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PFFディレクターBLOGRSS

2009/12/25 17:41:09

冬の兵士

winter-soldier.jpgメリークリスマス!
そして、あっというまに、新年がやってきます。
数年ぶりに会ったイギリス在住の友人が、彼女もボランティアとして翻訳に参加した「冬の兵士」という本を下さいました。"イラク・アフガン帰還米兵が語る戦場の真実"という副題の示すように、若い帰還兵の証言集で、岩波書店から出ています。年末年始の読書リストが更に充実してしまいました。
戦争が、常に世界のどこかで続いており、戦争の影を纏う切実な映画が絶え間なく生まれます。先日も、大変遅ればせながら、井口監督が『人のセックスを笑うな』製作の際に参考にみたというイタリアのヴァレリオ・ズルリーニ監督の『激しい季節』と『鞄を持った女』を拝見し、成瀬巳喜男に繋がる戦争の影を痛切に感じました。もう65年も前になる第二次世界大戦の検証も、今まだ充分にすすまない日本の現実を思うと、他国に於ける戦争の検証を色々考えてしまいます。月日はあっと言う間に経つけれども、人の記憶は消えないことは、辛いことでもあり、幸いなことでもあります。

そして、今年は、生誕100年を記念した催しが沢山ありました。田中絹代、太宰治、松本清張。この3人が生きていれば同じ年とは俄かには信じがたいのですが、想像してみると、例えば、宮崎あおいと、同年齢の小説家志望でデカダンしている青年と、夢を胸に家計のために必死で働く青年がいる、となるとすんなりわかるので、活躍の時差が大きいことの驚きだなと納得します。65年前には、この3名は35歳。全く違う戦後を過ごしたことを思うと、人生予測不可能なことを実感です。

来年は、正月からフィルムセンターで、デビュー50年を記念した大島渚特集が組まれています。
夏のPFFで開催した大島渚講座の採録が、来月発売のSWITCHで楽しめますので、ご一読なさると、きっと更に充実した大島体験をしていただけると思います。
また、まだご報告できていませんでしたが、PFFin名古屋の大島渚講座では、地元在住の一尾直樹監督が『帰って来たヨッパライ』と『新宿泥棒日記』を講義してくださいました。『帰って来たヨッパライ』は、現実感のない若者が、当事者意識を持つに至る物語であり、『新宿泥棒日記』は、ドキュメンタリーとフィクションの融合をいち早く試み、ホントとウソを映画でみせる冒険に成功した稀有な作品であるという(非常に乱暴にまとめてすいません)お話は、実に刺激的で、大島渚講座中1,2を争う面白さでした。
その一尾監督は、新作を完成したばかりです。タイトルは『心中天使』(しんちゅうてんし)。来年公開予定ですので、お楽しみに!

PFFも28日に仕事納め(年末年始も「PFFアワード2010」の審査は継続中ですが)。
年明けはロッテルダム映画祭が待っています。この映画祭でこれから一年の話題になる新人監督作品の多くが出揃い、様々な映画祭で監督たちが再会を繰り返します。
例えば、昨年ですと、韓国の『Breathless』。多くの映画祭で賞はこの作品へと行き、PFFスカラシップ作品の『不灯港』はスペシャルメンション授与が続きました。(『Breathless』の日本公開が予定されていると聞きます。是非ご覧下さい。)今年は、コンペにPFFからの出品はありませんが、どんな作品が登場するのか楽しみです。同時に、ロッテルダムは、この一年の話題作が最後に集まる映画祭でもありますので、見逃した作品をまとめて観るチャンスにもなります。オランダ方面に旅行をお考えの皆様は、アムステルダムから電車で1時間ばかりのロッテルダムで映画祭三昧の一日もいかがでしょうか。
但し、ロッテルダムは安い宿がないので、宿泊はおすすめしません。

2月には、ワークショップ企画の第三弾を予定しています。
第三弾は、前回よりいささか深い内容になる予定で、二つの違ったワークショップを設定する計画です。
順調に行けば、年明け早々に詳細をお伝えしますので、お楽しみに!

長くなってしまいましたが、本年もありがとうございました。
皆様、よいお年をお迎えください。
(文中敬称を略させていただきました)

2009/12/07 13:09:04

神代辰巳監督&ロッテルダム&ベルリン

先日ラインナップをご紹介した「世界が注目する日本映画たち」。十回目を迎える来春の上映7作品の一本『人のセックスを笑うな』は、本調有香さんが脚本を執筆なさっています。
本調さんの脚本家デビューは、95年にお亡くなりになった神代辰巳監督の『インモラル・淫らな関係』です。
神代監督といえば、『青春の蹉跌(せいしゅんのさてつ)』に思い出があります。
塚本晋也監督がこの作品を常々大好きな映画に挙げておられて、PFFでも昔、"若手監督の選ぶベスト作品特集"といったような企画で、上映したことがあります。その時来場された塚本ファンの若い女性が、アンケートに「さすが塚本監督、あくまでも"鉄"に拘るなあ~と感激したんですが、鉄ではなかったのですね」と書かれていて、ウケました。そのお客様の頭にあったのは、きっと、映画『青春の砂鉄』。どんな内容を想像してらしたのでしょうか・・・・・・
そういえば、磁石を砂に入れると鉄がくっついてくること、大人になって試してみることがありませんね。

この神代辰巳監督の特集が、監督の故郷佐賀で、12月5日から18日まで開催されています。
PFFin福岡の宣伝や運営の手助けをしてくださったり、予備審査員として参加くださることもある、芳賀さんが経営なさっている佐賀の映画館「CIEMA(シエマ)」の2周年記念イベントと、神代監督のご実家、神代薬局120年記念もあわせての企画で、会場は勿論「CIEMA」です。
折角なのにこのニュースをお伝えするのが遅れてしまいましたが、初日の5日には、出演俳優、スクリプター、助監督らを迎えてのトークや、渚ようこさんの歌謡ショーも開催されました。

1996年、橋口亮輔監督の長編第二作『渚のシンドバッド』がコンペティション上映となった際に、初めてオランダのロッテルダム映画祭に参加したのですが、丁度神代監督の追悼特集が行われていました。日本のピンク映画やポルノ映画が海外に積極的に紹介されはじめた時期でもあり、様々なお客様が来場し、思わぬ笑いも出る会場でした。
そのときに、アフレコ使いの面白さが印象に残りましたが、今年PFFで特集した大島渚監督にも、同時録音とアフレコの実験の面白さを感じたように、60~70年代に活躍した監督たちの音の実験は、非常に興味深いと思います。かなりアナーキー。

毎年1月末開催のロッテルダム映画祭も、かなりアナーキーな映画祭で、近年、ヨーロッパで重要な地位を占めてきています。その直後の2月に開催されるベルリン映画祭と、昨今は作品のとりあいが生じるため、この時期は、作品を出品する私たちにとって、胃の痛くなる季節です。
本年は、2年前に世界で初めて石井裕也監督に注目して、自主映画4作品を一挙に特集してくれたロッテルダム映画祭と、監督自身が是非挑戦したいというベルリン映画祭と、石井監督の新作2作品のプレミア上映に、悩ましい一ヶ月を過ごしました。最終的には、それぞれ1作品づつ上映いただくという素晴らしい結果になったのですが、映画祭ディレクターとしては、ロッテルダムのあの英断を想い、映画プロデューサーとしては、ベルリンにトライすることが必須であり、ふたつの立場の両立の難しさを、今回も痛感しました。

話はもどって、佐賀のCIEMAを先ほどご紹介しましたが、九州には個性的な映画館があります。
熊本のDENKIKAN、大分のシネマ5など。九州新幹線の開通に伴い、週末を福岡で過ごす人が一挙に増加し、各地の繁華街はますます閑散としてくるのではないかと懸念されるなか、それぞれ大きな営業努力を強いられています。映画が、興行としての過去のノウハウが無力になっている昨今、細やかな人と人とのつながりや、絶え間ない運営の工夫がどこまで楽しめるか。映画に関わる人々の共通の課題のような気がします。

2009/12/01 17:56:34

入場料金の適正価格とは・・・・

kavc.jpg先週末の神戸&名古屋同時開催を最後に、第31回ぴあフィルムフェスティバルの上映が全て終了しました。
一年中映画の上映が映画館と同等に続けられている、映写やスタッフの装備がしっかり整った会場である「神戸アートビレッジセンター(KAVC)」があるから、2都市の同時開催を展開出来たので、KAVCには本年も感謝感謝です。

PFFの開催会場は、映画館が京都の「京都シネマ」しかありません。各地の公共ホールての展開が中心です。
東京は国立のフィルムセンターですし、仙台、名古屋、神戸、福岡は、県や市の公共施設のホールです。もうかれこれ10年、これらのホールで、担当の学芸員の方々と共に開催していますが、
その建物の設計意図や、出来上がったものの使い勝手、その後の運営体制など、個々の運営団体の哲学や状況が伝わってきて、全国各地の「映像文化のポジション」を、毎年学んでいる感覚があります。これは、かなり貴重な体験ではないかと感じています。

また、映画館として機能する神戸以外は、皆、一般興行を行わないため、基本的な上映料金の設定が低くなっています。そうすると、何が起きるかというと、通常料金として観客の中にインプットされた料金以上の値段設定に対して、クレームが出ます。
つまり、PFFの料金は高い。安くしろ。というクレームです。
映画館で開催される映画祭は、通常の入場料金より多少安く設定する場合が多いので、その類のクレームには繋がりませんが、逆に、通常料金より高くなるイベントとなると、主催者側からすると、不利です。
本年は、特にその不利な部分を感じさせられる場面が多かったように思います。

そんなこともあって、入場料金について考える機会が多かった秋なので、いくつかの実験をやってみようと考えました。
まず、一日じゅう、正価でロードショーをはしごする。という実験をしました。
あまり時間の組み合わせがうまくいかず、一日4作品しか廻れませんでしたが、1800円×4作品で7,200円。晴れた日曜日、この金額で出来る他のことをあれこれ考えてしまう金額でした。
しかし、よく耳にする、日本人の平均的な映画館に出かける回数は、一年に1作品というデータが正しいのだとすると、私はそのたった一日で4人分を消化したのです。
映画祭の観客には、年に数百本を"スクリーンで"観るという人もいます。レンタルビデオやDVDではなくてです。そんなことを思い出すと、どう考えても、一年に一本もみない人の数は膨大であろうと思われます。
ただ、広い意味で言えば、映画で食べている私たちですから、映画にそれを還すのは、至極当然のことと思えます。映画で食べてる人が映画館で映画をみることを習慣にするだけで、かなりの観客動員が図れるのではないかと感じました。

その後、レディースデイや映画の日、前売り券での入場、映画館ではない場所での上映のはしごなど、プランしていますが、慌しくしてしまい、まだ実行できていません。一日4作品をはしごするシリーズを出来るだけ試し、映画の適正価格についてもっと考えてみたいと思います。

かつて、映画は散髪代と同等価格が設定の基準だったそうです。
その散髪代も、現在はさまざま。
あらゆることに、新たな基準が必要になってるなという感を、ここでも強くしました。

神戸の会場、神戸アートビレッジセンターは、淀川長治さんのふるさと新開地にあります。かつては映画館だけでも10軒が林立する神戸一の繁華街だったのですが、今は昔です。
近所の洋食屋「一平」が美味しいです。

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