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山下敦弘監督に聞く「自分の得意分野をどう見つけるか?」

昨年、2014年9月21日(日)東京国立近代美術館フィルムセンター・大ホールにて、第36回PFFの特別企画「映画監督への道」として、『味園ユニバース』、『もらとりあむタマ子』など人気作を発表し続ける俊英・山下敦弘監督に登壇いただきました。
山下監督が魅かれてやまない市川準作品のひとつである『BU・SU』の上映と、「自分の得意分野をどう見つけるか?」をテーマにトークイベントをおこないました。

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ここから、質疑応答が始まります。

『BU・SU』

参加者:『BU・SU』を見て改めてすごいと思った点、これは俺はやらないな!という点はありますか。

山下監督:悪い意味じゃないんですけど、変な映画だなと思って。タイトルが入るまでに延々歩いているのとか。普通あんなに待てないですよ。デビュー作っていろいろなことが詰まっていると思うんですけど、市川さんの映画の熱量がすごいと思います。真似できないと思う。画面にホームレスが映ったりとか、素人みたいな人が最後にボソッとしゃべったりとか。2秒とか5秒の世界の話なんだけど、CM出身だからなのかなと思ったり。あと市川監督は女の子の何とも言えない表情をとるのがうまい。怒っているのか悲しいのかそういうのがわからない微妙な表情を撮りますね。

参加者:現在演出をされるうえで、役者の良い演技を引き出すためにされていることはありますか。演出するうえで感情面のつくりかたを言うのか、それとも表面的に動作の話をするのでしょうか。

山下監督:究極はどう見えるかだと思っているんです。僕は昔、「こうしてくれ」って演技を全部指示をしていて、そんな乱暴な演出はやめてくれって怒られてしまったことがあったけど。いろんな方法をためしてみたけど、ぼくは最終的に1時間くらいやって何も変わらなかったときは、やっぱり僕が演じるんですよ。役者の中で感情がどう動いたって、伝わらなければ意味がないと思うから。「こういう体験をして育ったからこういう気持ちになって、こういう表情になる」と言葉で教える時もありますが。

荒木D:みてるというのはモニタですか?それとも実際に?

山下監督:モニタだときれいすぎて映画っぽくなっちゃう気がするので。できるだけカメラの隣で。ある種のプレッシャーになる役者さんもいるみたいですけどね。

参加者:自主制作の時代に、金銭的にも時間的にも厳しいこともあったと思いますが、そんな時どうやって生活していったのですか?

山下監督:人に甘えてましたね。先輩もたくさん手伝ってもらって、ギャラを払うという考えがありませんでした。実質フィルム代だけでしたね。作りたいものがあったから人の力を借りていた。僕は親にも甘えたりして全部出してもらってました。すみません何の参考にもならなくて…

参加者:『BU・SU』では同級生の女の子が突然来なくなったり、あまり説明的でない部分もあると思うんですが、そういったことの効果についてどう考えていますか?

山下監督:僕もどこまで説明したらいいか、どこまで省いて伝わるかは気にするんですが、そういう説明しない意味深なシーンを入れたりとかって、映画だとよくあることだけど、お客さんに託している部分ですよね。お金を払っているお客さんには全部説明しなきゃって意見もあるかもしれませんが、そういう映画の本筋には関わらないところでの映画ファンとの「これはわかるよね」っていう共犯関係が面白いのかなって思います。

荒木D:『もらとりあむタマ子』は映画じゃない企画から劇場公開されたとのことですが、その変わり目で何か作品のつくりかたには変更点はありましたか?

山下監督:『もらとりあむタマ子』は4つの季節に分かれていて、まず秋と冬を撮ったんです。そのタイミングでプロデューサーが春と夏を追加した映画作品を作りたいという企画から始まりました。当時は反対したんです。そんないびつな映画ないよって。最初は出来上がりも映画じゃないと思ってましたしね。けど周りに「映画になってるよ」って言われて「そう?」みたいな。

参加者:上映も撮影も機材がデジタル化される中で、映画とTVはどのように違うと考えていますか?

山下監督:やっぱり同じ場所の暗闇で皆がみるってことだと思うんですよね。TVとは違う「体験」であるということ。

参加者:TVと映画で作り手が作り方を変える部分はあるのですか。

山下監督:なんかもう言った者勝ちなですよね。もう境界はあまりないんだと思います。『もらとりあむタマ子』のように、最初はTVの企画で映画に派生していくやり方も今後あるだろうし、松江君の『フラッシュバックメモリーズ 3D』もライブが映画になるという新しい作り方ですし。いろんな形の映画が出ていくんだと思います。

© Hako Hosokawa
山下敦弘Nobuhiro Yamashita

1976年、愛知県生まれ。大阪芸術大学の卒業制作である初の長編『どんてん生活』(1999年)が、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭のオフシアター部門でグランプリを受賞。以後、『ばかのハコ船』(2002年)『リアリズムの宿』(03年)で独特な世界観とオフビートな作風が人気となり、国内外で注目を浴びる存在となる。自身初の35mm商業映画『リンダ リンダ リンダ』(05年)で広く知られ『松ヶ根乱射事件』(06年)で東京国際映画祭コンペティション部門に出品、『天然コケッコー』(07年)で報知映画賞監督賞、第62回毎日映画コンクール日本映画優秀賞をはじめ数々の賞に輝いた。他に『苦役列車』(12)『味園ユニバース』(15)を監督し、16年には新作『オーバー・フェンス』の公開を控えている。

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