577本の応募作の中から、約4ヶ月もの厳正な審査を経て選出された20作品を、お披露目上映。まずは、気になる1作品から観てみよう!あなたの投票で賞が決まる「観客賞」にもご参加ください。
※審査員、賞一覧、審査方法などPFFアワードの詳細は、「PFFアワードについて」をご覧ください。
PFFアワード2015 観客賞、日本映画ペンクラブ賞
太古の昔には海の底だった町では、今も鯨の化石が出てくる。この地に千年前から伝わるという天狗の舞いや、被爆体験を語る老人、無縁仏の存在などを点在させながら、中学生のユウタが体験する出会いと別れを描く。東京から来たよそ者が土地に少しずつなじんでいく様子も、作品に一つの層を与え、効果的だ。
映画が始まった瞬間から、時間の流れが変わる。風になびく稲、滔々と流れる川、頭上を飛ぶ一羽の鳥、名も無き人の暮らし…フレームの外まで果てしなく広がるような美しい映像に魅せられ、気づけば主人公の少年の目線で世界を見ている自分がいた。その土地に根ざした人々の暮らしの、なんと豊かなことか。しかし、それとて日々移ろってゆく。「永遠」はないのかな…。化石が眠る地層のように、膨大な歴史の一点で、いま、この世に生きているものの一瞬一瞬を記録しようと試みた、野心あふれる一作。
木村奈緒(フリーライター)
1985年広島県出身/武蔵野美術大学 造形学部映像学科 卒業
以前から漠然と広島で映画を撮りたいと思っていて、たまたま友人の実家がある三次市に遊びに行ったところ、一目惚れしました。三次市に住んで、1年ぐらいかけてリサーチしたり脚本を書いたりしたんですが、撮影に入る1か月ぐらい前に脚本はぜんぶ破棄。その場で出会ったものとか、スタッフや中学生の子たちと話し合ったりしながら、毎回シノプシス程度のものを書いて撮影していきました。撮っている間、完成形は見えてなくて、お祭りを撮りに行ったときに出会ったおじいちゃんに取材したときも、それをどう使うかは見えないまま撮影したんです。
スタッフは大学の友人などに東京から来てもらって、1か月ほど合宿して撮影したんですが、そんな感じで行き当たりばったりの面が多々あったので、途中でクーデターが起きてしまい、「もう東京に帰る」とか言われましたね。映画の形にするため、編集には半年ぐらいかけました。
【繰り返し観ている作品】
『死者たち』(2004年/リサンドロ・アロンソ監督)
【好きな映画監督】
リサンドロ・アロンソ、ビクトル・エリセ、ジョン・フォード
[2015年/91分/カラー]
監督・脚本・編集:藤川史人/撮影:渡邉寿岳/録音:野口高遠/助監督:奥田裕介/記録:松尾奈帆子/制作:上村奈帆、瀬戸詩織、吉田有里/スチル:安達英莉/整音:高橋 玄
出演:田中隼翔、木村祐斗、竹廣三四郎、きむらゆき、平吹正名