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橋口亮輔監督×鈴木敏夫プロデューサー「映画にとって、新しい表現とは何か?この壮大で永遠の課題に、答えは出るか?」

第38回PFFのプログラム「映画のコツ~こうすればもっと映画が輝く~」の一企画として、橋口亮輔監督とスタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーにご登壇いただきました。今回お二人に与えられた対談テーマは“映画の新しい表現”。さて、お二人の考える映画の新しい表現とは?そして、そこから見えるずっと変わらない表現とは?会場で語られた貴重なトークをご紹介します。

取材・文=金澤誠
※本レポートは「キネマ旬報」(2016年11月上旬号)からの転載です。

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変わらないのは“人間を描く”こと

『レッドタートル ある島の物語』

橋口:それは表現に自信がないからだと思うんです。そういうことで言うと『レッドタートル ある島の物語』は、説明過多と対極にある映画だと思いました。

鈴木:これはお話を作るのに、結構時間がかかりました。凄くシンプルなんですけれど。

橋口:シンプルだからこそ、勇気がいると思うんです。エピソードがものすごく抑制されている。主人公の男が、どういう人間なのか説明されないまま無人島に打ち上げられて、そこで生活していくという。普通ならロビンソン・クルーソー的な無人島でのHOW TOものもやれると思うんですが、その辺は抑えて作っていますね。

鈴木:どうやって食べるか、どうやって火を起こすかなんて最初は監督もやるつもりだったんですが、そういうことは今までさんざんやられていますしね。またちゃんと描いたところで、いいシーンになるとは思えなかった。

橋口:エピソードの積み重ね方が違っていて、例えばここに寓話的な赤い亀が出てくるんですけれど、主人公がこの亀を殴る。それで死んでいるのか、気絶しているのかわからない状態になって、海辺から竹に水を汲んできて亀にかけてやる場面があるんです。これが波打ち際で竹で水を汲む。カットが変わって亀に水をかけるというのを繰り返すんですけれど、動きは一緒なのに一度目と次では微妙にアングルが違うんです。あれを観て“かっこいい”と思いました。僕は予算のない日本映画を作っていますから、そういう場面を撮るときには一度アングルを決めると、なかなか微妙に変えられないんです。でもそれによって躍動感というか、運動性が出てくる。それがものすごい勉強になりました。

鈴木:すごい見方をしていますね。

橋口:またこれには、セルアニメーションの手触りが感じられますね。

鈴木:亀以外はCGを使っていないんです。始めはもっとCGを入れるつもりで試したんですが、監督が気に入らなくて。だから独特のものを持っていますね。背景まで監督が自分で描いているんです。またその作る姿勢には感心しました。これは作るのに、それなりに予算がかかったんです。ところが監督は、観客に媚びるとか、多少サービスしようというところが一切なかった。

橋口:そういう監督の作り方を、鈴木さんも許されたわけでしょう。僕はこれを観たときに、あまりにも今の実写も含めた日本映画と対極にある、ストイックに美しさを追求した作品で驚きました。同時に、自分で思ったことを、思ったように自由に映画を作ってもいいんだなと改めて思いました。

鈴木:だけど橋口さんの『恋人たち』なんか、人間は本当はこうなんだよって想いが入った、説得力がある映画じゃないですか。

橋口:僕が映画青年だった若い頃、“目の前に広がっていく映像はすたれるけれども、人間はすたれることはない”とフランソワ・トリュフォーが書いた文章を読んだんです。つまりCGや3Dなど映像の表現はすたれていくけれど、人間を描くことはすたれることはないと。僕自身、映像派の人間ではないですから、どんな時代になっても人間をしっかりとつかんで描けば、新しいということではなくて、しっかりと映画になっていると思っているんです。

鈴木:人間を描くということは、いつの時代も変わらないと思いますね。『レッドタートル』も観ていただければ分かりますけれど、やはり女は凄いね。男はそのおこぼれで生きているねという映画なんです。その捉え方は不変だと思うんですよ。そういう映画に関われたことが幸せでしたね。

橋口亮輔Ryosuke Hashiguchi

1962年生まれ、長崎県出身。初期作品『夕辺の秘密』(89)がPFFアワードグランプリを受賞し、PFFスカラシップ作品『二十歳の微熱』(92)で長篇デビュー。主な作品は『ハッシュ!』(01)『ぐるりのこと。』(08)『恋人たち』(15)など。

鈴木敏夫Toshio Suzuki

1948年生まれ、愛知県出身。85年スタジオジブリ設立に参加。89年から専従となり以後『風立ちぬ』まで全劇場作品及び、三鷹の森ジブリ美術館のプロデュースを手がける。最新作『レッドタートル ある島の物語』が公開中。

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