1. ホーム
  2. PFFディレクターBLOG
  3. 『天国の門』『エレニの旅』『さよなら、アドルフ』そして『悲情城市』

PFFディレクターBLOGRSS

2014/01/02 15:13:00

『天国の門』『エレニの旅』『さよなら、アドルフ』そして『悲情城市』

新文芸坐での『天国の門』完全版レイト上映に間に合い、「やろうと思えば何でもできるぞ映画!」と非情に爽やかな気持ちに満ち溢れ幸せに帰路をたどりました。
全人類必見の映画と言えましょう。
同時に、本年も目標のひとつは「ひとりで映画に行かない」ということかとも再認識。
私含め、一人客が圧倒的多数で、これはまずいと痛感&反省です。こんなとき子供がいれば、どこにでも連れ歩くのに残念無念~とつぶやきつつ、ともかく面倒でも誰かを誘って映画に行く運動を始めるのが、現在の必須課題であろう映画人口増加のためには・・・と再確認するのでした。

実は『天国の門』は特製前売り券を持っています。使えないまま日々が過ぎ、今後の地方公開で、例えば温泉に近いとか、例えば行きたい美術展が近くであるとか、そんな街への旅を構築して使うという新たな楽しみも思いつき、そこにも無理やり人を誘うってのも考えてみました。もれなく映画のついてくる(それも3時間半!)1泊旅行であります。ふふふ。

「映画は教養である」という側面が語られない風潮が加速してるなあ、とも、夜道を歩きながら考えました。
映画にとって、好きとか嫌いとかって、実はとっても小さなこと。映画は、歴史なんだなあと、しみじみ確認です。
それはある個人が切り取った歴史ですが、歴史こそが物語であり(一日あるいは数日の記録でも、歴史であり物語であるということなのですが)歴史こそが教養。
観客がその映画に流れる歴史を知らなくてもみせきることができる、それが映画の力です。
内容がわからなくても、楽しむことができ、終って、あれこれ考え、あれこれ知りたくなる、そんな映画が素晴らしい映画です。
・・・お!断言しております・・・・

『天国の門』をみながら、『悲情城市』を思い出していました。
知らない歴史が胸を打つ。いてもたってもいられなくなる。
映画としての技術も、卓越した両作品。
何度みても心に迫る傑作『悲情城市』。台湾に行けばいくほど思い出すこの映画の、DVD発売もそろそろ可能に、という話を耳にし(ぴあが制作に関係しているのです)大変楽しみにしているのです。

これから公開される映画では、『さよなら、アドルフ』と『エレニの帰郷』も強い映画です。
『さよなら、アドルフ』はPFFに16mm短編で2度入選しているケイト・ショートランド監督の長編第2作です。原題は主人公の名前である『ローレ』ですが、なるほど邦題はこう来たか~と感心しました。
オーストラリアの監督ですが、本作は全編ドイツ語。パートナーのトニー・クラヴィッツ(PFF最初の入選、95年の『ストラップ・オン・オリンピア』でも制作を務めています)がドイツ系でユダヤ人で、暫くドイツに住んでいたときに始まった企画だと、昨年のロッテルダム映画祭の上映時に話しておられました。彼女自身もユダヤ人です。
『さよなら。アドルフ』は、親衛隊の家族が、ヒトラーの死後、どのような歴史を辿ったかを題材にした映画です。
大人は、自分の暮らしが永遠に続くと思いたい。子供たちの未来まで、実は考えるゆとりがない。その今も変わらない哀しさと愚かさが迫ります。誰がいいとか悪いとかでなく。

第二次世界大戦に関連する映画は、これからも絶えず生まれるのではないかと感じます。
最後の肉弾世界大戦である。映像記録が文字記録が膨大にある。驚くべきドラマが無数にある。
戦争映画としてでなく、多彩な映画をつくるフックとしての機能が開拓され続けるでしょう。
そして近年、ユダヤ系の女性監督の活躍が目立ちます。乱暴なまとめみたいですが、歴史認識が強靭だからこそなのではと思ったりします。

そして『エレニの旅』
いわずもがな、テオ・アンゲロプロス監督の遺作(09年の作品ですが)となってしまった豪華キャストで贈る愛とイデオロギーの物語です。
人生を賭けて信じ続けるものについての、哀切な物語。
映画も、イデオロギーも、幸せには結び付かず、この殺伐として傲慢な世界で、愛だけがそこに・・・とひとり納得した私ですが、観客全てが自分の物語を発見する映画です。そこが、強い。
7年前に『テオ・アンゲロプロス特集』を行ったPFFですから、思い入れはひとしおです。
是非、過去のあの作品、この作品も、ひとりでも多くの新しい観客にみてほしいなという気持ちも高まる今回の公開。なんといっても、東映なんです!配給が!そこが更に感動で、ぼーとしているのです。
アンゲロプロス特集時に作成したパンフもまだ在庫があり(増刷したのです)、公開時に販売できないかなとか考えてみたりもしました。

強靭な歴史認識力は、すなわち、教養ある大人への歩みに繋がる。
その最も手軽なテキストが映画です。
今、イギリスで起きている駐英中国大使と駐英日本大使の罵倒合戦。英語力に圧倒的差があるという話が聞こえていますが、教養も差が出ているらしいという話も・・・・やはり、学校で勉強してるより、映画を山のようにみているほうが、修羅場には絶対に役に立つと多くの公務員、政治家に私は叫びたい。
更に、朝から晩まで英語の映画をみてれば、英語力もアップするよ~んとも伝えたい。
世界平和へのキーは、映画をたくさんみることではないかと思うのでした・・・・あ、でも、独裁者って結構映画マニア多いなあ...困った・・・ん?だからこそ?

最後に、
すいません。大晦日に間違いをしでかしました。
宮沢賢治の「雨ニモマケズ」の詩の中に出てくる玄米の量は、一日4合が正しいのでした。5合ではなく。
・・・・それでもお茶碗10杯見当?
玄米だから、噛みしめること数千回?
しみじみしました。昔の人の顎の強さ。

「5合」は、宮崎県の伝承歌にあるのでした。~焼酎5合の寝酒の酌に嫁が欲しくなった~という歌詞。
子供の頃、バスガイドが唄うのを聞き「5合って飲みすぎ・・」と「嫁は酌婦か?」というふたつの憤りが湧いたものですが、子供の記憶というものはしっかり根を張る大変なものであることを再認識しました。

というわけで、4号と5合量が混同してしまいました!失礼しました!
以下、おまけの詩の全文です。
そして、大変遅くなりましたが、
本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

・・・・・・・・・・・
雨ニモマケズ
風ニモマケズ
雪ニモ夏ノ暑サニモマケヌ
丈夫ナカラダヲモチ
慾ハナク
決シテ瞋ラズ
イツモシヅカニワラッテヰル
一日ニ玄米四合ト
味噌ト少シノ野菜ヲタベ
アラユルコトヲ
ジブンヲカンジョウニ入レズニ
ヨクミキキシワカリ
ソシテワスレズ
野原ノ松ノ林ノノ
小サナ萓ブキノ小屋ニヰテ
東ニ病気ノコドモアレバ
行ッテ看病シテヤリ
西ニツカレタ母アレバ
行ッテソノ稲ノ朿ヲ負ヒ
南ニ死ニサウナ人アレバ
行ッテコハガラナクテモイヽトイヒ
北ニケンクヮヤソショウガアレバ
ツマラナイカラヤメロトイヒ
ヒドリノトキハナミダヲナガシ
サムサノナツハオロオロアルキ
ミンナニデクノボートヨバレ
ホメラレモセズ
クニモサレズ
サウイフモノニ
ワタシハナリタイ


プロフィール

PFFディレクター
荒木啓子 Keiko Araki

雑誌編集、イベント企画、劇場映画やTVドラマの製作・宣伝などの仕事を経て、1990年より映画祭に携わる。1992年、PFFディレクターに就任。PFF全国開催への拡大や、PFFスカラシップのレギュラー化、海外への自主製作映画の紹介に尽力。国内外で映画による交流を図っている。

最新記事

アーカイブ

ページ上部へ