですが、その『エピローグ』見逃してしまい、とても残念です。初監督で老人の物語。ヘルマン・ヘッセみたいだなあと、ふと思いました。
ともかく、これから、賞の行方をチェックしてみたいと思います。

2012/11/07 23:57:56

橋本文雄さんの冥福を祈りながらヒカリエを探訪する

9月は、クレイジーキャッツ映画と、大映映画、特に、三隅&森両巨匠のちょっとした再ブームが個人的にきていたので、PFFの会期中も夜中にみたりしていました。
更に、何十年ぶりかの『大菩薩峠』シリーズ見比べ熱も盛り上がり、「休みを使ってやることだわ~」と頭ではわかっていながら、会期中も続けていたり、我ながら「新しい映画と古い映画、同時にみないとバランスのとれない体か?」と思っちゃいました。
・・・病気ですかね。

そんなこんなで、しみじみ、日活、大映、東宝、松竹が映画製作をしていた1960年代までの、いわゆる「活動屋の時代」作品を絶えずみてるかも・・・と認識したのですが、その"活動"のつくり手が、またおひとり、この世を去られてしまい、残念です。録音の橋本文雄さん。
橋本さんのインタビュー集『ええ音やないか』を残してくださった、上野昴志さんとリトル・モア、ありがとう!と心で叫びながら、未体験の渋谷ヒカリエを抜けようとしたはずが、つい、もくもくと、歩いてしまいました。
ああ、おしゃれな店がいっぱい。
外国人の感動するという地下のお菓子売り場も納得。

ヒカリエを通る前は、池谷薫監督の新作『先祖になる』の試写に伺っていました。今回は、陸前高田にお住まいの佐藤さんの記録です。前作、『蟻の兵隊』に続き「信念ある老人」の姿をみせられると同時に「日常が非日常になる」ということはどういうことか、が、そくそくと迫ります。

試写会場を出ると、オバマの大統領戦当選確実!という速報が飛び込み、これから暫く、「日米関係どうなるか?」一色の報道になるであろう日本のマスコミを予想しました。
映画祭世界はアメリカと縁が薄いこともあり、「アメリカとどうなるか、より、"日本と世界の関係"はどうなるか?とか、"日本の国内問題"はどうなるか?を考えるほうが、これから役に立つのではないのかな~」というのが、私の実感です。
いや「これから」のことを具体的に構築する"生きる技術"を、どう認識し、どう使うかが、目の前の私たちの課題だなあ~と思うのです。

さまざまな「技術」の伝承。
そのなかで、映画の具体的な技術に関しては、映画祭も積極的に取り組むべき課題に、21世紀はなっていくのか、あるいは、学校に大きくシフトされていくのか、それも考えろと迫られている感があります。

ところで、前回、釜山国際映画祭の紹介をしていて、「大きい映画祭は、大きい国際空港に似ているかも?」と、気になり始めました。
デザインや、機能がどこも似ている。
言語や、集う人々がどこも似ている。
そもそも「大きい組織」は、すべて似ていかざるを得ない構造を持つのかもしれません。
一方、小さい映画祭は、他にない何かを持ち続けることが
これからの課題=映画祭の生き抜く技術=なのかもしれません。

ところで、先週から始まっているのが、「ひとりでカトリーヌ・ドヌーブ特集」
最前線を走り続ける生涯主演女優へ、観ることでオマージュを捧げ始めております。

2012/11/07 01:28:56

初夏からのメイル整理をしながら10月を振り返る

メイル整理をしていると、仕事とは、「企画と段取りとお願いと経過連絡と確認と決断と後始末とお礼」で成り立っているなあ・・・としみじみします。
どれが抜けても、うまくいかない、手間暇かかることの絶え間ない繰り返しで、そのうちだんだん「隠居」という言葉が輝いてみえてくるわけですが、「素敵な隠居道」がなかなかみえないのが、現代のかなしさなのかもしれません。
隠居のお手本、いないのが残念。

それはともかく、釜山体験の続きです。
釜山の魅力のひとつは、上映作品の豊かさであり、国際映画祭らしい集う人々の多彩さと多量さであり、その人々と会うことの容易な(パラダイスホテルかノボテルホテルで開催されるものが多いので)パーティーの多さであり、その活気と、そして、釜山の気候の快適さです。
&個人的には、街の気軽なごはんのおいしさも・・・

5年ぶりの釜山国際映画祭は、風格が増してきておりまして、以前に比べると連絡網や仕事の責任分担がスムースになって、ずいぶん楽に過ごせるように感じます。
街では、日本語が聞かれなくなり、表示もハングルがメインになっているので「言葉勉強しなくちゃ!」感が高まるのですが、映画祭は、英語が更に通じる場所になり、インターナショナルな映画祭感が高まります。

ちなみに、PFFは「インターナショナル映画祭ではない」ということで、言語に関する悩みのほうはあまり生じないのですが、パーティーというか、交流については、常に考えます。
PFFで「パーティー」といえば、表彰式後の懇親会です。が、小さい映画祭で、会場がひとつですから、「人が集う場所」としてのパーティーはそれ以外に必然ではありません=会場で会えるから。
しかし、コンペティションの監督たちが、映画祭会場で初対面にならないためにはどうすればいいか?と考え、開催前のオリエンテーションと交流会を行っています。それも、PFFに於ける「パーティー」と言っていいでしょう。
あとは、他の映画祭に作品を紹介することで、参加チャンスを得た監督に、いわゆる「国際映画祭のパーティー」を知ってもらえればと考えています。
正直、国際映画祭の参加者には、パーティーしか回らないというタイプの人もいて、私も昔は驚きました。「映画祭の良し悪しの判断基準はパーティーなの?」と。
人それぞれです。

さて、大きな国際映画祭では、プレスやプログラマーなど、ID登録している人たちに、そのIDナンバーでアクセスして、インターネットで作品をみることができるサービスが急激に増えています。私たちも、出品作品の登録者限定視聴への同意書にサインしています。
ID登録者は、映画祭で見逃した作品も、一定期間追いかけてみることができます。つまり、やろうと思えば、釜山の今年のラインナップの大半を、現地で滞在中のホテルの部屋や、帰国してから、自分の部屋でみ続けることが可能になるわけです。

また、大きな映画祭は、ID登録者が利用できるヴィデオライブラリーを持っています。学校の教室のように、ずらりと並んだ机にヘッドフォーンとモニターが置かれ、各人が予約した作品をみます。(そのために、出品者は必ずプレヴューを一枚提出しています)。映画祭上映のチケットが取れないケースはままありますので、みたい作品を必ずみるための手段です。
最初から、スクリーン上映では一切みずに、滞在中ず~と、ヴィデオライブラリーでみているプログラマーも珍しくなく、「そのほうが効率的でしょ」と言われます。
「効率」
使い方の難しい言葉です。

なんだか、映画祭という場所は、何のための場所なのか、参加者の意識によって、極めてバラバラになってきてるなあ・・・と、今回、しみじみ感じました。
ふと思いだす第一回の釜山国際映画祭のような「一体感」が生まれるのが、だんだん難しくなってるなあ・・・と
そんなことを感じながら、ラブホテル(前回のブログで説明したmotelです)の部屋で仕事の合間に、ずっと気になっていた「家族の勝手でしょ!」を乏しい光で読みました。
アトランダムに選ばれた家族に、一週間の食事を使い捨てカメラで記録してもらい、日本の食生活を記録し続けているシリーズで、以前から一冊は読んでおきたいと思っていましたら、成田の書店で最新刊のこれに遭遇しました。

いや~~~~~驚きました。
「人それぞれ」が、強烈に迫る!
「"自分が一番大事"な人の寄り集まりが"家族"なのか・・・」と既成概念を打ち破られ、世界感変わりそうな本でした。
「"自分が一番大事"ねえ・・・」と、考えながら映画祭会場に行く釜山の朝は続く。一気読みできる時間も光量もないからちびちび読むのです。

自分が大事、というより、家族間で誰が得していて誰が損してるかと常にカウントしながら生きてる感じを受けたのです。
家でそうなら、もちろん外でも?
それじゃあ、疲れますよね、単純に。

そんなときに、『ドキュメンタリー 百万回生きたねこ』を観ました。作家、佐野洋子さんをめぐるドキュメンタリーです。
心からほっとしました。
この作品では、生前の佐野洋子さんと交流のあった、日本を代表する男前な女優のひとり、渡辺真起子さんが重要なパートを担っておられます。
渡辺さんは、このドキュメンタリーと、フィクション『おだやかな日常』と、2つの出演作品のために釜山にお越しで、舞台挨拶などやはり見事に男前で、ほれぼれしました。

『おだやかな日常』今月末から始まる東京フィルメックスで上映されますね。(本日、既にホン・サンスとキム・ギドクは売り切れでした!すごい~)
東京フィルメックスの市山さんとも、久しぶりに釜山で会いました。現在公開中の『フタバから遠く離れて』の船橋淳監督もご一緒だったのですが、市山さんにとっての初めて恋愛映画プロデュースで、『無能の人』以来の日本での撮影作品とおっしゃる、船橋さんの最新作品『桜並木の満開の下に』。釜山ワールドプレミアを拝見していないので、こういうとき、とっても話がしにくいのですが、船橋さんの旧作『echoes』につながる、みずみずしい恋愛映画かなあ、と勝手に想像しています。

そういえば、双葉町の井戸川町長が、先日ジュネーブで福島の現状、政府の無策を訴えたというニュース、あまり報道されていませんね。2月のベルリンでの『フタバから遠く離れて』の上映では、上映に立ち会うことのできない井戸川町長からのメッセージビデオが冒頭に流されました。
海外に声を届ける活動をなさっている人の、国内での報道がない国日本だと感じています。あら?国内の声も、あまり報道されていないかな・・・・報道そのものが、非常に少ない国に住んでいるなあと、実感します。たまに「海外で"アピールしなくてはならない"映画祭という場所」に行くことが、ちょっとした自国の発見につながるのかなと、今思いました。

一番話題になっていた日本の監督は(いえ、近年の世界の映画祭で、と言い換えてもいいかもしれませんが)園子温監督と、若松孝二監督です。
多くの人に強烈な印象を残して帰国なさっていました。
 
その若松監督の訃報を聞いたのが、帰国後間もなくです。
2004年の最終審査員をお願いしたご縁で、海外からのメッセージのアップと(こちらは近日日本語にして、若松プロダクションのオフィシャルサイトに転載をという計画です)、ご葬儀のお手伝いをさせていただきました。
お通夜、告別式とも青山斎場で行われました。雨のお通夜から一転、天候のよくなった告別式は、ぼんやり斎場の緑と空をみてしまう時間も多く、いまだに実感のつかめない、信じられない感覚です。

『旅芸人の記録』の闘士オレステスが、静かな拍手のなかで埋葬される、"拍手の別れ"とでもいったシーンに、ものすごく感動された若松監督は、常々そんな最後を望んでおられたということで、皆で拍手でお車をお送りしました。
斎場の高い空に昇っていく拍手と、そよぐ木々が今も甦ります。

数々の修羅場を超えて、真の自主監督として走り続けてきた若松監督。
映画で生きていくために、あらゆる実践体験が可能だった時代を生きた監督だった、と思うと同時に、現在、これだけ学校教育で映画が扱われ、映画祭が溢れ、劇場公開も視野に入れる覚悟を迫られる状況は、映画監督というキャリアの想定も、全くかつてと違うものになったなと、そのことをずっと考えています。

既存の想定ではもう通用しない「映画」や「映画監督」
まるで、日本の縮図でしょうか?
あらゆることが、これまでの価値観では語れないのに、そのままで押し切ろうとしていびつさが増している。

そういえば、10年くらい前には、まだ「なぜ学生映画という呼称を使わないのだ」と、海外で指摘され、「映画は志。学生も社会人も所属するものは関係ない」というような会話をしていたことを思い出しました。
今、そんな会話はない。
このことが気になり始めています。
同時に、来年は35回となるPFFが、これからどんな映画を紹介していくのか、いよいよターニングポイントを迎えた何かを感じています。
その何か、とは何なのか、早急に掴みたいと思っています。

長いのに曖昧な終わり方でけしからんですね。
11月は思索の月にできるといいなあと夢想中です。

2012/11/03 14:15:55

風邪をこじらせきって玄米菜食を試しながら10月を振り返る

9月のPFF会期中にひいた風邪を、有名な「ジキニン子供シロップ一気飲み」療法(ものすごく胃に悪いらしいですが)で抑え込み、その後、釜山へ行く前後も、これまたそんなこんなで、一気飲みに加え、色々と無茶な方法で不調を抑え込み、帰国後も、やっぱりやることが色々あるので、あれやこれやで爆発しそうな風邪をたたき続けながら、人を迎えて暴飲暴食もてんこ盛りの、どう考えても無謀な毎日を続けておりましたら、やっぱり、ダウンしました。
集中力も思考力も落ち、熱が出たかと思うと、すごい低温になったり、ティッシュひと箱鼻をかんでも、まだ続く。痛いとこだらけ、起き上がる力もないときもある「ああ、健康になりたい」という日々に突入したのでした。
つまり、仕事にならない日がきた!

これはいかん!と、ひそかなバイブル「自然療法」を取り出し(宣伝なし、口コミだけで900刷に迫る静かに有名な本であります)再びの熟読。
久しぶりに、肝臓、腎臓、脾臓をいたわる食生活を取り戻して5日めの本日、なんだか元気になってきた感が湧いてきました。
「体は、飲食物でつくられる」ことを、しみじみ再確認する10月でした。
ちなみに、体調不良の際の私の定番復活食は、玄米に小豆や大豆、こんぶやひじきやわかめを炊き込んで、ごまとじゃこと梅干を混ぜて海苔をまいて食べること。
効きます。
根菜たっぷりの味噌汁と、こんにゃくを使った料理、そして薬草茶を合わせられれば、更にばっちりです。

・・・なんだか、映画から遥かに離れた話題になってきました。
しかし、こんな食べ物が出てくる映画って、ないんだなあ・・・人々が共通に認識する「おいしそう」というものから、遥かに遠い食事なんだろうなあ・・・と客観的に判断するのです。
でもね、美味しいんですよ。玄米菜食。大分の友人が取り寄せてくださる、合鴨農法のお米が素晴らしいことも関係あるんですけどね。

そして話は釜山に戻ります。
5年ぶりに出掛けた釜山。行ってよかった。
どんどん改革されています。
噂に聞いた センタムシティBusan Cinema Centerの威容も確認しました。
向かいの世界最大のデパート、新世界百貨店の屋上庭園から見下ろすと、Busan Cinema Center屋根には「BIFF」のロゴが、ソーラーパネルで構成され、建物の発電に一役買っています。(最初、屋上のロゴをBIFFとすることに市の抵抗があり、大変な苦労をしたと映画祭の人の話でした)

今回は、急に参加を決めため、普通のホテルは全くとれず、噂の「ラブホテル」に泊まりました。韓国では「motel」と表示されたホテルですが、ラブホテルで通じるのでした。
「立地位置や写真から推測して、どうもmotelっぽいなあ」と思いながら、インターネットで予約した、一応hotelという名のつくそれは、行ってみると、やはり立派にmotelだったのです。一年前に、motelをhotelとしてリニューアルオープンしたらしい。
hotelとの違いは、長期滞在を前提としてませんので、ランドリーサービスやビジネスサービスがない。(以前は、motelは、長期滞在者も一泊ごとに荷物をまとめてフロントに預ける厳しい規則だったそうです)。部屋の照明が仕事を前提としていない=暗い。仕事用デスクがない。クローゼットがない。スタッフが外国語を使わない=コミュニケーションにひと苦労。
しかし、ホテルと違って、いいこともあります。
韓国のhotelは、歯ブラシやシャンプー、かみそりなど、日本ではどこでも置いてあるアメニティーが衛生上の規則で禁じられているのですが(なので、近所のコンビニには必ずアメニティーセットを置いてある)、motelには、シャンプー、リンス、整髪剤、化粧品、ヘアブラシなど、あらゆるものの大型ボトルが置いてあるうえに、チェックイン時に、「サービスです」と、歯ブラシ、かみそり、いろんなアメニティーに加え、コンドームまで入ったパックをくださる。これは、ホテルでは絶対にない。更に、部屋の防音は、安いホテルより遥かによく、隣の部屋が気にならない。そのうえ、お風呂はほぼどこでもジャグジー!部屋のテレビは「壁?」と思ったくらい大型。更に、ロビーには、必ず無料のソフトドリンクやコーヒー、軽食のサービスがある。
数日の観光旅行なら、迷わずmotel=ラブホテルをお勧めしたい私ですが、仕事には、ちょっと苦労しまして、かなり目にきました。

さて、映画祭は、今や、センタムシティの劇場を中心に構成され、南浦洞や海雲台のかつてのメイン会場は、今や、建物もすっかり古びた感じで、ゲストでにぎわうことも少なく、それ故にマイペースに運営されている雰囲気です。
5年前に、映画祭メイン会場のひとつ海雲台のメガボックスで、ヴォランティアの人たちが、いろんな抽選会などを企画して、楽しくやってるなあという雰囲気を覚えていたのですが、今回も、建物は急速に寂れてましたが、へんてこなプレゼント会に遭遇し、なんだかおかしくなりました。来年からは、海雲台のホテルに泊まって海雲台のメガボックスに通うのが、結構賢い過ごし方かも・・・と思ったり。「映画をみる」ためには、に限定の滞在であれば、ですが。

観客は、今も変わらず見事に若く、活気があります。ボランティアも、さすが過酷な競争を潜り抜けてきた、容姿端麗英語のできる人で揃えられています。満席でチケットのとれない映画も多く、でも、満席でも空席があるのは、以前と変わらず勿体ない感じ。スポンサー用に確保する席が必要との話もあり、映画祭共通の悩みの一つではと思います。

さて、今回は、『くじらのまち』のコンペ出品にあわせての参加でしたので、久しぶりに、コンペのための行事の数々に鶴岡監督と参加しました。
まず、劇的な変化を感じたのは、通訳の用意。
完璧な通訳の方が、記者会見も舞台挨拶もついてくださり、驚きました。チェさん(もしかしたら、私のお名前の聞とりが間違っているかもしれません)とおっしゃり、昨年から日本に住んでいらっしゃるのですが、変わらず映画祭から頼まれ、日本からお越しです。(映画祭の人から後で聞いたところ、昔、子役として有名だった方で、業界や映画に詳しく、舞台度胸もあるので完璧ということでした)
チェさんによると、4年前から、映画祭は各国語の通訳をそろえることに本腰を入れはじめ、現在、日本のゲストのためには、2名の通訳を招へいしているそうです。通訳チームはスタッフ用のホテルで合宿しているとのことで、中国語、タイ語、英語、と、記者会見で、コンペ監督とその通訳の揃った様子は迫力がありました。
ペルシャ語だけは、まだ適任者が韓国内で見つかっていないのか、日本からショーレさんが英語とペルシャ語の通訳に参加しておられたので、驚きの再会でした。
通訳の心配がない映画祭は、いい映画祭のひとつの基準。どの映画祭も苦労する部分です。

韓国では、携帯電話のレンタルが手軽なので、空港で借ります。
そこでiphoneデビューした私。慣れるまでひと苦労でしたが、携帯のない時代の映画祭でのアポイントメントはどうしていたのか、すっかり忘れてしまいました・・・
外国からのゲストは、「○○のペーティーで会いましょう」ということが多い。毎晩2つも3つもパーティーがあるから。しかし、多くのパーティーが人でごった返していて(毎晩「滞在ゲスト全員集合!」な感じと思われます)、「会う」という感じではありませんので、パーティーが苦手なこともあり、必ず別の約束をするのですが、「携帯がないと難しかったなあ」と、しみじみ今、思います。

パーティーといえば、キム・キドクのヴェネチア受賞を祝うパーティーがあったのですが(参加してないんですけど)、もう大変。その日は、寄ると触ると「キム・キドクのパーティーよ」と話されていて、本人が通りかかると、あらゆる人が話しかけて、もう「いきなり大スター」なんです。
ちょっと、ぽかーんとしてしまいました。
願わくば、皆さん彼の作品をご覧になっていることを・・・

さて、釜山で一番感動した映画は?
と聞かれるのですが、すいません。レオス・カラックスです。
日本で公開するじゃん!!です。
とほほ。
つい、みてしまいました。(こっそり行ったのに、いろんな人に会っちゃいました。)
そして、爆発的に感動しました。
「こんなアホなことを真剣にやる人のために仕事していきたいなあ・・」
としみじみ思いました。
そして、あらゆるスケジュールを無茶苦茶調整して閉幕前に滑り込んだ現代美術館の「特撮博物館」を、カラックスにみせたかった・・・と涙しました。(いや、ぜんぜん友人じゃないですけど・・・)

「特撮博物館」行かなきゃ人生の損失です。断言しますけど。
来年から、地方開催が始まるという噂を聞き、万難を排してまた行くぞ・・・と心に誓う私。またオキシジンデストロイヤーの前でうっとりしたいです。
あ、行かれるときは、イヤホンガイドを借りることをお勧めします。

バカなことを寝食を忘れ真剣にやることほど、崇高なことはない。
この秋はそのことを再確認することが多く、それは、釜山の宿で乏しい灯のもと読んだ本のショックにも関係するかもしれません。

その本のこと、釜山国際映画祭での新体験、そのすぐあとの若松監督のご葬儀のこと、SNSのこと、もう少しご紹介したいことがありますが、約束があり出掛けなくてはなりません。続きを明日、書けたらと思います。

そしてもう11月3日。
たくさんの映画が初日を迎えます。
昨日、夜の銀座を歩いていましたら、松屋のルイ・ヴィトンのディスプレイがリニューアル作業していました。
まるで美術館の草間弥生展のようで、暫くみていました。
バカなことを一生続ける素晴らしさ。芸術は、その側面を必ず持つなと、再認識です。芸術のみならず、人に作品を提示するとき、バカなことを貫くことは、最も力を持つと、そのことも改めて思う秋です。

・・・・長すぎましたね・・・


2012/10/20 19:39:41

PFFのことも・・・

2週間ぶりのブログが若松さん一色についなってしまい、慌ててPFFのことを。
本日、『恋に至る病』のイヴェントが行われます。アーバンギャルドのエンディングテーマを、先月PFF開催中のロビー(ロビーに設置したモニターで、映画の予告編を年中流していたのです)で聞ば聞くほど、いいな~~~~~、と、すっかりファンな私も行きたいトークイヴェント。仕事終わらず行けません。

明日は、東京国際映画祭のコンペティションに選ばれた、奥原浩志監督の『黒い四角』の上映が。北京在住の奥原監督が、中国人と日本人混合のスタッフ&キャストでつくった中国語の映画です。
奥原さんは、第9回PFFスカラシップ作品『タイムレスメロディ』の監督。93年のPFFaward入選からのもう20年近いおつきあいになります。
うわ!20年・・・・そりゃ私も老眼が出てくるお年頃にもなるわ~~~!!!と、今しみじみしました。

20年、という年月を考えたときに、思い出すのが園監督の自伝。
そこに『自転車吐息』のエピソードがありますが、当時のPFFスタッフは、誰もいない今・・・私自身も、『部屋』からの園監督としか交流がなく、「は~」「へ~」と読みました。
考えてみれば、『自転車吐息』89年=23年前。本年のPFFaward入選者には、まだ生まれていない人がいます。

20年という年月で、何ができたのか、と、考えてみる今日この頃。
特に釜山では、その変化と自分の仕事を考えて、「それはまるで『スモーク』の中のハーヴェイ・カイテルのように、定点観測をしているような人生?」と、ふと思ったりもしました。
『スモーク』ファンに張り倒されそうですが・・・

ところで、10月26日からの渋谷TSUTAYA、PFFコーナーでは、「自己嫌悪で落ち込むときに効く映画」を、『ふがいない僕は空を見た』脚本の向井さんと、『ドキュメンタリー・百万回生きた猫』監督の小谷さんに推薦いただきました。今回も多彩な作品が紹介できる場所となりました。是非チェックしてください!

PFFin神戸の開催が、12月22,23,24日のクリスマスイブにかかる日程となり、なんだかウキウキしています。
年末の仕事をうまく調整して、引き続き会場の神戸アートビレッジセンターで開催される予定の爆音映画祭にも参加したいなあ、と計画したり、浮かれてます。
神戸では、PFFaward2012入選16作品と、最新スカラシップ作品『HOMESICK』、そして、招待作品として、マイケル・パウエル作品を少しという構成を予定しています。
同じく関西でのPFF開催は、年明けに京都を予定しておりますが、まずは神戸に是非お越しください。

3月に所沢で開催する恒例『ミューズシネマセレクション 世界が注目する日本映画たち』
こちらもラインナップが決定し、チラシの配布が来月から始まります。今回は3日間にびっしり8本の映画を詰め込みました!11月初旬に発表します!お楽しみに!

2012/10/20 18:27:33

釜山の報告が、若松監督の訃報に茫然となり・・・

5年ぶりの釜山国際映画祭参加は、私にとって非常に重要な体験となり、このブログでは、そのご報告を、といろいろ考えていましたら、まさかの若松監督の訃報に、釜山報告も東京国際映画祭も、まっしろなままになってしまいました・・・

23日のお通夜、24日の告別式と、私たちもお手伝に伺うのですが、特に海外の若松ファンのために、英語のfacebookを特設してみました。
日本語を使わないご友人にお伝えください。

若松監督には、2004年のPFFアワード最終審査員をお願いして以後、特に頻繁に企画をご一緒させていただくようになりました。PFFin仙台で『17歳の風景』を中心にした特集の際、地元の友人、知人の来場時の照れくさそうな感じや、2010年の『キャタピラー』がコンペティションに出品され、ベルリンでご一緒した際の嬉しそうなお顔、続く、PFFでの特集で、突然のデビュー作上映の居心地悪そうな様子など、次々と思い出されます。

へんな話ですが、立川談志さんがお亡くなりになった際に感じた「全身落語の人がいなくなるわけがない」という感覚が、今回もわ~と立ち上がってきました。「全身映画の人がいなくなるわけがない」という感じです。
ですので、いまだに、現実を実感できていない私です。

若松孝二、という存在を後世に伝える際に、「映画」プラス、その「人」の存在そのもの、を、どう伝えていけばいいのか、を、考えています。
「若松孝二という人そのもの」を伝えるという課題は大きいなあと、茫然としているこの3日間です・・・

*余談ですが、海外では、交通事故というニュースに、「暗殺?」という話が出たそうです。テオ・アンゲロプロス監督の交通事故もそうだ、という話が今も根強く出てくるそうで、そういわれれば『ゴーストライター』にもありましたが、歴史上、最も使われるその方法は「交通事故」。ボーンシリーズはじめ、CIA関係の映画をみたあとなどは特に、「ふむ」と思う話ではあります。


2012/10/03 21:22:06

5年ぶりに釜山に行きます

PFF開催会期が秋に移動したこともあり、映画祭シーズンまっただなかの海外へ出かけなくなってからはや5年。
PFF終了後の後片付けをしていると、あっというまに山形で、あっというまに東京国際で、あっというまにFILMEXで、あっというまにPFFの全国開催で、息つく暇もないからでしたが、今年は突然、決めました!釜山国際映画祭(BIFF)参加!

まだまだ、先週終了したばかりの第34回PFFの数々の反省に悶え苦しむ毎日ですが、「作品の出品はしているのに、その映画祭を知らない・・・」という後ろめたさを払底したかったのもひとつの理由。
この2年でまた大きく変化したと聞くBIFFを改めて体験し、今後招待される監督に伝えたいと同時に、冷静になってPFFの役割を更に考えてみたいと思いました。

とにかくどんどん大きくなっているBIFF。海外映画祭からの参加者もうなぎ上りで、「釜山でミーティングするのも、ベルリンでミーティングするのも、同じだったりして・・・」という気もしたり。
更に、300作品を超える上映ラインナップも、ますます映画祭らしい充実ぶり。
もし、10日間の会期を「全部映画を観ることに使う」と決め、組んだ予定どおりにチケットがうまくとれれば(←結構とれない記憶がある)、そして、英語字幕で見続ける体力があれば(私は一日3本がベストで4本だとかなり集中力が落ちるので、間に日本語の映画を入れてみたりします)、「日本の映画祭でみなくても、ここで網羅できるね」、という部分があります。
*あ、勿論、英語だけでなく、韓国語字幕も外国作品にはついてます。

しかし、釜山のラインナップって、かなり渋いんですよ。
なのに、この、「お祭り」感の演出のうまさはどうだ!

「ボランティアの応募者5792人から精選された788名に決定!」
「開幕式のチケット、発売1分34秒で売り切れ!閉幕式も、3分31秒で売り切れ!」

このニュース、久しぶりに行く釜山ですから、ちょっとアクセスしてみたPUSAN NAVIにバーンと出てました。台湾の旅では頼りっぱなしのTAIWAN NAVI。釜山もNAVIはきっと強い味方だと想像して初アクセスしましたら、上記のようなBIFFの話題が山盛りでした。

お伝えし忘れましたが、本年の釜山には、『くじらのまち』がニューカレンツコンペティションに招待されています。5,6,10日と上映があり、13日が表彰式です。
私は、鶴岡監督と10日の上映に参加し、何年ぶりか忘れたほど昔に体験した表彰式に参加してきます。
1週間前まで、BIFF参加を全く考えていなかったので、審査員に、タル・ベーラと河瀬直美の東西独自の美学監督がいることも知ったばかり。「これは結果の予想がつかないなあ・・・」と、ひとり呟いております。

コンペの全ラインナップを、鶴岡監督には「今、世界の映画人が何をどう描くのか」是非網羅して感じてもらいたいなあと思いながら、同時に、初めての海外映画祭体験では、映画をみるだけではなく、人との交流や街の探索もしてほしい気持ちも。
自分自身は、色々観たい作品に目移りしているのですが、「この際、日本でみることのできる作品は、はずすか?」という割り切りも・・・と言いながら、日本の映画祭にもあまり参加できなかったりするのですが・・・行きたかったな、京都映画祭・・・

現地では、PCのアクセスさえうまくいけば、通常の仕事もすすめられますので、仕事と映画と交流と、の濃い毎日。これで、毎夜のパーティーに出る人たちは、寝る時間はどこに?と、映画祭の人々の体力にめまいがするのでした。
それが、「祭り」ゆえの高揚感ですね。

さて、今月のPFF事務局は、12/22~24開催の「PFFin神戸」と来年3月開催の所沢「ミューズシネマセレクション 世界が注目する日本映画たち」のチラシを作成し、開催告知に入ります。
また、TSUTAYA渋谷店ブースの新展開が10/25からです。
同時に、TIFFやFILMEX時期に来日する海外の映画祭ディレクターやプログラマーに、作品の紹介を行います。

釜山では、このブログを書く時間がもっとあることを期待して(この時期なのでホテルがとれず、会場から不便な安宿でPC環境不明なのです・・・)さまざまなお話が出来ればと思っています。


2012/09/24 08:53:39

本日月曜はフィルムセンター休館ですが

第34回PFF、10日間の工程のうち、6日間が終了。
今日はフィルムセンター休館で、明日25日から、残る4日の始まりです。

この、「会期後半」に来ると、ただただ「あっという間に最終日」となるのが毎年の記憶。
手間暇かける料理とイヴェントは似ているなあ・・・と思う時があります。
世界中に最高の素材を手配して、それを干したり濾したり煮たり焼いたり、何日もかけて下ごしらえして、いざ料理にかかり、テーブルに出したら2時間でなくなる、というかんじでしょうか。とにかく、おいしくできて、心も満たすものになっていることを祈るのが、私たちの毎日です。

と「終了」の話をしている場合ではない!
まだまだ現在進行の緊張満載中!!なのです。

明日25日、PFFアワード6作品の上映をもって、コンペティション部門の上映がすべて終了です。
水曜26日は、マイケル・パウエルを大スクリーンで堪能する最後のチャンスとなります。
そして、金曜27日は、いよいよ、PFF史上初、ロックバンドのライブつき『世界グッドモーニング!』上映。朝からドキドキのリハーサルです。夜は、第22回PFFスカラシップ作品『HOMESICK』お披露目。映画祭プログラムのうち、自分のまだみていない作品を紹介する唯一の回となるスカラシッププログラムですから、一番緊張する時間です。
その夜があけると、28日は表彰式。
この日のことを考えてると胃が痛くなるので、当日まで、できるだけ頭をまっしろにしておきます。賞の発表は、授与する側も、受賞する側も、いろいろと複雑な気持ちになる時間です。

映画祭は、普通のロードショーと違い、つくり手に大きく焦点を当てる場所です。
トークは、本来なら表に出さなくていい創作の秘密を、あえて語っていただくことになるのですが、「聞く」という行為には、私自身が毎回、少なからぬ迷いとともにおこなっいる部分があります。
自分にとって、ほしいことと、客席におられる皆様にとって、ほしいことに、どのくらいの差があるのか、を探りながら進行するのですが、この情報に溢れる時代に、ライブならではのトークとは何か、悩まずにはいられないといいましょうか、そんな感じです。

今回は、個人的に、濃厚な体験をした2日間がありました。
22日、一昨日は、地下の小ホールで、激動の70~80年代を生き抜いてきた黒沢清監督から、現在の映画が置かれたポジションについていろいろ気づかされるお話を伺いました。
昨日23日の昼には故・森田芳光監督との40年前の映画制作に纏わる芦澤明子撮影監督のお話で、「映画、映画、映画」の人生について改めて考え、
夜は若手のホープ、石井裕也監督とのトークで、再び、現代の状況について想い、
同時に、2階の大ホールでは、今を生きる、自主映画の監督やスタッフ、キャストとのトークに、映画の現在進行形を体感し、
奇しくも「自主映画の歴史を2日で駆け抜け、山のような課題をもらった」重い2日間となり、時間をかけて考え、整理したいと感じているのですが、さて、観客席にいたらどうだったのかをおもうと、色々と反省点があります。

と、開催中にそんなことを言ってる場合ではない!
つまるところ、自主映画の歴史と、映画の歴史が濃厚に絡み合っているということが、一番重い現実なのです。もうすでに、それは分けては考えれらない。
そこが、多くの課題を生んでいるのだなと。

そんなとき、園子温監督の自伝本が出るという話が。
タイトルは、『非道に生きる』
・・・・すごいなあ・・・
編集の方々から、「映画のような人生」が綴られているというお話を伺いました。
60年代生まれ、いえ、その前の、50年代生まれの監督を入れても、伝記の出版は初めてですよね。
なんだかものすごく感動しています。

2012/09/21 08:35:01

すべての回で当日券を発売しています。『贖罪』も。

第34回PFF、火、水、木と順調に上映がすすみ、金、土、日と、いよいよ週末の上映に入ります。
本日からは、4年目を迎えたフィルムセンター開催で初めて、二階の大ホールのみならず、地下一階の小ホールでも展開という「2会場開催」です。
この間に、できるだけ階段を上がったり下りたりして、運動不足解消だ~!と、しょうもないことを考えています。

PFFは、同じ建物の上下移動ですむのですが、世界各国の映画祭では、会場がとてつもなく離れている場合や、多数会場で展開している場合があります。それぞれの会場に進行担当責任者が置かれているのが普通で、作品や監督の紹介を、担当者ごとに自分のテイストで行うのですが、以前、釜山国際映画祭では、ディレクターが、市街のナンポドン会場と、海辺のヘウンデ会場とを、スクーターを飛ばして移動すると聞き、びっくり仰天したものでした。(かなり離れた場所なのです)
その釜山国際映画祭のコンペティションに出品が決定した『くじらのまち』が、本日15:30からの回では上映されます。ひとあしお先に、ご覧ください。

そして、当日券の情報は、フィルムセンターのホームページで前日に発表しています。
もっとも心配されている『贖罪』の回も、当日券を出せるよう、各方面と調整終了。10枚単位で発券できる見込みがつきましたので、当日券発売をいたします。
*当日まで正確な枚数は明確にはなりませんので、お問い合わせはお控えください。

ところで、コンペティション部門の「PFFアワード2012」は、大ホールを会場に、各作品2回づつの上映を行っています。
本日、そして、明日の12:15~の回で、一回目の上映が一巡し、明日15:15~の回で、二回目の上映に入ります。
毎回、監督や、スタッフ、キャストの方も来場くださって、愉快な制作秘話を披露してもらっています。
是非多くの方に、今、の息吹を伝える最新の自主映画を体験いただきたいと願っています。

小ホールは、招待作品部門の展開です。
マイケル・パウエルの4作品、森田芳光監督の幻の8ミリ自主映画4作品、前記の『贖罪』、石井裕也監督の監督したテレビ作品『エンドロール~伝説の父~』を上映します。
石井裕也監督の『エンドロール~伝説の父~』上映後は、石井監督が来場してトークを行います。また、サプライズ企画もありますのでお楽しみに!

では、会場に向かいます。

2012/09/19 00:54:29

本日、PFF開催2日目は、最新作品一色です

第34回PFF、初日は無事終了しました。
すべて35ミリフィルム上映の一日でした。小ホールでのカルトブランシュ含め、4作品とも大変状態のいいプリントに感涙。
パウエル&プレスバーガー作品は、2回づつの上映ですので、本日参加できなかった方も、2度目の上映にご参加いただけると嬉しいです。

一方、世界中の映画祭で急激に進行中のデジテル化に、映写室はかなり多様な準備に追われています。
今日からは、いよいよ、コンペティション部門の「PFFアワード2012」最初の上映がスタートします。会場には、監督はじめ、作品関係者が集います。また、各賞の審査員の方がたもご来場で、活気あるロビー風景となることでしょう。

そして、本日の最後を飾るのは、招待作品の『Playback』。「いまどき珍しい」という形容詞がつきそうな、35ミリフィルム、モノクロの作品です。
先週末の水戸映画祭での上映は、入場できないお客様もおられたそうですが、PFFは、当日券ございますので、安心してご来場ください!

ところで、最近、しみじみ、「体力を作るには、良質な睡眠に優るものはものはないのでは?」と感じる私。
いささか睡眠不足な生活を変えるために、ともかくPFF会期中は帰路に湯屋に寄って、ぐっすり寝を試してみることにしました。どうも、湯にたっぷり浸かると、よく眠れるような気がしているのと、近所の見事に凝った大工と左官の手が入った古い古い湯屋が、老朽化のためにとうとう閉鎖されることを知ったからです。
ともかく、「湯の道具を持ってフィルムセンターに向かう」のが習慣になるかもしれないこの10日間が、不思議にも楽しくも感じるのでした・・・・

2012/09/18 00:31:27

本日5時、地階小ホールでは、『クレイジー黄金作戦』

PFF開催初日、2階大ホールではパウエル&プレスバーガーの『老兵は死なず』と『天国への階段』が上映されているときに、地階小ホールでは、「カルトブランシュ」の第一夜が同時開催なのです!

PFF会期中に3企画を展開するこの「カルトブランシュ」。3つのうち1企画を、PFFが担当します。
その担当回が、今夜、5時からなのです。

上映作品は『クレイジー黄金作戦』。
ラスベガスの大通りでクレイジーキャッツが歌い踊る豪華絢爛アメリカロケ敢行作品。ミュージシャンの菊地成孔さんが作品を選び、上映後には、菊地さんが、東京スカパラダイスオーケストラのGAMOさんを聞き手に、たっぷり!トークという、これまた豪華な時間。

<ここで、カルトブランシュのトークだけ参加希望のお客様がもしおられるとすれば、お知らせです。フィルムセンターのチケット発行規則に従い、「当日券は上映開始と同時に発売が終了」しますので、当日券は、発売時間の午後4時半から5時までに購入する必要があります。つまり、それより早くも遅くも発売がないのです・・・・ご注意ください>

カルトブランシュを選ぶか、『老兵は死なず』と『天国への階段』を選ぶか、私が観客なら、悩みに悩む本日でございます・・・・
勿論、どちらをお選びくださっても、決して後悔させません!

当日の告知になってしまいましたが、カルトブランシュ3企画も、是非ご贔屓に、お願い申し上げます。

2012/09/17 21:46:41

開催まであと半日!本年もPFFオフィシャルカメラマン登場します!

一夜明ければ、第34回PFF始まります。
本日も事務局スタッフは開催準備中。私は、オフィシャルカメラマンとして参加いただく内堀義之さんと打ち合わせをしてきました。
内堀さんに参加いただくのも、ふと気づけばもう4年目。皆様にきちんとご紹介する機会を持たずに来たことを反省して、本年は、自己紹介をお願いしました。
明日から、会場で内堀さんに声をかけられた方、是非撮影にご協力いただけると嬉しいです。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

初めまして。内堀です。
学生時代より映画美術として映画の世界に入り、
スチールへの転身をきっかけにカメラマンになりました。
「スチール」とは映画の現場で写真を撮る仕事です。
近年では石井裕也監督、入江悠監督などの現場で写真を撮っております。

PFFに参加するのは4年目です。
毎年色々な作品、それをつくった人たち、
更にその作品を観に来る方々に出会います。

作品をつくりたいと思ってしまったら、その思いは止まりません。
何だかわからいけどつくらないと収まらない感情が作品を完成させ、
そうして出来上がった作品がPFFに集まってきます。

まだ「何ものでもない」作品たちが、
このように人前に出て来て「何ものか」になろうとしている場だと、毎年感じています。
そしてまた新しい出会いが生まれ、世界が広がって行きます。

そこに集う人たちはみんないい顔をしています。
緊張していたり、自信に満ち溢れていたり、新しいものが生まれる瞬間に期待をしていたり...。
とても人間的です。

僕もカメラマンとして、
そして一人の作家としてそんな瞬間を撮って行きたい。

映画祭開催まであと数時間。
新しい出会いに少し緊張しております。
そして10日間の会期が、楽しみでなりません。

どうか皆様、何卒宜しくお願い致します。
内堀義之



2012/09/17 00:45:07

開催まで残すはいちにち・・・今、こんな状況です!

現在のところ、前売り券が完売したのは、黒沢清監督の『贖罪』のみです。まだまだ買えますPFFならではの"遅刻しても入場できる(前回のブログを参照ください)"前売り券!上映の2日前までの購入が可能です。例えば、19日のチケットは17日23:59までの前売り発売です。

更に、全ての回で当日券発売を予定しており、当日券情報は、上映日前日午後にフィルムセンターのホームページで発表されます。
当日券は、各上映の30分前から発売開始です。その日に思い立ってふらりと出かけることも可能なPFFですから、お気軽にご来場ください。

そして以下、最新ニュースをお伝えします。


◆「映画の"ルック"を浴びてみる!」~マイケル・パウエル、エメリック・プレスバーガー&ジャック・カーディフ~◆

上映5作品全て、きれいなプリントが揃いました!!
古くは80年前、新しくても64年前の作品ですので、経年による多少のダメージは勿論ございます。が、しかし、驚くほど状態の良いプリントを集めることができました!
『ヒズ・ロードシップ』『老兵は死なず』『天国への階段』『黒水仙』『赤い靴』
全て日本語字幕付きでの上映です。特に、『老兵は死なず』と『天国への階段』は、日本語字幕を投影して上映という、今回限りの日本語字幕付き上映の実現です。
『老兵は死なず』は、エメリック・プレスバーガーが自らの作品で一番好きだと語っています。(この作品、何故か日本では、カラー作品なのに白黒のDVDのみの発売がされています。)『天国への階段』は、マイケル・パウエルが選ぶ、自己ベスト作品とのこと。是非ご堪能ください。
そして、26日13:00~の『黒水仙』上映前には、晩年のマイケル・パウエルと遭遇された、東京国立近代美術館フィルムセンター主幹の岡島尚志さんに、その思い出や、パウエル作品の魅力をお話しいただきます。


◆日本映画最新作『Playback』&『リルウの冒険』◆

両作品とも賑やかなトーク実現!
9月19日(水)18:30~ 35mmフィルム、更に白黒撮影という『Playback』には、三宅唱監督と、出演俳優の、渋川清彦さん、三浦誠己さん、山本浩司さんが来場くださいます。
トークは、上映後、4名揃って行います。どんな撮影秘話が飛び出すか、お楽しみに!また、『Playback』の特製グッズも販売予定です!

9月21日(金)18:30~『リルウの冒険』は、劇中でも姿を見せるストリートミュージシャンたちが、陽気な演奏でお客様をお迎えする計画です。会場は上映が始まる前から『リルウの冒険』の世界に。
前作『パークアンドラブホテル』から早5年。熊坂出監督が、主演のジャバテ琉璃さんはじめ、素敵な子供たちと一緒にご挨拶です。


◆森田芳光監督作品 幻の8mm作品たち◆

9月23日(日)第一部11:30~ & 第二部14:30~
奇しくもお彼岸の日に上映となりました森田監督の幻の8mm作品たち。
第一部で上映する、『映画』『遠近術』は、70年代自主映画の世界を沸かせた実験作。常に新しいことにチャレンジし続けた森田芳光監督の原点のような作品です。
第二部『水蒸気急行』には、今ではみることの出来ない、都内、そして近郊を縦横に走る電車の姿が満載です。『ライブイン茅ヶ崎』は、言わずと知れた、「自主映画」の概念をひっくり返した78年の記念碑的作品です。
第一部&第二部とも、今回上映する『映画』に衝撃を受け自主映画制作に飛び込んだ芦澤明子さんに当時の状況をお話しいただきます。
芦澤さんは、女性撮影監督のパイオニア。ピンク映画、テレビCM、商業映画と、様々な撮影現場で腕を磨き、現在、日本映画を支えるカメラマンのおひとりで、今回上映する『贖罪』はじめ黒沢清監督作品にも多く参加しておられます。


◆テレビドラマに挑戦!WOWOWドラマをみる。◆

9月22日(土)14:00~ 『贖罪』国際映画祭ヴァージョンでの上映。
『贖罪』の国際映画祭ヴァージョンは、WOWOWオンエア版より30分短い、4時間30分です。今回は、2回の休憩を挟み上映致します。
上映後は、黒沢清監督をお招きし、お話しを伺います。

9月23日(日)17:45~ 『エンドロール~伝説の父~』
WOWOWの公募シナリオを、『川の底からこんにちは』の石井裕也監督が長編ドラマ化。歌舞伎俳優の中村獅童さんが、萩原聖人&板谷由夏さん扮する親友夫婦のために静かに熱く行動する寡黙な自主映画監督を素敵に演じる、大人のメルヘンです。出演者たちの、これまで見たことのないさまざまな姿は、石井裕也演出ならでは。是非スクリーンでご堪能ください。
上映後は、石井裕也監督をお迎えしお話しを伺います。また、サプライズ企画(マル秘上映あり?)も計画されています。
笑いと感動の楽しい夜になる予感。お楽しみに!


◆第22回PFFスカラシップ作品『HOMESICK』 お披露目!◆

9月27日(木)18:30~のお披露目に向け、ただ今、完成に向けラストスパートの『HOMESICK』。当日は、廣原暁監督と、出演の郭 智博さん、奥田恵梨華さん、そして、元気な子供たちが集合し、賑やかな舞台挨拶を予定しています。
更に、『HOMESICK』上映前の15:30~は、その廣原暁監督が、「PFFアワード2010」で審査員特別賞を受賞した『世界グッドモーニング!!』を再び上映します。しかも、音楽を担当したARTLESS NOTEのライブを上映後に実現しました。

ARTLESS NOTE 公式HP

つまり、フィルムセンター史上初めて、大ホールがライブ会場に変わります!!!世界各地で人気の『世界グッドモーニング!!』上映の機会もレアなことに加え、ライブ演奏は、更にレアなこの時間を、是非ご体験ください。
9月27日(木)は、廣原暁dayです。


◆PFFアワード16作品上映&表彰式◆

入選16作品を、A~Hの8プログラムに分けて2回づつ上映する「PFFアワード2012」
それぞれの作品について、じっくりご紹介したいところですが、こちらに任せるとして公式HP上映作品紹介ページ
毎回、監督の来場が予定されています。
今、世の中で、そして、映画制作現場で、何が起きているのか、起きようとしているのか、日本の若者は何を想い、何を伝えようとしているのか、映画は一体どうなっていくのか、そんなことが見えてくる、「PFFアワード2012」作品。
8プログラムの1つでも体験いただければ、何かが変わる。そんな時間をご提供します。
9月28日16:30からの表彰式には、最終審査員[高橋伴明 (映画監督/京都造形芸術大学教授)、行定 勲 (映画監督)、川内倫子 (写真家)、新井浩文 (俳優)、川村元気 (映画プロデューサー)*敬称略]の方々、およびPFFパートナーズ各社から、グランプリはじめ各賞の発表が行なわれると共に、丁寧な審査講評も述べられます。グランプリ作品の上映もあり。PFFアワードで"今"の映画を堪能してください。


◆映画祭カタログ完成!読み物として大充実の56ページ◆

第34回PFFのカタログが完成しました。監督やプロデューサーなど、制作者からの生の声や、映画の歴史の記録など、情報と写真満載の56ページ。巻末には、ご好評いただいております、渋谷TSUTAYA4階で展開中の「PFFコーナー」でこの2年半の間展開している、テーマに沿った推薦映画を一挙掲載しました。題して「映画の師は映画」。約30監督の推薦した、200作品を超える心震わせる映画が集合。このTSUTAYA「PFFコーナー」の集約だけでも、映画本一冊分の濃厚な情報となっています。
是非第34回PFF会場でご確認ください!


◆プログラム以外にも、ときめく映像が満載のPFF◆

映画祭には、上映作品以外にも、映像が溢れます。
今回、開場から上映開始までにスクリーンで展開する「インターバル映像」は、若きアニメーター、胡ゆぇんゆぇんさん(すいません!お名前の漢字がうまく出てきません!)に、予告編と先付の映像を吉野耕平さんに、表彰式の映像を山岡信貴さんにお願いしました。
会場で気になった方のためにも、3名の過去の作品も、PFFのUtubeでご紹介していく計画です。

いよいよ9月18日(火)から28日(金)までの10日間、東京国立近代美術館フィルムセンターにて開催する第34回PFF。*24日(月)は休館日です。
会場のフィルムセンターは、東京メトロ銀座線「京橋」駅&都営地下鉄浅草線「宝町」駅より、徒歩1分。東京メトロ有楽町線「銀座1丁目」駅より徒歩5分、JR東京駅より、徒歩10分です。
ご来場、お待ち申し上げております。


2012/09/07 00:49:24

何故PFFでは前売り券購入をおすすめするのか

東京国立近代美術館フィルムセンター(NFC)の通常の上映に行かれた経験のある方ならご存知でしょうが、NFCの通常の上映は、当日券しかありません。
・上映の30分前から2階大ホール入口で発売となる当日券を購入して、入場する。
・その発券開始までは、1階ロビーで、先着順に待つ。
・チケットの販売は、作品の上映開始と同時にストップする。
これがNFCのルールです。

NFCでPFFを開催することを決定するにあたって、さまざまなことが話し合われましたが、ひとつの課題が、チケットの発売方法でした。

コンペティション部門の「PFFアワード」プログラムは、1つのプログラムで、2作品、あるいは3作品の上映が行われます。2作品め、あるいは、3作品めをみにきた、作品のスタッフやキャストなど、関係者が多くおられるのは充分に予測され、その方たちが、2作目以降の上映開始時間を目指してお越しになった場合(すでに上映が開始されている場合)、当日券は販売していません。

勿論、映画のプログラムは最初からみていただければ、それが一番うれしいのですが、目的の作品に向かって駆けつける気持ちはよくわかります。
そこで、「全席指定席制の前売り券」の設定を行うことを決定しました。

この、NFCでは通常行わない「全席指定制前売り券発売」によって、
1:前売り券をお持ちの方は、作品が始まってからでも入場ができる
2:全席指定制にすることにより、開場前に並ぶ必要がなくなる
ということが可能になりました。
同時に、開場時間を、NFCで通常設定する30分前から、15分前にすることも可能になりました。

というわけで、PFF開催中のNFCは、
・前売り券をお持ちの方は、いつでも入場可能。
・会場の開場は、上映開始の15分前。
という特別な時間となりました。

1階ロビーでの当日券発売開始は、通常通り上映の30分前からです。
そして、2階大ホールのロビーを解放しましたので、開場まで、1階ロビーだけでなく、2階ロビーにてお待ちいただくことも可能です。

前売り券は、チケットぴあで扱っております。
*もしも身近にチケットぴあのお店がございましたら、そこでは、前、中、後ろのブロック指定ではなく、ご希望のお席がお選びいただけますので、ぜひご活用ください。

そして、勿論、プログラムの当日券発売も行っておりますので、当日ふら~りとお越しいただいても楽しめます。
現在のところ、まだ、残念ながら完売のプログラムがございません。

そんなこんなで、当日券発売に遅刻しそうな不安のある方には、特に、前売り券購入をおすすめするPFFです。


2012/09/05 14:40:23

第34回PFF みどころ、ゲスト、全告白します!

ついに、開催まであと2週間をきりました!
第34回PFFのみどころを告白します!
長くなりますが、是非是非お読みください!!

◆コンペティション部門『PFFアワード2012』16作品◆

いわゆる「自主映画」の概念を壊す作品が満載です。
百聞は一見にしかず。映画の現在進行形を確認してください。
PFFアワードは、映画の未来をひとあし先に紹介する場所です。

「平均年齢23.6歳」
近年、じょじょに上がっていた入選監督平均年齢が、ぐっと下がりました。
自主映画新世代確実に増殖中!

「女性監督が5名!」
ほぼ3割の入選監督が女性なのは、PFF史上初!ジェンダーについても、新世代の価値観をみせてくれる作品増えています。

「311が変えた?」
直接に声高に訴えてはいませんが、311で土地を離れざるを得なかった身近な人のためにつくられた作品も登場しています。

「ヒロインが輝く!」
憧れのヒロインが、ほんとにヒロインです。これ、今年のすごい収穫。

「下ネタ上等!」
とんでもない下ネタは、もしかしたら、今、自主映画のみに許された自由区?そんな映画あります。下ネタではありませんが、セックスシーンの本気度も、きっと驚かされるでしょう。

「映像&映画学校対抗?」
16作品中、13作品が、なんらかの映画・映像教育機関に所属してつくられた作品です。全く関係ない学校でつくられた作品は、3作品のみ。
これは、まさに21世紀的現象です!

「海外映画祭からいきなり招待決定!」
本年も、釜山国際映画祭コンペティション部門に1作品、バンクーバー国際映画祭コンペティション部門に2作品、そして、同じく招待作品部門に1作品の招待が、早々に決定しました!
PFF終了後、4監督は次々に海外へ向かいます。

★PFFアワード作品の上映は、2回づつです。監督は全員来場してくださいまして、上映後質疑応答を行います。キャスト&スタッフの紹介も計画しています★

「PFFアワード2012」表彰式9月28日(金)
5名の最終審査員(映画監督・高橋伴明さん/映画監督・行定勲さん/写真家・川内倫子さん/俳優・新井浩文さん/映画プロデューサー・川村元気さん)が選ぶ3賞5作品は誰の手に?
同時に、PFFパートナーズの選ぶ3賞 [映画ファン賞(ぴあ映画生活賞)、エンタテインメント賞(ホリプロ賞)、ジェムストーン賞(日活賞)]も発表です。
更に、グランプリ受賞作品は、東京国際映画祭「日本映画・ある視点」部門への招待も決定しています。

更に更に、本年は、日本映画ペンクラブが、独自に賞を設けてくださることに。気鋭の映画ライター2名が、PFFアワード作品を完走し、表彰式で賞を発表します。


◆第22回PFFスカラシップ作品『HOMESICK』お披露目◆

PFFを締めくくるのは、PFFアワード2012の表彰式ですが、その前日、9月27日は、映画上映の最終日です。
そして、最後を飾るのは、いつもの通り、最新のPFFスカラシップ作品です。
『花とアリス』で、憧れの先輩として強烈な印象を残した郭智博さんが、大人になるのがちょっと怖い30歳の健二を演じ、夏休みの3人のちびっこたちと、スクリーンを駆け回る『HOMESICK』 。監督は、武蔵野美術大学から、東京藝大大学院にすすみ、最近ではアッバス・キアロスタミの『ライク・サムワン・イン・ラブ』の助監督も務めた廣原暁さん。音楽にトクマルシューゴさんを得て、ただいま仕上げ作業中!私たちもドキドキしながら完成を待つ『HOMESICK』は、日本で一番最初に皆さんにご覧いただきます。

また、廣原暁監督の2010年審査員特別賞受賞作品『世界グッドモーニング!!』も、ライブつき特別上映が決定しました。国内外で人気のこの『世界グッドモーニング!!』現在、公開やDVD発売の予定はありません。今回は、『HOMESICK』完成記念特別上映として、音楽のARTLESS NOTEライブつき上映を企画しました。
東京国立近代美術館のステージでロックライブは初の挑戦!できればこれから毎年音楽と共に映画を上映したいPFFです。


◆招待作品部門◆
本年は、困難な時代を生き抜く力になる4つの企画で構成します。

「日本映画最新作」
『Playback』35ミリ白黒で撮られた異色の青春映画。新鋭三宅唱監督が、日本映画を支える気骨ある俳優たち、村上淳、渋川清彦、三浦誠己らとがっぷり組みます。オーディトリウム渋谷での11月公開予定の作品をひとあし先に是非!監督とプロデューサーのトークも予定しています。
『パークアンドラブホテル』から5年、熊坂出監督が、またまた日本人初の快挙!第6回Cinema Digital Seoulで、グランプリと国際批評家賞をダブル受賞しました!審査員は、イム・サンス、瀬々敬久、ワン・ビン、クリス藤原ら。「今映画を撮る人たちに希望を与える映画」と絶賛されたファンタジー『リルウの冒険』。まだ劇場公開予定のない、できたての新作『リルウの冒険』を、このチャンスを逃さず是非!監督はじめ、出演者も参加してのトークを予定しています。

「映画の"ルック"を浴びてみる!」
今は亡きマイケル・パウエル、エメリック・プレスバーガー&ジャック・カーディフが細部までそのこだわりを発揮した50年代の名作『老兵は死なず』『天国への階段』『黒水仙』『赤い靴』を上映します。マイケル・パウエルを知らない。それは今や当たり前。PFFで驚きの初体験をして欲しいと思っています。更に、マイケル・パウエル駆け出し時代の幻のフィルム『ヒズ・ロードシップ』も上映します。全作品フィルム上映を計画しています。
また、生前のマイケル・パウエルに会った!という、東京国立近代美術館フィルムセンターの主幹、岡島尚志さんに、その素晴らしい体験について、お話いただく時間も設定しました。


「追悼・森田芳光監督 幻の8ミリ作品たち」
自己資金でつくられた35mmデヴュー作『の・ようなもの』で1981年の映画界を驚愕させた森田芳光監督。それ以前、10年間にわたり、森田芳光監督の8mm自主映画は常にセンセーショナルな話題を呼んでいました。現在ではみることの困難なこれら8mm作品(『映画』『遠近術』『水蒸気急行』『ライブイン茅ヶ崎』)を、監督監修のデジタル素材で上映し(デジタル上映が監督の希望でした)、追悼企画としました。

個人的な話ですが、森田監督の逝去に際し、自主映画の歴史は、既に充分長いのだということを痛感した私は、果たして、その歴史がどのくらい記録されているのか、検証されているのかが日に日に気になってきました。
この追悼企画では70年代の4作品を上映しますが、自主映画時代の森田監督を知る、撮影監督の芦澤明子さんをお招きし、当時のお話をさまざまに伺う時間を設けます。
まだ、撮影を仕事にするとも考えていなかった40年前の芦澤さんが、今回上映する『映画』との出会いがきっかけで、8mm自主映画に深く関わり始め、その後女性撮影監督のパイオニアとなっていった、70年代の自主映画が夢を達成する道程ともクロスオーバーするトークになると予想しています。

「テレビドラマに挑戦!WOWOWドラマをみる。」
「映画」「テレビ」といった、媒体による垣根のない創作が確かにあると思っています。
そんな作品を、スクリーン上映したいと企画しました。

先にご紹介しました、森田監督プログラムに参加くださる芦澤明子さんが撮影なさった、黒沢清監督の『贖罪』。WOWOWオンエア時300分の作品が、海外映画祭出品のための、270分ヴァージョンで、PFFに登場します。ヴェネチア国際映画祭での上映ニュースが記憶に新しいこの国際ヴァージョン。現在のところ、日本でみるチャンスはPFFのみです。
上映後、黒沢清監督を迎えてのトークを予定しています。

そして、WOWOWでは、公募脚本をドラマ化するプロジェクトも行われています。ただいま『舟を編む』を撮影中の石井裕也監督が、一般公募脚本をもとに創りあげた『エンドロール~伝説の父~』(117分)も上映します。中村獅童さんが、無口な自主映画監督を全く新鮮に演じていることにご注目ください。
こちらも、上映後に、石井監督をお招きしてのトークを予定していますが、石井監督は、何かサプライズ企画を練っている様子・・・・お楽しみに!


本年のPFFのキャッチコピーは「夢で終わらせない映画祭」
多分、もう、50年を超えようとしている自主映画の歴史は、もしかして、映画が最初に始まったときと同じく、夢の現実化の歴史です。この自主映画の歴史に、77年から併走するPFFは、改めて映画の夢について、映画祭という場所をつかって考えていきます。

より多くの夢が、より多くの人が集う場所となれるよう、事務局一同粛々と開催準備中です。
本年も皆様のお越しを、心よりお待ち申し上げております!

2012/09/04 21:51:33

『天国への階段』状態のいいプリント発見!

昨夜はちょっと弱音を吐いてしまいした『天国への階段』の上映プリント。さきほど「うちのは状態いいよ!」とおっしゃるところを発見しまして、ただいま鋭意交渉中です。
初日の上映に確実に間に合わせるために、まだまだ胃の痛い毎日になりそうですが、一方で、ほっとひといきです。
お騒がせ致しました!
届きましたらまたご報告致しますが、きっと美しいプリントです!

そして、マイケル・パウエル企画に、ひとつニュースがございます。
生前のマイケル・パウエルに会ったことのあるかた、日本ではそれほど多くはないと予想するのですが、おられたのです。
東京国立近代美術館フィルムセンター主幹の、岡島尚志さんです。
1984年、亡くなる6年前にNYで遭遇なさっています。

今回、岡島さんのご好意により、9月26日 13:00~『黒水仙』の上映前に「マイケル・パウエルとの遭遇」と題し、そのときの思い出をはじめ、マイケル・パウエル映画の魅力についてお話いただく時間を 設けました。
お楽しみに!

いよいよ映画祭まで2週間を切りました。
ゲスト情報を追ってまとめてお知らせしようと思います。

2012/09/02 23:39:29

PFFアワード2012入選作品海外へ

一昨日は、招待作品部門で上映する『リルウの冒険』が、海外でグランプリなどを受賞した速報を、昨日は、『贖罪』のヴェネチア上映ヴァージョンをPFFで上映するお知らせをさせていただきました。

海外の映画祭話題が続きましたので、今夜は、その話題の最後を締めくくる(情報解禁許可も出ましたので)「PFFアワード2012入選作品の海外からの招待」を発表させていただきます!

カナダ・バンクーバー国際映画祭のコンペティションに、『魅力の人間』二ノ宮隆太郎監督と、『リコ』弓場絢監督が招待されました。更に、招待作品として、『故郷の詩』嶺豪一監督が招待されました。
そして、韓国・釜山国際映画祭のコンペティションに、『くじらのまち』鶴岡慧子監督が、招待されました。
4作品の監督みなさんは、PFF終了から間を置かずに、慌ただしく各映画祭へと向かう計画です。
おめでとうございます。

先日、ある人から「PFFの作品、いつもバンクーバーと釜山いくね~。レギュラーだね~」と言われました。
そうですね。バンクーバーと釜山、よく招待くださいます。なぜなら、この2つの映画祭は毎年PFFに「英語字幕なしでも、みたい!」と熱心に訴えてくださるからです。
基本的に、国際映画祭へ出品するには「英語字幕版のプレヴューDVDをつくる」ことは必須です。字幕なしの映画を受け付けてくれる可能性は、限りなく低い。むしろ、字幕無しは常識はずれの行為です。その「常識」をどこかに置いてでも、映画を探したいという映画祭の情熱に応えるべく、同時通訳やストーリーテキスト作成など、字幕なしを克服する術を試みているPFFです。

翻って、プログラマーやディレクターを世界各地に送ることができる映画祭はそう多くありません。来日する人たちに、「日本の自主映画は宝がいっぱいあるらしい」ということを知っていただくこと。それが私たちの仕事だなあと思っています。

さて、今、PFFは開催準備に粛々と取り組んでいます。
現時点での私の最大の悩みは、「どうも『天国への階段』のプリント状態がよくない」ということです。
今回も世界中に問い合わせているプリントの有無。唯一確保できていたものは、褪色していることが日本に着いていきなり発覚。そんなこんなで、未だ探し続けていますが、世界はすっかりDCPに模様替えなので、「DCPで上映できないの?じゃ、DVDとかブルーレイは?」と親切に言ってくださるのが泣けてくる。「フィルムセンターだから、フィルム上映なんです。監督はフィルムでつくったので、フィルムがあるかぎり、フィルム上映なんです。」と毎回のご説明。
そして、今年の発見は、なんと、レンタル代が、フィルムよりDCPが高くなったことでした!
いまや「フィルムで上映したい~」と世界中に訴える役割は私たちの肩に?とも感じて、すっかり驚いています。

そんなこんなで、まだまだプリント探しが続く開催2週間前。
到着してみないと状態がわからないというのが、毎度毎度の悩みのたねでもありますが、かといって、ニュープリントがみつかるような幸運がそうあるはずもなく(ダグラス・サークのときは、ユニバーサルの倉庫火災で焼失した作品のニュープリントをつくらざるを得ない状況がユニバーサルにあり2作品が新しかったのですが・・・)同時に、褪色していても、それはフィルムの存在証明でもあるので、頓着されないのが当たり前なのも再確認するのでした。
確かに、フィルムは、時が経って、傷がついても、コマが欠けても、色が落ちても、必ず映る。一方、デジタルは、いきなり映らなくなる。そこが大きな違いです。

そして、フィルムの魅力は、どんな状態だろうと、見ているうちにどんどん没頭できること。私たちの想像力の増幅装置となってくれるフィルムの回転。たとえば、ロバート・アルトマンの『ギャンブラー』は、もとはシネスコなのにスタンダードにトリミングされた褪色フィルムしかこの世に存在しなくなってました!が、それでも、私たちは確かに映画を掴み、映画に心を掴まれたのを覚えています。

・・・ああ、フィルムに関する思い出は尽きません。
上映するたびに劣化していくフィルム。その楽しさ体験しておられない方に、PFFができるだけ長く伝えたいなあフィルムの手触り・・・と、そんなことを思いながら、心を落ち着かせるために、タランティーノの『イングロリアルバスターズ』を(DVDで)みていました。映画館主が、映写技師が、フィルムとともに映画館を焼く・・・すごい設定です。そしていつものようにこの作品をみると『海の沈黙』をみたくなるのでした。


2012/09/01 02:19:09

俄かに話題が高まる『贖罪』海外映画祭バージョン

・・・と、自分たちの映画祭で上映となる作品を、このようなタイトルで紹介するのはいささか照れくさいのですが、ヴェネチアでの『贖罪』上映が、更に一層話題になっているのを感じています。
そこここで、300分のWOWOW放映ヴァージョンDVD発売のポスターも目にしますし、「機会があれば観たいな『贖罪』・・・・」という方が少なくないことを想像すると、「テレビドラマが劇場公開可能という時代にもっともっとなってほしいなあ~、そんな話題に、PFFでのWOWOWプログラムが繋がってほしいなあ~」と考えながら、ゲストトークをあれこれ企画中です。

改めて記しますと、今回PFFで上映する『贖罪』は海外映画祭ヴァージョンの270分。先日の渋谷ユーロスペースでの300分オンエアヴァージョン一挙上映時は、黒沢監督と森山未來さんの対談もあってか、これまでになく女性観客が多くを占めたと、劇場の方に伺いました。その対談では、司会の市山尚三さんが、270分バージョンはどこがどう違うのかという話にかなり迫っていたと聞き、アワアワアワと少し慌ててしまった私。秘密にしておきたかったな~、とセコいことを思ったのでした・・・

今回のWOWOWドラマをスクリーンでみる企画は、数あるWOWOWドラマから、最新作であり、PFFと所縁の深い2監督の『贖罪』と『エンドロール~伝説の父~』を上映し、上映後、監督との質疑応答を設ける計画です。
また、両作品とも、プロデューサーのお話も伺いたいと、映画祭カタログで、短いながらインタビューを掲載しました。

『エンドロール~伝説の父~』(こちらは117分です)の石井裕也監督は、ただいま、新作『舟を編む』の撮影中ですので、それが終わるまではPFF上映に頭を切り替えるのは難しいだろうなあと、時を待っている状況です。

基本的に「無名の新人」を常に気にするのが私の仕事。それ故にか「ベストセラー」や「大ヒット」からは距離を置きがちなことを感じています。
大ベストセラーとなっている『舟を編む』も、少し月日を経てから読む予定でした。
しかし、著者の三浦しをんさん、主演の松田龍平さん、共演のオダギリジョーさん、企画の孫家邦さん、と、皆さんかつてPFFアワードの審査員をつとめてくださった面々。そして監督が石井裕也さん、となると、「読まねば」といつもより早く手に取りました。

そして、その面白いこと!ぶらりと気分転換に入ったカフェで読み始めたら止まらなくなり一気読み。思わず、隣の席で、ずっと同僚の悪口を続けていた二人組に「読むと心が落ち着くよ」と進呈したくなりました。
更に、孫さんのご厚意で拝読した撮影台本も、素晴らしい。何が「画」になるのか、映るのか、よくよく考え抜かれたホンで、完成が待ち遠しくてたまりません。
あ、そういえば『贖罪』も、黒沢さんがドラマ化すると聞いて読んだのでした。

映画企画を聞いて読む小説と、映画をみてから読む小説と、映画化を期待してしまう読んだ小説と、映画化するの!と驚いてしまう小説と、ああ、いろいろあるなあと、ちょっと今ぼんやり考えました。
イギリス映画『日の名残り』は、数年ごとに観ては、新たな感慨の湧く個人的に重要な映画のひとつなのですが、なぜか原作は開くことなく、本棚に置かれたままです。我ながら不思議です。

「映画『日の名残り』にヒントを得た舞台がある」と聞き、昨年出かけたのが『鎌塚氏、放り投げる』倉持裕さん作・演出。素晴らしかった!そして、先日、その続編『鎌塚氏、すくい上げる』があると聞き、おお!と駆けつけました。
こちらは少し方向が変わったのですが、更にパワーアップして、そして、満島ひかりさんが、唄う!みんな踊る!『日の名残り』関係なく、このシリーズずっと続いて欲しい・・・と密かに願いました。
すいません。東京公演は終了したのですが、大阪公演が今日、明日とありますので、関西の方、是非体験してほしいなあと思います。

・・・・・・なぜか舞台の話になってしまいました。ちょっとした現実逃避でしょうか・・・
今気づきましたが、ベストセラー本、もうひとつ読んでました。『戦後史の正体』。高校生向けという出版社のリクエストから始まったからか、平明な文章が一層この本をミステリー小説を読むような興奮に引き込み、これまた一気読みしてしまうのでした。

仕事に戻ります。


2012/08/31 23:01:00

賞男?熊坂出監督

『パークアンドラブホテル』で、日本人初のベルリン国際映画祭最優秀新人作品賞を受賞した熊坂出監督ですが、またまた「日本人初の受賞」を達成しました。
28日に閉幕したCINDI=シネマデジタルソウルフィルムフェスティバルで、5年ぶりの新作長編『リルウの冒険』が、グランプリにあたる「レッドカメレオン賞」を日本人で初めて受賞。更に国際的な批評家による賞「ブルーカメレオン賞」も授けられるという、ダブル受賞も達成です!
レッドカメレオン賞、今回の審査員は、イム・サンス、瀬々敬久、ワン・ビンという、気骨ある監督たちと、女優のキム・へナさん。
そして、『リルウの冒険』現在のところ、まだ公開の予定は固まっておらず、第34回PFFの招待作品部門にて、ただ一度、9/21金曜日18:30~の上映が決定しているだけなのです!
熊坂出監督が、脚本、撮影、製作も行った、ばりばりの自主長編映画『リルウの冒険』。ひとことで言えば「ファンタジー」と言えるこの映画を、是非多くの方に楽しんでいただきたいと願っています。

間もなく8月31日も終わり、9月1日に突入です。
PFF開催まであと17日。2週間と3日に迫りました。
今日からは、このブログはじめ、様々な方法で、映画祭上映作品のあんな情報、こんな情報を伝えていきたいと思います。


2012/08/17 01:08:13

デジタル、デジタル、デジタル

呪文のように「デジタル」と呟くこの数週間。
作品交渉をしていると、当たり前のように「DCPでいいですか?」と問われることに驚愕する年が、とうとうやってきたなあ・・・と感慨にふけっています。

そして遂に本年から、PFFのチラシもカタログも、フィルム以外はフォーマット表記をやめることにしました。デジタル素材は、上映会場の映写条件によって、フォーマットが多種に渡るため、「フォーマット表記をやめたうえでビデオと表記する?ビデオではなく、デジタルと表記する?」、など、悩みが尽きないからです。

ともかく、「フィルムか、そうではないか」。そのことだけ明記すべく、チラシの作品情報として"35mm"(16mmとか、8mmとかが登場する年もあるでしょう)と記載していない限り、デジタルフォーマットでの上映、ということである。と、ご理解いただければ。です。
「そんな日が、素早く訪れたなあ・・・」と、しみじみする8月です。

第34回PFF開催にむけ、ただいま事務局は、映画祭開催の告知と、当日の準備にまい進する日々です。
その一方で、同時に準備進行中のイヴェントが、実は3つあります。

1)8月26日からテーマの変わる、TSUTAYA渋谷店4階のPFFコーナー。
このコーナーでは、新作の公開が迫る映画監督たちに、隔月ごとにテーマに沿って、「この映画をすすめたい」という10作品を選んでいただいています。
次回は、『夢売るふたり』の西川美和監督と、『恋に至る病』の木村承子監督に登場いただく予定です。お楽しみに!!!
そして、はっと気づくと、このTSUTAYA渋谷店のPFFコーナー企画展開も、あっというまに3年を迎えようとしています。
毎回、映画を浴びるようにみてきた方々に、とても貴重な作品の推薦と、コメントをいただいておりますので、できれば多くの方に紹介しておきたいという気持ちがますます抑えられなくなってきました。
そこで、本年、第34回PFFカタログにて、これまでの推薦者と推薦作品リストを、記録に留めるべく、だたいま編集の方に、無理難題でページ構成を相談中です。
実現すれば、それはもう、まるで一冊の映画本のようなヴォリュームとなる情報だと思います。
こちらも、お楽しみに!

2)カルトブランシュ
フランス語で「白紙委任状」という意味のこの企画。あるクリエイターに、フィルムセンター収蔵の邦画を1本選んでいただき、上映後、選者と、選者の信頼する聞き手とで、上映作品にまつわるトークを行う、という趣向です。

フィルムセンターとエイベックスとの共同で始まったこの企画に、2年前から、PFFも参加しました。まさに2階大ホールでPFF開催中のフィルムセンターの、地下1階小ホールでカルトブランシュが同時開催です。
そして、本年のPFF担当回は、第34回PFFと同じく初日を迎える9月18日の実施です。菊地成孔さんが、『クレイジー黄金作戦』を選んでくださいました。気になる対談相手や、他2つの(毎年3企画開催です)企画など、詳細は、追って公式ホームページや、チラシでご確認ください。とても贅沢な企画が並ぶ本年です。

3)「ミューズシネマセレクション 世界が注目する日本映画たち」
毎年3月に、所沢市の文化施設ミューズで開催する映画イヴェントです。
タイトルの示すとおり、日本国内のみならず、海外でも話題を呼んだ邦画を一堂に集め、週末をどっぷり映画漬けになっていただこうと企画を続け、13回を数えます。
来年の開催は、3月22日、23日、24日の三日間。すべて公開が終了している作品からのセレクションですので、今、半年前でも企画をすすめることが可能な、私にとって、新鮮な驚きと喜びを与えてくれる映画祭です。
というのも、通常の「映画祭」は、公開前の作品を集める場所。
故に、作品交渉はぎりぎりまで続きます。多くの映画祭が、そのラインナップの発表は一か月前見当。ベルリンなどは、2週間前だったりします。
実は、PFFのコンペティション「PFFアワード」は、ラインナップ発表が、大変早い部類の映画祭なのです。映画祭まで2か月以上あるわけですから。

それはともかく、所沢イヴェントの交渉をしておりますと、本日の最初の話題「デジタルの時代」を更に痛感するのでした。
この企画に、デジタル作品上映を導入したのは、実は昨年からです。しかし、本年、映画は圧倒的にデジタル作品の比率があがっているなあと、改めて感じる交渉の日々なのでした。

それにしても、アメリカのユニバーサルが、今後フィルムの貸し出しをしなくなるのではないかという話が耳に入っています。
ダグラス・サーク特集も、クリント・イーストウッド特集も、ユニバーサルの協力と、その抜群の作品保存力があって成り立った企画です。叶うなら、またフィルムで上映したいなあ、ダグラス・サーク・・・と深くため息をつく夜。

本年のPFFは、マイケル・パウエルの小さい特集。是非みていただきたい『天国への階段』と『老兵は死なず』は、日本語字幕のないプリントに、字幕投影をして上映しますので、このチャンスは貴重です。
実は今回のマイケル・パウエル作品も、権利元は、まず「DCP?」と聞いてきました。
フィルムで上映したいというリクエストに、「無理」と返事が来るケース、これから出てきそうだなあ・・・・と予感してます。


2012/08/06 01:21:29

本日プログラム上映日時の発表です

お待たせしております第34回PFF上映日時を本日発表します。

「PFFアワード2012」16作品と、「映画のルックを浴びてみる!マイケル・パウエル、エメリック・プレスバーガー&ジャック・カーディフ」の5作品は、各2回上映。
「日本映画最新作」「追悼・森田芳光監督幻の8mm作品たち」「テレビドラマに挑戦!WOWOWドラマをみる。」「第22回PFFスカラシップ作品お披露目+世界グッドモーモーニング!!ライブつき上映」は、各1回上映のプログラミングです。

本年も、会場の東京国立近代美術館フィルムセンターは、レギュラー上映とは異なり、PFF開催には「完全指定席制」を導入します。前売り券をお求めになると、確実に席が保障されます。

このあと、11日のチケット一般発売日には、公式サイト工事中の『贖罪』の詳細や、森田芳光監督の追悼企画におけるトークゲストの発表、PFFアワード最終審査員5名の発表が実現するよう、ただいま鋭意努力中です。

同時に、事務局は、着々と開催準備に突入中。
スカラシップ作品の撮影もクランクアップし、編集へと突入します。
私はカタログ編集に向かうちょっとした合間の気分刷新に、ものすごく久しぶりに~文芸坐が、新文芸坐になってはじめて~オールナイト上映に出かけてきました。
「ゴダール+ジガ・ヴェルトフ集団」4本立て。音楽についての菊地成孔さんのトークつきです。
なんといっても、菊地さんのいつも目からうろこの音楽情報を聞きたかった。そして(実はDVDbox持っているんですが)この時代のゴダールをスクリーンでみたかった。

いや~!行ってよかった!ものすごくリフレッシュしました。
菊地さんのお話も、勿論面白かった。上映作品は『東風』『たのしい知識』『ウラジミールとローザ』『万事快調』。22時半スタート6時半終了の、8時間を映画館で過ごしました。ああ久しぶり。
映画館閉館のニュースが、またバタバタと飛び込んだ先月ですが、「"映画館の無い街"更新記録が伸びるばかりの現実は、ひとりでも多く映画館に行かないとストップしない」と、改めて身にしみます。

ところで、自分がオールナイトというか、映画みていてめったに眠ることがないタイプだな、と、ふと気づきました。
長距離移動の飛行機の中で、徹夜明けですごくお酒飲んでも滞空中ずっと映画みていられます(←脳梗塞とかの原因になるので、真似するのはやめましょう。私ももうやめます)
これまで、唯一、はっきり眠ったのは、タルコフスキーの『ノスタルジア』と『鏡』。
まず、タルコフスキー・オールナイト4本立てで、この2本を眠ってしまい、「もう一度昼間に挑戦!」と意気込んだものの、またまた眠ってしまい、3度めの挑戦で、何とか『鏡』は完走したものの、『ノスタルジア』はまたまた眠ってしまい、以来、再挑戦できないまま今日に至る。というわけで、『ノスタルジア』は、私の中で眠れる最高傑作映画です。
・・・・思い出したので、次はきっと完走します。

ゴダールに戻りますと、
たまに、「自主映画って、ゴダールみたいな映画でしょ」と言われることがあります。自主映画をみたことがない方に。
「ゴダールみたいな映画あったら、すごいよね?」と心で思いつつ、「それはどんな映画を指しているのだろうか?」と考えます。そして、今、「それは多分『東風』のような映画?」と思います。公開時にご覧になった方々の記憶に、「自主映画」と焼き付けられているのでは?と。
楽しい。
ゴダールのような自主映画、たくさんでてほしい。
リアルタイムに衝撃を受けた50年代60年代生まれの映画作家に続く、新世代に、「映画は教養である」という気運、盛り上がってほしいな、とも思う朝でした。

オールナイトの話に流れてしまいました。
第34回PFF開催まで、あと6週間。
本年は、会場の「開場から上映開始まで」のインターバル映像を、ちょっと楽しくしてみたいなあと考え、横浜在住の若いアニメーション作家に会いに行きました。
どんなアイデアを盛り込んでくださるか、とても楽しみにしている私たちですが、そのとき、久しぶりの横浜で、これまたリフレッシュ!
50年代、60年代の日本映画、横浜が舞台によくなってますねえ。
映画人も、銀座から車を飛ばして、横浜に遊びに行くの日常的だったとか、
くらくらしますねえ。
あ、今度は横浜に話が流れた・・・

オールナイトと横浜。つい、濱口さんの『親密さ』みなくちゃオールナイトで、とつぶやく自分が危険です。中華街のおいしい店調査とかしちゃう自分が危険です(「山東」の水餃子おいしい!)。
実は、所沢での春の恒例イベント「世界が注目する日本映画たち」プログラミングも、今月のTSUTAYA企画更新も、締切り迫る私なのでした。


2012/07/27 13:53:29

なぜパウエル&プレスバーガー、そしてカーディフなのか、と問われたら

第34回PFFぴあフィルムフェスティバルのコンペティション部門「PFFアワード」16作品を発表し、引き続き「招待作品部門」を、少しづつ公表しています。

最初に、「映画のルックを浴びてみる!」と題した、製作&監督コンビ、マイケル・パウエル&エメリック・プレスバーガー、そして、撮影のジャック・カーディフの3名に焦点をあてる企画をアップしました。先日も書きましたが、映画の「画」について、気になることが増えてきた結果、生まれた企画です。

近年、上映作品のスチルを並べていると、まるで「1本の映画」にみえると感じることがありました。
画の印象が似ている。
「撮影時に採れる音だけに頼らず、"音"にひと工夫してみると作品展開の幅が拡がりますよ」という「音に拘ろう」キャンペインを長く続けてきたPFFですが、最近は「"画"にもひと工夫すると、チャンスが拡がりますよ」という「画に拘ろう」キャンペインをしたいなあと感じていました。

同時に、近年「写ってしまった邪魔なものを消す」ということに手間暇かける現場が多いことを耳にすることが増え「その労力は必要なのか?」と疑問に思っていました。
だああ~と撮って、そのあと、マイクであるとか、スタッフであるとか、写りこんだ邪魔なものを消す、ということに、人手と時間をかける。
でも、その時間とお金を、俳優や美術やお弁当や編集や音楽や、色々と「映画を構成する」ものに使うほうがいいのでは?と思えてならない私。どんな仕事の現場でも、取り掛かる前の「設計」と、スタッフの「完璧を求める」テンションって、大切だと思うからです。

そんなこんなで、「映画のルック」がひとつのテーマとなってきた昨今ですが、そのための企画とは何か?と考えていたときに、ふと思い出したのが、マイケル・パウエルです。
ユニオンジャックの意匠が昨年からブームになっていることも関係しての連想だったかもしれませんが、イギリス映画の黄金時代を支えた巨匠。突出した"つくりこみ"を行い、何かにとりつかれ、こだわる人間を独特の美学で描いた巨匠。
キャリアの途中で、自らに必要な能力を持つエメリック・プレスバーガーを発見し、製作&脚本&監督の名コンビ「パウエル&プレスバーガー」を組み、自らの製作会社「アーチャーズ」を設立し、数々の大ヒット作品を生み出したふたり。
そんな二人の頭の中にある映画に、具体的な画を持ち込んだ、撮影監督ジャック・カーディフ(後に映画監督としても活躍しました)。
フェアで視野の広い映画人3人だと感じています。

この3名が関わった作品は、4本(『老兵は死なず』『天国への階段』『黒水仙』『赤い靴』)しかありませんので、ともかく、小さくても特集として成立させたいと考えてました。
フィルムで、それぞれ2回づつ上映する計画です。
あわせて、マイケル・パウエルがまだ先の見えない新人監督だった時代に、低予算プログラムピクチャーの1本としてつくった『ヒズ・ロードシップ』が60年間の行方不明の果てに発見されましたので、特別上映します。
アメリカ映画をパロディーするような、パウエルならではのおかしみと、映画的な演出へのあれこれの工夫が満載された小品です。

プリントの交渉、スチル写真集め、パウエル、プレスバーガー、カーディフの写真集め(あの時代の監督らしく、みなさんピシ!としたスーツ姿で新鮮です)など、やっとめどが立ち、チラシやカタログも形になりそうです。
チラシは来週印刷に入り、8月9日に完成配布を目指しています。
チケットの発売は、8月11日を予定。
本年は、フィルムセンター大ホールだけでなく、小ホールでも数日間展開する計画のPFF。
プログラム発表をお楽しみに!!!

それにしても、『老兵は死なず』は1943年。第二次世界大戦のまっただなかに、この作品が生まれるイギリスって・・・・としみじみします。
戦争中シンガポールに派兵された小津安二郎監督が、押収した倉庫にあった、『風と共に去りぬ』『ファンタジア』をみて、「日本は負ける」と映画三昧で暮らした逸話を思い出しました。

ともかく、是非みてほしいパウエル+プレスバーガー+カーディフです。

2012/07/26 20:46:27

ニュース(?)の続きです

●独立映画鍋
前回のブログでお知らせした「独立映画鍋
「発足記者会見や懇親会に出席してレポートを・・・」と計画していたのですが、PFFのチラシを作成する佳境と重なり、結局参加できずに終わってしまいました。がっくり。
大変な盛況だったと聞きました。

"インディペンデント映画"、"独立映画"、"自主映画"、いわゆる「メジャー」ではない映画を指す言葉が、映画祭を中心に世界で様々に生まれたこの20年間。
ふと気付くと、その20年間を体験して、今、感じるのは、「自主映画しかみない人、自主映画しか知らない人」の層が厚くなってきたことです。
これが、「映画」の現実。
同じ「映画」という言葉を使いながら、実は全く違うところを見ている・・・・ということが、じわじわと明確になってきている昨今。
全ての「映画」を網羅するには、どうすればいいのか?
という悩みも、そのうち過去のものになるのであろうか?
と考えてみたこの数日間。

映画に於ける、変化することと変わらないこと。なんとなく感じるけれど、言語化したことがなかったな~と、そんなことも考えている今日この頃です。


●第22回PFFスカラシップ作品『HOMESICK』本日クランクイン!

2010年に審査員特別賞を『世界グッドモーニング!!』で受賞した廣原暁監督による、最新PFFスカラシップ作品『HOMESICK』の撮影が猛暑の中始まりました!
完成ほやほやの状態で、9月27日木曜の夜、第34回PFF最後を飾る上映作品として(28日の映画祭最終日は、表彰式と引き続きのグランプリ作品のみ上映です)お披露目します。
大変楽しみです!

更に更に、人気作品『世界グッドモーニング!!』を、タイトルそのものの唄をうたう、廣原世界をインスパイアするバンド「ARTLESS NOTE」のライブつきで特別上映することも決定しました!!!!
9月27日は、『世界グッドモーニング!!』をみてから『HOMESICK』をみよう、という、廣原暁dayとなっております~~~


●「映画屋とその仲間たち」最後の活動に出発します

昨年の5月、「できることをできるペースで、ともかく1年間、隔月でやっていこう」と発足した、有志によるボランティア活動(その名前が「映画屋とその仲間たち」です)が、この週末、28日と29日に最後の活動を迎え、今後は、参加各人の個別の活動に移ります。

これまで、「みんなの映画館」と名付けられた映画上映活動を中心に、フリーマーケット、カフェ、お手紙プロジェクト、などの活動を展開してきましたが、最後の2日間は、その少し拡大版。
上映作品も、ゲストによるイヴェントも、多彩です。

28日(土)
岩手県岩泉町 岩泉町民会館1階大ホールを会場に
10:00頃~ 『大鹿村騒動記』上映 阪本順治監督来場
13:30頃~ シンガーソングライター奥華子さんのミニライブ
15:00頃~ 『青いうた~のど自慢青春編~』上映 金田敬監督&清水優さん来場
他、三浦誠己さん、尾上寛之さん、永岡佑さん、が来場します。
29日(日)
宮城県南三陸町のホテル観洋を会場に
9:00頃~『パンダコパンダ 雨ふりサーカスの巻』
9:45頃~『ワンピース ストロングワールド』
12:00頃~『エクレール・お菓子放浪記』上映
12:30頃~ 大橋トリオさん、東川亜希子さん、羊毛さん、アンダーグラフさん、らのミニライブ
14:30頃~『大阪ハムレット』上映 光石富士朗監督来場


などが予定されています。

さて、ここで御願いです。
この活動の問い合わせ先はありません!!!
もし興味を持って、参加したいと思われた方、会場へのお問い合わせはご遠慮ください。
岩泉町の町民会館も、ホテル観洋も、通常の業務で多忙を極めておられますので、「映画屋とその仲間たち」の活動について問い合わせには応じられません。
どうか、その場所を自力で発見し、自主的な活動をしに来てほしいというのが、今回の参加者の願いです。
PFF事務局からは2名が参加します。そして私は、今回も映画祭準備で追われ、参加できません。


●若いプロデューサーから

最近最も感動したと、以下のスピーチを紹介されました。
リオ会議でのウルグアイ・ムヒカ大統領のスピーチ

このスピーチが展開された場所にいた方のレポートも少しはいっています。

社会的な弱者と強者。その順位付けや、残酷な仕打ち、が、年々嵩じてきているようなこの世界。
例えば、PFF事務局は、"入選作品を決定する"という力においては、応募者にとって"強者"です。同時に、そのスタートラインとなる"作品を応募してもらう"こと、そして、映画祭に"来場してもらう"ということにおいては、"弱者"です。
・・・というのは、ぜんぜんいい例とは言えませんが、
「人や組織は、単純に位置づけできるものではない。世界はもっと複雑で、面白い。」そのことを描くのが、映画ですから、「映画を沢山みる、自分の収入を映画やそのほか色々な表現のために能動的に使う」というのは、「日常的に意識していないけれど重要なこと」を思い出すチャンスに繋がるのだと思います。
より暮らしやすい世界、他社も自分自身も傷つけない、フェアな世界への「自分の役割」を知ることのたやすい世界、への、第一歩となるのは、やはり映画をみることの効果は大きいと思うのでした。

ああ、といいながら、ただいま、映画祭プログラム最後の大詰めで胃が痛いのでした。
つまり、映画で悩まされております。

2012/07/23 16:28:40

49日ぶりの更新です 最新(?)ニュースあれこれ

前回のブログ更新が6月2日。
それから、いろんなことがありましたが、あっというまに世間は夏休みに・・・これから、またまたあっという間に日が過ぎていくことが予測できますので、ともかく一気にまとめて最近のニュースをお伝えしようと思います。長くなりますが、ご容赦ください。(少しづつお読みください)


●映画『ちづる』収益あがる →全額寄付へ

映画監督で、立教大学特任教授の池谷薫さんより、大学の学生の監督した作品を、学生たちの手で配給するプロジェクトの結果報告がありました。

---------------------------------------------------------------------------- 本日は、ご支援をいただいた映画『ちづる』に関して、うれしいご報告をさせていただきます。 先頃、東京・横浜・札幌・大阪、4上映館分の会計報告がまとまり、宣伝などの諸経費を除いて、4,745,990円の収益がありました。 よって、かねてから公表していた通り、その全額を公益社団法人「セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン」に寄附し、東日本大震災で被害に遭った被災地の子ども支援に役立ててもらいます。(先ほど寄附を完了しました) 学生たちの献身的な活動が、社会貢献として実を結んだことを、指導教官として誇りに思います。

「セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン」の公式HPは、
http://www.savechildren.or.jp/top/index.html
東日本大震災支援については下記をご参照ください。

なお、『ちづる』は現在も全国各地で上映が続いており、劇場公開が全国22館、自主上映会も全国74カ所に達し、今後ますます増える見込みです。
昨年12月に上映委員会が解散した後は、赤崎正和監督とお母様が上映に関する管理・運営を引き継いでいます。
今後とも、ご支援ご協力の程、よろしくお願いいたします。

感謝を込めて

池谷 薫
映画監督・立教大学特任教授


【セーブ・ザ・チルドレンの東日本大震災支援】
セーブ・ザ・チルドレンは初期の緊急支援だけでなく、2016年までの5ヶ年計画を策定し、長期にわたり、被災した子どもや家族が日常性を回復できるよう支援を引き続き展開します。現在は下記の3分野を活動の柱としています。

・子どもの学習環境と機会の改善支援を行う「教育」
⇒活動例) 奨学金や、学用品・学校備品の配備、給食支援など

・子どもと保護者の心理社会的回復を支援する「子どもの保護」
⇒活動例) 学童・保育所など子ども関連施設の支援、仮設団地など地域の子どもの遊び場・居場所づくり

・復興プロセスに子どもたち自身が参加し、意見表明をする場を提供する「子どもにやさしい地域づくり」
⇒活動例) 子どもの参加意識アンケート調査、子どもまちづくりクラブの実施、子どもたちの声にもとづくアドボカシー(政策提言)

----------------------------------------------------------------------------

●「独立映画鍋」発足

ふと気づくと、本日がキックオフ。ひとりで映画を制作している人たちの"互助会"的な場所になれば、という発起人のひとりのことばがあります。

独立映画鍋


●トリノ映画祭で熊切和嘉監督特集

イタリア・トリノ映画祭は、ヴェネチアに並ぶイタリアの重要な映画祭。文化芸術の盛んな土地であり、かつ、高名な映画博物館を持つイタリアのシネフィルのメッカとも言えるトリノでは、過去に、日本の監督の完全なレトロスペクティブを重ねてきました(昨年は園子温監督でした)
本年は、熊切和嘉監督に焦点を当てるということで、PFFからも『空の穴』を送ります。
開催は11/23~12/1。美味しいワインでも有名なトリノで、映画三昧もいいですね。
ただいま新作『夏の終わり』を撮影中の熊切監督。原作は瀬戸内寂聴さん。過去に、千葉泰樹監督により『みれん』というタイトルで映画化された本作。熊切監督がどのように視覚化するのか、期待が高まるばかりです。


●フィリピンで新たにインディペンデント映画祭発足

この5年、世界の映画祭で急速に紹介が増えたフィリピン映画。自主映画製作のブームが、フィリピン全土に拡がっています。そんな中、映画祭プログラマーにとっては、マニラ以外で作品を探すのが一苦労でした。
そこに登場したのがThe National Film Festival in Davao この映画祭は、"フィリピンの最新自主映画を集めて一気にみせてしまおう"と始まりました。どんな作品を発見できるのか、この映画祭のことを教えてくれた、釜山国際映画祭のキム・ジソクさんに第1回がどんな様子だったか、今度詳しく教えてもらおうと思います。


●カサヴェテスレトロスペクティブ盛況!

一昨年、第32回のPFFで小さい特集を組んだジョン・カサヴェテス監督。今、必見の監督のひとりです。
そのレトロスペクティブが盛況というニュースを、大変嬉しく聞いています。まだまだ全国で続くこのレトロスペクティブ。是非今、スクリーンで目撃してください!!!


●特撮博物館

ミニチュア&特撮好き(私のことですが)の夢の企画が始まりました。前売り券は完売ということで、会期の終わりはきっと混乱し、夏休みも混乱し、と考えると、9月の大嵐の日に行くか?と、そんなことばかり考えている今日この頃です。
日本の誇る技術を目撃に、さあ出かけましょう!

特撮博物館


・・・・・あら、だんだん個人的な話題になってきました・・・
以下はちょっとしたメモです。


●「家」の新しい、タイムリーな概念を示す古い映画

石井岳龍監督には言えませんが、初めてスクリーンで『逆噴射家族』をみました(昔、ヴィデオで拝見しました)。シネマヴェーラに於ける脚本家・神波史郎の特集で。1984年製作。原案と脚本に小林よしのり、プロデュースに長谷川和彦、高橋伴明、撮影に田村正毅、笠松則通、篠田昇、石井勲、出演に小林克也、倍賞美津子、植木等など(敬称略)、すごいメンバーが並んでいます。
改めて観ると、2012年の日本に、あまりにもタイムリーな映画です。
当時、海外での評価が日本国内での評価より遥かに高かったという、"早すぎた"映画。
まさに、"現代"の映画。
「家」という「場所」について、大島弓子さんの漫画「ロスト・ハウス」と同じ感動が襲いました。
「ロスト・ハウス」もすごいですよ。是非。


●首相官邸には、九段下からの散歩が楽しいですよ

ぴあは、昨年の正月から渋谷に移転しました。
その前は、半蔵門線半蔵門駅が最寄り。(余談ですが、"半蔵門"は、忍びの総帥服部半蔵の名前から来ているそうです)
半徹夜の多い毎日に、帰宅のタクシー代が嵩むので、思い切ってその分を上乗せして家賃少しアップを覚悟し「半蔵門に引っ越して、歩いて通える職住至近生活を始めよう!」と決意したのが10年前。
以来、通勤の悩みからは解放された毎日を送っていました。が、今回のぴあ渋谷移転。近隣の渋谷青山代官山の家賃の高さや、環境のなじめなさに、渋谷で職住至近は断念し、古くからの馴染みの街にまた舞い戻りました。

というわけで、首相官邸近隣の地理にはちょっと詳しい私。半蔵門から永田町界隈は、散歩圏でしたから。
九段下から、皇居の堀沿いの散歩道をたどり、イギリス大使館前の、都内中心部で唯一残された土の歩道をぶらぶら歩き、三宅坂の国立劇場までまた堀沿いを歩き(ランナーで混雑しているかもしれませんが)、国立劇場を抜けて、国立図書館や国会議事堂の脇を通って首相官邸、というルートは、なかなか楽しい散歩道です。
*参考までに、映画では、利重剛さんの『クロエ』に、イギリス大使館界隈の散歩が、行定勲監督の『GO』に、国会議事堂界隈の散歩が、素敵に描かれています。


●一気に読んで、泣きました

京都二条城近くにある工房+寺子屋+ギャラリーの「モーネ」
ここの寺子屋に通う友人から、主宰する井上由季子さんが出した「老いのくらしを変えるたのしい切り絵」という本が送られてきました。
丁度届いた日は、読まなくてはならない本6冊ほどにとりかかったときだったのですが、パラリとめくって、そのまま、玄関先に立ったまま、一時間で一気に読破してしまいました("読む"のは異様に早い私です)。そして、泣いた泣いた泣けちゃった~。
是非お勧めしたい一冊です。
「宿題」を設け、欠かさずみて、励まし、喜ばせ、が、何かを生み出すことを続ける秘訣だなと、改めて「ものを生む、その意欲を育てる」環境の大切さを感じると同時に、「手を動かし、頭を動かし」というのは、とてつもなくすごいことなんだな、という、人間の基本とでもいったことも、再度確認なのです。
一方で、見守る人がいなくても、孤独でも、「やめない。やめられない創作」というものも確実にあり、私たちPFFの活動は、そこが基盤になっているなとも感じました。
自主映画。孤独な環境で作品を生み出している人たちが、他者と出会う場所としてのPFFを、再度考えてしまいました。


●舞台衣装にやはり惹かれてしまいます

舞台装置や舞台衣装に昔から強い関心があります。
ただ今新橋演舞場で上演中のスーパー歌舞伎『ヤマトタケル』は、その衣装の素晴らしさもあり、結構欠かさず出かけているのですが、今回、亀次郎から猿之助襲名の『ヤマトタケル』も素晴らしかった~!未見の方は、是非どこかの公演に、貯金して出かけてほしいです。
タコと蟹と、白、金、銀の衣装の為だけにでも、これからも何度でも通いそうな私でございます。
そして、コクーン歌舞伎『天日坊』の衣装も素晴らしいのでした。浮世絵からそのまま抜け出したような衣装。
チャンスがあれば、是非目撃してほしいです。

舞台を構成する、脚本、演出、俳優、照明、装置、衣装、音楽音響。これは映画も同じですが、目にみえるものは、重要です。

今回、第34回PFFでは、「映画のルック」というテーマで、招待作品部門にマイケル・パウエル&エメリック・プレスバーガーコンビの作品、とくに、ジャック・カーディフが撮影にかかわった作品を中心に特集します。
ヴィデオ機材の発達に伴い、音も画も、それなりになる昨今、"それなり"以上に拘って欲しいなあ・・・という願いを込めた企画です。
日本映画の音の弱さは、海外の映画祭から頻繁に指摘されます。「音に拘ろう」キャンペインはしばらく続けてきているのですが、近年は、応募作品の画像設計が、非常に似ていることも気になってきました。
そんなことから、「画」というものを考えるきっかけになる企画を、とすすめているのが、本年の、パウエル+プレスバーガー+カーディフの特集です。
5作品を2回づつ上映する計画。
是非体験してください!!!

と、最後はPFFで締めてみました。
そろそろPFF用の貯金、お願いします・・・・と呟いてみる・・・

2012/06/02 16:22:09

夏秋の映画祭ディレクター&プログラマー来日の季節です

香港、ロカルノ、釜山、トロント、NYのNDNF、バンクーバー&ロンドンと、今月来月は海外の映画祭ディレクターやプログラマーが多数来日です。
PFFは、昨年からの7月から9月への会期変更に伴い、ただいまセレクションの真っただ中!&スカラシップ作品は撮影にも入っていない状況ですから、各映画祭の人たちにお会いして「いい作品があるから待ってて!」と鋭意営業するのも私の仕事です。
自主映画を、海外および国内の映画祭に紹介するのは、PFFの重要な仕事のひとつ。コンペティションにご応募いただいた作品、招待作品として拝見した作品、そして、過去の入選監督たちの新作など、PFFで上映しない作品でも、国内外の多彩な映画祭に紹介しています。

『サウダーヂ』効果でしょうか、今年はロカルノ映画祭に出品したい、という声をよく耳にします。ディレクターのオリヴィエ・ペールさんは、カンヌの監督週間から一昨年ロカルノに職を変え、行くところ行くところの映画祭を活気づかせています。昨年は、釜山のニューカレンツコンペの審査員として、『ダムライフ』ご覧になり、気に入っておられました(だったら賞出して欲しかったわ~!)

PFFのコンペティション部門「PFFアワード」の入選ラインナップは7月初旬に発表すべく今が佳境。招待作品部門の決定も同時期を目指し、いろいろな方にお目にかかっています。
そして、忙しければ忙しいほど、切羽詰まれば詰まるほど、無理に何か他のことをやりたくなる、現実逃避したがる性癖がある私。つい、合間を縫って「台湾への義捐金感謝二泊三日ツアー」をまたやってしまい、その旅で未読本の山の中から「メルトダウン」と「困ってるひと」を読み、機内の往復で(滞空時間が短いもので)『ALWAYS三丁目の夕日'64』(3Dで劇場で拝見しなくてごめんなさい!)をみて、この3点セットが偶然に、ある種「昭和の価値観検証セット」になってるなあ、と茫然として帰国しました。
3点セットお試しあれ!

それにしても、ユーロも90円台になったそうで、日本に来る海外の人々には物価がますます高い苦しい旅になるでしょう。台湾への訪問者は、メインランドからをはじめ、倍々に増え続けてているそうで、物価は旅先選びに強く影響することを改めて実感しています。

物価、とは少し違いますが、先日、アジアの主要な製造拠点の人件費が日本経済新聞に掲載されました。
※ジェトロ調べ、2011年度、一般的な工場労働者の月額賃金
広州(中国) 352ドル
武漢(中国) 333ドル
バンコク(タイ) 286ドル
チェンナイ(インド) 260ドル
ホーチミン(ベトナム) 130ドル
ヤンゴン(ミャンマー) 68ドル
というわけで、飛び抜けて人件費の低いミャンマー(ビルマ)にただいま続々と日本を含む、世界の生産工場が進出中とのこと。

これをみながら、世界の映画人件費一覧を心の中でつくってみている自分。
人件費の安い国で映画はつくられるか?と言えば、それはなく、工場生産品でない映画にとって、人件費リストは意味を持たないことを再確認です。
だから、やめられない。だから、悩む。

と書いてたら、新宿テアトルから、『くそガキの告白』試写の案内とともに、公式サイトの監督ブログを読んで!という案内が。
熱い!

ところで、現実逃避シリーズのひとつとして、自室のアナログのレコードプレイヤーとアンプ、そしてスピーカーを、もっといい音に聞こえる場所を探して、移動してみました。
結果として、もっと悪い音になってしまい、がっくりとしながら「スピーカー棚をつくろう」と新たな現実逃避目標をみつけて喜んでいるのですが、テストに使ったパンクのレコードを聴きながら、「今一番アナーキーなのは、この国の政府?」とはっと気づいたのでした。
政府って、国民生活を豊かにするために、民意を反映してプロの仕事をするためにあるはず。でも、今、まさに(あるいは、これまでもずっと?)「無政府(アナキズム)」なんじゃない?
(ちなみに最新の世論調査では、原発稼働しないことでライフスタイルに不便が生じるのを、「受け入れる」人が約8割、「安全性が確認されても再稼働反対」が約6割という「民意」だそうです)
「地震が来る」と大キャンペインしながら、「安全宣言」したり、「責任」という言葉を安易に使ったり、東西ともに、なんだかめちゃくちゃな日本。

でも、映画にとっては、ネタの宝庫の国、日本。
かもです。

2012/05/24 02:42:05

とても古い話題になってしまいましたが

ゴールデンウィーク後半は、爆音Go Westツアー開催地(広島、神戸、名古屋、京都)のひとつ、神戸アートビレッジセンターで過ごしていました。
「何故東京の爆音に行かないのか?」と、幾人もの方から指摘を受けましたが、東京にいると仕事優先で、諦めることが重なるのであります。(実際、東京で開催される7月の爆音は、ばっちりPFFの名古屋福岡と重なりました・・・)

「東京の映画祭に参加するのは、驚くほど難しい・・・・」これが、しみじみと悲しい私の実感です。出掛けようと思っても、「あ!このままでは、ギリギリ!あるいは遅れる!」となったら、すっぱりその映画を諦めるのが東京での暮らし。「仕事の合間にちょっと」出かけるのは、往復時間がかなりかかることもあり、意外に困難。「行くなら、一日中その会場に。できれば歩いて行ける場所から」といきたいところ。
そこで、今年から決めたのです。「東京から通えない」場所の映画祭に積極的に参加しよう!と。それが私の休暇としよう。と。

え~前置きが長くなりましたが、爆音漬けなGWは、関西のおいしいもの体験とも重なるうれしさです。たとえば、神戸アートビレッジセンターでのPFF開催は既に10年を超えているのに、初めて知った近所の店「はとや」。平清盛のドラマの舞台である福原にあります。福原は、東京で言えば吉原のような歓楽街。「ようこそ平清盛の舞台へ!」みたいな大河ドラマ宣伝がひらめくこともなく、男性一人で歩けば客引きがありそうな感じですが、おいしい店との出会いに平清盛にも興味が湧く感じ。
宿は神戸で一番賑やかな三宮にとったのですが、こちらも遅くまで営業するおいしそうなお店が増えていて、訪問時間のなさを残念に思いました。
しかし、神戸は深夜まで開いてるケーキ屋の多いこと。甘いものに妥協しない県民性がある気がします。そして、若者のおしゃれなこと。
中高年のおしゃれなことに感嘆するのは福岡市ですが、若者は神戸かなと。

ぜんぜん映画の話にならずすいません。
上映作品では『エレファント』が別の映画にみえ驚愕。『AKIRA』が、ものすごい満席で、大友さんの再ブームを実感しました。『シガーロス』が、ライブに行くよりいいんじゃないかと、陶酔しました。『ポーラX』の揺るぎなさに、新作が楽しみになりました。とか、いろいろあるのですが、一番の感動は「連日満席の神戸アートビレッジセンター」。
満席の会場ほど、幸せを与えてくれるものはないなあ・・・と、涙。

音のミキシングを入念に行うこの爆音映画祭。耳への負担は驚くほどない。「爆音」という言葉から連想するものとは、ちょっと違うのです。
逆に、日常生活のほうが、耳に負担の激しいものが多いかもです。
近年、一番気になっているのが、シーバーで店内案内をしている飲食店や量販店。私たちの仕事も、多くのスタッフは映画祭開催中はシーバーで連絡をとりあいます。「イベント」という限られた期間ですら、毎日イヤホーンをつけて働く耳への負担は、耳の痛みに加え、全身の疲労を呼ぶのに、365日その状態が続く職場は、将来的に新たな職業病の発生につながるのではないかと、ハラハラします。
騒音の中で働く職場とはまた別の、音の問題。実は広範囲にあるのかもしれません。

てなことを思っていたら、すごい場面が。
一日だけ参加できそうな爆音吉祥寺バウスシアター開催のチケットを買いついでに、渋谷ヒカリエを初めて通ってみたのです。ヒカリエ内の「チケットぴあ」は、4階の小さなコーナーにあり、通常の売り場とは離れた独立空間でした。
ここのドアを開けた途端に、ものすごい音量の音楽が!
店内に流れるのと同じ音楽が同じ音量で鳴っているそうなのですが、広大な売り場と違い、小さなコンクリートの箱のようなチケットぴあ。まるで、片やデパートのBGM程度、片やスタジオで大音量で聞いてるような差があり、仰天。スタッフの説明の声も聞こえ辛い。何より、5分も滞在しなかったのに、耳鳴りが・・・・スタッフの耳が心配になり、夜中に忍び込んで天井スピーカーをはずしてあげたいと妄想。

人間の体で、筋肉とか脳とかは鍛えることができそうですが、耳も目も鼻も喉も内蔵も、働きっぱなしで鍛え方が不明。できるだけ負担のない環境を求めていかなくてはなあ・・・といろいろ考えていたら、昨年の東京国際映画祭「日本映画ある視点」で上映された、岡山でトマト農家を営む"兼業監督"である山崎樹一郎監督の初長編映画『ひかりのおと』は、「高速道路の騒音」をきれいに拾っていたなあと思いだしました。
山間部の高速を走っていると、「どこまでこの騒音は響いているのだろうか・・・」と考える、その答えがあの映画にあるのでした。

さて、GWの神戸アートビレッジセンターで遭遇した、もうひとつの感動。それは、逃亡者マイティの登場です。『SR3 ロードサイドの逃亡者』のマイティが神戸に!公開の迫る地方各地に逃亡中のマイティ(奥野瑛太さん)が現れているのです。
東京ではヒットしたSRシリーズ。しかし、地方では同様の動員が達成されていないため、3では、スタッフ&キャストが公開各地を自発的に廻ってキャンペインを展開しているとのこと。
こちらも、涙の感動です。たくさんのチラシにサインしてらっしゃいました。

そして、実はただいまカンヌ真っ最中。
私は東京におりますので、若松監督の三島にちなみ、新橋演舞場の「椿説弓張月」(曲亭馬琴原作 三島由紀夫作・演出)をみてきました。
耳の負担が大きい記憶があり避けていたイヤホンガイドをふと借りてみましたら、なんと、幕間に三島由紀夫さんが歌舞伎について語った貴重な録音が紹介されます。更に、解説のおくだ健太郎さんの愛もそくそくと伝わり、得難い体験に「もっと積極的に使わなくてはイヤホンガイド・・・」と新たな発見です。

ほかの映画祭の話に終始してしまいました・・・
PFFin名古屋&福岡開催目前です!
PFFアワード2012審査は順調に進行中。第34回PFF開催詳細は、来月から少しづつでも発表していけたらと考えています。
そして、耳の鍛え方、ちょっと研究してみたいと思います。


2012/05/01 03:49:37

自立は幸せな人生への早道であると再認識した4月

晴天の29日は、東銀座のシネパトスでの、今井正生誕百年特集で過ごしました。
去る4月8日には、『青い山脈』『続青い山脈』上映と杉葉子さんのアメリカからの来場があり、行かねば!とはりきっていたのですが、前夜素敵な『利き酒会』に参加して断念・・・・
大変後悔しました。
今回は、53年版の『ひめゆりの塔』と、有志によるニュープリント作成で上映が実現した、オムニバス映画『愛すればこそ』の二本立てに加え、香川京子さんのご来場。
今回は逃しません。

香川京子さんといえば、小津、溝口、黒沢、成瀬という、並み居る巨匠の映画全てで重要な役を演じておられるのみならず、ご出演なさった作品の記憶が、現場を、まるで俯瞰で見ているように、あるいは、まるで、取材記者かプロデューサーかのように、鮮明に記憶あるいは観察されておられることで有名です。香川さんを取材なさった方幾人かから、その驚きを聞いたことがあります。「監督よりその映画をよく知っているかも」と。また、どこにでも、おひとりで静かに現れることも有名です。
今回のトークも、さりげなく、しかし、映画への熱い情熱の伝わる、貴重な体験になりました。

当時爆発的なヒットを記録し、現在でも知る人の多い『ひめゆりの塔』ですが、私は実は今回初見でした。沖縄に行った折に、ひめゆり部隊の記念館や、保存されている塹壕をみて、あまりの戦争の狂気に唖然としたまま、今日まで映画を観る勇気がなかったのです。そして、映画は、やはり必見映画の1本でした。これが、東映の大泉撮影所で撮影されたとは、到底信じられない、戦場としかみえない、入魂の作品です。
『愛すればこそ』は、独立映画プロダクションの経営を救うために、スタッフとキャストが手弁当で集ってつくりあげた作品。思想や哲学が強く伝わる、戦う映画人たちの映画、でした。

香川さんが、他の女優と違うキャリアを積むことを可能にしたのは、早い時期からフリーランスの道を選んだことだという話が、非常に印象に残っています。フリーだから、声がかかって、ご自身も興味があれば、どの会社の作品にも出演が出来た。(かつては、映画会社専属契約の俳優が大多数で、簡単には他社の作品に出演できなかったのです。)
変な言い方ですが、若くして、自立した女性だったのだなあ・・・と感慨が湧いた私です。

自立。それは人生で一番、楽しさへの早道だなあと、最近改めて感じています。
ロングランヒットを続ける『Pina 踊り続けるいのち』をやっと拝見したのですが、これをみると、同じく公開中の『ピナ・バウシュ 夢の教室』をみずにはいられなくなります。
両作品とも、しみじみと、「自立する」ための「表現」というものを考えさせられずにはいられませんでした。

ピナ・バウシュを初めてみたのは、83年のフェリーニ『そして船は行く』。誰もがひれ伏す圧倒的な存在感の皇女としてスクリーンにいるこの人は、誰?・・とその名前を記憶しました。
そして、86年のヴッパタール舞踏団初来日。大野一雄さんの製作の方に、来日公演が実現すると教えられ、予備知識なしで国立劇場に行きました。驚きました。舞台では、これまでみたことのない緊張感漲るダンスが展開されていきました。そして、ダンサーたちが、自己について舞台で語る・・・「ダンサーは人間である。人間だから踊る」と、人間宣言をされたようでした。それは、まるで、ロックを初めて聞いた時のような衝撃でした。
が、それ以来、一度も生の舞台を体験していません。私には、一度で充分だったのだと、映画をみながらおもいました。

緊張と弛緩で見事に鍛えあげられたダンサーの肉体。(これって、流行りの加圧と同じこと?とかつい考えた私・・・)かなりの危険が伴う構成、相手に自分を全面的に「委ねる」ことの出来る信頼関係(そこで突然、ふと、バナナ学園純情乙女組のステージを思い出しました。ちょっと同じ感じをうけたのを発見)
「個々の目指す高みに向かって責任ある仕事をする」という、そのことを肉体で示されているなあと、しみじみしました。

劇場を出ると、1600円のパンフが飛ぶように売れていました。職業柄、羨ましい風景でした。同じく職業柄、ヴッパタール舞踏団の新芸術監督になる方は、大変なプレッシャーで気の毒だな~と、つい気になってしまうのでした。
それにしても、もし、最初の企画通りに、ピナの存命時に撮影されていたら、この映画はどんなものになっていたのでしょうか。何はともあれ、この映画がきっかけで、ピナ・バウシュを知る人が増えている。映画ってすごいなと嬉しくなります。
そして、3Dって凄いな、ともおもうのでした。

2012/04/28 11:14:56

映画への敬意が高まる

メジャー系の映画を、つい後回しにしてしまいます。一種の職業病でしょうか。
そして、出来るだけ白紙で劇場に行く習慣が更に嵩じています。タイトルとスチル、あるいは予告編、で勝手な想像をしながら劇場に行き、驚く。これが楽しみにすらなってきました。
『戦火の馬』は、ディズニーの『三匹荒野を行く』のように、「馬が我が家目指して旅する映画」かな?大陸の戦場を抜け出してどうやってドーバー海峡を渡りイギリスへ戻るのだろうか?ドーバーを泳いで渡る?船に紛れ込む?とかあれこれ想像。
実際は、ぜんぜん違いました!!当たり前か。
今、私の中での「スピルバーグ最高傑作」と位置づけられています。絶賛『戦火の馬』。

馬をどうしたらこんな風に撮ることができるのか、その技術にも呆然とする『戦火の馬』
猿がどんどん好きになる『猿の惑星 ジェネシス』
ちょっと違うけれど、車なのに魅力的『カーズ』
人間ではないものの魅力は、近年の撮影技術の進化で、更にアップしそうです。
(あ、でも、古式の撮影と思われますが『木漏れ日の家で』の犬、素晴らしかった。)

そして、『ヒューゴの不思議な発明』も大絶賛中!
一瞬だけ出演する、スコセッシの満面の笑顔に、更に心掴まれ暖かい気持ちで劇場を出ました。
スコセッシは、映画の修復保存活動でも有名です。2007年のカンヌ国際映画祭で発表されたこの活動(「世界映画基金」を立ち上げ、第一作は『赤い靴』でした)は、現在も着々と世界中の名作の修復保存を継続しています。

昨年末、突然私を襲った「ミュージカル映画みます!」熱。
実はこれまで、重力に囚われずに踊れるフレッド・アステアしか興味のなかったミュージカル。きっかけは、ふと「ジュディー・ガーランド」という存在に惹かれたから。そこから「少しでも早くミュージカル映画観ておかなくては・・・」と加速していったのは、彼女の出演した『スター誕生』でさえ、完全な形で残っていないことからです。(余談ですが『アーティスト』は『スター誕生』の4度目のリメイクかと勝手に想像していましたら、これまた違いました)
そんなとき、ジュディー・ガーランドの代表作のひとつである、『イースターパレード』が、前記、修復保存作品の1つになっていることを知りました。DVDの特典映像では、スコセッシとイーストウッドが『イースターパレード』の素晴らしさについて語っています。
あ~イーストウッド版『スター誕生』待ち遠しい!

奇しくも、『戦火の馬』も『ヒューゴ』も、第一次世界大戦が背景です。
第一次世界大戦は、初めて映像記録の残った戦争で、その悲惨さは「映像の世紀」(日本ではNHKで放映され、その後DVD化されたシリーズです)で一部みましたが、シリーズ中最も忘れられない一編でした。
勃発が1914年7月。5ヵ月後の「クリスマスには帰ってくるよ!」と、意気揚々と国を出た=志願兵となった若者たちが、予測もしていなかった4年間の果てしない戦いで、肉体も精神も壊れていった様が記録されています。PTSDで精神病院に収容された若者たちの記録もあります。映像の力を、まざまざと示す記録です。
戦禍を国土に刻まれた国は、日本のみならず、欧州にもアジアにも沢山あり、現在でもアフリカや中東はじめ、各地で無残な戦いが継続中だと思い出します。外国に国土を荒らされていない国ですぐ思い出すのは、アメリカ。荒らしても荒らされない、まさに暴力番長。世界中の植民地から軍隊維持費を集金してる、集金番長でもあります。
う~ん。「番長」って、なんだか妙にノスタルジックな響きですね。三池崇版『愛と誠』では、番長がどう描かれているのか、楽しみです。更にミュージカルということですし。

話しは戻って、今回の『ヒューゴ』。
なんと、これがメリエスに纏わる映画だということさえ、観るまで知らなかった私でありました。知っていたら、ちょっと怖くてまだみてなかったかも・・・・何故なら、メリエス、それは私の超弱点。心の宝だからです。ああ、みてよかった!
そのまま帰宅して、私の中で"メリエス的"なテリー・ギリアム作品を鑑賞。『バンデットQ』という、不思議な日本語タイトルの名作。現在の技術があれば、あんなこともこんなことも出来ただろうなあと、しみじみしてたら、エンディングにジョージ・ハリスンの唄が。はっ!と、この映画の製作がジョージ・ハリスンだったことを思い出したのでした。
ジョージ・ハリスンといえば、スコセッシは彼のドキュメンタリーもつくっていました。ああ、未見。子供時代、ジョージの大ファンだったもので、ちょっと照れくさかったのでした・・・・うかつ。

『戦火の馬』と『ヒューゴ』。どちらもエンディングクレジットが終わるまで、劇場の席から立つ人がいなかったのが、これまた印象に残りました。
映画への敬意をあらためて掻き立てられる、『戦火の馬』と『ヒューゴの不思議な発明』。
単なる映画ファンブログになってすいません。

2012/04/18 13:07:28

明日はカンヌのラインナップ発表ですね

世界で一番有名な映画祭。それはカンヌ国際映画祭です。
映画関係者の一番行ってみたい映画祭。それもカンヌと言っていいかもしれません。
気候はいい、食事は美味しい(ついこれが先に来る・・・)、リゾート感も抜群、勿論映写状態はいい、観客の感能力が高い、映画多すぎて嬉しい悲鳴、有名監督&スターとの遭遇率も高く、散歩するだけで楽しいし、なんだか全体的な高揚感、お祭り感は類がない。そこにいると、不思議と映画の仕事していることを誇りに思う効果がある。そんなカンヌ。滞在経費は他の映画祭より格段にかかりますからお財布が心配ですけど・・・・
と言いながら私は、もう随分とカンヌに出かけておりません。

しかし、エイプリル・フールのカンヌの「漏れたラインナップ」という嘘は、結構世界を駆け巡ったようです。
http://spooool.com/2012/04/cannes-film-festival-in-competition-line-up-leaked-and-translated-into-english/

それに対して、アーティスティック・ディレクターのティエリー・フレモーが怒っている(当たり前ですが)
http://www.deadline.com/2012/04/exclusive-thierry-fremaux-says-no-leak-at-cannes-film-festival-its-all-lies/

こんな騒ぎが起きるのも、カンヌならではだな~と感心しています。
私も、先日、カンヌの某セクションのプログラマーの一人から(どのセクションも、沢山いるんです。プログラマー)、選ばれた日本映画について耳打ちされましたが、口外しないのが映画祭運営者の常識です。

それにしても、一番小さい「監督週間」でも、PFFの10倍か?という予算でありながら半分以下の映画本数の上映。コンペなどの本体でしたら、多分100倍くらいの予算でしょう。う~すごい~。以前、「スポンサー探しに苦労したことがない」と言われたことがあり、腰が抜けそうになりました。
・・・・・あ、いかん。なんだか僻みっぽくなってきました・・・・
そうなんです。経済的苦労の連続なんです、映画祭運営は。全ての映画祭が同じ悩みを抱える昨今。景気のよい話は、カンヌ、釜山、トライベッカ、ハワイなどで、たまに聞くくらいです。あ、ドバイも。
・・・・なんだか話題がしょぼくなってきましたのでやめます。

大人になっても夢と希望と理想と信念と想像と創作について臆面もなく語る場所が「映画祭」ですので、そこでは、映画や映画監督が、その夢や希望やもろもろの畏敬の対象になります。「人間は素晴らしいものを生むことができる」という前提に立った場所、それが「映画祭」ともいえます。言い換えれば、「人はよきものになっていく」ということを恥ずかしげもなく確認する場所と申しましょうか。う~ん、書いてるとアブナイ感じがしますね・・・
一方、「映画祭」基準で暮らすと、世の中が不思議なものに見えてくるという傾向と申しますか、弊害と申しますか、は、あります。

私自身も、昨今の国内の出来事を目に、耳にすると「狂った世界」としか思えず、困っています。
戦後民主主義教育の成果はなかった・・・・と申しましょうか、世界でも有数の独裁国家に生きているという感を強くすると申しましょうか、江戸時代のまま変化がないことを痛感すると申しましょうか、2012年であることが信じられないと申しましょうか。
国の運営という仕事に携わる人たちの「(実は)何をしていいかわかりません」感、「責任は私にはありません」感、「嘘をつくこと、プロパガンダをすることが仕事です(えっへん)」感、つまるところ「誰か指示してください(強い人についていきたい)」でも「私たちは選ばれた人間で権力行使します(黙って言うことを聞け。いじめるぞ)」感。結局は「自分で考えて仕事したことがないのでよくわからない(所属するものがないと何もできない)」感。
という、混乱した子供な感じ。あ、職場の身近にもいませんか?そんなオソロシイ人。つまり、自分のことしかみてない人。
しかし、想定「将軍」も瓦解し始めている、幕末みたいな21世紀に、まだ「20世紀再び」と視野狭窄になってるというか、自暴自棄になってる為政者と共倒れ、と申しましょうか、その犠牲になるというかは、嫌だなあ・・・・
現実をみたくないなら、せめて現在を活写する映画をみてほしい!と声を大にしたい次第です。

私が多分小学校低学年のとき、年賀状に紛れこんだ、他家宛のあまりにも稚拙な葉書を笑ったところ、明治の末生まれの祖母に「この人は多分、文盲で、これだけ書くのも精一杯だったのだ。昔は読み書きできない人が沢山いたのだ。戦争が終わって、誰でも教育を受けられる、選挙に参加できる、好きな職業につける、病気になっても怖くない、乞食のいない、民主主義の社会になったのは、素晴らしいことなのだ」といったことを、ゆっくりと諭されたときの記憶が甦って驚いています。
「素晴らしい社会」
現在の目指すべき素晴らしい社会とは何なのか。
少なくとも、病人が出ると、親が子を、子が親を殺すという選択に追い込まれる社会、自殺が普通になる社会、老後の心配で頭がいっぱいなり貯金にはげみ、それを狙って詐欺が横行する社会、大人も子供もいじめが大好き、な社会、ではないことは確かではないかと思う次第です。

あれ?何故カンヌの話がこんなところに来たのでしょうか・・・・

映画に限らず、あらゆるエンターテインメント、あらゆる芸、クリエイティブ、表現、芸術、と呼ばれるもの、そしてスポーツや武道などの力が重要だとする仕事に長く従事してきました。同時に、その力によるコミュニケーションを信じています。
これは、川喜多記念映画文化財団のHPにのった最新の映画祭レポートです。
http://www.kawakita-film.or.jp/kokusai_3_2012_dauville.html
日本の様々な表現者が、世界で愛され、評されることが、日々積み重なっていることの一例を、もっと多くの人に知ってもらいたいなあと思ってリンクしました。

う~ん、なんだか、ナショナリストみたいに聞こえますね。
しかし、自分の暮らす場所が、愛と平和と敬意に満ちた場所であってほしいというのは、人類の希求でありましょう。
あら!今度は宗教者みたいになってしまいましたね~
困ったね。
何はともあれ、ちょと長すぎる本日のブログでした。

あ、被災地復興の宝くじの売り上げが1000億円を超えたのに、現地へは100億円ちょっとしか届かないという嘘か本当かわからない記事がありました(あり得るぞ!と思っていますが)。宝くじも集金マシーンのひとつですが、少なくとも購入するときは「夢」を買うマシーン。その夢への投資を、文化芸術芸能にまわす宝くじ発売は、実は私の願いのひとつです。思い出したので書いてみました。その使用におかしなことをなくするのが優先ですけど。

さて、カンヌ発表から数日遅れて、PFFの名古屋と福岡のプログラムを発表する計画です。
名古屋開催は、東京から近いということもあり、多数の監督が参加くださる予定です。是非、今必見の映画を、今ごらんください。
引き続き福岡会場へ移動する私たち。新幹線に乗る計画です。
映画評論家の相田冬二さんによると、現場に参加された『僕達急行A列車で行こう』の撮影に、劇中と同じく、マツケンはほんとに東京から博多まで新幹線で移動したそうです。九州では、あの映画に描かれた、黄色い一両だけの電車に乗って、あの無人駅に降りたいものです。そして、次の列車までの一時間、ぼーと読書。う~ん、7月だと、かなり暑そうですけどね。

2012/04/06 00:59:08

香港映画をみた

香港にいて香港映画をみるのに、何の不思議があるのか・・・と思われそうですが、近年、滞在時期に街の劇場から香港映画が消えていることが珍しくなかったのです。

香港国際映画祭にも、昨年の香港映画を一挙上映するプログラムがあるのですが、映画祭のはじまり時期に設定され、後半に参加しがちな私はずっと逃してきました。そこで、街の映画館でみようとするのですが(無茶苦茶ながら英語字幕がついての上映なので助かります)、近年はめっきり香港映画が減りまして、みるものがないという悲しい状況が続いたのでした。

さて今年は、4本あります。
残念ながら全部みるやりくりができなかったので、パン・ホーチョン監督の新作LOVE IN THE BUFFに行きました。2年前の作品、LOVE IN THE PUFFの続編。香港映画の王道、ラブロマンスコメディです。
前作では、いきなり建物内一斉禁煙になった香港で、裏通りの喫煙所が近隣のオフィスやショップの従業員たちの新たな出会いの場所になることをうまく使ったラブストーリーでした。そのときに知り合ったカップルの現在を、あれから急速に普通になった、北京あるいは上海への異動をフックに描いた作品です。
パン・ホーチョンの時代への嗅覚に、今回も「うまい!」と膝を叩くのでした。新作には、中国のスターも勿論キャスティングされ、北京の名所や独自の文化も漏れなく映画に取り込まれ、ほんとに「うまい!」の連続です。(実は私は"北京&台北食い倒れ"が趣味なので、北京の街にもちょっと親しみがあるのです)

同時に、30歳台のためのラブストーリーつくりの伝統が脈々と受け継がれる香港にも感服しました。日本にないもののひとつです。なかなか科白もニクいものが多い。この「LOVE IN THE ~」シリーズ、長く続いて欲しいなあと願ってしまいました。
*誰か映画祭上映あるいは、DVD発売いかがでしょうか?このシリーズ。

そんなこんなで、もう帰国です。
今回は、滞在が短すぎて悔いの残る毎日でした。短編も含めると500作品にのぼろうかという香港国際映画祭。会場が広く点在するため移動が手間なこと、どこにいっても冷房が効きすぎて骨まで冷えること、食べ物が美味しくて食事時間を大切にしたくなることなど、最大一日5作品みられるはずが、実はいささか難しいのが現実のこの映画祭。少し長く滞在したいなあと、また今年も思いながら終わるのでした。

2012/04/04 22:40:39

香港でカラオケ

既報のように、『恋に至る病』が香港国際映画祭Young Cinema Competitionで審査員特別賞をいただきました。今年から名称がリニューアルされたこのコンペ。昨年までは「デジタルシネマコンペティション」という名称で、その時代からほぼ毎年、何らかの作品を出品してきたPFFです。
賞は、「グランプリ」と「審査員特別賞」の2つのみ。大きさの少し違うトロフィー、少しランクの違う賞品、そして副賞として現金が少し贈られます。
今年の賞品は、Nikonのデジタルカメラセット。グランプリにはD7000、審査員特別賞にはD5100が贈られました。
8年前の『ある朝スウプは』の受賞の際には、賞品はSonyのビデオカメラ=香港仕様のPALシステムで、高橋監督がPFF事務局に寄贈してくださったのを思い出しました。また、中国映画の『牛革』とどちらがグランプリか紛糾して、最終的に2作品ともグランプリとなった異例の年でした。昨年は、『世界グッドモーニング』が、スペシャルメンションを授与されています。

このYoung Cinema Competitionのほかに、香港にはDocumentary Competition(ドキュメンタリーコンペティション), Fipresci Prize(国際批評家連盟賞), SIGNIS Award(人道賞), Short Film Competition(短編コンペティション)があります。
本年、日本映画では、他に短編グランプリを山村浩二監督『マイブリッジの糸』が獲得、人道賞のスペシャルメンションが、是枝裕和監督『奇跡』に授与されました。

表彰式のあと、会場では引き続き台湾映画「10+10」の上映が。
後ろ髪をひかれつつ、「日本のアジア映画祭できっとやるはず!」と願いを込めて映画祭ディナーに移動します。席が一緒になった香港のPR会社のOLさんと話していたら、やはり今、広東語では商売にならず、中国語と英語は必須だと。ディナーのあとは、なんと、初体験「香港でカラオケの夜」に突入。

審査員のひとりで、ハワイ映画祭のプログラマー、アンダーソン・リーさんの熱意に誘われて大人数でカラオケです。アメリカ、フランス、韓国、香港、日本と、多国籍の大グループ。部屋にトイレがついていてびっくり。そして、世界共通で盛り上がるのは、ビートルズ、U2、Queenなど。もともと外国語の曲がそれほど入っていないので、選択肢はそこそこのため、一番盛り上がりそうな唄を選べなかったりするのですが、アジアで誰でも知っていると聞いていた「昴」は、やはりすごかった。まず、日本語の歌詞の上に、ローマ字表記でルビが振られている。他にはないのでびっくり。そして、「あ~この曲知ってる」という人の多いこと!なぜか唄える人の群れに、むちゃくちゃ盛り上がるのでした。「リンダリンダリンダ」も結構いけました。
そんな私は、部屋でオリジナル鼻歌をうたうのは得意ですが、カラオケからはとても縁遠い暮らし。しかし、今回、音楽のコミュニケーション力に脱帽したのでした。
そして、かいがいしく飲み物の世話や、選曲の世話をしてくれる人がいて、映画祭スタッフかと思っていたら、The Hollywood Reporterの人だったのには驚きました。「"客に飲み物を絶やさない"という中国人気質にスイッチが入っちゃうのよね~」という姉御な感じにしびれるのでした。

これまで映画祭中盤に設定されていたコンペティションの発表が本年からは後半になり、映画祭も明日が最終日。私も、映画を観る事に集中できるのは明日のみ。明後日には帰国で、いささか焦っているところです。
香港の観客は、とにかく若い。『恋に至る病』の観客は、ほぼ全員高校生と大学生のようにみえました。30歳以上が見当たらない雰囲気なのです。この観客層が、毎年毎年入れ替わっている感じがするので、映画祭の最古参、アーティスティックディレクターのリ・チョク・トーさんに聞いてみました。

「香港は、日本のように年金や手当てが充実していないので、仕事についたら、自分の人生を支えるために少しでもお金を稼ごうとそれでいっぱいになり、映画祭に来なくなる。また、日本では大きな映画観客層であるシニア層は、香港では悠々自適という生活は獲得が難しいため、映画祭に来ない(何らかの形でずっと働いている人が多い)。
そのような環境で、映画祭は、エンターテインメントに限りのある香港では、若い人の年に一度のイベントとして盛り上げるのが使命になる。しかし、昼間に映画祭上映に集ってもらうためには、学生でも会社勤めでもない人に来場を促す必要があり、そのため、デイタイム上映の料金を、少し安く設定することをやっている。」

ただ、昨日小さい会場でみた、ドキュメンタリーコンペティションのグランプリ受賞作品『Jai Bhim Comrade』は、客席の年齢層も人種も大変多様でした。3時間に及ぶインドのカースト制に関する作品です。インド人の居住者数の少なくない香港なのに、インド人来場がひとりもないのが、この映画を物語っているところがあるのですが、子供のころは知っていたことを忘れかけてるのに愕然としたカースト制度。その歴史やプロテストを唄の力で熱く伝える場面の多さに、インドの口伝文化を目の当たりにする驚きと、戦い方の違いに対する驚きがありました。
先日は、伊集院静さんの「お父やんとオジさん」を読んで、北朝鮮と韓国が休戦状態なのだということをすっかり忘れていた自分に気づき赤面し、今回、『Jai Bhim Comrade』をみて、インドの(のみならず各国でありますが)カースト制度のことを忘れていた自分に赤面し、生活に追われて身の回りのことでいっぱいになるのって、あっけなくやってくるなあと怖く思ったのでした。

2012/03/29 01:42:29

PFL

PFLは、「ぴあフィルムライブラリー」の略称です。
PFFアワードにご応募くださった方は、「約款」という書類にサインなさってますが、この約款は、PFLにまつわるものです。PFFアワード"入選作品"は、PFLに入ることになります。
もともとは、この世にそれ一本しか存在しない8ミリフィルム作品(1970&80年代、90年代も前半は、自主映画は、ほぼ全て8ミリフィルム作品でした)の紛失を防ぐために、つくり手からお預かりして、貴重な作品を後世に残していくことを意図した映画ライブラリーです。
背景には、「自主上映会に貸して、紛失された」とか、「いつのまにかなくなっていた」、という話が珍しくなかったことがあります。
同時に、「無料」が当たり前のように起こる自主映画の上映を、少しでもつくり手に「上映料」が入るように交渉する窓口になるためでもありました。

PFLを「PFFが権利を持って行くシステム」と解釈する方をみかけますが、それは完全な間違い。権利はつくり手のもの。PFFは、一定期間、対外的な窓口になるのです。
1:作品が確実に保管される 
2:国内外の映画祭や上映会、興行など、出来るだけ多くの場所での上映を推進する 
3:煩雑な交渉ごとを代行して、制作費が少しでも還元されるチャンスを逃さないようする
ということから始まったPFLですが、デューププリントを1本つくるのも大変だった8ミリ作品と違い、デジタルが主流の現在は作品のコピーは大変に手軽。しかしその保管方法に関しては、世界的にまだ明確な方針を持てていません。デジタル作品は、商業映画も自主映画も、どちらも"保存"に関しては手探りな状況です。
制作費の潤沢にあるメジャー映画の場合、デジタル作品も、現在最も安心な「ネガフィルム」で保存されているのですが、低予算映画はデジタル素材しかない。その保存方法に、確実な答えの出る日はまだ来ないでしょうから、常に最新のフォーマットに移し変えていくしかないのではないか?と囁かれてもいます。

「デジタルは、とてもパーソナルなものなのだな、8ミリフィルムみたいな存在だな」と、ふと感じる今日この頃です。「個人の責任で保管する」という現実において。そして、35ミリフィルムは、個人では保管が難しいところで、公的なものなのだな、と思わされます。

DCP(デジタルシネマパッケージ)とか、VPF(ヴァーチャルプリントフィー:前回のブログに、間違ってVPCと書いちゃいました!失礼しました)とか、略語はその内容を表すに効果的なのかどうか、近年疑問ですが、ともかくPFLのことを改めて考え始めたのは、このDCPとVPF騒動のおかげかもしれません。

しかし、フォーマットが何に変わろうが、興行システムがどうなろうが、自主映画は、全て関係ない、とも言えます。自主映画は「映画をつくる」ということに純粋に集中できる最も自由な世界。そのつくり手が「映画」というものをどう定義するか、というところからして自由です。自由ゆえに難しいとも言えますが、「自分で自分に課題を与える」ことで整理する人も多いでしょう。
ともあれ、出来上がった作品がおもしろければそれでいい。つまり内容が全て。規制ゼロです。

自主映画のコンペティション「PFFアワード2012」の締め切りまで残りわずかとなりました。
そのPFFアワード2012入選作品発表は、7月初旬、できるだけ早くを目指しています。入選作品を上映する、第34回PFFは、東京国立近代美術館フィルムセンター大ホールにて、9月18日から28日の10日間(月曜休館)で開催が決定しました。
最終審査員や招待作品の発表も、7月初旬を目指します。

更に速報です。
震災の影響で開催決定に時間のかかった第33回PFF各地会場予定ですが、
名古屋開催は6月30日、7月1日と3日の3日間で決定しました。愛知芸術文化センターです。そして、福岡開催は、続く7月6日、7日、8日の3日間、福岡市総合図書館で決定です。プログラム決定次第お知らせします。

第33回と第34回が、同じ年に展開する珍しい一年となる今年。「いよいよ始動」という雰囲気に包まれてきた事務局です。

2012/03/26 18:59:42

神戸で爆音体験

京都でのPFF開催最終日の翌日24日に、神戸アートビレッジセンターで、爆音のモンテ・ヘルマン二本立てがありましたので、ちょっと出かけて行きました。
今回、神戸アートビレッジセンターでは、上映準備のため、前日23日を休館して音を追い込んだという太っ腹!いわゆる「映画館」ではその決断は難しく、イベントにはありがたい会場だとしみじみしました。
主宰の樋口泰人さんとも、ダグラス・サーク特集以来ゆっくりお会いしました。
今回の神戸上映をきかっけに、ゴールデンウィークには、本格的に爆音go west展開とのことで、「食べ物の美味しい関西で、爆音参加しながらゴールデンウィークを過ごすのはどうか?」と私も考えはじめています。ほんとに、食べ物天国だ。関西!

四方山話によると、これまでの体験から、音に最も拘っていると思うのは、リンチ。そして、日本の監督で他にない面白い音のつくり込みをしていることを発見したのは、相米監督だそうです。また、何度も何度も大きな音でテストを繰り返していると、それぞれの監督が、どんな風に音を考えているのかが、くっきりと見えてくると。
爆音で観ていると、もう、普通の上映に戻れないなと思う音体験です。

同時に、今、樋口さんが夢中なのがモノラルレコードだそうで、先日、仙台で行った聞き比べイヴェントは、2時間の予定が5時間になったとか・・・次回は、関西で、アナログ時代、プレスする国によって音が多少違ってくるという、その差の聞き比べの企画も実行する計画だそうで、こちらも"果てなき路"だなと、ふかく感動しました。

そして、昨日25日は、新宿にある映画大学院大学での「デジタルのミライ」と題されたシンポジウムに出席しました。
VPSが日本の興行界を震撼させてから、活発に行われているシンポジウム。私たちPFFは「映画祭」のうえ、会場がいわゆる映画館でもない場合が多いため、ちょっと別世界にいるわけですが、デジタルにつきまとう、「最新装備へのアップデート」「上映規格の統一」という問題をクリアできるシステムは、ほんとに一種類しか設定できないのか?とは思います。
多種類は無理なのか?と、私の知りたいポイントは、そこであったりするのですが、今回はそういう話には流れず、私のしたことは、PFFがデジタル時代にどう対応しているかの紹介がメインでした。

シンポジウムが正直大変苦手な私。ドン・コルレオーネがいたら「思ったことをすぐ口に出すな」と注意され、早々と始末されてしまうタイプだなと、出席するたびに思う次第です。つまり、人に自分のオピニオンを話す訓練が足りないわけです。馬鹿ってことですね、

話は戻って、私が一番懸念しているのは、「10年後にもハリウッド映画は王者か?」ということ。決して変らないものとして想定されている、ハリウッドメジャーと、そしてアメリカ。ほんとに変らず、大きな興行収入を日本にもたらしてくれるのでしょうか。多くの人の生活を支えてくれるのでしょうか?映画で食べることの基本であり続けるのでしょうか?
(あ、現在のハリウッド映画で公開間近の『ドライブ』と『スーパー・チューズデー』どちらもライアン・ゴズリングいいですよ!余談でした。)

また、大規模に変わるものは、後年のツケ、大きくないでしょうか?ほら、大型店による地元商店街の崩壊とか、森林伐採里山削りだしによる自然体系の破壊とか。原発への転換とか。
少しづつ、様子をみながら変えることはできないのかな。
DCPの上映可能で、アップデートの可能な他のシステムは他に置けないのか。
あるいは、データ上映の可能な他の方法。
たとえば、Kyoto DUの推進している、Ki-Proを使っての上映。映画祭はこちらの可能性を考えてみなくては、とも思っています。

里山で思い出しましたが、5月にPFFを開催する計画の名古屋で、県が東京在住の地主を訴えているとか。20年前に県を支える大企業が計画した700名以上の地主が持つ東京ドーム58個分の里山をテストレーシングコースにするという計画。当時は買収に失敗したものを、「公共事業」として県が買収に動き、最後に残った一人が首を縦にふらないので、裁判と。すごいな~。自動車のテストコースのために里山を潰す。20世紀に計画された「21世紀の公共事業」って、怖すぎる・・・・

切実に収入が減り、借金が増え続ける日本という国の家計。
これまでの収入あるいは収支計画を維持しようと各地で必死の行動が噴出していますから、これからもっとすごいことが出てきそうで、こりゃますます、映画は現実に負けるわ・・・・現実に追いつけないわ、と、呆然とする気持ちになるこのごろ。
フリーランスの私には、国民年金がいつのまにか多くの公務員に着服されて誰も責任をとらないことに漫画を超えた日本の不思議を感じていましたが、今回はAIJによる1458億円の年金基金の損失を厚生年金で補填という方針が出そうとか。何故そうなるのかさっぱりわからないけど、これでサラリーマンの年金も崩壊する(してる?)ことがわかりました。そして公務員の共済年金は無傷。もう、笑うしかないですね。日本の縮図ここにあり。
でも、AIJに運営させたのは、誰?
銀行預金は、郵便貯金は、誰がどう転用してるのかな?
「お金が廻ることで豊かな社会になる」という、共同幻想が破壊された現在、お金は凶器に等しいなあとほんとに暗くなるのでした。そして、こんな壊れた社会だから、一笑に付される企画のほうが、正しくミライを予言する映画であったりするのかも、とふと思うのでした。

10年後、20年後、あるいは100年後を見据えた普遍的な力を持つ映画。その登場を待つPFF。公募締め切りは31日消印有効。既に審査は始まっています。

2012/03/23 17:21:43

京都着

二年ぶりに大阪に立ち寄り、大阪駅の変化に驚いた後、京都に着いて、これまた街の様変わりに驚きながら、京都シネマのPFF開催最終日に向け、会場に向かっています。
意外に激しい雨に、革靴と折り畳み傘は失敗でした。雨のなかのご来場、取りやめにする方がいないことを祈るばかりです。

京都の街、小さなお店の経営に世代交代が起きている感じ。一度ゆっくり歩いてみたいものですが、明日は神戸に移動です。

2012/03/21 16:33:11

銀座シネパトスのイヴェント満載さに驚愕

昨日は、銀座シネパトスで開催されている森田芳光監督追悼特集の一日を使って、森田監督の自主映画『水蒸気急行』と『ライブイン茅ヶ崎』そして、当時、ぴあのイヴェントのために森田監督に監督を御願いした『劇的ドキュメントレポート'78~'79』という8ミリフィルム作品を3作品、更に、それらに続き製作された、劇場デビュー作品『の・ようなもの』も加え、合計4作品が上映されました。

朝からおよそ5時間半に渡る、この4作品の上映が終了したところで、トークイヴェントもありました。
『ライブイン茅ヶ崎』がPFF77年の入選作品だったこともあり、現在のPFFから私が、森田監督の8ミリ時代にまつわるトークに、厚顔にも登場させていただきました。
70~80年代の森田監督を存じ上げない私です。会場には、かつてのスタッフの方や、お知り合いの方が沢山おられると聞き、かなり真っ青でした。が、司会進行の樋口尚文さんが、8ミリ自主映画をつくっていた少年時代、まさに憧れの兄貴だった森田監督の姿をお話くださったこと、そして、森田監督初期3作品に助監督でついておられた金子修介監督が、突然の指名にも関わらずご登壇くださり、『メインテーマ』や『家族ゲーム』での爆笑の思い出を語ってくださったことで、盛り上がって終了しました。

実は何度かお目にかかった際の金子監督は、シャイで無口な印象でしたから、昨日は別の方をみるようでした。極め付きは、森田監督、大森一樹監督、そして石井岳龍監督という、70年代、自主映画から彗星の如く登場した監督たちのお話の中で、最近、石井監督の『生きているものはいないのか』を観た。と。
「この映画は、日本映画界の話なんだよ!「日本映画に、生きているものはいないのか」という映画なんだよ!」と、いう話に爆笑しながら、なるほどそうなのか。と、またあの映画を思い出していました。『生きているものはいないのか』。近年の日本映画に欠かすことの出来ない俳優、村上淳さんと、渋川清彦さんを見ているだけで嬉しくなるのですが、既に、染谷将太さんも日本映画の顔だなあとしみじみする作品です。未見の方は、是非。

また、そのトーク前の楽屋で、ご夫人でプロデューサーの三沢和子さんと少しお話させていただきました。この時に伺った『水蒸気急行』と『ライブイン茅ヶ崎』のエピソードが大変面白く、トークでご披露したかったのですが、話の流れで触れることができなかったので、ここに記しておければと思います。
森田監督と三沢さんが知り合ったのは、『水蒸気急行』が完成し、森田監督が全く無謀と言える自主上映会を、銀座の「ガスホール」を借りてやると決めていた時だったそうです。
通常自主上映会に考える会場キャパの10倍もあろうかという、メジャー映画の試写会に使われる「ガスホール」をどう満員にするか。そのときからプロデューサーとしての三沢さんの道は決まってしまったのかと感じたのですが、それまでJazzをやっていて、映画の興行や製作に縁のなかった三沢さん。まず、友人知人に「私が結婚すると決めた相手を見ることができますよ」と案内したと。
結果(?)上映は満席の大成功で、"無名の自主映画にガスホールが満席"と、その現象が新聞記事にもなったと。
そして、続く『ライブイン茅ヶ崎』は製作も関わられ、ヒロインのノブコさんは、妹さんが演じておられます。今回の『ライブイン茅ヶ崎』の上映に、主役のマサミ、タモツ、ノブコさんにご連絡なさったところ、マサミさんはお店を経営しておられて茅ヶ崎を離れられず、タモツさんは、映画にもあるトマト農家の収穫で忙殺されており、ノブコさんは年度末の会計に追われており、どなたも仕事で実現しなかったのでした。みるうちに、どんどんマサミとタモツが好きになる『ライブイン茅ヶ崎』。当時の思い出を伺いたかったですね。
そして、81年のデビュー作『の・ようなもの』から、ずっとプロデューサーとして森田監督を支えていらした三沢さん。「面白がる」ことの上手なおふたりの共同制作の日々をふと想像してみたりしました。

更に、この週末に公開となる『僕達急行 A列車で行こう』を撮る前に、『水蒸気急行』をご一緒に再見したお話も伺いました。「30分に編集し直したら傑作だ!」と再編集を考えていたという森田監督。35年の月日のあと、自主映画を再編集するという有り得ないことが起きていれば、これまた面白かっただろうなあ・・・・
『僕達急行 A列車で行こう』楽しみです。

というわけで、昨日は半日以上シネパトスにいたのですが、様々なイヴェントが告知されていました。
特に驚愕したのが、石井輝男監督の『盲獣VS一寸法師』の35ミリプリント上映がある!!そのトークゲストに、出演者のリリー・フランキーさんと、塚本晋也監督、手塚眞監督が登場すると。
また、今井正監督特集では、『青い山脈』『続・青い山脈』上映に際して、アメリカから杉葉子さんが来日なさると。
その他にも沢山の企画が掲示されており、スタッフの方の貢献に頭が下がると共に、どんどん映画祭がやる企画がなくなるなあという複雑な気持ちも持ちつつ、映画の力を再確認して帰途についたのでした。

2012/03/14 01:50:07

2012年ベスト10が出揃ったようです

先日の日本アカデミー賞TV放映後の夜、近所のTSUTAYAを訪れると、見事に『八日目の蝉』が全部借りられておりました。『冷たい熱帯魚』もありませんでした。テレビの伝播力健在なり・・・とふと思いました。
数々の映画ベストテンの発表も一段落した昨今。インディペンデント系映画への注目が高い、ヨコハマ映画祭、おおさか映画祭、高崎映画祭などの賞も決定し、さまざまなベストテンを並べてみると「多彩な年だなあ~」と実感しています。同時に、来年の所沢イヴェント「世界が注目する日本映画たち」ラインナップスタートだなあ、と、本年のイヴェントを2日後に控えならが(!!)思っていました。

「世界が注目する日本映画たち」は、日本国内のみならず海外でも注目の邦画を一挙上映する企画ですので、当然海外での邦画への反応も集めなくてはなりません。
以前、このブログで、「海外で有名な日本の監督は、宮崎駿と北野武、映画祭関係者が会いたいのは、黒沢清と是枝裕和という傾向がある(敬称略)」ことをご紹介しましたが、今月は、奇しくもフランスで、是枝監督の特集(フランスアジア映画祭でドキュメンタリー作品も含む全作品上映がありました)と、黒沢清監督の特集(ドービルアジア映画祭で今)が行われました。どちらも監督を招いての企画でした。フランスは監督特集の活発な国で、「いいな~」と子供のような感想が漏れます。また、5月の韓国チョンジュ映画祭では、小林政広監督と内田吐夢監督の特集を実行するそうです。小林監督も、海外で多く特集が組まれる監督です。

さて、金曜16日から始まる"週末映画祭"とでもいった「世界が注目する日本映画たち」。西武線航空公園駅にお近くの方、是非お越しください。上映7作品のみならずゲストも監督、プロデューサー、出演者と多彩ですし質疑応答タイムや、パンフレットへのサイン会も行われます。今回唯一来場不可能な是枝監督はメッセージビデオで登場いただくのですが、そのビデオは、『ふゆの獣』の内田伸輝監督が撮影くださいました!今回上映の是枝作品は『奇跡』。子供たちが"願い"をかける、その願いに心で滂沱の涙が流れた私。被災地の仮設住宅街でも感じましたが(勿論日常生活でもそうでしょうが)子供のエネルギーたるやすさまじいものがあります。子供が来るといっぺんに、場の色が変わってしまう。そんな子供の有無を言わせぬエネルギーを生かし切った奇跡のような映画『奇跡』。スクリーンで堪能いただけると嬉しいです。

そうです。あの日から一年が経ち、メディアは「復興」へと報道色を替え、政府は原発再開推進やらなんやらかんやらに動いている気配がします。「もうすっかりメジャー報道を疑っているなあ・・・」と我ながら思うのは、一斉に始まった「大地震が来る」報道を、大がかりな「現実から目をそらさせろキャンペーン」だと解釈している自分がいることです。いやいや~、書いてて我ながらこわいです~。
電気代徴収は、水(とガス)と並び「止まると困る」もののひとつとして、ものすごく安定した「全国民からの自動集金装置」ですから、その権利を手放したくない、人生設計をそこからの収入に依って居る人が、驚くほど多くの場所に、大量にいるのだと実感したこの一年。ただ今公開中の映画『TIME』になぞらえると、『発電送電からの収入』でしょうか。さて、自分の生活で電気がないと困るものは何か。もちろん、映画をみることです。あとは、PC、冷蔵庫?ガスもスイッチに電気が必要で電話もそうだから、必要ないものに変えるか?灯は18世紀に戻ってランプと蝋燭か。家庭内自転車型発電機を導入するとどのくらいまかなえるか?ダイエットも兼ねられるが、足腰動かなくなったらどうするか?とか、いつものカウントをしてみます。実は最近一番頻繁に思うのは、それはともかく「エレベーターの閉じるボタン廃止はどう?」と、「エスカレーターの片側一列乗り廃止はどう?」です。
エレベーターの「閉じる」ボタンは、ゾンビや殺人鬼やストーカーに追われた時には絶対欲しいですが、基本、要らないものでは?「開く」ボタンは優しさに沿っているけれども、「閉じる」ボタンは意地悪に近づいていかないでしょうか。エスカレーターも、あの不自然なステップを歩いて登る力があれば、普通に階段を登ればいいのではなかろうか?エスカレーターはその本来の目的通り、二列(ほとんどの場合2人幅ですね)でただ乗ってる昇降機でいいのではと思えてなりません。ほんの数秒の速さのために、無駄なストレスとエネルギー使ってる気がするエレベーター「閉じる」ボタンとエスカレーター「片側歩行専用制度」。一年前までの悪習のひとつなのではないかな~。

政治的イデオロギーや様々な常識、暗黙の所属、などが崩壊したと思うこの一年。戻るのではなく、復興や再生や刷新を願って新しい価値観を生きていくことにすんなり入れるのは、もしかしたら一年前に何も持っていなかった私たち、いわゆるフリーランスの人間や、まだ何もない若者なのかなあとやはり思ってしまったのは、先日国際空港でみた風景からでもあります。
それは推定60代なりたての夫と、推定50代中盤の妻、そして推定20代後半の娘。推定家族旅行に出発する推定裕福な日本人3名。e-ticketに慣れない夫は、妻がまとめてチェックインしたあとに手許にあるものが、従来の「搭乗券」ではないので「お前は何か間違ってる」と不機嫌になり、また妻をカウンターに並ばせる。そのなんだか理不尽に怒っている父の機嫌を「まあまあ」と(明らかに馬鹿にしながら)なだめることに終始している娘。既に疲労してカウンターから戻り「これで間違いない」と夫に報告する妻。「もうやだ~パパ~」という娘。憮然として不機嫌なままの夫。まだ旅は始まってもいないのに・・・今年一番面白い風景で、なんだかずっとその家族の姿を追いかけていた私。多分、夫は推定自分の所属する「組織」の習慣を家庭に持ち込んでいるのでありましょう。推定、部下が旅の準備をし、旅だちも、到着してからも、常に誰かが世話をする。自分の不安や不便を人に解消させることが普通と思う、推定「組織で上がっていく」ことを日常生活でも引きずるその家族の姿に「古い」とつぶやいてしまうのは、私だけではないだろうなあと感じながら、話す相手のいない一人旅を残念に思ったのでした。

「ひとりでなんでもやれ。
次に、ひとりでやれないこと、あるいは、ひとりでやらないほうがいいことを知れ。」
それが自主映画の基本ではないかと常々思う私は、その一家にビデオカメラを持たせて「映画を撮ってみれば?」と話したくなったりしました。
勿論キチガイ扱いされるのは明白ですから、話しませんけど。

あれ?なんだか話がすっかり飛んでしまいました。
本日は気分転換にまたまた『次郎長三国史』(マキノ雅弘監督)をみてしまいました。「ワッショイワッショイ」と走って、とりあえずいつも笑ってる。素晴らしいなあと、またまた惚れ惚れするのでした。

2012/03/04 03:00:00

心洗われる金曜日

「木村栄文作品みておかねば~」と、やはり金曜はオーディトリウム渋谷へ。その上映合間に打ち合わせ、などと、事務局スタッフに苦労をかけつつ、ともかく最終日は全プログラムを拝見しました。
そもそも、「テレビドキュメンタリーが劇場で上映される」ことが、画期的な出来事で、作品制作のRKB毎日放送の決断に頭が下がります。ケースバイケースで一概にここに記すのは困難ですが、スクリーンで有料でのテレビ作品の上映は「諦める方が賢い」というくらい、手間暇かかるというか、不可能に近く、映画祭上映も四苦八苦ですので、しみじみ快挙だと思うのです。

が、この木村栄文作品、「パッケージで全国各所で今後展開予定」ということを支配人に聞き、「どこかで全作みることができるのか!」と、心に希望の灯がともる次第です。このチャンス、是非多くの方に掴んでほしい。う~んと、たとえば、ゴーマニズムシリーズを読んで、教科書にない日本の歴史に気づいた方など、栄文作品必見かと思ったりしました。

また、多分、こういうテレビ作品は、今まさに現場に出ておられる方がご覧になると刺激的なのだと思うのですが、20代&30代のテレビや映画の現場スタッフは忙しくて映画館に行く時間がない!のが現実では?その厳しい現実を前に、いつも思うのは、「だからこそ、学校よりも映画館だな」と、ということです。

恐ろしことに、10代~20代前半までの映画の観貯めで、あとの20年間を乗り切るのが映画映像を仕事にする人の現実だったりします。いや、どんな仕事をする人でも、その後の人生の糧を蓄積できるのは、学生時代だと思われる。その蓄積物の中に「映画」を入れると、かなり簡単に多彩な刺激を蓄積することができると思われる。何故なら、映画の情報量は他よりずっと多いから。
そんなことを再確認した刺激的な作品群でした。

足がまだ元通りではないので、都市の「階段尽くし」がいささか辛く、出歩くのを控えている日々です。しかし「やはり出かけると色んないいことに遭遇するなあ」と実感したのは、その日に会場で知った、英語字幕翻訳者によるシンポジウムでした。
「字幕翻訳者が選ぶオールタイム外国映画ベストテン」という書籍の出版にあわせて企画されたイヴェントで、映画翻訳家協会会員が揃い、映画字幕にまつわるお話や、シンポジウムで構成されると。そこで、木村栄文プログラムのあとも、そのまま、若干枚数出るという当日券の列に並んでみたのでした。

「翻訳」という仕事、映画字幕にしろ文学にしろ、言葉を熟考なさる方の文章は面白いなあと、岸本佐知子さん、鴻巣友季子さん、太田直子さんなどなど多くの著書を通して感じていたのですが、今回のシンポジウムも、登壇者の歯切れの良さ、明確さ、ユーモア、感服しました。
告白しますと、映画祭予算が足りないとき「字幕を自分でつくってみようか・・・」と思ったことが、数度あります。思うだけで、実際の作業を考えて、とても手を出せるものではないと恥じ入ってやめるのですが、今回、改めて、プロはプロであると痛感するお話でした。

特に、皆さんの強調なさっていた(個人的解釈でまとめてしまって恐縮ですが)「脚本家はじめ、製作スタッフが何年もかけて作り上げてきたダイアログであり、物語であり、その丸ごとの結果である「映画」をどう観客に伝えるかということに心を砕いて字幕をつくる」という字幕翻訳への姿勢に、「映画」を大切にすることの神髄がすべて詰まっていることに、心洗われた次第です。
"「映画」をまるごと掴む。掴むために努力をする。そして、その映画が多くの人に伝わるために仕事をする"映画を仕事にするというのは、つまりそういうことなのだと、明確に言葉にしていただいた感じです。

ところで、映画字幕、そして、映画パンフの、他に類のない美しさ、クオリティの高さは、実は日本で高度に発達したオリジナル文化です。ここに現れるように、外国文化の伝道者である「外国映画」を大切にしている国日本なのですが、しかし、一方「日本映画」のほうの対外的なプロモーション力は非常に低い。日本映画ファンが世界各地で自主運営している日本や日本映画に特化した映画祭が、日に日に外交場所として重要度が増している、"海外の映画祭頼り"である現実は、実は切実な問題でもあるのです。

が、今それは置いておいて、美術では、もっと切実な問題が起きました。
ロンドンの大英博物館から「日本コーナー」がなくなり、アジアの一部に組み込まれる。と。
文化芸術エンターテインメント芸能スポーツを通して、人はその国に興味を持ちます。理解を深め、愛情を深め、そこに人間が住んでいることを実感し、国のイメージが固まります。その国家イメージのアピールのために、国税を使って活動している人たちがいます。国家公務員ですね。既得権の確保が仕事であるのに、失ってしまった・・・これを皮切りに、ずるずると世界各地の文化施設から日本が撤退させられていくことを、止められないで終わるのだとしたら、これはかなりの危機です。
経済で人を集められても、そこに敬意が伴うかどうかは別問題ですが、文化芸術エンターテインメント芸能スポーツには、必ず敬意が伴います。それを増やすことは、明確に「よきこと。必要。得策」なのに、何故貴重な既得権を失うのか?(個人所得の増える既得権はなぜ手放さないのか?とも書きたいところです・・・あ、書いちゃった)
コミュニケーションの改善が難しいなら、少なくともコミュニケーション場所の確保はしてほしかった・・・・

ともかく、創作物の活発な交流がますます重要になるこれからの世界です。できることをやり続けようと思います。

2012/03/02 00:39:27

3月のPFF事務局

4月の新年度に向けて、入試、入学、転校、転勤、入社、転職、転居、確定申告、いろいろ煩雑な日常に追われる3月。PFF事務局も、人の移動があり、また、「PFFアワード2012」締切を控えつつ、17日から一週間、京都シネマで「PFFin京都」の開催、16,17,18日、所沢ミューズでの「世界が注目する日本映画たち」開催、そして、20日、シネパトスでの森田芳光監督追悼特集への参加と、イヴェントが満載の3月です。

京都は、『春夏秋冬くるぐる』日原監督、『ダムライフ』北川監督、『僕らの未来』飯塚監督、『山犬』佐藤監督と、4作品の監督が駆けつけて、質疑応答を行います。
会場の京都シネマは、イヴェントやゲストの大変多い映画館ですので、スタッフの方々が監督とのトークを非常に盛り上がてくださる上に、PFFに関しては、地元の学生の方々への運営参加を促してくださるので、毎年暖かい雰囲気に包まれます。今、どんな人がどんな映画をつくっているのか、是非一度参加いただいて、自主映画の最前線に触れてくだい。そして、会場は3スクリーンを持つ映画館で、一般ロードショー作品が中心ですから、組み合わせていけば、朝から晩まで多彩に映画漬けになれる、京都シネマでのPFF開催です。

池袋や新宿から40分弱で到達する、所沢の文化施設「ミューズ」を会場にする「ミューズシネマセレクション 世界が注目する日本映画たち」も12回を数えます。昨年は震災で中止を余儀なくされましたが、本年はデジタル作品の上映も可能となり、新たなスタートを切ります。

16日(金)は、「前夜祭」として、デジテル作品のためこれまで上映を断念していた想田和弘監督の『精神』と『Peace』を上映し、想田監督と、瀬々敬久監督に対談をお願いしました。新作『演劇』も完成という想田監督。瀬々監督との対談がどう拡がっていくのか、私も楽しみです。

17日(土)と18日(日)は、5作品の上映。それぞれの作品の監督はじめ、ゲストをお迎えします。
17日『奇跡』是枝監督連続来場は新作準備で叶わず、ヴィデオメッセージでのご出演ですが、『ヘヴンズストーリー』瀬々監督は、主演のひとり、ミュージシャンの山崎ハコさんとご一緒に、前夜祭に引き続きご来場くださいます。
18日、『歓待』は、深田晃司監督に加え、アジアのミューズとして昨年の東京国際映画祭で特集も組まれた、女優でありプロデューサーの杉野希妃さんもご来場くださいます。そして、『川の底からこんにちは』は、石井裕也監督が、『海炭市叙景』は熊切和嘉監督が、(奇しくも大阪芸大の後輩先輩ですね)ご来場下さいます。

作品公開も一段落して、余裕をもって作品を振り返ることができる時期だからかもしれませんが、この所沢ミューズでのトークは、それまでにない話題が飛び出すことが多いように感じます。作品を未見の方は是非、また、再見の方も是非、この機会にタイトルにもあります「世界が注目する日本映画たち」=昨年、一昨年の国内外で話題の日本映画をご体験ください。各回とも、映画のパンフレット(売り切れている場合もあります)や、書籍などご用意して、ゲストサイン会も企画しています。

そして20日は、シネパトスの森田芳光監督追悼特集の一日をいただいて、8mm作品を監督の監修のもとデジテル化したバージョンで、『水蒸気急行』『ライブイン茅ヶ崎』『劇的ドキュメントレポート』の特別上映が。不肖私が対談に参加させていただくことになり、ただ今森田監督作品を再見致しておりますが、新たな発見に驚く日々です。

そして、3月は「PFFアワード2012」の作品審査を、ご応募いただいた作品から順に始める緊張感の走る月でもあります。また、9月の映画祭に向けて、プログラムの準備開始、そして、恒例の香港国際映画祭への参加があります。
意外にスケジュールの詰まっている3月。
しみじみ、多くの映画イヴェントから、PFFのイヴェントを選んでご来場くださる方に有難い気持ちの高まる季節です。というのも、私自身、年明けから3月はイヴェントを逃すことが重なるからです・・・

例えば、モンテ・ヘルマン見逃し確実で「24日日帰りで神戸アートビレッジセンターに爆音体験か?」と考え中。オーディトリウム渋谷での木村栄文さんの特集も本日最終でまっさおです。はたまた、いつも感嘆する、ユニフランスや、ドイツ文化センターの活発な自国映画の紹介活動、アテネフランセ文化センターでの得難い特集など、行きたい企画にどれだけ参加できているか振り返ると、恥ずかしい限りです。

ありゃ、なんだか、懺悔の時間になってしまいました・・・「映画を仕事にすると、映画をみる時間がやりくり困難になる」とはよく言われる言葉。新年度は、そんな言葉を思い出さなくていい日々にせねばと、「新しい日記帳の最初のページに書く決意」のように思うのでした。日記つけたことないんですけど・・・

2012/02/27 00:27:52

白黒映画が流行中?

タル・ベーラの『ニーチェの馬』が立ち見も出る盛況と配給会社の方から伺い、大変嬉しく思っています。
白黒映画です。
先日、フランスのセールスカンパニーの方が、「このところ白黒映画が増えている気がする」とおっしゃっていました。「ハネケの『白いリボン』の影響が大きいのかも・・・」という話でしたが、どうなのでしょうか。

数時間後に始まる米アカデミー賞表彰式で、作品賞の最有力候補と言われている『アーティスト』も白黒映画ですね。ミシェル・アザナヴィシウス監督。東京国際で意表を突くグランプリが話題だった『OSS 117 私を愛したカフェオーレ』の監督ですね。
先日、ベルリン関係で紹介した、メインコンぺのポルトガル、ミゲル・ゴメス監督作品『タブー』も白黒映画でした。『アーティスト』は未見なのですが、『タブー』は、『アーティスト』にすこ~し似ているところがあるのかもしれないな~と勝手に気になってます(が、両作品ともご覧になってらっしゃる方多いでしょうから、頓珍漢でしたらすいません)。

表彰式では、このゴメス監督、受賞したアルフレード・バウワー賞(銀熊)がご不満の様子で、プレゼンテイターのオゾン監督をちょっと困らせていましたが、その受賞スピーチで(最初に発表されたポルトガルの短編映画監督のスピーチにあった、インディペンデント映画製作状況の大変困難なポルトガルという言葉に繋げて)オリヴェイラとペドロ・コスタ、この2監督の存在の大きさを話しておられました。そのとき、日本の監督が同じような状況で先人として名前を挙げるとしたら、どの監督になるのだろうなあ・・・と考えたのを思い出しました。

さて、米アカデミー賞の発表を、日本で一番ドキドキして待っているのは、ノミネート作品を公開する関係の皆様でしょう。特に、単館系公開作品にとって、その宣伝効果は得難い大きさだと想像できます。『アーティスト』、外国語映画賞候補のイラン映画『別離』、公開中の『ピナ』(『ピナ』が長編ドキュメンタリー賞候補なのは意外ですね)などでしょうか。なんだか、私も落ち着かない気持ちになってきました・・・

イラン映画『別離』は、個人的にヒットを願っています。
イランの映画製作状況が好転することを願ってやみません。映画製作状況だけに留まらない、もっと根本的な話なんですけど・・・・
イラン映画といえば、キアロスタミ監督の日本撮影の新作。一体どんな風に「日本」が写っているのか、待ち遠しいです。

「日本」と言えば、本日はヨロヨロと新橋演舞場 中村勘太郎改め勘九郎襲名披露千秋楽へ行って参りました。
遡れば6年前の新春浅草歌舞伎『仮名手本忠臣蔵 六段目』での早野勘平が度胆を抜く素晴らしさで、その後、出来るだけ目撃してきた中村勘太郎さん。昨年3月の博多座『夏祭浪花鑑』にまたまた驚き、今回『春興鏡獅子』すごかった。長唄囃子連がこれまた背筋がざわつく素晴らしさで、「残る人生で邦楽をやる!」と思ってしまうくらい心底震えました。ジャズですね。いや、すごい。その後見を務めた中村七之助さんの『於染久松』(平成中村座1月)も大変ようございました。ありゃ。歌舞伎ブログみたいになってきた・・・
歌舞伎、いったい何からみればいいのと思う方、歌舞伎は他の伝統芸能に比べ結構選択肢が多い。おせっかいですが、まず毎年正月のみ開催される「新春浅草歌舞伎」おすすめします。若手がのびのびと演じておられること、お値段が他劇場ほど負担にならないこと、など、手軽に楽しめます。自分が、仕事柄つい「若手」「新人」に注目するからかもしれませんが・・・
この「新春浅草歌舞伎」、若手を脱すると出演がなくなる定めですので、今年は市川亀次郎さん最後の出演となり、ものすごく暴れておられ爽快でした。亀次郎から猿之助へ襲名となる舞台には、香川照之さんが出演なさるのも話題。先日放映された『贖罪』での怖さの焼きつく香川さんの舞台、目撃できたらと思っています。

え~、話を白黒映画に戻します。
ベルリンネタもこれが最後ですが、映画祭会場のあるポツダム広場には「映画博物館」があります。展示方法が世界でも群を抜くかっこよさで、一度は訪問をお薦めするのですが、内容は、カリガリ博士、マレーネ・ディートリッヒ、メトロポリスが多くを占めていて、もう少し他をみたくなります。が、ドイツ語がわかれば、アメリカに亡命した監督たちの貴重な肉筆手紙なども沢山展示されてときめきます。今回、10年ぶりに再訪したのは、別フロアに設けられている特撮コーナーをもう一度みたかったからでした。レイ・ハリーハウゼンを中心に、ギーガーのエイリアンなど、ジオラマや、ミニチュア、実物など、実に見応えのある展示だったのです。が、しかし、今年はそのフロアが消えていました!2年前に撤収され、今は、テレビ番組のコーナーに変わったということで、特撮が過去のものになったことをしみじみと知らされ、がっくり。
で、白黒映画です。
この博物館に、ムルナウ監督作『最後の人』でエミール・ヤニングスが着たホテルドアマンの制服が展示されているのです。これが、鮮やかな朱色に金のボタンとモール。
何度みても、「ほほー」と思うこの色。歌舞伎や絵画をみても思うことですが、現在に比べ、19世紀までのほうが、人々は鮮やかな色の服を纏っていたのではないかと。ビクトリア時代のイギリスで大流行したというモーヴ色など、今、着る人はめったいにいないですしね・・・
明るい色は心を浮き立たせる効果、確かにあるような気がします。と言いながら、自分も黒黒黒なのを反省・・・
かつてスタジオには、白黒フィルムに色がどう映るか研究していた方がきっといたはず。
そんな勉強をしてみようかと思っている今日この頃です。あ、邦楽もやらなくちゃだし、忙しいぞ自分!
その前に仕事です。


2012/02/24 00:00:20

危うく死ぬところでした

めったに乗らない自転車で走っていましたら、信号無視で飛び出してきた小型トラックを避けようとして、鋪道にはみ出していた民家のブロックにタイヤをとられ転倒。半身が車道に飛び出し、そこで車が来てればもう今ごろは告別式、という事故にあいました。トラックは逃げちゃったけど。
人生、一寸先は闇であります。

いろんなところを打撲したようで、湿布をべたべた貼って、テープで固定して、「フランケンシュタイン~~~~」とかいって遊んでますが、痛みが移動しながら高まるのには、ちょっと困ってます。子供の時の懐かしの「膝小僧を擦りむく」とか「肘を擦りむく」とかも体験し、「かさぶたが出来るのはいつごろかな~」とか呑気なことを言っております。(かさぶたをはがす行為、大人になってとんと経験しないですよねえ・・・)

というわけで、自宅静養中なのですが、その前にぴあで郵便物を整理していましたら、北九州市民映画祭で、キム・ギヨンの特集というチラシを送っていただいていたのをご紹介したいと思います。PFFin北九州を実行くださっていた吉武あゆみさんからのお知らせです。
門司出身の青山真治監督も参加するこの企画、ゲストのひとりに、現在東京国際映画祭「アジアの風」プログラマーの石坂健治さんがおられます。

石坂さんのことは、以前にもご紹介いたしましたが、かつて渋谷に存在した国際交流基金の「アセアン文化センター」で、映画の担当をしておられました。その後、赤坂ツインタワーに移って、ずっと、日本未紹介のアジア及びアラブ映画の紹介を続けておられ、特にアセアン文化センター時代はお仕事をご一緒するご縁の深かった方です。
キム・ギヨンを、世界で最初に再発見再上映をした人です。
気難しい監督との親交も深く、日本での特集をきっかけに、本国韓国で再発見が始まり、いよいよ1998年には、ベルリン国際映画祭で特集が組まれるという、その直前に、ご自宅の火災で監督はご夫人と共に亡くなられ、ベルリンの会場には息子さんがいらしたのを覚えています。あのときは、心底驚きました。

さて、今や、知らないもののいないキム・ギヨン。
九州では初めての上映ということですので、是非多くの方に体験いただければと思います。

今年のベルリンでは、内線前の幻のカンボジア映画を3本特別上映しました。まだ、スタジオがあり、映画産業があった時代の映画です。カナダに亡命した監督も参加なさって、40年以上を経た貴重なそれだけしかない16ミリフィルムでの一回限りの上映。映画祭というのは、映画の最新事情を見せる場所でもあり、歴史をみせる場所でもあるなあと実感する会場の雰囲気でした。石坂さんは3作品すべてご覧になったのではと予測しています。(私は1作品しか時間がとれませんでした)

ベルリンの話題を続けますと、帰国して、しみじみと「スペシャルメンションの地位があがったなあ」と考えていました。
メインコンペで、スペシャルメンションに銀熊のトロフィーが贈られたのが、まず最初の驚き。すでに、「メンション」ではなく、「賞」という扱いですね。
これは「コンペティション」というもの変化が始まっていることを示しているのかも・・・と考えはじめています。映画祭運営側にとっては、新たな課題の表出です。

あ、前回のブログでは、『グレートラビット』を日本映画と記してしまいましたが、これはフランス映画でした。失礼しました。和田監督は日本在住ですが。というわけで、受賞した日本映画はCICAE賞の『かぞくのくに』(ヤン・ヨンヒ監督)なわけですが、スペシャル・メンションの今泉さん、平林さんとも、受賞と同じっていうベルリンの見解では。
今泉さんは、夫婦揃って映画監督というのも、現代日本の映画事情をうつす面白い話ではないでしょうか?

さて、海外から戻っていつも思うのは、日本の雰囲気の不機嫌さです。
公共機関で、街で、人々の顔が、空気が、不機嫌で剣呑だなあと感じます。不安で不幸ななかで、自分だけは得をしたい、という価値観がこの国を覆っていると申しましょうか、あるいは、最少単位である家族だけは安全でいたいが他はいい、という価値観と申しましょうか、なんか、全体的に身勝手な感じ。それって、つまるところ、損な発想ではないのかなあと思います。自分と家族だけでは暮らせないからなあ...現実は。ちょっとした視野の拡大や、優しさの表出が、何かのときに自分にも得となって戻ってくると思うけど、ちょっとやってみませんかね?と言いたくなる電車の中だったりします。

成田空港からの電車で一気読みした『海にはワニがいる』は、推定9歳でアフガニスタンを脱出し、子供の力でパキスタン、イラン、トルコ、ギリシャを経て推定15歳でイタリアに政治亡命した少年の記録ですが、この話で言えば、日本はあきらかに亡命者を助ける立場の国。その感覚はしっかりあったほうがいいと、しみじみ思った『海にはワニがいる』。私は横尾忠則さんの紹介文で興味を持ち読みましたが、映画化すすんでいるそうです。

本といえば、遅ればせながら、沼田まほかる『彼女がその名を知らない鳥たち』を昨秋拝読しまして、腰が抜けました。映画化は不可能だと思いますが、近年もっともすごかった小説でした。

2012/02/19 09:27:12

ベルリンからの帰国準備中

ベルリン国際映画祭は、綺羅星の如く賞があります
日本映画は短編『グレートラビット』と長編『かぞくのくに』が受賞をし、短編『663114』と長編『聴こえてるふりをしただけ』がスペシャルメンション授与という嬉しいニュースとともに(海外の映画祭にいると、自国の報告がつい最優先になるのがおかしですね・・・・)全て賞の発表が終了し帰国準備中です。次作への意欲に火をつける効果大!の金銀の熊の授与されるメイン表彰式へ、今年も木村監督へは出席を薦めながら、実は自分ではあまり参加しておあらず、本年は3年ぶりに会場へ。構成がシンプルに軽やかになり、さくさく進行する変化を体感。メインコンペ作品はわずか2本しかみておりませんでしたので、拝見した一本である、ポルトガル作品『タブー』のアルフレードバウワー賞(革新的な映画に与えられる銀熊)しか反応ができませんでした。この監督が、独特のチャームを放つ人で、スピーチもおかしく(古臭い映画を撮ったのに、この賞で戸惑ってるそうです)、ある出演者かと思いました。機会があれば是非ご覧ください。

準備に膨大な手間隙をかけながら、開幕後はあっというまに終了へと突きすすむ、一種、「花火」のようなイベント「映画祭」を改めて感じる映画祭最終日の訪れです。
『恋に至る病』は、受賞には至りませんでしたが、3回の上映に立ち会うことができた木村監督。共通の質問もありましたが、反応がくっきりと会場によって違うことを肌で感じたことは、得がたい体験だったのではと思います。「質疑応答に慣れたころには帰国」というのも、毎年思うこと。特に本作は、ジェンダーについての興味が高いドイツと、意識せずに暮らす日本という差も、はっきり見える反応でした。

長距離のフライト機内は、映画三昧の場所にもなります。実は仕事柄、後回しになりがちなメジャー系映画を観る時間となり、ロッテルダム往復では『スペースカウボーイ』と『カンフーパンダ2』が印象に残りました。カンフーパンダのほうは、自分のカンフー映画好きという要素と(あ!今回ベルリンでは、ツイ・ハーク監督の新作を拝見できませんでした。残念!)近年のアニメーション技術への畏敬とあわさって強烈だったのですが、『スペースカウボーイ』は、まるで現代日本の縮図であるところが興味深いのでした。メジャー映画の普遍的な物語構造の強みをみるようです。宇宙船はアメリカ、エイリアンは日本の政財界の既得権所有者=新財閥と呼べるような集団、エイリアンの目的である「金」を吸い上げる装置は、あまりにも生生しく迫りました。ベルリンへの往路では、アンドリュー・ニコル監督の新作『タイム』。最近「中世の王様が捜し求めた「不老不死」は、現在でも変わらず人間の求めることなのでは?」と感じているのですが、その感じを具体化されたような映画です。不老不死という言葉は誤解をよびそうなので、「死」の不安を乗り越えるために、肉体にも精神にもお金を注ぎ込む。と言い換えたほうがよさそうです。そして、クレジットカードの種類や限度額が人の価値の尺度になる。そんな現代社会が、『タイム』では「時間」に置き換えられています。旧作『ガタカ』同様、穴だらけのゆるい映画ながら、そくそくと迫るリアリティ。こんな社会にしない選択を続けていかねばなあと感慨深いのでした。帰国便も映画との出会いが楽しみです。

・・・って、映画祭の帰りにいう科白ではないですね・・・映画祭で映画に出会えよ!と自らつっこみ。映画祭は人との出会いが大きな要素でもあり、今年の個人的な驚きは、1992年の招待作品(この年は、招待作品部門で世界で話題のインディペンデント映画をラインナップしました)『Swoon』のトム・ケイリン監督との20年ぶりの出会いでした。最初、昼食の席で一緒になったのがケイリン監督と気づかなかったうかつな私。デビュー作『Swoon』が当時ベルリンのForum部門でカリガリ賞を受賞し、本年は、テディ賞の審査員として参加と同時に、『Swoon』の特別上映があるのです。PFFでの来日後、『美くしすぎる母』の公開でも日本に行き、主演のジュリアン・ムーアが来日できなかったかわりに、記者会見ではジュリアンのさまざまな衣装をかわりに並べたそのシュールなしかし情熱ある日本の配給会社が忘れられないそうです。また、現在コロンビア大学で教鞭をとる監督は、優秀な教え子である日本人女性が果たして日本で映画を撮るチャンスがあるのかを心配しています。が、今回のベルリンでは、日本からの長編フィクション映画は、4作品全て女性監督だったことをお伝えしました。ヤンさん、今泉さん、荻上さん、木村さん。映画状況は変化しています。

2月も残り少なくなりました。3月は京都シネマでのPFF京都開催です。同時期に所沢のイベント『世界が注目する日本映画たち』もやってきます。そして、PFFアワード2012締め切りが。香港国際映画祭もはじまりますし、森田芳光監督の特集も開催されます。
学校は春休み。さまざまな場所で映画を体験いただけるとうれしいです。

2012/02/17 10:40:36

ベルリンから その2

朝は早起き、夜は遅寝というか朝寝の本格的にハードな映画祭の日々になってきました。
ベルリンは、1:会場が多い、2:作品が多い、3:ホテルが遠い と「時間調整三重苦」な映画祭。更に、パーティー族ではない私にとって、パーティーハンターの方々の体力には脱帽です。映画とミーティングと、さらにパーティーという、「三種をはしご」して廻る日々の人々に「仕事は体力が勝負なのね・・・」としみじみ感じさせられております。

今回PFFから唯一の出品作品となった『恋に至る病』は、映画祭ラインナップの中で突出したオリジナリティとフレッシュさで大好評!と、自画自賛の恥ずかしいことを書かせていただきます。質疑応答では、木村監督歌まで唄って大受けです。「シリアスな映画の多い年に当たってかえってよかったよ~!」と内心思う私でした。

ロッテルダムでは、「ブラジルと韓国が当たり年では?」という声が聞こえてましたが、ここでは、「ポルトガル?」という声が。ポルトガル。アキ・カウリスマキもポルトガルの農園で暮らしてますね。私の中では『白い街』。リスボンに一度行ってみたいと思いながらはや幾年。うつの友人が、ポルトガルの旅で回復したのも印象に残っています。中世から第二次世界大戦前まで、世界各国を勝手に植民地化していた(いる)多くの帝国(イギリス、オランダ、スペイン、ポルトガルなど)の中でも、最も落日をみている、枯れた国終わった国というイメージが、日本の参考になるのではないかと長く感じているポルトガル。一度滞在して確認してみたいものです。
『山のあなた BEYOND THE MOUNTAINS』というベルギー人の母と日本人の父を持つ監督がポルトガルで撮った中篇作品もロッテルダムの上映から引き続き話題です。もともと東京在住だった監督。ランドスケープデザイナーのお父様が、風光明媚で自給自足の可能な土地への移住を考え、日本中を探しまわる過程で、ここだ!と思った理想的な土地には、必ず原発が建てられていたことから、「もう日本はだめだ」と諦め、ヨーロッパに住処を求め、巡り合ったポルトガルに土地を求めた、という幼い時の体験を回想、確認するドキュメンタリー。日本の映画祭からの問い合わせもかなりあるそうですので、みる事の出来る日も近いと思います。

原発。
今回のベルリンは、邦画とくれば原発がらみという印象で「恋愛映画ですいません・・・」という気分になっている私たちですが、ベルリンで初めて拝見した、岩井監督の『friends after 3.11』船橋監督の『Nuclear Nation』(藤原監督の『無人地帯』は日本で拝見したのですが、こちらには音を5.1チャンネルに再編集して出品しておられることを今日知りました)は、観客の反応が興味深かったです。『friends after 3.11』は、反原発発言、活動をしている方々のインタビューを中心に構成されており、現在第2弾も製作中とのことなのですが、上映後、プロデューサーは「私もこんな活動をしています」というかたがたに囲まれ、熱い時間をすごしておられました。『Nuclear Nation』は、双葉町から埼玉の廃校に避難していらした方々をじっくり追いかけたドキュメンタリー。永遠に追いかけ続ける。完成させる時期を決めていない。というつくりかたをしている作品で、今回第一弾の作品としてまとめるきっかけとなったのは、昨年末の政府の原発事故収束宣言。上映後の質疑応答前には、現在、補償交渉の大詰めで日本を離れられない町長からのメッセージビデオも流され、真摯な雰囲気に包まれました。しかし、海外でみる福島原発事故の記録は、改めて、日本の不思議さを感じます。怒らないひとびと。責任者がみえない状況。男男男の社会。「外国で日本のドキュメンタリーをみるのは、ものすごく面白いかも・・・」と感じる体験です。

フォーラム部門の日本からのもうひとつの長編作品は、ヤン・ヨンヒ監督の初フィクション映画『かぞくのくに』。未見ですが、「最後に泣いてしまった」という声を沢山聞きました。朝鮮半島の南北分断が、ドイツの東西分断と状況が近く理解がしやすいという側面があるからか、ヤン監督はベルリンのレギュラー監督。日本公開も近い『かぞくのくに』は、キャストも魅力的でとても楽しみです。

マーケットが撤収し、いよいよ終わりが実感されてきたベルリン国際映画祭。本年から広報担当者が変わり、世界中の新聞社に8泊の宿泊招待が出たそうですし、上映は英語字幕が中心へと変化、質疑応答も英語になり、プレスは例年より賑わっている感じです。私たちは、18日の上映立会いを最後に帰国です。


2012/02/14 05:08:36

ベルリンに着きました

深夜1時羽田発全日空ボーイング787でフランクフルトに着き、ビジネスマンでいっぱいの朝6時50分発ベルリン行きに乗り換え、朝9時すぎにホテルに到着し、ものすごく早いチェックインをさせてもらいました。ボーイング787。確かに、座席やトイレ、座席画面、いろいろゆったり設計の快適なフライト。何より、「夜発って朝着く」という感覚が、ほぼ徹夜状態なのを忘れさせ、そのまま映画祭事務局に行ってもろもろの手続きができ、即普通の一日が始められるのは、すばらしい限りです。まあ、今、目が真っ赤なんですけど・・・・

おそれていた寒波も一段落し、分厚い川の氷も割れてたゆたい始めています。もう数日すると、東京並みの気温に落ち着くのではという予測。ひと安心ですが、道は凍っています。

ドイツの首都となったベルリン。年内に大型の国際空港が完成し、今までフランクフルトからのフライトが到着していた、旧西ドイツの国際空港、小さく可愛い「テーゲル空港」は廃止されますが、その新国際空港に、日本ーベルリン直行便の飛ぶ可能性はゼロだそうです。ベルリンには日本企業がぜんぜんないから。ああ残念・・・

迎えに来てくれた映画祭ドライバー氏によると、テーゲル空港の跡地は、「空港の出来る前に戻す」ということで、森に帰すそうです。東京の暗渠も元に戻して、また、船で行き来する街に戻ったらいいのになあと一瞬夢想しました。

学生だというドライバー氏から、「ベルリン映画祭何度かきたことがありますか」と聞かれ、「多分あなたの生まれたころから通ってる」と答えたら(今回22回目だったので)彼は30歳。一度映画祭事務局で働いて、また学生に戻り、今年はバイトでドライバーをしているそうです。いや〜、若く見えるドイツ人もいるんですね。明日到着する木村承子監督は、私が最初にベルリンに来たときには、まだ保育園に行ってたのでは?と思うと同時に「もしかして、ベルリンがかつて東西に分断されていたことを知らない人もいるのか?」とも。・・・まさかね・・・・
かつて東西に分断されたドイツで、ベルリンは東側の中にぽっかり飛び地のように残された西側。19世紀、森鴎外が青春を過ごしたヨーロッパ最大の都ベルリンの面影は、壁の崩壊直後、かつての東側のほうにより残されており、ネオンの輝く西と、暗く手入れされない石造りの東と、コントラストがすごかったのですが、今や、街の中心部も、おもしろいことの発信地も、全て旧東側に集中しています。その前に、今や、旧西・東を話題にしません。

まあ、ともかく、ベルリン国際映画祭は、冷戦下に自由都市ベルリンで開催されることに意義のある映画祭でもあったわけです。

そして、今年。いろいろと驚くことがあります。

フォーラム部門は、カンヌの監督週間と同じく、メインのセクションへのアンチの立場で始まりました。ですから、オフィシャルセクションというよりは、ちょっと異端。また言葉を非常に大切にしていたので、映画祭カタログも、独自に、ヴォリュームたっぷりの作品紹介や監督のメッセージなどを盛り込んで発行していました。

しかし今年から、フォーラムも、コンペやパノラマと一緒に、分厚いカラーの映画祭カタログに一挙掲載され、独自のフォーラムカタログは、e-bookとしてダウンロードする形式となりました。

これは、とても大きな変化だと思います。また、映画祭全体でチケット管理がいっそう厳しくなり、もし一度でもチケットを受け取った作品を見に来なければ、即ブラックリストにのる。そうです。ひゃ〜。カンヌより厳しい?

そして、もともとベルリン国際映画祭が展開されていた、旧西側のZOO駅周辺の再開発が急ピッチで進んでいます。かつてのコンペ作品上映会場であったZOO PALASTも、映画祭ビルディングだったEUROPE CENTOREも、大工事中。来年どんな様子になっているのか、今、全く想像がつきません。

まあ、とにかく、刻々と変化するベルリンをみていると、ヨーロッパの不況をあまり感じないのですが、全ての都市計画は何年も前のもので、着工時点で現状とそぐわなくなるのは、古今東西毎度の出来事でもあります。

さて、前回のブログで、「木村監督、映画祭のスタッフを独占できるかも?」と書きましたら、それは甘い期待で終わり、明日は、岩井俊二監督作品の「friends after 3.11」の関係者もいらっしゃるそうです(監督はこられないそうで残念ですが)。と言いながら、こちらに来てから日本映画の詳細をカタログで読んでいる私。「friends after 311」がインタビュー集であることを知り、そして、明日お越しになる方のひとりは、藤波心さんということにひとり盛り上がっているのでした。

前述のドライバー氏の父上は日本贔屓で、これまで7回日本旅行を繰り返しているそうです。車中の話題も津波後の日本は大丈夫かという心配と、日本人のメンタリティについての質問など。そのあと、映画祭事務局で話かけられたスイスのプロデューサーも津波後の回復を心配してくださり、いろいろ聞かれました。贔屓の和食屋では、日本で寿司は食べられるのか心配されました。先日、ロッテルダムの帰路のドライバーも、日本を心配してくれたことを思い出します。彼はモロッコから幼い時に一家でオランダに移住し、一番上の兄が当時医学生でそのままモロッコで医者になったと。そのお兄様が3年間癌の闘病をして先日亡くなり、その3年は、保険も効かず、モロッコでの収入では手が出ないベストの治療を受けてほしくて、二ヶ月に一回、30万円近くの送金をして破産したけど悔いがなかったことや、アメリカのがん保険が役にたたなかったこと、などの話になりました。オランダ人の妻と3歳と7歳の子供がいて、この5年くらいでオランダ人の美点が失われ、他者排除の意識が急激に高
まって、冷たい国になってきているので、モロッコに移住することを考えていること、お金が貯まり子供も手がかからなくなったら、アジア旅行をしたいが、子供をストリートに放り出すタイやフィリピンのような国は絶対に行きたくないこと、モロッコでは子供は「聖なるもの」で虐待などありえないことなど聞きました。「日本も一日一件くらい子供の虐待死のニュースがある」というと、「そんなニュース聞いたことがない!日本は家族を大切にする国だと思ってた」とものすごく驚いていました。

あるイメージが、自分たちで自分たちを幻想に追い込むことはよくあるなあと、改めて確認したくなる、「日本のイメージ」。でも、世界は世界規模で“荒んで”いっているのは確かではないかと感じます。イメージから、現実へ。311が露呈したものは、つまるところ「現実」ではないでしょうか。現実をいいものに変える、その方法を文化芸術エンターテインメントそして芸能がどう担えるか、そこに「面白さ」を提示することに知恵を絞りたいと折々の会話のたびに思います。

昨年末、メジャーで全く報道されなかった、東電会長宅前の右翼青年のハンストを取材に来たのが、フリージャーナリストと、新聞「赤旗」の記者だったというのが、私の「昨年の面白さ最高の事件」でした。イデオロギーの崩壊を如実に語るこの出来事。「面白い」ことから未来の芽がみえるような気がします。

2012/02/12 16:29:55

東欧映画、そしてチケットレス入場

昨年のタル・ベーラ『サタンタンゴ』(新作『ニーチェの馬』みてくださいね。『サタンタンゴ』を超える俳優の忍耐力に驚愕しますよ~)上映は、約20年ぶりのPFFでの東欧映画上映でした。PFFの最優先事項は「PFFアワード」。作品選定や字幕制作に膨大な予算のかかる日本未公開作品上映は予算を考えると他の映画祭に任せるしかありません。しかし、東欧映画情報は随時知りたいなあと思っていた矢先、以前、ニューヨークのジャパンソサエティで映画担当をしておられた平野共余子さんが、新宿書房のコラムにルーマニアとセルビアの映画についてお書きになっておられることを知りましたのでご紹介します。
民族の坩堝とも言えるNY。「ルーマニア映画祭」会場には、ルーマニア所縁の人だけでも多くの観客がいそうですね。そして、「英語字幕だけで上映」できれば、どんなに映画祭が組みやすかろう・・・と、やりたい特集をあれやこれやと考えるのですが、ないものねだりはしないのが大人。夢想にとどめる次第です。*昨日、『Fish Tank』と書いていて、イギリス映画も近年日本にめっきり紹介されてないことを思いました。「少女映画特集」とかもあるなあ~とも思ったのですが、考えてみると、過酷な映画が多い。少女を取り巻く世界は、とてもとても厳しいことを再確認です。余談でした。

予算削減と言えば、今年のロッテルダムは、チケットレスに踏み切って、パスホルダーは、映画祭パスに、観たい作品のデータを入れてもらう方式になりました。上映会場入り口では、バーコードでパスの情報を読み取っていくのです。そうすると何が起きるかと申しますと、自己管理しないと「どの作品をどこで何時に観る予定か忘れる」のでした。紙のチケットには、作品タイトル、会場、時間が入っていましたから、それを順番に並べて回れば確認も兼ねて一日を過ごせたのですが、パスに入ったデータを自分でみることは出来ず、あわわわわ。パスのない観客はどうするのかと言いますと、これが、プリントアウトした紙(観る作品のバーコードが入っている)をパスと同じく入り口で読み取ってもらうのですが、この紙が、A4二枚とかになってたりするのです。昨年まで(昨年参加していませんが多分一昨年までと同じはず)のロッテルダムのチケットは、5センチ×7センチくらいでしたので、今年は遥かに紙使ってますねえ・・・あ、今度はお客が紙代負担か・・・。
なんだかね、「これからはペーパーレスになる」と喧伝されていた昔が笑えるほど、現在のほうがいろんな場面で遥かに紙を使っていますよね。プリンターのインクと紙、今や巨大産業ではないでしょうか。そんな万国共通の現実を相次いでみせられたロッテルダムでした。

そしてもうベルリン国際映画祭が始まっています。
マイナス16度。ホテルの部屋にいても寒いという話が聞こえてきます。近年の異常な寒波に、ベルリンの会期変更を求める声もあがるのですが(昔は5月だった)、5月のカンヌ、8月のベネチア、2月のベルリンと、プレミア合戦のトップにいる3大映画祭ですから、その会期の変更は難しいものがあるようです。「せめて12月はどう?」と呟いてみる私でした。
一昨年まで、ロッテルダムとベルリンの間に、一週間は日本に戻ることにしていました。そこに「PFFアワード」の会議のひとつが置かれていましたから。しかしPFF会期の変わった今、その必要もないのに、長年の習慣で今年もつい一週間空けて、明日からベルリンです。しかし来年からは、ロッテルダムは後半、ベルリンは前半と、連続滞在に切り替えようと考えています。あまりの寒さに、一度帰国すると戻りたくなくなってしまうのでした。ヨーロッパに。南極探検に行くわけではないのですけど・・・
今回は、『恋に至る病』のワールドプレミアとなり、追って木村承子監督も出発します。フォーラム部門です。ここには、日本から他にも長編映画4本が招待されています。フォーラム事務局は、舞台通訳や、ゲスト担当などの対日本語関係セッティングがしっかりしており、心配なく映画祭を過ごせるのですが、ふと気付くと、他の長編作品監督は、岩井さん、藤原さん、舟橋さん、ヤンさん、みなさん言葉が堪能。もしかして、木村監督は、日本人ゲスト担当をしてくださる近津さんを一人で独占できるのかも?と、彼女の幸運に驚いているところです。近津さんは近年映画祭期間はキャビンアテンダントの仕事を休んで日本人ゲスト担当として参加くださる奇特な方なのです。

2012/02/11 22:34:33

ロッテルダム受賞3作品は似ているかもしれない

ちょっと情報として古くなってしまいましたが、ロッテルダムのコンペ、「タイガーアワード」の長編グランプリ受賞3作品(各賞約150万円の賞金)について折々考えていました。
今回、3作品とも女性監督作品だったこと、いずれも少女の視点の物語であること、親世代とのコミュニケーションがとれないこと、など、共通点の非常に多い、乱暴に申しますと「似ている」3作だったなあと思い返しています。
歌舞伎をみていると、「何故登場人物(男)はこんなにも肝心のことを話さず、思い込みで行動するのか?」と茫然とすることがあるのですが、それはそこ、お芝居。無茶なことを役者の力と、音楽、美術で強引にねじ伏せる醍醐味が歌舞伎。その思い込み&早合点の行動が、他者をどんどん巻き込んでドラマを高めて行くのが(歌舞伎も含む)「芝居」というものですが、映画の場合、お芝居とは違い、なまなましい。そして今回の、肝心のことを話さない、いえ、話せない、に近い3人のローティーンの行動は、自分自身を傷つける度合いが高い。この生き辛さは、同時に、「女の子が生きやすい世界への道のり」はまだ困難なのか、という現実を写し出してもいたのでした。
具体的に3作品を紹介しますと、ロッテルダム映画祭の映画製作支援システム「ヒューバート・バルス・ファンド」(サードワールド対象ですので日本作品は受けられません)を得て製作されたチリ作品『Thursday Till Sunday』by Dominga Sotomayorは、両親と姉、弟という4人家族のロードムービーで、さりげない描写の連続でありながら見事にサスペンスフルに構築された、地味ながら3作品の中で頭一つ達者で唸らせられる才能です。少女は、もうひとつの受賞作、中国の『Egg & Stone』by Huang Ji の主人公と同じ年頃と思われます。両作品の少女とも、透明感の高い、素晴らしいキャスティング。細いうなじ、持て余す細長い手足、言葉にできず伏せるまつげの揺れる様、目で見る前に、感じる空気に反応する体。『Egg&Stone』では、養父が彼女を妊娠させる、その事実を言わない、言えない少女とその世界が、観客に問われる作品です。そして、しみじみと悲しく「家庭内性的虐待が世界共通の問題」であることを再認識させられます。監督のパートナーであり本作の撮影監督である大塚竜治さんの名前に記憶がありましたら、08年に『LING LING's GARDEN』という中編映画でPFFアワードの一次通過をなさった方でした。大変議論された作品なのでよく覚えています。こちらも見事な撮影でした。これからの活躍の期待高まる才気溢れる北京在住のカップルです。セルビアの作品『Clip』by Maja Milosは、前記2作より数歳年上の少女が主人公で、セックスを過大評価するのが痛ましい姿としてこれでもかと迫ります。常に自分の姿をiPhoneで撮影し、セクシーショットのお手本はFacebookから。ローティーンなのにセックス+ドラッグ+酒の毎日。親はコミュニティの破壊し尽くされたセルビアで真面目に暮らしをたてていくのが精一杯で、行き場のない苛立ちをぶつけ親を傷つける子供に対峙する余裕に恵まれず、そのギャップは開くばかり。この作品は同時に、オランダ批評家賞を受賞(賞金としてオランダ語字幕をつけてオランダ配給のチャンスにつなげる)しています。インパクト大。好きな男の子にまとわりつき、いきなりフェラチオ(それも学校のトイレ)で歓心を買う。犬のように扱われ、でも最後は、『愛』へと至るハッピーエンド。今回の受賞作で唯一、賛否両論、蛇蝎のごとく嫌う人もいた作品でした。「安いポルノ映画」と吐き捨てる人、「近年のローティーンの苛立ちを描いた作品の中でもひどい出来」という人(秀作例は『Everyone Dies But Me』露2008『Fish Tank』英2009など)、「ハッピーエンドから逆算してつくられた陳腐な作品」という人、それはそれは大変。確かに、骨格は古い恋愛映画です。が、あらゆる国の人にそんなに反感を買う作品、ちょっとみたくなりませんか?
*余談ですが、コンペ作品で、性器がやたらに出てきたのは、2作品でした。1つはこれ。さあもうひとつはどの作品でしょう?・・・とか下らないことを言ってる場合ではないですね。

と3作品のことを考えていたら、岡崎京子さんの『へルター・スケルター』映画化進行中というニュースが!ざっくり言って、上に羅列した映画の世界をいち早く描いた岡崎京子。その世界が蜷川監督の手でどんな映画になるのか、あまりにも楽しみです。実は1996年、岡崎さんが事故にあわれる一週間ほど前にPFFアワード審査員のお願いをした私。「数日考える時間を」というお答えに、そろそろお返事を伺おうと考えていた矢先の仰天の出来事。それからずっと何らかの新刊が出るたびに胸が痛んできたものですが、岡崎ワールドを映画化、演劇化したいという情熱は、各地で益々高まっているのではないかと感じます。例えば劇団「口字ック」。昨年PFFを手伝ってくださった山田佳奈さんが主宰する劇団。それがご縁で遅ればせながら拝見した舞台は女子満開!満開女子をこれでもかとぶつけてどんどんあがるテンションは、爽やかさまでに達していきます。(是非一度体験を!)
女子世界が女子によって描かれることが増え続けて行くことが、世界が面白くなることに繋がる予感がするという意味において、今回のロッテルダムの結果、大したものかも思う一方、無邪気な男子映画の減少に繋がるのもちと寂しいとも思うのでした。色々な映画を観たい欲張りな場所、それが「映画祭」でもあるのでした。
・・・・うわ~、ブログにあるまじき長さになってますね・・・
ロッテルダムに戻ります。短編グランプリ3本の1本に日本の作品が選ばれたのも話題でした。牧野貴監督の『Generator』。私は残念ながら未見ですが、こちらは、PFFの名古屋会場でもある愛知芸術文化センターが「身体」をテーマに毎年製作する作品の最新作です。企画が選ばれれば、監督が予算を貰って自由に完成させるという方法で、以下のように多彩な監督による、多彩な作品があります。
http://www.aac.pref.aichi.jp/frame.html?bunjyo/original/index.html
*PFF名古屋開催は、5月を予定しています。

しかし、男女問わず、「伝えたいことを言葉にして話すという技術」の獲得って難しい。よく喋る人は、考えを隠すため、騙すために喋る場合が多々あり、疑われやすいですし、言葉は誠に厄介。昔、審査員をお願いした桃井かおりさんが、少女時代にイギリス留学から戻って日本の暮らしに馴染めず、何をどう話せばコミュニケーションできるのかわからなくなり、途方に暮れて話し方教室に通った結果、とにかく自分の考えていることを全部相手に伝えるという方法を用い始めたとおっしゃっておられましたが、帰国子女には、その方法を用いる人が少なからずいる印象があります。「あらゆる人と対等に向き合う」ということが、言葉を伝えるための第一歩では、と個人的には考えていますが、対等に向き合いたくない人も多いですし、こちらも厄介。
あ、老人の繰り言みたいになっちゃいました。

2012/02/02 07:14:04

エージェントとかセールスカンパニーとか呼ばれる会社あるいは個人があります

あっというまに帰国となりました。残念ながらJALのアムステルダム直行便が廃止されたので、10年ぶりくらいのKLM利用。機内では映画を見続けることにしているのですが、KLM(およびAir France)の映画紹介は、かなりどうでもいいマニアック、あるいは眉唾な裏話が必ずついてきて、面白いのでした。「日系航空会社の映画紹介ではあり得ないなあ・・・」と日本の真面目さをここでもまた発見する次第です。
往路は、実は「ひとりアニメ特集」をしてみましたが、機内上映ラインナップがハリウッド作品満載なのにびっくりです。「ハリウッド映画が日本ほど公開されないのかも?」と考えてみたり・・・

日本は、世界で一番各国の映画が配給・公開されている国です。映画祭のラインナップを交渉する際も、日本国内の配給会社と交渉するケースが多いので、海外の映画祭ほど、作品をハンドリングしているエージェントというか、セールスカンパニーとの交渉がないかと思われます。この「エージェント」とは、たとえば、日本作品ですと「日本以外の劇場公開、テレビ放映、映画祭出品、DVD化、リメイク」などの交渉窓口になるわけですが(日本を含む、という場合もあります)、どうしても大きな商売が優先になるのは、ビジネスとして当たり前ではあります。映画祭も、勿論、手間隙かけての効果の高い、大きな、マーケットがあるような映画祭に力が入ります。小さな映画祭は「交渉しても返事ももらえない」ということは、珍しくない話です。大きな映画祭とは集客力抜群のメガストア、小さな映画祭とは商店街の小売店みたいなものかもしれませんね、ビジネス的には。フランス、ドイツ、オランダ、イギリスなどに会社が置かれてる場合の多い、つまり、ヨーロッパで盛んな仕事です。
今、増加する日本からの放射性物質で汚染された貨物の陸揚げ拒否・返送でも話題のウラジオストック。「極東のヨーロッパ」と自分たちでも呼んでいるこの街に、「ウラジオストック映画祭」という、決して小さくない映画祭があります。コンペ部門の審査員を、桃井かおりさんや、岩井俊二さんが努めたこともある、東京から2時間半で行けるロシア=ヨーロッパです。この映画祭で昨年、日本からのコンペ作品の上映が出来ず、招待されたゲストは上映なしで帰国したという出来事がありました。フィルムの時代、人気作品のプリントの映画祭間転送がうまくいかず、ゲストの滞在期間に上映されずに終わった場に私も居合わせたことがありますが、ウラジオストックの場合は、フランスのエージェントからのデータがシステムの不具合で開かず上映できなかったのでした。何をどうしてもだめだとわかったのが、上映の2日前。すぐフランスに連絡したが、時差が8時間で向こうは深夜。つまるところ1日が消えてしまい、上映前日に電話でやりとりしながら再挑戦したが、だめで、審査員にはDVDで試写室審査に切り替えてもらい、会場は上映中止で平謝りの返金だったと、今回ミーティングした際に伺いました。
この話の教訓は「上映素材チェックは遅くとも1週間前に終わろう」ということですが、そのことに加え、時差もなく、2時間半で行ける製作国・日本にある素材で何とかならないのであろうか?という残念さ。しかし、製作者側にも「エージェントを通さなくてはならない」という契約=決まりがあり、それを破ることにかかる煩雑な交渉や、製作者&映画祭双方とも、今後の長い付き合いへの配慮からの判断であることも理解できます。同時に映画祭運営者にとっては「テープ上映が確実だ」「バックアップの用意は必須」ということの再認識でもあります。

あら?話がロッテルダムから離れてきました。
コンペ作品は無事完遂し、アイスランド、トルコ、中国、韓国(2作品。ひとつは3D!)、ギリシャ、ブラジル(2作品。ひとつは白黒シネスコ!)、ビルマ(!)、セルビア、ポーランド、タイ、ロシア、チリの最新作品をみました(日本作品は既に拝見してました)。こうしてまとめて観ると、不幸なセックスやドラッグや暴力、多いです。コミュニティの崩壊がまだ修復されないセルビアやロシアの辛さ、ひと際重いです。また、アジアって、なんだかスィートで柔らかな感じなんだなあと驚きます。そして、ヨーロッパの作品は、その作品国系のお客さんで溢れかえります。いやはや、面白いです。
*ロッテルダムには5段階評価方式の観客投票があり、上映翌日位には集計されリストアップされるのですが、コンペ作品で現在最も評価が高いのは、トルコ映画「VOICE OF MY FATHER」です。

見逃した作品も勿論沢山あります。ラウル・ルイス追悼トークや、フランスでつくられた足立正生さんのドキュメンタリーは、特に残念です。
そしてともかく帰国し、中旬からはベルリン国際映画祭に参加します。昨日ベルリンのタイムテーブルが発表され、業界人は早速スケジュール作成にはいっています。この時期、ベルリンと、アカデミー賞が話題です。


2012/01/31 17:07:52

三池人気変わらず高きロッテルダム

「ブログの頻繁な更新を実現できる」と前回言ってみたにもかかわらず、できてません。「最優先事項は映画をみること!」と決め、それが達成できるチャンスとなった今回の滞在。予想以上ハードです。が、目標のひとつの「コンペ作品の全網羅」は間もなく終了します。ロッテルダムのタイガーアワードは「世界の映画」が対象ですので、めったに観る機会のない国の作品にも遭遇でき、「世界各国で2011年に創られた新人の作品を一挙にみる」ということが、いかに刺激的で貴重な体験かをしみじみ実感しているところです。が、一方で、失敗したのは、「人と会う時間がない」。
1:映画をみる。2:人と会う。3:作品を出品する。この三つを全て同時に達成するには(そういう状況に置かれることが多いPFF)、ひとりでは無理だな~と90年代からずっと感じてきましたが、今回も同じため息です。映画をみるとは、即ち、映画の上映時間に合わせてスケジュールを決め、更に、そこで必ず約2時間を費やす必要がある。ということなのを、再認識。今回も、「ミーティングのみの日を設定し、滞在期間を長くすべきだったな・・・」と悔いています(ミーティングを集中的にこなして、映画はみない。というのは、映画祭では当たり前の仕事のやり方なのです)。同時に、見回せば「ひとりで参加する」映画祭や映画会社は、ごく少数派です。複数で滞在しないと1,2,3の同時達成は無理なのですね。映画祭のみならず、どんな仕事も、一人で出来ることに限界があるわけで、特に「時間」を要することは、どうにも工夫の仕様がない。と改めて学びます。更に、スマートフォンの普及により、メイルでのやりとりをPCでやってる場合ではなくなってますが、英語で携帯から通信するのは、ネイティブでない私には、ありえない時間がかかり気が狂う~~~~!!更に、携帯からの電話代高すぎる~~~~!!とかそんなこんなで、今回は、目標をひとつに絞り、映画をみることにまい進している次第です。同時に、一日5本平均の映画からの刺激が強すぎて、人と話していても集中力が落ちることを感じています。

と、前置きが長くなりましたが、会場でひときわ目立つ『逆転裁判』のポスター。「なんだこれは?」と思ったら、三池崇監督の新作ワールドプレミア&三池監督来場で盛り上がるロッテルダムなのでした。『殺し屋イチ』『オーディション』などで、世界中に熱狂的なファンを持つ三池監督。久方ぶりのロッテルダム登場に会場はもうそれは大騒ぎ。しかし、大量の作品を持つ監督なのに上映作品一本だけなんて勿体ないな~と思ってましたら、実は、『一命』と二本立てで、三池崇のふたつの顔、とでもいった企画が進んでいたそうなのです。が、予算削減のあおりを受けて、1本だけになってしまった、と。ああ残念!見てもらいたかったなあ『一命』・・・
"予算削減"それはいまや映画祭のサブタイトルに漏れなくついてくるとしか思えない言葉です。全く、ひとごとではありません。 で、『逆転裁判』。ゲームを映画化した奇想天外な映画で、映画祭向けとは言いがたい作品ですが、こちらの観客人気投票では、推定500本の作品の中で、現在、ベスト10にはいっており、しみじみ人気の高い三池監督です。 *おまけ(?)として、三池監督と緊張全開で食事の席にいる『東京プレイボーイクラブ』の奥田監督という珍しいツーショットを、ライターの中山治美さんからいただきましたのでご紹介します。

話かわって、コンペティションのタイガーアワード。2作目までの長編映画が対象ですから、PFF同様、監督はほぼ20代、30代です。
日本でみる機会の少ない中東、東ヨーロッパ、南米の作品など、驚かされるものが多いのですが、表現が政治的背景と切っても切れないのを実感します。数年前に、香港でルーマニア映画特集に通って以来、東欧映画の変化が気になっているのですが、今回のコンペにあったセルビアの作品から再び興味が高まり、時間がちょうどやりくりできたルーマニアのドキュメンタリーをみてみました。男女混合刑務所で、愛について取材した1時間の作品。設定そのものがあまりにも意外で、ぽかーんとしてしまいました。受刑者は私服で、女性は化粧ばっちり、アクセサリーも身に着けてます。受刑者同志のカップルが沢山いて、デートしてます。塀の外の一般人との結婚の際は、48時間の特別自由時間が与えられるので、その2日間を獲得するために、何度も離婚を重ねている夫婦がいます。なんといっても、取材者(数人)が、自由に刑務所内に入って、たっぷりインタビューや撮影をしているのです。全く不思議な1時間でした。実のところ撮影もインタビューも構成も「作品」としてのお薦めは難しいですが、未知の世界を知ったということでは、今もびっくりしています。

そして、日本映画ですが、すでに映画をつくっておられる方にはお馴染みの、フランクフルトの「NIPPON CONNECTION」のディレクター、マリオンさんから、「昨年の震災と原発事故以来、日本の若い監督たちがこれまでのエンターテインメント志向から、言いたいことを作品に織り込むという方向に転換したと聞いたけどほんとう?」と聞かれました。それがほんとうかどうか、「PFFアワード2012」に応募いただいた作品からはかるしかないので、「わからない」と答えるしかありません。マリオンも、作品探しに来日を続け10年たつわけですが、近年、日本の監督が自分の作品を自分で売り込む、プロモーション能力に長けてきたと感じるそうです。すばらしい~~~。しかし、変化がないのは、作品のクオリティの低さだと。「スクリーン上映に耐えられない音と画のクオリティの作品が多すぎるのは、なんとか意識を変えてほしい」と訴えております。
そして、「NIPPON CONNECTION」本年は、60~70年代の日本の政治的映画と、311を取り上げた映画の特集を準備中とのこと。こういった特集が日本で実現する機会はまずありませんので、参加しちゃおうかなとこっそり考えてみた私。また、311の映画は、誠に大量に生まれてきつつあるようですが、海外の映画祭関係者が一番早くみているなと思い知らされています。その中で「ダントツは、平林勇監督のアニメーション作品だ」というのは、トニー・レインズさんでした。

時差ぼけで朝4時とか5時とかに目覚めてしまう健康な生活を送っています。日本時間にすれば、午後なんですけどね・・・

2012/01/28 04:05:56

アンゲロプロスとオリンパス

ただいま、オランダ・ロッテルダム映画祭に来ています。
今回は、なんと申しましょうか、大変珍しい、そして大変残念なことに、PFF作品が招待されていないため、「一人で映画をとことんみる」という滞在に徹することとなりました。もしかしたら、初めての状況ですので、これまで一度も実現できていない「タイガーアワードノミネート作品完網羅」達成いきます!
個人的な事情で昨年連続参加記録のとまってしまったロッテルダムですが、一年ぶりの印象は「ますますフレッシュで活気ある映画祭」。皆様既にお気づきのように、写真を撮る習慣の全くない私ですので、その感じを伝えるビジュアルがなくて恐縮ですが、間違いなく、今、世界で一番「いい感じ!」そして、「21世紀らしい」映画祭だと思います。帰国までに、折々、その感じをお伝えできたらと思っています。
が、直前に聞いたテオ・アンゲロプロス監督の訃報に、まだがっくりきています。撮影現場での事故死!それも、警官の運転するバイクに撥ねられるなんて・・・実は、オリンパススキャンダルの出たときから、アンゲロプロス作品のことを頻繁に考えていました。何故なら、8年前のPFFでのアンゲロプロス特集は、オリンパスの力で実現したからです。

その体験から、私の中で、オリンパスは「表現」というものに理解ある企業のひとつです。一度お伺いした開発中製品のプレゼンテーション会場でも、『ミクロの決死隊』のようなカプセル型内視鏡や、『スターウォーズ』から始まり、さまざまな映画でおなじみのホログラムによる伝達装置などが目の前に実現しつつある様子など、忘れ難いものがありました。オリンパスのみならず、さまざまに激動する日本。「この状態を生きていくには、体調整えないとなあ~」と、正月早々胃カメラ飲んだ私は、そこでもカプセル型内視鏡を使ってみたくてオリンパスを思い出したものでした。現実には、直径1センチ弱の黒くて細くて長い蛇のような胃カメラをぐりんぐりんと飲みました。快、不快は操作する医者の技術によって差が大きく、今回は実に苦しかった。結果は、胃壁がますますひどい状態で、更に、「こういう症状の人はピロリ菌がいるんですよね~。胃がん発症者の7割はピロリ菌がいるので、薬で退治する人も多いんですよね~。でも退治できないで終わる人も結構いるんですよね~」と言いっぱなしにされまして、「脅しと薬剤師の仕事が医者の仕事みたいだな~」と改めて認識しました。ピロリ菌と共生しますけど。

変な話はやめて、ロッテルダムのタイガーアワードに戻ります。長編15作品のうち、日本からは、『東京プレイボーイクラブ』がノミネートされています。奥田監督は、昨年に引き続きのロッテルダム参加。日本公開も目前の多忙な中の長旅です。
賞の名称の「虎」。ほかにも、何らかのマスコットのある賞は多いです。バンlクーバーは「龍と虎」、ベルリンは「熊」、ロカルノは「豹」、ヴェネチアは「獅子」などなど。そして、本年から香港も、デジタルコンペティションという名前をやめて、「火の鳥」賞という名前に変わるそうです。香港映画祭発祥のきっかけとなったシネクラブに敬意を表し、その名前からとったそうです。
マスコットがあると、デザイン展開が楽しくていいなあ~と思う私ですので、PFFも何かできないか?とまた考えていました。「P」だから「パンダ」とか「ペンギン」とかいかがでしょう。どちらも白黒のデザイン展開も素敵だし、いいマスコットです。

朝九時台から上映の始まるロッテルダム。が、規則正しい生活ができるので、頻繁にブログ更新できたらと思っています。

2012/01/18 00:19:15

2月1日から公募受付を開始する予定です

思わぬ時間がかかってしまいましたが、「PFFアワード2012」公募受付を、2月1日から開始すべく、応募要項及び応募用紙の最終準備に入りました。応募締切は、変わらず3月31日当日消印有効です。こちらも、例年と同じく、作品の確実な到着のため、必ず書留郵便で発送ください&本年の3月31日は土曜日ですので、郵便局の業務時間にご注意ください。
来週、25日には、このホームページに応募要項と応募用紙をアップする計画です。
昨年まで、応募はminiDVあるいはVHSコピーをご用意いただいておりましたが、本年からはDVDフォーマットでの応募受付に変更致します。「何故これまでPFFではDVDで受付をしてこなかったのか」それは、個人作成のDVDは、再生があまりにも不安定だからです。つまり、PCでしか観ることのできないDVDが少なからず生じる=小さな画面での審査になってしまう、からです。
PFFは映画祭です。フィルムセンターをはじめとする、大きなスクリーンで作品を上映します。「映画祭上映に近い環境で審査する」ことを前提に、応募要項を決定しています。しかし、テープでの応募は日々困難が増しているこの現実に、DVDでの応募受付を始めます。

何かを生み出そうとしている「個人」は、今、この世界の希望です。
「組織のルール」が人の活力や意欲、感情、あるいは能力を壊す。「組織の利益」を行動基準にすると世界が狂う。現実をみる力が損なわれる。そんなことを改めて実感させる昨今の出来事をみていると、嘘の数字を自ら信じてしまった「大躍進」や「文化大革命」下の中国を思い出すのは私だけでしょうか?
映画のみならず、文化芸術エンターテインメントは、ウソを創ってホントを更に際立たせる装置です。そこには、言い訳の出来ない、逃げられない創作の手間暇、あるいは、肉体を酷使した実行が必要です。ウソを創るのに、嘘やごまかしは一切介入できない。だからこそ、文化芸術エンターテインメントは人に伝わります。映画のみならず、その力に度々触れているが故に、PFFは活動を続けています。
一方、ご存知のとおり、経済危機に真っ先に削られていくのは、文化芸術エンターテインメントの予算。増税や、選択肢の閉ざされた独占インフラの税金のような値上げを予告されると、1億3千万人に迫る日本の人口の「ひとりあたり1円」PFFにくれたなら、映画祭も映画製作も心配なく続けられるなあ、そしてその金額分、日本の映画文化の海外へのプロモーションや、国内での創作隆盛に貢献するがなあ・・・と妄想してしまいます。実は厳しい現実を豊かにするのは、文化芸術エンターテインメントの得意技ですが、あまり話題になりません。街の掃除や、生活インフラの整備と同列にある、人の暮らしを美しく快適にする必需品であるうえに、特に素晴らしいのは、そこには限りない選択肢があること。つまり多彩なことです。
多彩であること。それこそが豊かさ。それこそが、社会のまともさです。
今年も多彩な作品の応募を期待しています。・・・・う~ん、我ながらいささか無理な結びでした・・・
改めます。
未来の希望は個人の想像力と創造力からしか生まれないことを痛感する新年。その具体的な塊である自主映画。昨年4月1日以降に完成した自主映画であれば、全て応募可能な「PFFアワード2012」。ご応募お待ちしております。

2011/12/31 23:20:27

2012年3月「世界が注目する日本映画たち」ラインナップ決定

すでに所沢市近郊ではチラシの配布が始まっていますが、新年、3月17,18日に開催される、第12回「世界が注目する日本映画たち」。主催の所沢市と共に、PFF事務局でプログラミングを行っています。日本のみならず海外でも評判の作品を週末に一気に観る!というこの企画。会場は所沢市の総合文化センター「ミューズ」の中にある、通常、オペラやクラシックのコンサートも行われている「マーキーホール」です。
今回は、3月17日土曜日に、『奇跡』と『ヘヴンズ ストーリー』の2本。18日日曜日は、『歓待』『川の底からこんにちは』『海炭市叙景』の3本。というラインナップで決定です。
チラシ制作の段階では、ゲストが確定しておらず、追って発表とさせていただいていますが、現在のところ、『ヘヴンズ ストーリー』には、瀬々監督と主演のおひとり、山崎ハコさんが、『海炭市叙景』には、熊切監督が来場くださることが決まりました。ゲストは決定次第、所沢市のオフィシャルホームページに随時発表してまいります。
「2010年~11年に国内外で話題となり、かつ、所沢近郊の映画館で公開されていない作品」という、数ある邦画からの作品選定は、毎回、上映したい作品の山に悩まされます。更に、これまでは、35mmフィルム作品上映に限られていた会場設備に、今回からはデジタル作品も可能となり、一層困難な仕事となりました。
そこで、3月16日金曜日は、デジタル上映実現を記念する前夜祭として、『Peace』と『精神』を上映、かつ、監督の想田和弘監督をお迎えし、17&18日の上映作品に関係するゲストとの対談も予定しています。

2011年も残すところあとわずか。
新年も、映画と人との一層素晴らしい出会いをつくっていけたらと思っています。
一年間、ありがとうございました。

2011/12/27 01:51:14

やりきれない訃報の多い12月

森田芳光監督のご逝去について、整理がうまくできません。ごく身近な方にとっても、全く予期せぬ出来事だったと聞き、一層考えてしまいます。
かなしいことですが、多くの尊敬する、憧れの、お仕事をお願いしたことのある映画監督の訃報を聞いてきました。が、森田監督の場合、「自主映画の歴史上の人物がこんなに早くいなくなるわけがない・・・」という気持ちがぬぐえないのです。
「審査員という依頼は絶対に受けないことにしているけど、ほかのことだったら何でも言ってよ」とおっしゃって、かつて入選したPFFのことを気にしてくださっていました。最新作、『僕達急行 A列車で行こう』は、私が個人的に森田監督の得意技であると考える、おたくを描くことで、すごい傑作になってるのではないかと、公開を心待ちにしていた作品でした。森田監督が初めて8ミリカメラを手にしたころ「とにかく何か撮る!」と都内を様々な電車が走る姿を追いかけ、繋いだ『水蒸気急行』という、人の出ない映画をつくられています。「映画って、リズムなんだな~」と思わされる作品です。2006年、マクセルの協力で、自主映画界伝説の『ライブ・イン・茅ケ崎』と一緒に、この『水蒸気急行』を8mmフィルムからデジタル化して上映する特別プログラムをPFFで設け、上映後、監督に当時のお話などを伺いました。変わらず走っている方、という印象でした。
商業映画デヴュー作品『の・ようなもの』は、個人的に、まさに「落語家」がそこに生きている傑作だと思っています。「落語を映画化する」ということでは、現在、日活100周年記念として、デジタルリマスター版が公開中の『幕末太陽伝』の右に出るものはないかと思いますが、「落語家生活を映画化する」という点において、『の・ようなもの』は、他の追随を許さないのではなかろうか、と。独自の世界を持っている人たち、自分の好きで好きでたまらないもののある人たち、を映画にするときの森田作品を心待ちにしている私でした。偏ってますね・・・すいません。
ご自身のプロデューサーとしての活躍、そして、一緒に事務所を運営する和子夫人のプロデューサーとしての卓越した貢献、など、次代に伝えていただきたいことも沢山ある森田監督の突然の訃報は、70年代から大きく変化を始めた自主映画の歴史が、21世紀の現在、すでに充分に長い、ということを改めて私に突きつけるのでした。

2011/12/26 23:51:30

先にアップされた釜山レポートにあるように

この年末に、また風邪ひきまして寝込んでいました。迂闊です。
アップ前に記しておきたいと思っていたのですが、『ダムライフ』が釜山国際映画祭のニューカレンツコンペティションに招待された、北川監督の体験レポートがアップされています。この中にもありますが、10月に私がこのブログで記した、「受賞者とそうでない人の(表彰式入場の)ゲートが違うようだ」という北川さんからの連絡は、その場の混乱による間違いであったことがわかります。巨大な会場での導線つくり、難しい仕事です。映画祭はイベント。今回の釜山のように、巨大な会場で初めての表彰式を行うという場合の準備だけでも、どれだけの人材やリハーサルや打ち合わせが必要であろうか?と想像してしまいます。そもそも、会場が巨大であるということは、参加者の集合時間も、随分早くにする必要がありそうです。となると、仕込みは一体何時から?
つい職業病でそんなことをあれこれと・・・
しかし、新たなことに取り組むことを毎年繰り返している釜山。活力も生まれようというものです。「変わる」ことと「変わらない」ことがうまく組み合わされている状態は、理想的ですね、どんな仕事でも。「変わりたくない」という人たちの多い日本の(一部のパワーを持つ人たちだけ、と思いたいですけれど)状況をみていると、変わらないで何がいいことがあるのか、教えて欲しいなあ・・・とこの年の瀬に風邪ひいて寝ながら、しみじみ考えてしまいました。勿論、あの天災がなかったらと願いたい。その意味では、変わらないでいて欲しかった。が、世界は、この大きな犠牲のあと、賢くなれる、改良できると進むのが、人間の知性でありましょう。そもそも、年間3万人以上が自殺することが続いていた社会を「そのままがいい」と言ってはならないでしょう。個人的には、政治の中心地を福島に移すせばいいのにと思っています。江戸時代から行政は東京。もうそこに限界があるのではと。明治維新という言葉はあれど、単に人が入れ替わっただけで、制度はもしかしたら古代から現在まで千年単位で何ひとつ変わっていないみたいだなあ・・・と。東京ベースで先祖代々行ってきた行政の仕事をまるっきり変えることを意気に感じられる人が、新たに政治に参加してはどうでしょうか?守るもの、創るものは「国」で、官僚とか政治家とかの「家業」じゃないよね・・・
なんて、ここはそんなことを書くための場所ではないので、脱線してますが、首相が早稲田大学で学生たちに、TPPやら、消費税増税やらに反対する人たちの陰謀について話をしたというニュースや、外国人客接待のために国家予算が余る度に追加で買い込んだ高級ワインが47,000本たまってるとかのニュースが、泣けてくるのでした。早稲田大学にはPFFアワード入選を大学院への入学資格として扱っていただくことで、既に12名の方が学んでいます。カメラを通し人を正面から見つめる訓練を積んで来た彼、彼女らのことを思い出すと、そんな彼らに陰謀説を語る政治家・・・大学生の子供扱いされっぷりにびっくりしました。外国産ワインを買い込むセンスもしかり。海外の映画祭にお土産を持っていく場合、あるいは、来日したゲストを接待する場合、ポイントは「日本のもの」です。そこでフランスワインが登場したら、映画祭世界では笑いものだがなあ・・・政治の世界は違うのかなあ・・・いや、その前に国家予算をそんなことに・・・
余談ですが、ここ2年の私の国内外へのお土産定番は、十火の「丸」というお菓子です。毎年何か感動するお菓子をみつけてお土産に、と考えていろいろ試していまるのですが、一方で、間違いない定番というものもあります。虎屋の小さな羊羹のセットは、世界的に高い人気、はずれなしお土産と言えましょう。
食べ物の話は長くなるのでやめます。
話は戻りますが、北川さんの釜山レポートに続き、飯塚さんのバンクーバーレポート、そして、森岡さんの釜山レポートに、永野さんのバンクーバーレポート、と、年明けから順次体験レポートを掲載する予定です。2月には、最新PFFスカラシップ作品『恋に至る病』を持って木村承子監督がベルリンへ。そのレポートも引き続き・・・という計画です。ご期待ください。

2011/12/19 18:14:19

福岡で初めてのPFFスカラシップ特集

本日、園子温監督が福岡に『ヒミズ』のキャンペインに訪れておられるそうです。前作『恋の罪』公開中に、新作のキャンペイン同時展開・・・・売れっ子です。
その福岡で、年明け1月5日から、PFFスカラシップの特集が組まれることになりました。園監督の『自転車吐息』もラインナップされています。これまで21作品の製作をしてきたPFFスカラシップですが、今回、福岡では、会場となる福岡市総合図書館のキュレイターが11作品を選んでの特集です。
福岡市総合図書館は、映像のアーカイブを持ち、日本では東京国立近代美術館フィルムセンターと同じく、FIAF(国際フィルム・アーカイブ連盟)のメンバーです。特に、90年代から所蔵されているアジア映画は、宝の山と言えます。外部上映はほぼ不可能ですが、図書館内の映像ホール「シネラ」での定期的な特集上映など、収蔵作品お披露目を行っていますので、チェックなさることをおすすめします。

そんな「シネラ」でのPFF開催も、もう15年。毎回最新スカラシップ作品を紹介してきましたが、PFFスカラシップをまとめて観る事の出来る特集は、福岡初の出来事です。今回は全てフィルム上映。園監督の『自転車吐息』も、大変貴重な、この世に一本しかない、英語字幕も付いた16ミリフィルムでの上映です。先月末には、イタリアのトリノ映画祭で「園子温特集」が組まれていました。学生時代の8mm作品から最新作まで18作品を上映。およそ30年のキャリアを持つ、堂々とした巨匠なのだなあ園監督・・・・と、改めて認識です。

2011/12/16 12:34:07

『生きてるものはいないのか』を観て外に出たら、世界が違ってみえました

明日からPFFin神戸が始まります。オープニングを飾るのは「PFFアワード2011」からの2作品『春夏秋冬くるぐる』と『Recreation』です。それぞれの監督、日原さん、永野さんともご来場くださるのですが、『Recreation』は地元、神戸芸術工科大学在学中の作品ですので、教授の石井岳龍監督をお迎えして、師弟対談を企画しています。
石井監督が『突撃!博多愚連隊』でPFFに入選なさったのが1978年。33年後の今や後進を育てる側にたたれていることにしみじみするのですが、その神戸芸術工科大学の学生たちも参加したご自身の新作『生きてるものはいないのか』が、すごい。
前田司郎さんの戯曲を、前田さん自身が脚本化している『生きてるものはいないのか』。舞台は拝見しておりませんが、映画は、終わって外に出て歩き始めると、世界が全く違って見えるのです。
心底驚きました・・・・

というわけで、明日から暫く関西に滞在することとなり、本日はいささか修羅場。留守中の19日には、アップリンクで『あんたの家』上映と山川監督とジャーナリスト今井彰氏の対談が。元自衛官で気骨の人、山川公平監督が今井さんとどんなお話を展開するのか楽しみだったので残念です。また、「群青いろ」の上映会もこの週末。こちらはチケット完売という知らせをいただき、追加上映実現を祈っているところです。


2011/12/16 11:49:09

劇場デジタル化問題についての追記です。

二週間ほど前に、「デジタル化による日本における映画文化の未来について」というシンポジウムのことを書きました。既にその映像をご覧になった方も多いと思います。未見の方のために、パネラーの一人だった瀬々敬久監督が紹介なさっているものを載せておきます。『ヘヴンズ ストーリー』の公式サイトにありました。

http://ameblo.jp/heavens-story/day-20111125.html

新宿のK'sシネマで 先週まで上映していた『ヘヴンズ ストーリー』はDVD化予定がありません。できるだけ上映チャンスをつくりたいと思い、PFFが企画に参加させていただいている、所沢市主催のイベント「ミューズ シネマ・セレクション 世界が注目する日本映画たち」でも上映を致します。来年3月17日です。今回、K'sシネマでは、「ヘヴン=天」繋がりで、『天皇ごっこ』と『天使突抜六丁目』の相互割引サービスも実施したそうで、ちょっと感動してしまいました。『天使突抜六丁目』は気骨のプロダクション"シマフィルム"の贈る、京都を舞台にした一作ですが、監督の山田雅史さんのロマンチックさが色濃く出た忘れがたい作品です。京都のような古都を歩く時、こんな、どこにもない場所があるのではないか、と、ふと期待する人多いかと・・・

2011/12/01 23:41:12

ケン・ラッセルと侯孝賢と

ケン・ラッセル監督が亡くなりました。
私がPFFに初めて観客として参加したのが1987年、ケン・ラッセル監督の大特集と最新イギリス映画の特集に通いたくてでした。そして、これが、人生で映画祭の初体験でした。デレク・ジャーマン、ビル・ダグラス、アレックス・コックス、ニール・ジョーダン、デヴィッド・ヘア、ピーター・グリーナウェイなどなど。これら監督の作品上映チャンスが少なかった頃です。そして、告白します。当時「一般公募部門」と呼ばれた現在のPFFアワードが目的ではありませんでした。すいません。
しかし1987年。現在のPFFアワード応募監督のかなりが、まだ生まれていないなと思うと、大変な昔に思えます。映画祭カタログも買って今も持っています。後にPFFで仕事するなどカケラも思わなかったときでした。映画評論家の川口敦子さんのインタビューに、ケン・ラッセル監督が非常に感動していたのを覚えています。
そして、そのとき、実は、ケン・ラッセルより、多くのイギリス映画より激しいショックを受けたのが、偶然が重なって観た、侯孝賢監督の『童年往時』(原題であり、日本公開タイトルですが、PFF上映時タイトルは『阿孝の世界』でした)。そこから台湾ニューウェーブと呼ばれたあの時代を体験できたことを、しみじみ嬉しく思っています。
そして、侯孝賢監督と言えば、ナント三大陸映画祭。フランスで中国語圏の映画を積極的に紹介していた映画祭で、『フンクイの少年』(フンクイは漢字ですがうまく出ません・・・)で侯監督を高らかに世界に知らしめた映画祭です。これ、いわばチンピラ映画です。しかし、「映画の王道、それはチンピラ映画」ではないでしょうか?そのナント三大陸映画祭で『サウダーヂ』がグランプリというニュースに、改めて「チンピラ映画よ永遠に」と感慨が湧きました。
チンピラ映画の魅力、それは、「切なさ」です。断言してますけど。
そして世界に誇るチンピラ映画の本家、それは日活映画だったのではないかと。日活100周年を記念したチンピラ映画祭りをしたいくらいです。で、つい、ひとり映画祭して観てしまいました。『赤い波止場』(1958)と『紅の流れ星』(1967)二本立て。舛田利雄監督がセルフリメイクした二作です。ジャン・ギャバン主演の名作『望郷』をベースにした、東京から神戸に身を隠すチンピラの物語を、石原裕次郎(小栗旬を彷彿とさせます)が演じる『赤い波止場』そのリメイクは渡哲也(妻夫木聡を彷彿とさせます)が演じる『紅の流れ星』。10年という時の流れは、ヒロイン像を大きく変えていますし、ゴダールの『勝手にしやがれ』も導入したという『紅の流れ星』は、会話やスタイルに変化がありますが、どちらも切ないチンピラの話。あからさまな他の映画からのパクリは素晴らしいですし、あきらかに、後にこれらの作品を香港映画がパクって、更に震えるチンピラ映画を創りあげています。
映画は、盗んでなんぼだなあと、改めて思う二本立て。ただ、時の流れは映画産業の衰退も映し出して興味深いのです。『紅の流れ星』はあきらかに『赤い波止場』より低予算。60年代から映画産業の斜陽は叫ばれていたことを痛感しながら、でも今よりずっとお金あるなあと思うのでした。
この二作品をみたのは、神戸が舞台だからでもあります。
17日から始まるPFFin神戸。今回は夜の上映のみで8日間の展開。神戸には2日ほど参加しますが、その昼間に、これら2本の映画に出て来るロケ地を訪ねてみたいと思います。美術は両作品とも木村威夫さん。二作共通のロケ現場もあります。ロケから40年を超える月日が経っていますので、もう現存はしていないでしょうが、面影でもあればと期待です。
昔、映画評論家の宇田川幸洋さんが、史跡観光に行かなくても映画にすべて記録されているから、昔の暮らしは映画を観ればわかるというようなことをおっしゃってましたが、改めてそう感じる古い映画を観る喜びです。
あ、渡哲也さんといえば、東映映画ですが『仁義の墓場』これ、全人類必見。
・・・つい、映画ファンのブログ?になって失礼しました。
&ヨーロッパでは、中国語の出来る映画祭ディレクターがたくさん生まれた80年代なんだなあ・・・とふと思い出しました。

2011/11/29 01:37:17

デジタル化による日本における映画文化の未来について

と題されたシンポジウムが、フィルメックスの会期中に朝日ホール10階で開催されていました。が、迂闊にも逃した私。
その日、11階での上映が終わったあと、ロビーにアップリンクの浅井さんを囲む熱い熱気を発する人々の輪が・・・・「これは一体何?」と思いましたらば、階下で開催されたシンポジウム「デジタル化による日本における映画文化の未来について」の流れで、浅井さんがご自身の体験から、とりあえず試す価値ある、低予算で実現できる劇場のデジタル化のノウハウを引き続き伝授しておられるのだと、居合わせた利重剛監督に教えていただいた(あわわ)更に迂闊を恥じる午後でした。このシンポジウム、映像で観ることができるそうなので、これから検索してみます。
考えてみれば、PFFは現在、イベント開催会場の方々と映写技師の方々に頼ることばかり。昨年までの事務局は試写室を持っていましたので、8ミリ、16ミリ、35ミリ、デジタルと、全てのフォーマットに対応できること、スタッフも映写できること、が目標でしたが、それがなくなってから、一挙に弛緩してるのか自分?と深く反省しました。
それにしても、ノウハウを伝授する浅井さんの姿、頼もしかった。いつも「インディペンデント」という言葉が浮かんでくる方ですが、アップリンクの紹介する映画のように、ニッチなマーケットがとても重要だと改めて思う会話を、先日海外からのお客としたことを思い出します。
フィルメックスに合わせて来日した方々がいます。メイルでしかPFFとの交流のなかった方々と、そんな来日チャンスに直接お会いできるわけですが、今回は、PFF作品を頻繁に上映してくださるカナダの新しい、しかし熱心で誠実な映画祭、「新世代映画祭」のクリスさんと、『川の底からこんにちは』『ハラがコレなんで』を配給してくださるイギリスのthird window filmsの、アダムさん。「日本映画にこだわる西欧の映画人はみな友達!」という側面がありますので、やはり二人はお友達。別々のアポイントメントで始まったのに、いっしょくたになってしまいました。
アダムさんは、惚れた監督の作品をずっと紹介していくことに情熱を注いでおり、石井裕也、園子温、中島哲也、藤田容介、三木聡、といった監督を、可能な限り紹介し続けたいのだそうです。「海外で三木聡BOXを出したのはうちだけ!」と威張っていましたが、もっといろいろな監督と出会い、たくさんイギリスに紹介したいのです。
イギリスは、日本のようなレンタルビデオショップマーケットはなく、セル主流。それも、セルで一本数百円からというのですから、感覚が違います。ただし、セルの本数は、日本と同じく、メジャー系でなければ、数百本・・・それで公開とDVD販売で商売が成り立つのか?と不思議なのですが、ニッチなマーケットは手堅いとおっしゃる。『おくりびと』がめちゃコケるイギリスでは、癖の強い映画が強いのだそうです。
ただ、日本の制作会社、配給会社は、Celluloiddreams とFortissimoという、アジア系作品のセールスに強いと言われる2大エージェントはじめ、大きなところに作品を預け、高額で売ろうと狙うことが近年常識になってしまったので、彼らの商売では値段が上がりすぎて、時間をかけても、結局売れない=買えないということが起こりすぎていて、ほんとうに残念なのだと。小さいけれども、情熱ある会社に個別に対応してくれるほうが、結局はずっと得なはずなのに・・・と嘆いておられました。
とてもよくわかります。
日本映画、近年海外セールス苦戦。いえ、日本映画に限らず、小さい映画は世界中で冷えてます。
私が、出会う映画人(いや、映画祭人とか映画監督ですね、正確には)に近年よくする2つの質問があります。
Q:お国で有名な日本の監督は? A:ほぼ間違いなく、北野武と宮崎駿です。
Q:あなたが個人的に会いたい監督や、好きな映画は?A:非常に高い確率で、黒沢清と是枝裕和です。
これらBIG4の作品がどのくらいセールスに成功しているのか?となると、宮崎駿以外、楽観的な数字ではないのではないかと思われます。が、小さい売り買いをコツコツやることを覚悟すれば、意外にまだまだ開拓できる顧客がいるのではないかと、ビジネスに積極的にタッチしない私でも感じるのです。
それにしても、「好き」とか「会いたい」とかに挙がる黒沢監督と是枝監督。近年ますます、その技術の冴えにほれぼれするお二人です。黒沢監督のWOWOW作品、楽しみです。
*文中敬称略・五十音順で失礼しました

2011/11/28 05:22:33

愛?

東京フィルメックスが終了し、チケット3枚を使えず終わりました。が、これでも私にとっては成績がよい。以前、某映画祭で買い込んだ前売りを1枚しか使えずに終わったときもあったのを思い出し今更がっかりしたり、何度「当日券主義になろう」と誓ったのかも思い出したり・・・・今回はかなり慎重にスケジューリングしたつもりだったのですが、東京で仕事をしていると、どうしても仕事優先にせざるを得ない時があることを改めて痛感です。
それはともかく、一日に5作品観ることが可能なフィルメックスですが、今回は一日4作品参加が最多な日となり残念ではあるものの、多彩な映画をまとめて観ると、色々と刺激されます。
しみじみと思ったのは、「愛」。
正体の知れない、なんらかの映画への愛、映画製作への愛、が心を揺さぶるのだなあと、久方ぶりに初心に戻るようなことを感じてしまいました。そのきかっけとなったのは、『これは映画ではない』。「愛」としか言いようのないものが、そこにありました。
そこから、「愛」にも多種多彩なものがあるなあと折々考えています。たとえば、「映画愛」はたまた「自己愛」で映画は成り立つか?ということなどなど。と、頭ぐるぐるしてるときに、立川談志さんの訃報。
ご自身が落語というか、落語とイコールな存在というか、そんな稀有な方が死ぬということがあるもんか、と、多くの方がお感じになるように、私も呆然としています。そこから、ぐるぐると「では、映画監督における、映画とイコールな存在って?」と考えています。映画は、ひとりではできない創造だから、そんな存在は有り得ない、という結論も含め、ですが、それでも、そのポイントは?と。映画の技術?才能?映画への愛?敬意?畏怖?本人のチャーム?情熱?。簡単に答えが出るとも思えませんが、とにかく数日で必死にみた9作品を通して、不調な思考回路のメンテナンスも始まった感じの充実感があります。
そして、仕事と関係なく映画を観る喜び。この快感を感じることが、映画を仕事にする不幸とも言えましょう。

この週末は、随分以前にお伝えした「映画屋とその仲間たち」の4回目のボランティアバス出発でもありました。木曜夜から土曜夜までを使い、被災地で映画上映とフリーマーケットを行うのです。前回9月はPFF開催と重なり、さすがに誰も参加できなかったPFF事務局ですが、今回は3名参加です。私は東京で入稿間際の印刷物との格闘が必要で離れられませんでしたが、毎回同じ場所を訪問するこの活動、継続の力を発揮していることを参加者のお話しを伺うたびに感じています。
次回は1月、そして3月と、極寒の時期。寒さの想像がいまひとつできていないことに気づく今日この頃です。

2011/11/19 16:20:45

群青いろ作品とかエンディング・ノートとか

「群青いろ」は脚本家で監督の高橋泉さんと、俳優で監督の廣末哲万さんで構成される映像制作ユニット。2004年のPFFアワードで、それぞれの監督作品『ある朝スウプは』『さよなら さようなら』が、グランプリと準グランプリとなり、その後『ある朝スウプは』が劇場公開ヒットと同時に海外でも多くの受賞をし、一躍注目を集めました。その前もその後も、多くの作品を生むふたり。高校中退後完全に独学で映画をつくってきた二人は、最初、録音の方法がわからずサイレント映画を撮っていたとか。近年の長編作品は、PFF、東京フィルメックス、東京国際映画祭などでお披露目されてきました。ただし、「群青いろ」の作品でDVDで観ることができるのは、『ある朝スウプは』『さよなら さようなら』『14歳』のみ。他は上映の機会を逃さず観るしかありません。
そんな彼らの久方ぶりの自主上映会が決定という連絡をいただきました。12月18日午後5時から渋谷オーディトリウムにて。(最近頻繁にこのブログに登場する渋谷オーディトリウム。ものすごい数のイヴェントが行われていて、スタッフの気力体力に感服するばかりです。)昨年、東京国際映画祭でお披露目された最新作『FIT』の上映と、これまでの制作作品のダイジェスト紹介、トークショーなどで構成されるそうです。
『FIT』の東京国際映画祭上映に参加なさった方はお気づきでしょうが、あの会場で使用された英語字幕版は製作上の不備でいささか完璧な状態とは言えませんでした。が、その後ダビングをやり直し、素晴らしい状態のものが完成。ベルリンや香港での上映は大変美しい画面でした。この機会を逃すと次はいつ上映されるかみえない『FIT』。監督の廣末さんの作品を観続けている方には、驚きの新境地をみせられる渾身の力作です。

廣末さんのことを紹介していると、どうしても思い出すエピソードがあります。それは、2003年就寝中にアパートが火事にあった話。着のみ着のままで部屋を飛び出し難を逃れたものの、部屋には『ある朝スウプは』のビデオテープ(懐かしの8ミリビデオ)が入ったままのカメラが・・・・諦めるしかないと煩悶するなか、鎮火後の瓦礫の中から出てきたカメラの中身が奇跡的に無事で、PFFアワード2004に応募できた。と。嘘のような本当の話です。
そして、その火事は、階下にひとり暮らしの老婆が、電気代が払えず蝋燭の灯で暮らしていたことが発火原因でした。夜中に起きたときに灯がなければ不安です。そのために灯していたのでしょう。アパートは、『ある朝スウプは』の舞台にもなっている、一部屋と台所にトイレのみついた造り。かつては学生や新婚夫婦の生活場所として活躍していたタイプのアパートですが、1980年代後半からは、独居老人の入居が増え続けている、先日新宿で火災にあい多くの被害者を出したアパートと同じ系列の、"風呂なし低家賃"のアパートです。
1980年代からと書いたのは、橋口亮輔監督が90年代中盤まで同様のアパートで暮らしており「新規には一人暮らしの老人しか入ってこない」という話に驚いた記憶があるからです。すでにその頃から、老人の居住可能な住宅問題は始まっていたことを、改めて思い出しました。
かつては社員として生活を保障されていた「映画監督」という職業。現在ではフリーランスとして生きていくわけで、新たな立場での老後生活のサンプルケースがまだありません。ひとごとではない課題です。
また、かつては「社員」だったと同時に、「スタジオ」という職場に出勤していた映画監督。こちらも遥か昔の夢のような暮らしです。が、しかし、たまにスタジオで撮ることの出来る映画もあります。内田けんじ監督の新作は、フルセットでスタジオ撮影、35ミリ2キャメと聞き、いにしえの映画製作の日々を体験できるというだけでも感嘆しました。完成が大変楽しみです。

話がまたそれてきました。やっと拝見できた「エンディング・ノート」です。
一流大学を卒業して、一流企業に入り、役員まで務め退職し、専業主婦の妻としっかりした3人の子供と、仲のいい会話のある家庭を築き、これからゆっくりしようという矢先に末期がんが発見された父の死の準備を、末娘である砂田麻美監督が追う作品です。この一家を観ていると、とても懐かしい感じがするのです。多分、ここに「想定される日本の家庭」の象徴のような一家が登場するからではないかなと。あらゆる日本の家族のイメージ、消費者としてメーカーやメディアから想定される家庭、学校で語られる「家族」、そんな姿がここにあるなと思いました。日本では6000万人位という就労者のうち、大企業と申しますか、上場企業と申しますか、そんな職場にいるのは1200万人位だとか。この1200万人余りを前提に社会「イメージ」がつくられているのだなあと、妙に納得したのでした。「現実」は勿論違うのですが。
そして、もうひとつ、この映画ではっと気づかされたのが、「カメラを向けられることに慣れている主人公」です。監督のお父様、砂田知昭さんは、若いときは8mmカメラで、監督の麻美さんが成長されてからは彼女が常に持ち歩くビデオカメラで、膨大な映像を記録されています。記録されることが日常になっていることも、その発言が整理され、明確で、他者に向かう態度もオープンであることに繋がるのではないか?と感じられてならなくなりました。砂田知昭さんの世代では珍しい「記録される」暮らしですが、現在ではもっと頻繁に生まれています。今後の人々のメンタルが、撮られることで変化する=しているのではないかと、改めて考えはじめています。


2011/11/18 10:37:48

完売・・・それは甘美な響き

ぼやぼやしていたので、東京フィルメックスのチケット購入が駆け込みになってしまいました。平日昼間3回券の販売は一足先に終了していて、あわわわ~と涙。チケット販売の注意事項はちゃんと読まなくちゃね!と自分に注意。そして、購入中、完売回が次々告げられ、ひゃ~!と嬉しくなりました。イベントをやっていると、「完売」とか「売り切れ」ほどゾクゾクする言葉はありません。「いいな~」とうっとりしてしまいます。
完売、それは、①公開されるかどうかわからない作品。あるいは、②公開決定しているけれども、少しでも早くみたい作品。に生じがちです。PFFの場合、「PFFアワード」作品はあきらかに①なのですが、いわゆる一般映画のように完売が難しいのが現実で、毎年告知に工夫を重ねて改良を目指しています。いつか、軒並み完売!となりたい。
と「いつか」という言葉を使いながら、自分が結構長く映画祭に関わっているなあ、結構長く生きてるなあと思うことが最近ちらほらあります。
たとえば、佐藤雅子さんという方の料理本が復刻されました。「私の保存食ノート」「私の西洋料理ノート」の二冊。これは、私が少ないお小遣いをやりくりして人生で最初に買った料理の本でした。当時1,000円。復刻版は2,500円。その差に、なんだかものすごく長生きしてる感じがしてしまいました。確かロッキンオンでどなたかがこの本に触れていたので買った記憶があります。久しぶりにみてみると、当時、スパイスやら食材やらが今より遥かに入手困難だったことを思い出しました。そのあと、山のような料理本を試してきましたが、子供時代に本屋で悩んで一所懸命やりくりして買った本や物は、何度の引っ越しでも手放さないものだなあと、改めて確認したのでした。一方で、現在では料理本を読めば、おおよそその味がわかるかも・・・という料理本読み(ちょっと自慢かも)。何でも数を重ねれば、見識が生まれると信じたい、年月を重ねるほど賢く鋭くなると思いたい今日この頃。映画もたくさんみなくちゃね、と映画祭をおすすめする次第でございます。
神戸近郊の皆様、「PFFin神戸」チラシ配布が始まりました。神戸は座席指定制ではないので「パスポート」があります。毎日KAVCに通うことの可能な方には、お薦めしたいお得なチケットです。

2011/11/15 15:37:39

ベルリン・香港来日中

ベルリン国際映画祭のフォーラム部門ディレクター、クリストフ・テルへヒト氏は先月来日しましたが、今月は、パノラマ部門のディレクター、ウィーランド・シュペック氏がコンペ部門や他のセクションの候補作品ピックアップも兼ね来日です。近年、韓国、日本、台湾、中国と、アジアプログラミングの旅に同行する香港国際映画祭のプログラマー、ジェイコブ・ウォン氏も同時に作品を選びます。
PFFはベルリン国際映画祭ではフォーラム部門との縁が深く、パノラマ部門やジェネレーション部門への出品は数度しかありませんが、現在、ベルリン国際映画祭で最も長くディレクター職に就いていることになるこのパノラマ部門のウィーランド氏とは、最も長いおつきあい、と言えるかもしれません。
映画監督への道を探して、俳優としてスタートし、ミュージシャンでもあったといウィーランド氏は、自身が運営するパノラマ部門の「テディアワード」に象徴されるように、セクシャルマイノリティーの映画紹介にも力を入れています。ご本人もゲイで、パートナーと落ち着いた暮らしをしておられます。と書いていたら、10年ほど前まで、映画祭運営に携わる人には、セクシャルマイノリティーな人々が今よりずっと多かったなと、思い出しました。
ディレクターも、プログラマーも、映画祭スタッフも、配給や宣伝の方も、評論家も、マジョリティーがセクシャルマイノリティーで、マイノリティーが、ヘテロという感じですらあったような・・・ちょっとオーバーかなあ・・・いや、ほんとにそんな感じだったのですが、昨今、逆転している気がします。近年、さまざまな職業に就くチャンスが拡がっているのだと理解していますが、どうなのでしょうか。
と、そんなことを考えたのは、本年のPFFアワード入選作品『僕らの未来』の上映が、21日に精神科医の針間さんをお迎えして監督の飯塚さんとの対談つきでアップリンクファクトリーで行われると聞いたからです。
かつて、飯塚さん自身が「性同一性障害」の専門家である針間先生のカウンセリングを受けておられたということですが、今回は、針間先生から飯塚さんが作品の感想を聞く初めての時間になるかもしれないという話も企画者から伺いました。飯塚さんが映画監督としてこれからどんな作品をつくっていくのか、第一作である『僕らの未来』を目撃して、その先も多くの方が見続けてくれるきっかけになるといいなあと思っています。ひとりのつくり手の変化を見続ける人が増えること、が映画祭運営の喜びでもあり、つくり手自身の励みにもなるのではと思うのです。

話は戻りますが、ベルリンと香港のおふたりと話をしていて、劇的に増加したデジタル作品、減少した35ミリフィルム作品の話になりました。
本年は世界的に急速にデジタル化がすすみ、日本でも、待っていた約30本の候補作品中、1本しかフィルム作品がない、と。メジャー系劇場のデジタル化驀進中ですので、それに合わせて世界で一斉に起きていることなのですが、これは同時に、デジタル装備を導入できない(予算がない)アート系小劇場にとっての危機的状況にも繋がっているという話になりました。ドイツでは、既に切実な課題になっているそうです。
そして、話はどんどん飛んで行ったのですが、今、ヨーロッパでは「イタリアの若者と日本の若者が怒りを表明する日」が期待されていると。両国とも同じような経済的苦境に陥り、同じような歴史を持ち、どちらも若者がじっと黙っている。と。60年代&70年代の学生運動が激しかった日本とイタリア。どちらもその時期に公務員(機動隊とか警官とか公安とか)を大幅に雇用拡大し、昨今、その人たちの退職時期が重なりいわゆる"天下り"先創造のために、むちゃくちゃなことが展開されている。つまり「公務員最優先社会の肥大化に伴う未来ある若者への顧慮のなさ」が同じ状況だと。そういえば、イタリアと日本、うつ病患者の多さや、母親依存の高さも共通と言えないこともないか・・・など、思わずイタリアについて考えた、ドイツ・香港・日本の会話でした。
もうひとつ話が飛びますが、今回、311関係のドキュメンタリーが、少なくとも12作品完成しているということです。まだ制作中の作品もあるでしょうし、テレビ作品もあるでしょうから、きっと膨大な数生まれているのです。これらの作品を一挙上映というだけでも、1週間でも足りない企画になるのだあなあと、つい映画祭モードでカウントして驚いたのでした。


2011/11/14 00:05:30

自分のことより他人のこと

ただ今公開中の『ハラがコレなんで』(略称ハラコレ)は、言葉足らずな映画だなと、いろんな人たちの反応に触れて改めて感じています。
おしなべて、うまく自分のことを伝えることのできない人が、映画の主人公には多い。つくり手もそんな人が多い(?!)ので、おのずと言葉で語るのみではなく「伝える」工夫をしていきます。映画には、画があり、音があり、時間があり、語らずとも語るところが、他の表現との差異となるわけです。つまり、映画が「総合芸術」と呼ばれる所以でもあります。
ハラコレは9月の第33回PFFで特別上映をさせていただいたように、今、多くの方にお薦めしたい映画です。何故なら、主人公は「自分のことより他人のこと」だから。今、21世紀のキーワードは、そこにあると思うからです。
が、あまりうまく伝わらないようで、もどかしく感じているところです。未見の方も多数おられるでしょうから、漠然とした言い方になってしまいますが、常に他人のことを考えることが、ひいては自分の人生を豊かな未来に向かわせる、という単純かつ明快なこれからの世界の行方を描くことに挑戦した映画です。
この映画のエンディングから10年後、あるいは20年後、主人公は間違いなく、新たなコミュニティで、いわゆる"幸福"な日々を送っている、少しづつ、世界は豊かになっていく、と思います。が、その姿を想像できる人は、能天気な楽天家だけなのかもしれません。しかし、見えない未来の不安に脅かされ日々疲れて行くよりは、見えない未来の希望を具体化する日々のほうが、何かを生むことは間違いないでしょう。映画は、見えない何かを見せる道具。映画祭は、そこに向かう映画を、より多く紹介していける場所でありたいと思っています。
(見えない未来の不安に脅かされる日々、とは、たとえば、柔らかな脅しと化した宣伝で煽られる、将来への不安や健康への不安などが、とてもわかり易いかと。あるいは、他人と比較して自分を劣っている、遅れている、損している、と思わされる広告を浴びる、とか。ここ1,2か月でまた増えてきたような。そんなことやってる場合ではないのではいかなーという人が、映画をつくっていると思います)
ともかく、公開中のハラコレをご一見いただければ嬉しいです。幸福への近道、結構簡単だな~と。
そんなことを考えながら、今、来春の所沢での映画イベント「世界が注目する日本映画たち」ラインアップの大詰めにかかっています。対象になるのは、この1,2年、国内のみならず海外でも話題の日本映画です。チラシの制作も目前ですので、再見できるものは再見してと務めているのですが、なかなかこの時期にスクリーンでみることは難しく、DVDでの再見となる作品もあります。
数日前には、『奇跡』のDVDが発売されたので再見しておりました。ふと気づくと、この作品と『ハラコレ』の制作時期は近いのです。どちらも震災前に撮影され、その後の社会を予見しています。そして、『奇跡』も、自分のことより他人のこと。と、ちょっと強引に言ってしまえば、そんな映画です。
来春の「世界が注目する日本映画たち」は、3月16,17,18日の三日間。都内に映画を観に行くのはなかなか難しいという方々のために、一挙に必見の国際的話題作をお届けしようという企画で12回を数えます。今回からは、デジタル作品の上映も可能になり、プログラム対象作品の幅が広がったことで、傑作の山に悩む日々です。11月中にラインナップを発表し、年内にチラシを完成です。
こうして、仕事柄年々邦画を観る割合があがり続けています。今の目標は、週に最低一度は欧米作品をみに行く!アジア映画は映画祭でまとめてみる!と、中学生の目標日記みたいなブログで失礼しました。

この週末からはTOKYO FILMeX。監督自作自演の『ムサン日記』自主映画作家の皆様是非みて欲しいです。そして、特集される相米監督作品のラインナップをみていると、プロデューサーとの幸せな共犯関係をしみじみ感じます。プロデューサー志望者に是非通っていただきたいです。
と、よその映画祭宣伝してみました。
(相米作品、海外に紹介される機会少なく来ていますので、これをきっかけに変わってくるかもですね!)

2011/11/06 03:26:51

不覚にも行けなかった山形

山形国際ドキュメンタリー映画祭。前回は多忙で伺えなかったので、本年こそ!と意気込んでおりましたら、まさにそのとき風邪でダウンしたので「・・・寒いところはやめておこう・・・」とまたまた断念。そんな私に、親切にもカタログを一式送ってくださった事務局。感動して早速拝見しましたら、もう、涙、涙。悔し涙に暮れる日々です。
最大の涙は、市岡康子さんが審査員を務められると伺ったときから予想できたのに、改めてすごいテレビドキュメンタリーの特集!!!!のけぞりました。観たかったもののオンパレードです。勿論牛山さんの作品の数々.そして、実は、高倉健が壇一雄の愛したポルトガルの村を訪ねる「むかし、男ありけり」をみたかった!と、チラシを見ながら泣く土曜日。「這ってでも行け!映画祭」という声がはっきり聞こえました。
実は東京国際映画祭も、夢見た何割かしか通えていません。コンペなんて、一作品のみ、『デタッチメント』しか拝見していません。とほほ。ジェームズ・カーンが出ていること、トニー・ケイ監督がデジタルについて熱く語っていたこと、主演のエイドリアン・ブロディがエグゼクティブ・プロデューサーのひとりでもあること、などに興味を惹かれたのです。この作品、崩壊する公立高校が舞台なのですが、現役の高校教師の方はどのように捉えるのかなと思いました。早晩来るであろう日本の姿?そうではなくあって欲しいけど。
(唐突ですが、PFFが製作した『家族X』は、東京上映の際に高校生の映画鑑賞授業となる幸運に恵まれました。この作品をご覧になった高校生が、「親とちゃんと話してみよう」と思ってくれれば無茶苦茶幸せですが、まあ、それは置いといて、高校生が映画を映画館で観るチャンスは、もっと増えてほしいなと思います。)
高校生ではありませんが、大学生のつくった映画の話で(PFF関連の話ではないです)『西安の娘』『蟻の兵隊』の池谷監督が今立教大学で教えておられ、その教え子である赤崎正和さんの、『ちづる』というドキュメンタリーが話題です。監督の赤崎さんは、長く、重度の障害を持つ妹ちづるさんのことを人に話すことができなかった。が、この映画製作を通して、ご本人が変化した。これが、学校の課題を含む自主制作の存在価値でもあるなと思わされます。『ちづる』は、母という存在の奇跡に気づくことなく甘える子供の記録の部分もあるのですが、「人に話せない」という状況がなければないだけ、人生ラクだよ~ん!と、早く多くの人が開き直って欲しいなあと、しみじみ思う作品でもあります。
(「人に話せないことなんてないのだと気付くと人生ラクだよ」と大人は言おうキャンペーン!を繰り広げたいですね)
あ~、だんだん何言ってんだか~になってきましたが、別の話として、多くの映画監督が多彩な学校で教えておられることが、PFFにとって苦しくなってきています。と言うのも、応募作品のある学校で教えておられる方に、審査員を頼むことは出来ないからです。これ、予想以上に厳しい現実です。すごく困っているのですが、ふと自分を振り返って考えてみました。
海外の映画祭の審査員をお願いされたとき、そのラインナップにPFF関連の作品が入っている場合は、お断りしてきました。フェアではないから、と。が、もし、引き受けていたとして、「自分の知っている作品に、何らかの特別配慮をしたであろうか?」と問うと、「有り得ない」と即答できます。作品を作品として観る訓練は十分に出来ているからです。では、何故断るのか。それは、「そのことを理解しない人たちがいることがわかるから」としか言えないのかな.....と。つまり「あらぬ憶測をされたくない」という面倒回避の判断かと思った次第です。.同じく、PFFで審査をお願いしたい監督たちも、自分の教え子の作品がラインナップにあったとしても、そこに惑わされず審査に向かわれると思います。しかし、そこに疑いを持つ人をどうするか?これが映画祭に問われているなと、しみじみ思うのでした。
え~、どんどん話が飛んでますが、「審査は厳正。そこに裏取引はありえない」このことが映画祭世界は常識なのですが、そのことをしっかり理解してもらう努力が必要なのかと、また新たな課題です。

話は戻りまして、行けなかった山形ですが、実は審査に参加なさったアトム・エゴヤン監督とは監督が日本を去る前日に東京で、山形の東京ディレクター藤岡さんのお誘いで楽しい時間を共有できました。(監督の初期長編であり、海外への展開のきっかけともなった『ファミリー・ビューイング』の上映にかつてPFFが関係したいたことも効果あり?)奥様で監督の映画にも多数主演なさるアルシネ・カーンジャンさんも勿論ご一緒。二人合わせて何か国語喋れるの?というお二人ですから、日本語への興味、日本文化への興味も並大抵ではありません。
そんなお二人の一番印象に残るお話しは、ある国際映画祭でのエゴヤン監督のハラハラした体験。
某、超アートな映画作家の回顧展を成功させた某小さくない映画祭の話。クロージングのスピーチに登場したそのアート監督。気難しい彼にしては珍しく喜びもあらわに感謝のスピーチをなさって、それを受けて、その映画祭開催国の首相登場。締めの言葉を言うわけですが、そこで「○○監督の特集が成功して誠に嬉しく誇りに思う。○○監督には近い将来ハリウッドで大成功して大監督としてまたここに戻って来てほしい」と言ったそうな。
しーーーーーん。としちゃいますね。
エゴヤン監督は言葉がわかったので、優秀な通訳に眼で一所懸命にサインを送ったら、勿論優秀な通訳、うまくすっとばして話をまとめて「めでたしめでたし」だったと。
通訳。ほんとうに大切です。
それはともかく、少なくとも、スピーチするなら特集監督の作品を観ておくとか、資料で知識を入れとくとか、最低のマナーでは?
しかし、世界中の政治家、官僚、エスタブリッシュメントのアメリカ崇拝、度が過ぎているというかナイーブですね。呆れて誰も注意しないのが世界の衰退につながったのかなあと、大人として反省しました。
ともあれ、「一方的な片思いは未来なし。相手に追いかけてもらえる魅力をつける。」これが恋愛のテキストブックでは常識ではないでしょうか?
がんばれ恋愛道!・・・・って、そんな世界ですかね?

年内最後の都内で開催される映画祭「東京フィルメックス」開催も間近。
今度こそ、這ってでも行きます。

2011/11/04 14:22:25

お金持ちはドリーマー?

東京国際映画祭会期中は、同時に世界の映画人が東京に集合していた時期でもありました。
海外に作品を紹介する仕事の山が大きくなる日々も一段落し、今は一番胃の痛い「年明けの各国映画祭からの結果連絡待ち」の日々に入ってます。明るいニュースを近日中に発表したいものです!!
同時に、神戸のPFF開催の詳細が決定し、ただ今発表の準備中です。
今回、第33回のPFFは東京開催時期の変更に伴い、各地の開催時期も再検討。神戸12月、京都は年明け、福岡と名古屋は春になる見込みです。公共の施設は予算削減が、映画館は動員の低下が変わらず重い話題という、映画に関連する会話に、お金の苦労が入らないことは皆無な現代。「お金」ってとても大切だと思います。それを使ってできること、沢山ある。勿論PFFも資金の苦労なく運営してみたい・・・でも、「今この現実でできることをやる」のが仕事です。
映画祭の資金集めについて、海外の方法を伝授くださる方々もいます。アメリカでは「寄付」、ヨーロッパでは「公的援助」が大きいのですが、自分で昔から感じていたことを相談したりもします。たとえば、ロッテルダム映画祭の行っている「ヒューバート・バルスファンド」。サードワールドの映画作家の製作援助ファンドです。ここに、日本の監督も対象として入れてもらえないかな~という相談。無理だと知りつつですけれども。勿論、海外の映画人は、日本が驚異的に平等な国で、誰でも映画監督になるチャンスを持ち、映画人たちが世界でも珍しい生活のすべてを映画に費やし経済的に不安定な状態を続けている人たちであることを知っています。精選された一種のエリートで、それなりに経済的に恵まれている人たちが監督になるケースの高い欧州及びサードワールドの監督たちより、はるかに経済的に苦しいことを知ってます。が、国家の経済で言えば、日本はやはり高水準で援助の対象にならないのです。サードワールドは貧富の差が激しすぎて、たとえ映画に関わる人が日本の映画人より遥かに高収入でも"平均値"でぐっと下がる訳です。別の側面からみると、日本の監督はそこそこ食べて行けるから、映画に関われるという見方もされているということですが・・・国家と個人は"国際的"にはいっしょくたなのを粉砕できない無力さを感じる瞬間です。
とはいえ、別の見方をすれば、内需でそこそこ生きていける基盤を持つ日本であるとも言える訳です。
そして、世の中「お金」のために変になっていくとことに無自覚でいるのはもっと怖い。
目的があってお金が欲しいのと、「お金」それ自体が目的になるのでは、ちょっと事情が違うのは、こつこつ働いている人たちには当然わかっていること。お金を集めること、回すこと、増やすことしか興味のない世界の大金持ちの皆様は、世界が、未来が、自分たちの為のお金回収マシンだと思っているのだなあと、何度も何度もため息の出るニュースが続く毎日。少なくとも日本に於いては「大切なこととそうでないこと」がくっきりと明確になった3月のあの日からの体験があるはずなのに、まだまだ夢見る人の数は減らず、どこまで現実逃避するのかな~金持ち!(ここで"お金"から"お"をとってみる)、と心から驚愕する日々です。例えば期限の迫るTPP。一瞬PFFと紛らわしい(そんなことないか・・・)ところが更に気になるわけですが、世界経済とかグローバルとかいう言葉の元に世界を一括してコントロールしたいって、漫画か映画の中だけにしてください!です。考えれば考えるほど、『ダイハード4』か、『ターミネーター』か、が現実にやって来てますが、しかし、現実の世界に、超人ジョン・マクレーンも、ジョン・コナーも、無敵のターミネーターもいない。オソロシイ。「資産について考える合間に週に一本は映画をみて、夢想と現実の堺をちゃんとできる大人になってくれ!」という気分です。
TPPが具体的な恐怖として迫ってきたのは、昨年小さな報道がされた「ミツバチが消えている。原因不明」が気になってからです。ミツバチ。それは映画を観る人には甘美な響き。タイトルに「蜂」がある映画で忘れ難いのものは数ありますが、エリセの『ミツバチのささやき』アンゲロプロスの『蜂の旅人』は誰でも思い出すのでは?そして、花を追って旅する養蜂家の暮らしにイマジネーションの刺激されないクエイターはいないでしょう。(昔の漫画でちばてつやの名作「風のように」もありますね)その蜂が消える。なにごとか?とニュースを追っていましたら、ヴェトナムで使用された枯葉剤でも有名なモンサント社の殺虫剤ネオニコチノイドにより蜂の免疫不全が起こり、中枢神経と方向感覚の麻痺した蜂が帰巣できなくなった結果だと。そして、モンサント社はTPPをとってもとっても推進運動中とか。と、具体的な会社名を挙げる性格ではないこのブログなのに、なんという場違いなことをしている私。でも、こんな話って、『ターミネーター』を思い起こさせませんか?
まあ、現実が映画よりすごいので、映画産業衰退中でもあるわけですね。がっくし。
そういえば、先日の「ディズニーワールドに行きたかったので資金づくりに子供を100万円で売った」というアメリカの母親の話も仰天でしたね~。ぱ~っと『ミリオンダラーベイビー』のヒラリー・スワンク扮するマギーの母を思い出しました。(マーゴ・マーティンデイル。すごい女優です。)と言いながら、「ディズニーワールドってそんなに素晴らしいところなの?初体験しなくちゃ~」と思わされるところもあり、危険です。「あれ?なんだこれうまい宣伝だったの?」とかね。
『トゥモローワールド』『ソイレントグリーン』『日本沈没』『ターミネーター』『ダイハード4』思い出しすぎて気持ち悪いくらいの毎日です。
で、今週末公開作品では『ハラがコレなんで』お薦めです。いろんなことから解放される話。監督はまだ20代。これからの時代は1980年代生まれに委ねたほうが賢くない?密かにそう感じる人たち多くないですか?いやま~「ハリウッドチャンネル」とか読んでいると、とほほな20代も山盛りではありますが・・・

*有名なブログですが一応ご紹介です。
「サルでもわかるTPP」

2011/10/24 01:20:17

東京国際映画祭が始まりました

先週、金曜夜は、激しい雨に驚きながら、翌日の初日の準備に忙殺されているであろう東京国際映画祭(TIFF)のことを考えていました。現場の施工はじめ、大がかりな対策が必要な大規模な映画祭ですから、無事好天で迎えた初日の安心はいかばかりかと思います。他人事ながら「よかったな~」と。天気が気になる仕事、それは映画祭です。いや、殆どの仕事はそうなんですけど・・・("好天"と"荒天"は一字違いで同じ音なのが皮肉ですね)
土曜日は『家族X』トークイベントがあったりで、まだ参加できていないTIFF。折角の都内での映画祭ですから、会期中できるだけ多くの映画を観たいものだと考え、遅ればせながらプログラム検討に入っています。(また今年も出足が遅れました)
TIFFでは、26日13:20から、TOHOシネマズScreen6にて、PFFアワードグランプリ作品『ダムライフ』の特別上映があります。その上映前のシンポジウムでは、昨年の「日本映画・ある視点」部門の作品賞を受賞した『歓待』のプロデューサーを迎え、その後の作品展開についてじっくりお話を伺うそうです。昨年は"自主映画"というテーマのもと、私もシンポジウムに参加したこともあり「日本映画・ある視点」部門の作品は全て拝見したのですが、『歓待』傑作です。このブログをお読みの方で、多分未見の方はおられないとは思いますが、近年の日本映画で、国内外で素晴らしく評判となった作品のひとつですので、世界展開を目指す方々には参考になるお話が聞けるのではないでしょうか?
また、本日、19:00からは、六本木アカデミーヒルズ49オーディトリアムにて、「海外映画祭プログラマーサミット」が開かれるそうです。「ユニジャパンエンターテインメントフォーラム2011」の一環です。二時間に渡り、日本映画を頻繁に招待する海外映画祭のプログラマー5名が日本映画について話をするそうです。
そもそも、直前に開催される釜山国際映画祭に参加して、東京国際映画祭までの日々を近隣国での作品探しに使う、という<韓国・日本を含むアジアの旅>を設定するプログラマーは少なくありません。こんな企画がもっと増えるとパネラーにとっても経済的に助かる、お互いハッピーな企画だなあと思いました。今回のパネラーには、ベルリン国際映画祭のフォーラム部門ディレクター、ロッテルダム映画祭のアジア・アフリカ担当プログラマーも。どちらもPFF作品を長年招いてくださっている映画祭ですが、開催時期の近い映画祭ですので、近年はプレミア合戦がヒートアップしており、どちらにどの作品を観ていただくか、私の悩みのひとつになっています。
あるパネラーに「今回のサミットでは"共存共栄"をテーマにどう作品を分け合うかを話しあうのはどうか?」と冗談を言ってみましたら、「まず私の映画祭が欲しいものをとるので、残りをみなさんで分けるのはどうですか?という話になるだろうねえ~」と、予想どおりの冗談が戻ってきて、一緒に笑いました。ああ、どれだけ映画を獲ってこれるか、が大切な映画祭プログラミングの仕事。そことはちょっと違う映画祭PFF。他の映画祭のディレクターと立場が違うなあといつも感じる、いささか仕事内容を説明するのが難しいPFFです。

それはさておき、PFFでは、映画祭を運営しながら、映画祭に出品もするということを続けています。作品をディレクターやプログラマーにみせることの出来る時期と、その映画祭の監督や作品に対する扱いについて、とをあわせて、これまで20年以上の経験を元に、積極的に作品を出品したい、監督を招待していただきたい映画祭のリストめいたものができています。
プレミア上映に伴う監督招待の場合は、旅費、宿泊費、通訳、上映のクオリティ、観客の反応などさまざまな要素を元に考えますが、PFF関連作品の監督は、殆どの場合「初めての海外映画祭体験」となるのでそこが重いポイントになります。つまり、前提として「海外体験の少ない、言葉に不自由な、経済的に豊かでない、若い監督の参加。もしかしてひとりで参加する。」という条件を想定してすすめます。更に、その作品は、制作会社も宣伝会社もついていない、自主映画です。
現在のところ、上記の前提の監督にとって、完璧なサポート体制は、バンクーバー国際映画祭ではないかと思います。極端なことを言うと、お金を持たず、英語を喋れず空港に降り立ったそのときから、帰国の途に着くまで、経済的にも心理的にも全くぜんぜん心配のない映画祭です。
次に、ベルリン国際映画祭フォーラム部門も、上映のクオリティはもとより、言葉の面でのゲストサポートが素晴らしいです。更に、ここは、「アルセナール」という会員制の映画館(2スクリーン)を経営しており、フォーラム部門の上映作品からいくつかが、アルセナール含む、ドイツ語圏のアートシアターネットワークで公開されるチャンスがあります。つまり、ドイツ語字幕つきプリントを作成し、上映し、その収益分配がその後継続して行われるのです。実は、PFFも、ぴあフィルムライブラリー(PFL)を、このフォーラムの運営に感化されて始めたのです。多くのPFF作品を、アルセナールで上映していただいています。ただ、ここ数年、監督招聘予算が削減され、往復航空券の出ない場合があります。
ロッテルダム映画祭はベルリンの直前ですが、活気溢れる、若い監督には大変楽しい映画祭です。映画を浴びるように観るという点からも、狭い場所に20スクリーンあまりがひしめき、チケット発券ルールも結構ゆるく、映画漬け可能な映画祭です。ロッテルダムはホテル代が高いので、そこが、もし招待日数以上の滞在をする時は、悩みかもしれません。
釜山国際映画祭。観客の黄色い歓声とサインください!攻めに、「映画監督はもてる」と思わせてくれる映画祭です。この熱気は、全州映画祭もそうですが、韓国でしか得られないと思います。
このあたりの映画祭で最初の上映を設定できるといいなあと思っています。
勿論、他にも素晴らしい映画祭がたくさんあります。作品や監督の条件で、ベストの映画祭は全く変わるでしょう。そして、何より一番大切なのは「最初に作品ありき」。作品を熱望されて、がスタートラインです。

と映画祭の話をしてきましたが、しかし、東京は毎日が映画祭とも言えるなあとしみじみ思います。
22日土曜日の『家族X』トークの隣では、富田克也監督の(空族の、と書くべきか)『サウダーヂ』初日が熱気に包まれて展開されていました。毎回舞台挨拶ということで、ロビーは、関係者というかスタッフというか、上下左右に走り回る走り回る。興奮が伝わる伝わる。その様子をみていると、2階のオーディトリウム渋谷と、3階のユーロスペース、この3スクリーンで展開される一週間のイベントの数、ゲストの数は、映画祭よりすごかったりするのではないか?改めて考えました。4階のシネマヴェーラも入れると、更に。しかし、映画館ですからスタッフの数は限られています。運営の苦労を思うと、しみじみ感服です。全国的に、映画館運営の業務は増え続け、人は減り続け、みな、ものすごい労働量なのが伝わります。映画館で映画をみることに、少しでも貢献できたらと思います。

映画祭と映画館公開で映画をみよう!と言ったばかりなのに~!なんですが、恒例の渋谷TSUTAYAでのPFFコーナー企画の更新が迫りました。10月25日からは、先日、ベネチア映画祭で新人俳優賞を受賞した染谷将太さんと、ただ今ユーロスペースで公開中『サウダーヂ』富田克也監督のおふたりの選ぶ<冬でも熱くなる映画>です。必見の作品が並んでいます。ご期待ください。

2011/10/15 23:54:17

スペシャルメンションとは何か

映画祭のコンペで「スペシャルメンション」という授与が起きることがあります。
これは何なのか。日本語に直せば何がいいのか。長年考えているのですが、適当な言葉を見つけられず、「スペシャルメンション」という英語をそのまま使っています。もしかすると「審査員特別表彰」などが、一番近い日本語かもしれません。
近年、スペシャルメンションもオフィシャルな表彰として、証明証(表彰状のようなもの)が用意されたり、審査員コメントが公式に出されたりしますが、10年前くらいまでは、表彰式でアナウンスされるのみだった記憶(スカラシップ作品『BORDER LINE』がいただいた頃)があります。
スペシャルメンションは、つまり、審査員からの「私たちは、賞を一つに決めなくてはならないかったので、決断をしましたが、あなたの作品は受賞作品と遜色がありませんよ」という意思表示です。ですけれども、賞ではないので、「受賞」ではなく、「授与」という表現を使います。*殆どの映画祭は、コンペの審査員にグランプリ一本を選んでもらうので、他の作品にも触れたくなるのが審査員の心情と言えます。

昨日ご紹介した吉野耕平監督の『日曜大工のすすめ』は、なんと、釜山国際映画祭の短編コンペでスペシャルメンションだったそうです。そのことをツイッターで知ったという吉野監督。最先端?と申しましょうか、本人にいち早く知らせる方法はなかったのかな?と思うのですが、そのお話しを聞いた後に出かけた、ぴあが主催する落語のイベント「rakugoオルタナティブ」シリーズで、同様の話を聞きました。間もなく真打昇進となる春風亭一之輔さん。決定は、やはりツイッターで知ったそうです。なぜそうなったか、を調べてみると、師匠の一朝さんの携帯が電池切れで、何度も試みられた、協会からの真打決定電話を受けられなかったからだとか・・・その間に、協会のHPに発表された真打決定ニュースを見た人からのツイッターで昇進を知ったと・・・・
昨日今日と、いろいろ賞の発表について考えさせられることが重なり、ちょっと不思議な気持ちです。

本日の落語会は、立川志らく師匠の「名人の噺とは江戸の風が吹く噺なのではないか」(←乱暴なまとめですいません)という言葉に触発されて企画されたもので、昼、夜と立川志らく師匠が二席づつ登場なさいました。昼のゲストは故・桂枝雀さんのお弟子さんの桂雀々さん、夜のゲストは、春風亭一之輔さん。この落語オルタナティブシリーズは、ちょっと違った視点からの落語会企画で、とても刺激的。毎回通うことは全然できていませんが、できるだけ参加したいと思っている企画です。落語初体験の方をお誘いしたい会でもあります。

そしてまだ風邪が治らず、鼻声でふがふがしてるのですが、PFF東京開催準備佳境な頃から現在まで数か月、ちょっと世の中の動きから隔絶されてたかも?と慌てている昨今です。で、発令されてましたね。暴力団排除条例・・・・詳細把握できていませんが、なんだかすごい・・・そんなときに、新・文芸坐で行われる岡田茂プロデューサーの特集上映。チラシをしみじみみちゃいました。殆ど観てるけど、またみたい。やくざ映画の灯よ永遠に!です。未見の方、必見です。映画は「何が起きてもOK」「何を描いてもOK」な創造物でいて欲しいと、青臭いことを改めて思います。こんなときですから、『青春墓場』シリーズの奥田庸介監督の新作でありメジャーデビュー作品となる『東京プレイボーイクラブ』、未見ですが、期待が高まるばかりです。

プロフィール

PFFディレクター
荒木啓子 Keiko Araki

雑誌編集、イベント企画、劇場映画やTVドラマの製作・宣伝などの仕事を経て、1990年より映画祭に携わる。1992年、PFFディレクターに就任。PFF全国開催への拡大や、PFFスカラシップのレギュラー化、海外への自主製作映画の紹介に尽力。国内外で映画による交流を図っている。

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