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  3. No.29:『恋に至る病』in 第14回ソウル国際女性映画祭

海外映画祭レポート

日本国内のみならず、海外の映画祭でも上映される機会が多くなったPFFアワード入選作品&PFFスカラシップ作品。このページでは、そんないろいろな映画祭に招待された監督たちにも執筆していただいた体験記を掲載します。

第21回PFFスカラシップ作品『恋に至る病』in 第14回ソウル国際女性映画祭 (韓国:2012年4月19日~26日)

ベルリン国際映画祭レポート香港国際映画祭レポートに続いて、3連続の登場となる『恋に至る病』の木村承子監督。今回は、スタッフがほとんど皆、若い女性というユニークな映画祭の模様をご紹介していただきます。

会場の様子。女性映画祭らしくポップな飾り付け。ショーケースの中には様々な衣装を纏ったバービ人形が展示されている。

女性映画祭ということもあってか、スタッフがほとんど若い女性だったのが印象的だった(特に性別を絞ってスタッフ募集しているわけではないのだが、自然に集まってくるのが若い女性なんだそうだ)。ボランティアスタッフのほとんどが女子大生で、スタッフユニフォームであるショッキングピンクのパーカーに身を包んだ彼女たちはとても眩しかった。

2回立ち会った上映の観客は、香港同様若い観客が多かった(映画祭に招待してくださったホワンさんの話によると、今年は開催期間が学生のテスト期間に重なってしまったために、客が減ったと言っていた。やはり、メインの客層は学生らしい)。

1回目の上映後のQ&Aでは、主人公ツブラの強烈なキャラクターはどうやって作っていったのか、登場人物たちそれぞれの気持ちの決着の付け方、また、監督は4人の登場人物の中で誰に一番似ているかといった、キャラクター造形に関する質問が多かった。自分とも年齢の近い客層だったため、ツブラには自分自身の思春期の思いが込められていること、その時に考えていたことを物語に反映させていることなど、若い世代独特の感情について深く解説することが出来たと思う。

2回目の上映では、逆にこちらから「もし性器交換が自分の身におこったらどうするか?」という質問を投げかけてみたのだが、「そんなの困るし、なりたくない(若い男性の意見)」「子供のころ、そうなったらどうするかよく考えていた。しかし今そのような状態になるのは困る(若い男性の意見)」「長期的に考えると嫌だが、短い間なら体験してみたい(若い女性の意見)」「思春期を通りすぎてしまった自分にとっては奇怪なことだが、若いうちだったらなってみてもいいと思う(おそらく娘さんと一緒に来ていた中年女性の意見)」など、意見はバラバラだった。恥ずかしがりながら自分の意見をぶつけてくれた観客の方々に深く感謝。この映画を見た後、お客さんが誰かに「もし性器交換がおこったらどうする?」という議題を、友達同士の他愛のないおしゃべりにでも、恋人とのセックス後のピロートークのひとつにでも、繰り広げていれたらいいなあ。

映画祭スタッフの皆さん。

上映後にホワンさんに詳しく感想を聞いたのだが、彼女は性器をパワーの象徴として描いていない点に惹かれたと語ってくれた。普段、女性の体は欠如のイメージとして描かれるが、この作品は男性器を手に入れたから強くなるのではなく、初めから女性の登場人物が男性の手に負えないコントロールできない存在として行動していく様に惹かれたそうだ。本作は特にジェンダーを主題としているわけではないのだが、こういった性差を考える目線での感想はすごく興味深かった。ベルリンでの感想に引き続き、新しいテーマを得ることが出来たと思う。音楽にも興味を持ってくれたようで、劇伴のゲーム音や、エンディングテーマに関する感想も寄せてくれた。ベルリンや香港でもゲーム音楽のような劇伴については質問が多く寄せられたのだが、やはりここでも映画にピコピコ音がつくのは珍しく感じるらしかった。しかし、序盤のツブラの誰にもコントロールできない暴走ぶりをゲームに出て来るようなモンスターに見立ててこのような音楽をつけている事、マドカとの共同生活を通してそれが改善されていくことによってゲーム音の劇伴を減らしている構成になっていることを話すと、深く納得してくれた。今回はハングル語の字幕もつけられていたのだが、エンディングテーマの歌詞まで翻訳されており、アーバンギャルドの歌詞やポップで独特な曲調も強く関心を持ってくれたようだった。

また、通訳を担当してくださったユミさんは日本に留学したこともある日本映画好きで、青山真治監督の一連の作品で齋藤陽一郎さんを、スカラシップ作品の「14歳」で染谷将太さんを見ていて、彼らの今の姿を見ることが出来て嬉しかったと語ってくれた。

2回目の上映後にディレクターズナイトに参加したのだが、各国の女性監督が集まった様は圧巻だった。仲良くなったタイの監督とは、映画の話から恋人の話、タイ人男性の女性の好みなど、様々な話をした(自分はかなり英語が不自由なのだが、片言+イラストでなんとか乗り切った)。彼女に似顔絵を描いてあげたらすごく喜んでくれたのが嬉しかった。参加していた監督は皆エネルギッシュで美しかった。

(前回レポートした香港国際映画祭、今回のソウル国際女性映画祭)それぞれの映画祭で頂いたリアクションを無駄にすることないように精進しなければならないと思う。「新しい作品を作って、また映画祭に来てください」という言葉、忘れませんよ!

文:『恋に至る病』監督 木村承子

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