coFesta2012

PFFアワードについて

審査講評

2012年9月28日(金)の「PFFアワード2012表彰式」の後に行われた、交流会にて述べられた、最終審査員5名の審査講評をご紹介します。(※登壇順)

新井浩文 (俳優)
Hirofumi Arai/Actor

俳優として、本来は審査される側なので、今回の審査は難しいものがありましたが、審査員の皆さんの中では、多分ウチが一番シビアだったと思います。

正直、自主制作とかっていうことはどうでもよくて、「面白いか」「面白くないか」という点で審査しました。キツい言い方かもしれませんが、今回審査させてもらって、鼻で笑ってしまうような作品もありましたが、グランプリの『くじらのまち』にはそれがありませんでした。

あえてひとつだけ穴を挙げるとすれば、ニューハーフに関しては、ウチが最近演じたニューハーフのほうがクオリティが高いなと思います(笑)。でも、とても素敵な作品でした!

川村元気 (映画プロデューサー)
Genki Kawamura/Film Producer

僕は、映画のプロデューサーなので、今回皆さんの中から、将来一緒に仕事が出来る人がいるといいなと思いながら映画を見ていました。

全体を通して思ったのは、出始めは声が大きいけれど、映画が終わる頃には何が言いたいのか声が聞こえなくなってくるような作品が多かったように思えました。僕の好きな、ヒッチコック、フェリーニ、ソダーバーグ、ポン・ジュノのような映画監督の作品は、一番最後に向けて声が大きくなっていきます。ぜひ自主映画のうちに、言いたいことを最後まで大声で言う映画を、作っていってもらいたいです。

川内倫子 (写真家)
Rinko Kawauchi/Photograher

今回審査にあたってそれぞれの作品を拝見して、やはり映画というものは総合芸術だと感じました。技術や知恵を駆使し、時間とお金と労力を使って、一つの作品を完成させるということ自体が非常に大変なことです。まずは一つの作品を完成してこの場にいることが本当に素晴らしいと思います。

表現は、社会を映す鏡だと改めて思いました。今の私たちが抱えている問題を、表現に昇華していくことは困難を伴うことですが、お互いに一表現者としてそれぞれの現場で邁進していければと思います。

行定 勲 (映画監督)
Isao Yukisada/Film Director

正直に言うと、今回は審査員をやりたくなかったんです。なぜかというと、傍若無人で無茶苦茶な映画に影響されたくないと思ったからです。PFFには、そういう映画があるんだろうという幻想を抱いていました。

僕は、東京に出てきて、自主映画の仲間を作る前に、助監督になりました。大学も行っていないし、専門学校には行ったけれど友達は出来ない。それで助監督になってしまった僕にとっては、PFFというのはものすごく憧れの場所でした。今、日本映画界で活躍している監督たちの自主制作時代の作品を、僕は何度もPFFで見ては衝撃を受けていました。

今回プロの監督として、審査するにあたり、若い監督の作品を見て「俺はこれでいいのか?」「このままじゃいけないんじゃないか?」と思って、プロを辞めて自主映画に挑戦したくなるような気持ちにさせられることを期待していました。ただ、残念ならが今回そういう映画には出会わなかったです。

いい意味かわかりませんが、「最近の自主映画は完成度が高い」という言葉をよく耳にします。僕も海外の映画祭で言われたことがあるのですが、「完成度が高い」というのは、ひょっとしたら「個性がない」ということではないかと、ずっと悩んで今もそう思っています。今回の作品も、見せ切れる力はある。ただ、それをもっと逸脱した何かすごいものを見れたら、多分それがグランプリなんだと思います。そういう意味では、今回の審査は、想像したものとは違いました。

僕は、望まれずに作った作品のパワーというのは、物凄いものがあると思っています。やがてプロになって、望まれるようになると「本当にこれでいいのか?」と、皆悩むと思うので、その前にやっぱり何か一発かましてほしかったという気がしました。

皆さんの映画は、見せ切れる映画にはなっていますが、一方で、結局作品で何を描いているのかがわからず、何度も見返した作品もありました。これからのスカラシップなどの機会もあると思いますので、何か爆発的なすごい映画で影響を受けさせてもらいたいと思います。

高橋伴明 (映画監督/京都造形芸術大学教授)
Banmei Takahashi/Film Director, Professor

長い間、映画をやっていると、自分の中での映画文法みたいなものが出来てしまって、数年前までであれば、今回のような作品群は、僕は受け入れられなかったのではないかと思います。ただ3年前、いま教えている大学の学生主体で自主映画のような作品を作る機会があり、その現場を通して、大学生世代の感性や言葉を受け入れていかなければいけないと、身に染みて感じました。今回の審査は、なかなか楽しめました。

今回の作品を通して感じたのは、全体的に、ラストシーンが弱いという印象を受けました。僕はラストシーンを決めてから映画を撮ります。
さらに細かいことを言うと、もっと編集に対する可能性というものを信じてほしいと思いました。落とすこと、組み替えること、長く延ばしてみるということの中に、いろいろな可能性があるということを知ってほしいと思います。
また、最近の流行りなのか、フェードアウトしてからの黒みが長い作品が多かったように思います。やたらと意味のない長回しに見える作品も何本かありました。

ただ、本当に映画が好きで、さらに映画を作っている若い人がたくさんいることを嬉しく思いました。

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