◎コンペティション部門 PFFアワード2014

PFFアワード2014 グランプリ受賞作品

誰かとつながることを瑞々しく繊細に描く

『ナイアガラ』

Niagara
[2014年/27分/カラー]

監督・脚本・撮影・編集:早川千絵

撮影:古賀志信、東村諭弥/録音:鈴木悠也、川崎早也香/制作・録音:佐藤陽一郎
出演:伊丹咲季、星野慶太、河内雅子、実近順次、近藤輝二、多田野曜平

この映画のキーワード

  • カンヌをはじめ、世界中で上映
  • 日常の「音」を集める
  • 不思議な前向きさに感動

セレクション・メンバーによる解説

18歳になった女の子やまめは、施設を出る直前に祖父母の存在を知る。祖父は死刑囚で、祖母は認知症。という事実を、驚きも落胆もせず受け入れる彼女の前向きさに、まず引きこまれる。祖母を介護する青年が録音する、街中の何気ない日常の音の愛おしさから、生きている有難みを実感、感動がじんわり胸に沁み込んでいく。
施設育ち、死刑囚、認知症など、深刻なドラマの予感に思わず身構える観客を、鮮やかに裏切っていく。自分の境遇をマイナスではなく、常にプラスで考えるヒロインの思考回路に、教えられることは多い。そこにいるはずのない人が目の前に現れても、怯えず、慌てず、何も問いたださない。そうした彼女の態度ひとつひとつが積み重なって、滝のように炎が流れる花火が「生」そのものに見え、爽やかな夜風に吹かれた心地に満たされるのだ。

文:片岡真由美(映画ライター)

監督:早川千絵 はやかわ・ちえ

1976年 東京都出身。スクール・オブ・ビジュアル・アーツ卒業
中学のころから映画を撮りたいと思い続けてきました。アメリカの大学で写真を専攻しつつ独学でビデオ作品を撮り、出産を機に10年間のニューヨーク生活を切り上げて6年前に家族で帰国。テレビ局の映画部で制作進行の仕事をしながら、ENBUゼミナールの夜間コースに1年間通い、卒業制作として撮ったのが『ナイアガラ』です。誰かから送られてくる、街の音が録音されたCDを死刑囚が聞く、という話が以前から頭にあり、最初は男の子の主人公を想定していたのですが、ENBUの監督コースで一緒だった伊丹咲季さんに惚れ込み、女の子の主役に変更して、話を膨らませていきました。この作品を撮っている過程はただただ楽しく、幸せで、これからもずっと映画をつくり続けていけると確信しました。今年のカンヌ国際映画祭シネフォンダシオン部門で上映された際、他の作品のクオリティの高さに圧倒されつつも、『ナイアガラ』をとても好きだと言ってくださる人たちに出会ったことで、このような作品にもちゃんと居場所があることを知り、勇気づけられました。

繰り返し観ている作品
『霧の中の風景』(88年/テオ・アンゲロプロス監督)
『お引越し』(93年/相米慎二監督)
『東京物語』(53年/小津安二郎監督)
『泥の河』(81年/小栗康平監督)
最近観て面白かった作品
『her/世界でひとつの彼女』(13年/スパイク・ジョーンズ監督)
好きな映画監督
相米慎二、エドワード・ヤン、ジョン・カサヴェテス、黒澤 明、今村昌平、橋口亮輔
主役にしたい俳優
市原悦子

【フィルモグラフィー】
『ナイアガラ』(2014年/27分/カラー)、『センチメンタルビデオ』(2014年/15分/カラー)、『捨てたい人』(2013年/3分/カラー)、『地球最後の花火』(2013年/7分/カラー)、『ゼロの写真』(2003年/3分/カラー)

◎予告編

◎上映日程

  • 【東京会場】2014年9月13日(土) 11:30~ / 2014年9月17日(水) 18:30~ ※監督、出演者など来場予定。
  • 【京都会場】2014年12月13日(土) 16:20~ / 2014年12月18日(木) 12:00~
  • 【名古屋会場】2014年12月21日(日) 11:00~
  • 【神戸会場】2014年12月23日(火・祝) 15:30~
  • 【福岡会場】2015年4月26日(日) 16:30~

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