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PFFアワード

PFFアワード作品紹介

PFFアワード2003

作品名 監督名 作品名 監督名
『あのコがいねぇ』 高柳元気 審査員特別賞、観客賞(神戸)
『はつこい』
三浦大輔
溝口真希子
審査員特別賞
『えてがみ』
内田伸輝 審査員特別賞
『Have a Good Journey』
小林雄介
『頭上家族チャビリアーノ』 キムラヒデキ
久保コレオ
高山達夫
企画賞(TBS賞)、観客賞(大分・福岡)
『美女缶』
筧 昌也
準グランプリ、観客賞(東京)
『鳥籠』
木下雄介 観客賞(名古屋)
『ブルースを4649』
後藤大輔
技術賞(IMAGICA賞)
『流れる』
湯浅弘章 音楽賞(TOKYO FM賞)
『満腹家族』
広田淳也
グランプリ、コミュニティ賞(BROBA賞)、観客賞(仙台・大阪)
『NEG.WONDERLAND(ネガ・ワンダーランド)』
上田大樹 『桃色クロス』 高橋 愛

応募総数 744本 入選 12本

『あのコがいねぇ』

監督:高柳元気

あいつの初恋も、オレの失恋も、みんな純愛からできている。
ある夏の日、冴えないルックスの国立大学生・山ちゃんは、笑顔の素敵な女の子に出会い、恋に落ちる。それは彼が生まれて初めて知る感情だった。山ちゃんには、趣味も性格も成績もまったく違うのになぜか気が合う、セイタとホシケンという幼なじみがいるが、話を聞いた2人は「その女だけは止せ」と口を揃える。サンディーと呼ばれる彼女は、街一番のワルで、誰も手がつけられない乱暴者・キー坊の女なのだ。しかし山ちゃんの頭の中はサンディーで一杯で、見えるのもサンディーだけ。セイタとホシケンの忠告は耳に入らないし、彼女の隣りにいるキー坊の怖い顔も目に入らない。その真っ直ぐで格好悪い姿は、セイタとホシケンがそれぞれ胸の奥に封印していた思いを揺さぶる。3人はキー坊とサンディーがいる橋へ向かうのだった。山ちゃんの想いは届くのか、そして3人はキー坊に勝てるのだろうか。
少ないセリフとのんびりしたテンポながら、人物のキャラクター、関係性がすんなりと伝わるのは、カットインとカットアウトのセンスの良さ、さらに橋、川べりなど、定点で見せる人の配置のうまさによるもの。また、山ちゃんの恋だけでなく、キー坊とサンディーの愛の形、ホシケンの過去の恋などが、単純な“遅い初恋の物語”に話を終わらせない。短い登場時間だが、セイタのお母さんを出したことで3人の“同級生感”が一層強調され、青春のほろ苦さが余韻として残る。

2002年/DV/カラー/29分 英題:My Girl
監督・脚本・編集・録音:高柳元気
撮影:小笹宣人 音楽:The ピンチ、the swiss porno メイク:片田伸子
出演:ミギタ明日香、佐々木慎一、秋元ユイ、高柳元気、山中直樹、北澤糊子

劇場公開
海外映画祭
2004年 ニッポンコネクション (ドイツ)

【貸し出し対象作品】料金:15,000円(税別)/貸し出しフォーマット:ビデオ

審査員特別賞

『えてがみ』

監督:内田伸輝

泣いて叫んで吐いて、また筆を持つ。
かつての同級生・ナベと僕は、一緒に映画を撮るなど気が合う仲だった。しかし次々と(僕から見れば脈略のない)目標を決めては、(本人からすれば不可抗力的な理由から)途中で放り出す彼とは、次第に疎遠になっていた。が、「また映画を撮りたい」と思い始めた僕と「何かやりたい」と退屈していたナベは、ドキュメンタリーの監督と被写体として再び組むことに。ナベは最近、出会った人達の似顔絵を葉書に描いて後日それを本人に郵送することに凝り、俳優志望のヨシタケと共同生活をスタートさせていたので、それを中心に撮ることにしたのだ。ナベの“えてがみ”は好評で、それを介してさまざまな人とのコミュニケーションが生まれる。一方、ヨシタケは、ナベのテンションやペースに合わせるうちに自分を追い詰め、うつ病を再発させてしまう。似顔絵を描いた渡邊さんの死、ヨシタケの失踪と入院などを経て、ナベは変わり始める。えてがみの個展という新たな目標を、彼は今度こそ達成できるのだろうか。
ドキュメンタリーの主役にありがちなトラウマも特になさそうで、「いまどき?」と思うほど熱く相手にぶつかっていくナベは、はっきり言って最初、魅力的ではない。2つの事件にもがき苦しむ姿も格好悪い。しかし気付くと彼のために祈る気持ちが生まれている不思議さ。えてがみと、それを無心に描くナベの姿を、いくつもの季節とロケーションを追って撮り続けたカメラの勝利だろう。

2002年/DV/カラー/95分 英題:Pictorial Letters
監督・撮影・編集:内田伸輝
音楽:中津昌彦 製作:ブラザーズ企画
出演:鍋山晋一、飯島功丈、渡邊慎一郎、渡邊慎太郎、渡邊頴子

劇場公開
海外映画祭
2004年 ニッポンコネクション (ドイツ)
香港国際映画祭 (香港)
アジア・フィルム・シンポジウム (シンガポール)

【貸し出し対象作品】料金:15,000円(税別)/貸し出しフォーマット:ビデオ

『頭上家族チャビリアーノ』

監督:キムラヒデキ/久保コレオ/高山達夫

今日も通勤電車のどこかで、こんなことが?
脂ぎったバーコードハゲ、気弱そうな表情、パッとしないスーツ姿、どこから見ても冴えないどこにでもいそうな1人の中年サラリーマン。その頭上に、どんな惑星からやって来たのかはわからないが、ミクロサイズの不思議な生物、チャビリアーノー家が降り立った。色気はまだあるが、しゃべくりのオカン。頼りないようで、意外と亭主関白なオトン。2人の一粒種で、まだまだ半人前のチャビ。一家の忠実なペット、ポチ。彼らにとって、おじさんの頭上は風通しと日当たりが適度で、ピクニックに最適。バーベキューや狩りをして、一家団樂のひと時を過ごしていた。しかし、おじさんは電車の中。いろんな人がまわりにいる。わきがの男が乗り込んで来ると、強烈な臭いで一家はパニック状態に。その大騒動が影響を及ぼし、おじさんは自分でも思いがけない行動をとってしまうのだった…。
クレイアニメによる短編。中年サラリーマンと妖精(?)という組み合わせが、まず意表を突く。寂しい、格好悪い、不潔など、圧倒的にマイナスイメージのバーコードハゲの中年男が、とある生物―それも愛すべきルックスとキャラクターの―にとって楽園である設定は、それだけで次に何が起きるのか興味を引く。ラストのオチは実写を加えたことでひねりが出て、ユーモアと哀愁が倍増した。チャビリアーノ達は実在して、電車の中で小さな事件を引き起こしているのかもしれない。

2002年/DV/カラー/9分 英題:The Chabilianos
監督:キムラヒデキ、久保コレオ、高山達夫
企画・プロデュース:塩見佳久、覚野公一 音楽:塩見佳久 脚本:古川順一

劇場公開
海外映画祭
2004年 第9回香港インディペンデント・ショートフィルム&ビデオアワード (香港)
第4回リール映画交流祭 (フランス)

【貸し出し対象作品】料金:15,000円(税別)/貸し出しフォーマット:ビデオ

準グランプリ&観客賞(東京)

『鳥籠』

監督:木下雄介

生まれる前に戻って、お母さんを探すのです。
ある孤児院の社会見学の帰り、バスから1人の少年が脱走する。目的は母親探し。行くあても所持金もない彼だったが、公園でパフォーマンスをしていたピエロのおじさんに拾われ、アシスタントとして寝食を共にするようになる。ピエロのおじさんはかつてヤクザで、苦労をかけた妻が離婚後に亡くなったこと、1人娘が知り合いに引き取られて東京で暮らしていること、その娘に時折、自分の写真を送っていることなどを少年に聞かせるのだった。少年は母を探すが、名前すら知らないために手がかりもつかめない。真っ白な記憶の奥の母に近づくため、自ら少女になって踊る少年。だが手探りの行為は実を結ばず、帰ってきた彼を待っていたのは予期せぬ出来事だった。少年はおじさんの娘を訪ねるが、そこで彼が出会ったのは…。
「鳥は目を開けた時に初めて目にした動くものを母親だと認識する」この話をモチーフに1人の少年の旅を描くが、ドキュメンタリー風の飛び込み撮影、ポラロイド写真、ロケ、つくり込んだ室内など、異なるテイストの映像を組み合わせているにも関わらず、心象と具象のつながりが驚くほどなめらか。痛々しい日常から、驚きの展開を経て、幸福で美しいラストへと、観客はいつの間にか少年の旅に同行している。監督の頭の中にあるイメージの強力さ、その映像化に照明、音楽、美術、出演者の削ぎ落とされた演技と、スタッフワークが大きく貢献している。

2002年/DV/カラー/38分 英題:Bird cage
監督・脚本・撮影・編集:木下雄介
助監督:斉藤慶一郎 スタッフ:岩井啓悟、江崎有紀、川谷 佳、木村幸彦、坂本悠多、鈴木智子、瀧澤めぐみ 衣装:篠原亜希
出演:安達真人、山田剛之、近藤千鶴、中野恵子、楠部知佐子、桐山聖昇、管野賢人、近藤綾乃

劇場公開
海外映画祭
2004年 第9回香港インディペンデント・ショートフィルム&ビデオアワード (香港)
第4回リール映画交流祭 (フランス)

【貸し出し対象作品】料金:15,000円(税別)/貸し出しフォーマット:ビデオ

技術賞(IMAGICA賞)

『流れる』

監督:湯浅弘章

人生で一番幸せだった時間。その光だけが、今も現実。
闇の中で目を覚ます男。今、自分がいる時間や空間の境界線は曖昧だが、幼い日のある夏の記憶が鮮明に蘇り、彼の思考はそこに向かって流れていく―。母が自分を置いて出て行った日、川底に捨てられた8ミリカメラを拾った。近所のバレエ教室に通う美しい少女と出会い、言葉を交わした。2人で出かけ、海岸で踊る彼女の姿を撮った。夕陽を受けて無数の光の点を宿した波と、彼女の体が描き出す曲線は、どんなものより美しかった。けれども突然、少女は姿を消したのだった…。その後の人生で、自分はいくつもの光と影に出会った。生と死があり、善と悪があり、出会いと別れがあった。それらがつくり出した流れの上にいて、確かに生きている自分。でも肉体はとても曖昧で、今感じている光は、現実なのか幻覚なのかもわからない。
セリフが一言もない。映像も解説的ではなく、おとぎ話のように幻想的なものと、時折り挿入されるショッキングなものとには、明らかな温度差がある。しかし、その温度差さえ心地よく、設定されているであろうストーリーが非常になめらかに伝わってくる。それはまさに、監督のイメージが観る者の頭の中にダイレクトに“流れ”込んでくるようだ。イメージを具体化する道具として映像を使いこなす力は圧倒的。ショッキングなシーンも詩的に撮ってしまう撮影力が、光も闇も同じように豊かだと教えてくれる。

2002年/DV/カラー/30分 英題:NAGARERU
監督・脚本・撮影・編集:湯浅弘章
音楽:垣田尚慶 協力:高木真二、徳永憲治、竹中みのり、倉田奈々、藤松裕子、松田 晋、千田麻里亜、吉田健一、中村千里
出演:高橋元希、津田麻純、三輪晋也

劇場公開
海外映画祭
2004年 第4回リール映画交流祭 (フランス)
ニッポンコネクション (ドイツ)

【貸し出し対象作品】料金:15,000円(税別)/貸し出しフォーマット:ビデオ

グランプリ&コミュニティ賞(BROBA賞)&観客賞(仙台・大阪)

『NEG.WONDERLAND(ネガ・ワンダーランド)』

監督:上田大樹

目覚めたら、家は不思議の国だった。
数年間、植物人間状態で眠り続けていたキリコ。奇跡的に目覚めると、父と母と愛犬はすでに亡く、失踪したまま音信不通だった姉のマリエが戻っていた。両親達の死を受け入れられず、何事もなかったように平然としている姉も受け入れられないキリコは、将来のことも現在のこともうまく考えられずに、イライラを募らせる。そんな気持ちを落ち着かせてくれるのは、生まれ育った家だけだった。しかしマリエはある事情から、キリコに黙って家を売る契約を済ませていた。立ち退きの日は迫り、引っ越しの準備を進めるマリエと抵抗するキリコ。混乱する2人の家に、マリエの元カレらしいゴトウが訪ねて来て居ついてしまう。さらにそこへ、家出女子高生のサチもやって来て…。
姉妹が住む家そのものが主人公とも言える作品だが、家の中、外観はもちろん、あらゆる“場”の撮り方がうまい。田んぼの横を通る道路、青々とした草が生い茂る原っぱ、水がまかれる庭など、その季節のその場所の匂いや温度や湿度が映像から感じられる。ワケあり風ではあるが、核としたものが見当たらない登場人物達の心理も、おとぎ話めいた不思議なラストシーンも、なんとなく納得できるのは、それら“場”の雄弁さが大いに役立っているはず。仲が悪いようで、根っこではずっと手をつないでいるような、キリコとマリエ、マリエとゴトウ、サチと父の関係は、不思議なハッピー感を醸し出している。

2002年/DV/カラー/60分 英題:Wonderland in the Negative
監督・脚本・撮影・編集・アニメーション:上田大樹
制作:新見 文 助監督:富田中理 音楽:上野紗江里 楽曲提供:ナカムラテツオ 美術:西廣 奏、松浦孝行
出演:石川ユリコ、新井友香、町田マリー、加藤 啓、矢柴俊博、原 金太郎、中村まこと、村上大樹、村岡希美、池谷のぶえ、ブルースカイ、高木珠里、高多康一郎、冨田中理

劇場公開
海外映画祭
2004年 ニッポンコネクション (ドイツ)
全州国際映画祭 (韓国)

【貸し出し対象作品】料金:15,000円(税別)/貸し出しフォーマット:ビデオ

審査員特別賞&観客賞(神戸)

『はつこい』

監督:三浦大輔/溝ロ真希子

恋はゲーム?じゃあ、人生全部賭けます!
ブスでドジでツキもなく、人にいじめられるためにあるような人生を全面的に受け容れて生きている岬。そんな彼女が、バイトの新聞配達の集金で、自分にやさしくしてくれた吉田という男に恋をする。彼もまた、勤務先の動物園では同僚にいじめられる落ちこぼれだったが、岬にとってはやさしくて博識の王子様。やがて2人は付き合うようになる。しかし吉田はあっという間に豹変、臆面もなく“やらせろオーラ”を放出し、岬が拒むと冷たい態度を取るようになるのだった。そんな日々に疑問を持ち始めていた岬は、ディープなエロビデオを発見したことが決定打となり、吉田のもとを去る。必死で岬を探す吉田。さびれた温泉街で再会した時、2人の主従関係は完全に逆転していた。同じ宿に部屋をとった彼らは、岬も合意していよいよ事に及ぼうとするのだが…。
格好いい人、さわやかな人、スムーズに生きている人が1人も出て来ない。登場人物達のダメっぷりを示すエピソードもしかりで、うら若き女性なのに床に寝袋で寝ている主人公の暮らしぶりをはじめ、無意識下にノイジーに働きかける映像やセリフが隙なく散りばめられている。しかしそれらが不協和音にならず、コミカルさとある種のゆとりを保ちながら最後まで見せきる。その結果、不細工な人ばかり出ていながら“不細工でもそうでなくても、恋する者はすべからく格好悪い”と深く認識させられる不思議な作品。

2002年/DV/カラー/98分 英題:HATSUKOI -Love, a first-
監督:三浦大輔、溝ロ真希子
出演:木下珠紀、東 誠司、高多康一郎、新見裕子、小林康浩、糸田淳一、島本 尚、仁志園泰博、安藤玉恵、毛利麻美子、藤村恭子、大矢大介、野平久志

劇場公開
海外映画祭
2004年 ニッポンコネクション (ドイツ)

【貸し出し対象作品】料金:15,000円(税別)/貸し出しフォーマット:ビデオ

審査員特別賞

『Have a Good Journey』

監督:小林雄介

ずっと一緒にいるために誰かを殺そう。
成田空港に向かう電車の乗り換え駅。若い男が若い女に声をかける。「ナンパっすか?」と聞き返す、ルックスも雰囲気も話し方もちょっと変わった女。「空港に元カレを見送りに行く」というその女は、自分と元カレ・キクチの思い出を話して聞かせる。引きこもりだったキクチは自分と出会って外出できるようになったが「ずっと一緒にいてほしい」と不安がる自分のために「それなら、お互いに離れられなくなるような重大な秘密を共有しよう」と殺人を持ちかける。2人の計画は鮮やかかつ簡単に成功したが、その後、キクチの口から意外な言葉が聞かされる。逆上した自分は、つい大きな過ちを犯してしまった――。ナンパ男が思わず逃げ出した、その女の告白とは?
途中まで“見かけによらず恋愛体質”な女の話と思わせておいて、いくつものどんでん返しが用意されている。最終的には前向きな空気で終わるものの、意外なほど様々な感情を喚起させるよう脚本にも演出にも工夫がなされた、ドラマチックな構成。しかも全体はほんわかしたおしゃれな雰囲気を漂わせたままなのが個性的だ。4人しか出演しないが、それぞれタイプキャスト。特にキクチ役の男優は、女の話の中と現実のキャラクターの違いをうまく演じ分けている。1つわかりにくかったのは、腕時計のエピソード。オープニングのセリフから登場するだけに、もう少し無理なく全体と関わるか、強力なアクセントになるエピソードが欲しかった。

2002年/DV/カラー/35分 英題:Have a Good Journey
監督・脚本:小林雄介
撮影・編集:有明達郎 音楽・挿入歌:江口直伸
出演:高野 梓、荒金健一、魚返洋平、大久保悠祐

劇場公開
海外映画祭
2004年 第9回香港インディペンデント・ショートフィルム&ビデオアワード (香港)

【貸し出し対象作品】料金:15,000円(税別)/貸し出しフォーマット:ビデオ

企画賞(TBS賞)&観客賞(大分・福岡)

『美女缶』

監督:筧 昌也

僕の新しい彼女は、缶詰から生まれた。
大学生の大町健太郎は、何でもしてくれる恋人・マリとの同棲生活に飽き始めていた。タイミングよくマリが仕事の都合で引っ越しを余儀なくされ、健太郎は1人暮らしを始める。ある日、健太郎は隣りの部屋からきれいな外国人女性が出てくるのを目撃する。驚いたことにその美女は、ブサイクな隣人にぞっこんの様子。さらに健太郎は翌日、翌々日と、もっと驚く経験をする。まるでフィーバーのパチンコ台のように、ブサイク男の部屋からとびきりの美女が次々と出てくるのだ。不審に思った健太郎は隣室に侵入し、「美女缶」なる缶詰を見つける。1つ持って帰った健太郎は、自室で美女・美知川ユキを誕生させる。ユキは缶詰製美女特有の刷り込みで健太郎に好意を寄せ、彼もまた本気になる。だが美女缶には品質保持期限があり…。
生まれてから今日までの記憶を持ち、自分を普通の人間だと信じているアンドロイド美女との恋といえば、退廃的な近未来を舞台にした名作「ブレードランナー」が思い出される。しかしこちらも、美女缶のパッケージや取扱説明ビデオなどに徹底的な仕込みが施され、ディテールの細かさは天下一品。そのため、六畳間、納豆カレー、縁日の金魚すくいなど、ごくごく日常的な風景の中で、物語は独自のSF色を帯びてくる。そして新しい恋人とのきらめく日々、元カノへのつれない態度など、男心のわがままな本音は、意外なラストをさらに効果的に盛り上げる。

2002年/DV/カラー/61分 英題:Canned Beauties
監督・編集・VFX:筧 昌也
脚本:筧 昌也、poosworks、北井利彦 撮影:森 克彦 録音:浅田将助 音楽:浅田将助、椎名高之、水野修一 照明・撮影補:永森芳伸、田平衛史、安部寛美 制作補:溝渕 萌、安部寛美、上岡桂子 美術・小道具:筧 昌也、三井 繁、浅野 優、溝渕 萌、上岡桂子
出演:藤川俊生、吉居亜希子、木村 文、小沢 喬、ジョン・ウィリアムス

劇場公開
2004年 10月2日~15日 東京 渋谷シネ・ラ・セット
10月20日~22日 愛知 名古屋シネマテーク
2005年 1月8日~14日 大阪 第七藝術劇場
海外映画祭
2004年 ニッポンコネクション (ドイツ)

【貸し出し対象作品】料金:15,000円(税別)/貸し出しフォーマット:ビデオ

観客賞(名古屋)

『ブルースを4649』

監督:後藤大輔

うまく行かなくても、いいこともある人生。
修司がリーダーを務めるロックバンドは、実力もキャリアも中途半端。アマチュアとしてはそこそこだが、プロになるには何かが足りない。最近ではライブのチケットも売れず、後輩が先を越して事務所と契約したりと、先行きが不安になる日が続いている。ある日、対バンとステージ上でケンカをして警察へ。大学を出ても定職に就かず、自分の工場を手伝うこともなく、いつまでもそんな騒ぎを起こしている修司に、普段から頑固で口うるさい父の説教もさらに厳しくなる。反発しながらも、親子2人の境遇と、家を出て独立する経済力のなさから、歯切れの悪い修司。そんなある日、バンドにデビューの話が持ち上がる。一方、父の工場は不景気のあおりで倒産の危機に直面して…。
音楽面でもファッションでも美学を貫いてツッパるONの顔と、父のつくったつつましい食事をして、まじめに牛乳配達のアルバイトをするOFFの顔。2つの顔で生きる主人公が、仲間の変化、プロの世界、父の仕事などを通し、人生全体がOFFになってしまう不安、OFFにしたほうがいいのかもしれない自分の限界を考える。“夢みる時間の終わりと新たな始まり”を丁寧なエピソードの積み重ねで描くが、キャスト―特に修司―のキャラクターで、重くならずポップに仕上がった。父親役の朴とつとしたセリフ回しや仕種は逆にリアルで、ラストの2人のやりとりの温かさが説得力のあるものになった。

2002年/DV/カラー/77分 英題:Away with the Blues
監督・編集:後藤大輔
脚本:後藤大輔、金杉 剛 撮影:高山達夫 録音:西尾直樹 撮影助手:北村紳太郎 美術:井上心平 音楽:磯金俊一、秋谷 学
出演:雪藤じゅん、山本大作、栗田健臣、華川るみ、宮原隆之、都築朋明、吉岡睦雄、林 勝己

【貸し出し対象作品】料金:15,000円(税別)/貸し出しフォーマット:ビデオ

音楽賞(TOKYO FM賞)

『満腹家族』

監督:広田淳也

なかなか理解されませんが、おれの彼女は最高です。
可愛がっている助監督・坂本から「Z級っすよね!」と言われてしまうAV女優・なお美と同棲しているAV監督・浅野。「カレシがイカせられないらしいっすよ!」という話を悶々とした想いで胸に秘めつつ、特に新しい趣向を試すこともない日々を過ごしていた。そこへ会ったこともなかった弟(?)が現れ、一緒に暮らすことに。一言も喋らない弟だったが、なぜかなお美は気に入ったらしく、気遣いに見えない大ざっぱさで距離を縮め、そんななお美に弟も心を許すようになっていく。ある日、浅野が休んだ撮影現場で、主役の新人女優と、人とうまく話せないくらいまじめな編集マンの広瀬が逃避行する事件が起きる。その一件が原因で、坂本はメイク担当のレナちゃんの意外な性癖を知り、浅野は悪徳プロダクションに脅される。憤慨した浅野は弟も巻き込んだ仕返しを思いつき…。
ある人にとってはどこがいいのか全くわからなくても、自分にとっては最高の恋人。その“最高”の部分を、さりげなくわかりやすく(つまりセンスの良いエンタテインメントとして)見せている点で、非常に完成度が高い。一番大切ではないがとても大切なセックスと心の関係を説明するのに、AV業界に目をつけたのも良い。坂本がレナのため、世間から変態と呼ばれるであろう世界に一歩踏み出そうとするシーンも、初めて喋った弟に対して、浅野がなお美への心遣いを見せるシーンも、同じくらいやさしくて滑稽だ。

2002年/DV/カラー/73分 英題:The Couples
監督・制作・編集:広田淳也
助手:藤井暁久 撮影:石原孝一郎 音楽:岩田みのる(エス・ピー・ディー) CGI:津留知之(cactus) タイトルアニメーション:大窪將央 主題歌:松崎ナオ 原案:鹿ノ戸美春 プロデューサー:染谷啓太
出演:伊藤裕満、松崎名央、勝田 愛、川口貴弘、柴田鉄平、関口納理子、カイブチサヤコ、加藤雅也

【貸し出し対象作品】料金:15,000円(税別)/貸し出しフォーマット:ビデオ

『桃色クロス』

監督:高橋 愛

女の子は、暴力をふるう代わりに真夜中、おしゃれをする。
容子と純は幼なじみ。別々の高校に通っている今も、同じ学校の誰よりも仲が良い。容子の家は農家で、3代が一緒に暮らしている。純は両親が離婚したあと、母親と2人で小綺麗なマンションに住んでいる。家庭環境は対照的な2人だが、学校やクラスメートをくだらないと思っていること、思ったことすべてを口にしないこと、自分の家に違和感を感じていること、何かをメチャクチャにしたいと考えていることなど、共通点は多い。容子は毎晩自分の部屋を散らかしては徹夜で片付けをし、学校で寝るように努めている。容子は、自分と友達のように振る舞いながら土足で心の中に踏み込んでくる母親にイライラを募らせている。ある日、純の感情が爆発。母親とケンカして家を飛び出した彼女は、容子の家にやって来る。17歳の夏の夜、2人だけの花火大会が開かれた。
青春真っ只中?女の子の人生で一番いい時?危険な年齢?可能性に満ちた時間?よく言われるほど素敵でもドラマチックでもない17歳。ちょっと頭が良くてやさしければ、家族に迷惑をかけることすらできない。身体と時間を持て余して焦燥感が募る、あの時期特有の微熱と倦怠感を、ほとんど主人公2人の部屋と教室だけで描いた。ただし、その小さな活動範囲の中が魅力的な空間になっていることで、殺伐とした印象がない。似ているけれど違う2人を、容子は“引き”、純は“寄り”で多く撮ることで表現。

2002年/DV/カラー/31分 英題:Ordinary at 17? No such things
監督・美術・編集:高橋 愛
制作・衣装:増田あゆ 撮影・照明:冨田義之 脚本:高橋 愛、増田あゆ、冨田義之 録音:平口 薫 音楽:GEM
出演:斎木蕗由、合谷木美記、北澤糊子、大野有希子、倉本仁子

【貸し出し対象作品】料金:15,000円(税別)/貸し出しフォーマット:ビデオ

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