577本の応募作の中から、約4ヶ月もの厳正な審査を経て選出された20作品を、お披露目上映。まずは、気になる1作品から観てみよう!あなたの投票で賞が決まる「観客賞」にもご参加ください。
※審査員、賞一覧、審査方法などPFFアワードの詳細は、「PFFアワードについて」をご覧ください。
PFFアワード2015 審査員特別賞、京都賞
「私は2年C組、尾崎沙織。抑圧と孤独を表現するため自分を撮る」。誰もいない教室で机に立って踊る私。自分で髪にハサミを入れる私。誰も私を理解してくれないと思っていたのに、「尾崎さんて変わってるよね」と言われた瞬間、世界は色づく! ひとりよがりを客観視する洞察力に、随所で笑わせられる。
学校で孤立している辛さを「アート」することで埋める沙織。私は特別だから! ほかの子たちみたいな浅い付き合いなら、友だちなんて要らないし! 王道は得意じゃないし! 本人には切実な思い。でも他人から見ると、自己愛過多。なのだけれど、沙織の外見がごく普通なのがミソ。アート系というより体育会系。そして、「あんただってフツーの女の子じゃん」と沙織に突きつけてくるあれこれの仕掛けが秀逸で、それに対する沙織の反応も素直で可愛らしく、いちいち笑える。笑えるのは、フツーの女子にとって身に覚えのある痛いところをバッサリ突かれるから。主要キャスト3人プラス母親の好演も素晴らしい。
片岡真由美(映画ライター)
1984年京都府出身/ビジュアルアーツ専門学校大阪写真学科 卒業
写真を志して上京したものの、勤めていたスタジオを1年ほどでやめてしまい、映画館のテアトル新宿でアルバイトをしていたとき、同僚や友人の自主映画制作を手伝ったのがきっかけで、自分も映画を作りたいと思うようになりました。しかし映画を用いて何かを表現するときに、自分には「これを伝えたい」という熱い思いがないことに気づきました。映画を作る周りの仲間は皆、自分の生い立ちや過去のトラウマ、自分の中にある強いコンプレックスなどを原動力に映画を撮っていました。でも自分は家族に愛されて育ち、大きなトラウマも持っていない。逆にこれまでの人生を平和に生きてきたことが一番のコンプレックスだと感じるようになりました。
そんな私が初めて気づいた自分の個性。それが、人よりちょっと自己愛が強いということでした。『わたしはアーティスト』はやっと背伸びせずに自分の気持ちを表現できた作品です。
【繰り返し観ている作品】
『キング・オブ・コメディ』(1983年/マーティン・スコセッシ監督)
【好きな映画監督】
リチャード・リンクレイター
[2015年/24分/カラー]
監督・脚本・撮影・編集:籔下雷太/録音:古坂圭佑/録音:小原 誠/美術:村澤綾香/美術:安川恵理/照明:赤坂将史/照明:中川奈月、岡田直哉/音楽:半野喜弘、大石峰生/制作:八重樫亮介、菊竹洋平、今野雅夫、赤穂良晃、松本 麗
出演:尾崎 紅、高根沢光、尾崎 藍、長岡明美、安川恵理、小徳彩夏、宮本彩佳