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運命じゃない人 interview
 
内田けんじ監督インタビュー                 
インタビュアー:森 直人

──PFFアワード2002の入選作『WEEKEND BLUES』、そして今回の『運命じゃない人』を通じての率直な印象として、内田監督はまず“脚本の人”だなと思いました。やはりストーリーテリングに最も力を入れていますか?

内田 そうですね。多分、天才だったらメモ一枚で撮りはじめる人もいるんでしょうけど、僕は脚本の段階で確実に「面白い」と思えるものを作ってからじゃないと、撮る度胸がないんです。
 あと、大学時代に観た仲間うちの学生映画が、たるいものばっかりだったんです。映画を撮りたい学生って、脚本よりも映像ありきの人が多くて、一本も面白いと思えるものがなかった。そういう自主製作映画ノリへの対抗意識は、すごくありました。

──大学は、サンフランシスコ州立大学の芸術学部映画科に留学されたんですよね。

内田 はい、日大芸術学部の受験に落ちて。そこは入学試験がなかったから、バブル末期の留学ブームに乗って行ったんですけど。アート系の学生が特に多いところだったんですよ。

──脚本の作り方として、二作品とも、時間軸を複雑に操作していますね。

内田 この手法にこだわっているわけではないんです。『WEEKEND BLUES』の場合は、18歳の時にバイト先の先輩に聞いた、ヤクザにもらったドラッグをタバコに湿らせて吸ったら、知らない間に二日経ってた、という話を使いたかったんです。まず着想ありきなんです。『運命じゃない人』の場合は、携帯電話がヒントになりました。僕がアメリカに行ったのは92年で、日本に帰国したのが98年。するとその間に、携帯電話が一気に普及していて。新宿を歩いているおじさんが、「もしもし、いまどこ?」って携帯電話をかけたことに衝撃を受けたんです。いまは当たり前なんですけど、電話をかけた相手の場所がわからないって、昔はありえない。これってミステリアスというか、電話をかけた相手も、自分とは別の時間を生きているんだっていう面白さがありますよね。この着想から、またもや時間軸を操作する作劇につながっていったんです。

──レストランで神田と宮田が真紀をナンパするところとか、時間軸の核(求心点)になるシーンがいくつかありますよね。

内田 その構成が苦労するんですよ。プロットをパズルみたいに組み立てていくんですけど、今回は一年くらいごにょごにょやってました。つじつまを合わせるのに疲れてきて、このキャラクター殺そうかなと思うこともありましたから(笑)。設計図が完成してからは、実際に執筆したのは十日間だけなんですけど。まさに“構成命”の映画でした。
 参考になったのは、クラシック音楽のソナタ形式です。一楽章あたり二つの主題があって、展開部を挟みながらその主題を繰り返していく、という発想を応用しています。

──時間軸の使い方などタランティーノを連想する人もいるかと思いますが?

内田 もちろん大好きですけども、特に意識はしていないです。意識したのは、むしろ『男はつらいよ』とか。すごい乱暴な言い方ですけど、日本映画は台詞が少ないものが多い気がするんです。その中で、しゃべりの面白さで観客の心をとらえる寅さんはすごく好きで。映画は台詞とシチュエイションが大事だと思っているので、ビリー・ワイルダーやニール・サイモンは本当に大好き。僕は高校時代から池袋の文芸坐(現・新文芸坐)に通い出して、『ローマの休日』やフランク・キャプラみたいな、古き良きハリウッドの王道にすごく影響を受けたんです。
 あと、元々はジャッキー・チェンみたいに、自作自演の映画人になりたかったんですけど、監督として冷静に考えると、自分が主演俳優というのはキツいなと思って。

──台詞の作り方が格言っぽいというか、あとまで頭に残りますね。特に神田が宮田に言う「電話番号をなめんなよ」とか「三十超えたら、運命の出会いとか自然の出会いとかいっさいないから。もうクラス替えとか、文化祭とかないんだよ。」などの恋のアドバイスが。

内田 あれは僕自身が普段、ああいうことをよく言ってるんですよ。人の恋愛に対してうるさいんです。僕の友達はみんな、山中聡さん演じる神田を見て「お前の役をあんなかっこいい人にやらせるなよ」って言ってましたから。

──『WEEKEND BLUES』もそうですが、男女観をハッキリ打ち出していますね。基本的に男は純朴で、女は強くて恐い、みたいな。

内田 別に男女ってこういうもんだよ、と言いたいわけではないんです。僕がいつも意識しているのは、“男の子”を描くということなんですよ。勝手な幻想を女の子に抱いてみたりする、男の子たちの言動が僕は好きなんです。『WEEKEND BLUES』で主役のサラリーマンを演じた男は昔からの友達で、実際、彼自身をモデルに役柄を作ったんです。僕自身にはサラリーマン経験はないんですけど、地元の友達はみんな会社員になっていて、そういう社会的にはオトナの立場になっている男の、一枚皮を剥がした姿を描きたい。だから“男女関係”を描こうとしているわけではないんです。

──主要登場人物となる、5人のキャラクター作りについて教えてください。

内田 最初にあったのは、宮田と神田の関係ですね。幼なじみの親友で、スーパーピュアな宮田に対し、僕ら一般に近い感覚の神田。そしてヤクザの浅井組長は、達観しているオトナの男。あゆみは金しか信じない“悪女”であり“いい女”なんですけど、全然違うタイプに思える真紀も、あゆみのようになりそうになる、というのがポイントです

──あゆみには、『ルパン三世』の峰不二子のようなファンタジーを感じました。

内田 まさに。それは映画を作ったあとで気づいたんですけど、僕は峰不二子コンプレックスかもしれません。どんな男にも、誰にもつかまらない、大きなものを持ったかっこいい女、のイメージです。
 役者さんはだいたいオーディションを開いて決めさせていただいたんですけど、板谷由夏さんだけは最初からこちらの指名だったんです。『tokyo.sora』という映画を観て、キツめのルックスなんだけど、声が可愛かったのが決め手でした。

──プロの役者さんやスタッフを使っての、初めての撮影はいかがでしたか?

内田 ひたすらプロのすごさを実感しつつ。でも2週間弱のタイトな撮影だったけど、現場の雰囲気がとても良くて、すっごく楽しかったですね。

──今後の展望をお聞かせください。

内田 アメリカに留学して余計に思ったんですけど、“日本映画”を撮っていきたいです。結局日本人には、日本特有の劇の形が合うはずなんで。あと僕自身、サービス精神たっぷりのエンタテインメント映画が大好きなので、そういう楽しいものを撮っていきたい。メジャー志向ですよ。スタンスは常に“アンチのアンチ”なんで、長州力じゃないですけど(笑)、ど真ん中を行きたいです。

 
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