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2012/12/02 10:40:49

朝鮮民主主義人民共和国の映画

東京フィルメックスでは、内田伸輝監督が熱く語った通りの結果で、驚いた昨夜でしたが、学生審査員賞を、高橋泉監督の『あたしは世界なんかじゃないから』が受賞したこともうれしい驚きでした。高橋さんも"賞男"という形容詞がつきそうです。
と言いながら、やはり映画祭運営の立場からは、受賞作品以外も、すべてみてほしいコンペティションです。

映画祭が開催されている時期は、「この機会がないと見逃す・・・(職業上、その危機感がいつもあります)」という焦燥にかられ、映画祭作品チェックを最優先になりがちなのですが、一般劇場公開作品も、その、公開期間のめまぐるしい短縮のため、現在では映画祭並みに焦らされます。

半月前に、都内でみることのできる作品の中で、これはみとかなくちゃ・・・と思うものをリストアップしてみると、40作品を超えてしまい、この中からどれを見るか考えている間にどんどん上映終了になる・・・という現実に冷や汗が出ました。
「観たい映画が溢れかえって、どうしていいかわからない・・・」贅沢を通り越して悩みとなる、とんでもない状況がここにも。そして、「もうお手上げ」と観ずに終わり、後悔する。その繰り返しをしてるかもです。

そんな中、有楽町にある日本外国特派員協会で、日本在住のドイツ人ライター、ヨハネス・シュールヘンさんが出版した、北朝鮮映画に関する書籍紹介の夕べがあると、山形国際ドキュメンタリー映画祭の藤岡さんから教えていただき、出かけてみました。

初体験の日本外国特派員協会。古式ゆかしい西洋の「クラブ」形式で、食事もできれば、バーもある。ここで、各国、各社の記者たちが、交流を続けてきたのでしょう。
イギリス映画でもよく見る「クラブ」=男の社交場。
"since1945"とくっきりと書かれているように、多分日本の各組織で1945年に一挙導入されたこの"クラブ"のなかで、夢の中に生きた男たち・・・まんま時間が止まった人たちも多かったのだろうなあ・・・と想像しながら、近年は、使用フロアが3フロアから、2フロアに減り、さまざまな予算も削減になっているということで、インターネット時代の記者の仕事の変化をうつすなあと、ひどくしみじみとしてしまいました。

何故北鮮映画関係の企画を教えてもらったかと申しますと、本年の映画祭世界で話題になった映画のひとつに、イギリス、ベルギー、北朝鮮合作のCOMRADE KIM GOES FLYINGという新作があり、それを釜山で見逃して残念がっているときに藤岡さんが一緒だったからでした。

COMRADE KIM GOES FLYINGは、近年西欧でブームという北朝鮮=ピョンヤン旅行にも象徴されるように、キッチュでノスタルジックな、古き良き=西欧社会では企画の通らない=家族のメロドラマを、北朝鮮映画というフックで実現させようと、イギリスとベルギーの監督が考え始まった企画で、北朝鮮のOKをとり、現地で撮影されたのです。出演は北朝鮮の俳優たちです。(え~、映画の出来は話題にならないところをみると・・・・ですが、日本の映画祭でどこか上映してくれないかな~と夢見てます)

それにしても、開きそうな扉があると、ガシガシ飛び込む欧米人、怖がっておうちにこもる日本人、という図は近年益々くっきりしてきた気がします。チェコで最初に映画祭を始めたのは、そういえばアメリカ人だったなあ、とか、中国語の堪能な欧米人であふれかえる北京のバーとか、映画祭関係での昔の体験を、ふと思い出します。

なんだか、すごく前置きが長くなってますが、
北朝鮮映画は、日本から特撮技術を招聘してつくられた『プルガサリ』の製作体験記を多く読むことができますし、韓国のシン・サンオク監督が誘拐されて、北で多数の映画を撮り、東ヨーロッパ経由で脱出した体験記「闇からの谺」が日本では文庫本になっています。そして、明治学院大学で教えておられる門間貴志さんが、この5月、「朝鮮民主主義人民共和国映画史」という大著をなされ、手に入る情報はかなりあります。

門間さんは、西武グループカルチャーの華やかにひらいていた80年代に、今はなき、渋谷シードホールで「フリクショナル・フィルム」という定義のもと、海外の映画に於ける日本人の描かれ方、に注目した特集上映を行い、その後、社会評論社から「フリクショナル・フィルム読本」としてシリーズ出版されて、更に多くの映画を紹介なさってます。
ごくたまにしかお会いする機会がないのですが、今回、日本外国特派員協会でお目にかかり、そのあと、かねがね興味のあった、シネセゾン、スタジオ200、シードホールという、今に続く映画文化を育てた西武系の場所について、色々とお話を伺いました。
(その話は、またの機会にご紹介します)

ここで話は飛びますが、私がほぼ週替わりで自宅モニター前で開催する特集。最近は「イップ・マンDVD化記念・香港カンフー映画特集」がありました。
衰退する香港映画で、久々のヒットを記録した『イップ・マン』シリーズ。このところ、映画で広東語が聞けると感動してしまう傾向にあり、ついひとり特集してしましました。で、博識の門間さんと話していると、出る出るイップ・マンの話も。イップ・マン映画は「日本人の描き方がよい」ということで北朝鮮で公開されたことや、本人は生涯絶対に日本人の弟子入りを許可しなかったことや、あれやこれや。

そこでも、ふと「日本人の描き方の悪い」映画をみることは難しい日本を思いました。
実際にそこに描かれたことは、みて、考え、議論し、という作業は、「現実」を把握する手段のひとつとして、あったほうがいい、映画はともかく、どんどんみたほうがいい、というのが、私の考えです。

それはともかく、門間さんとのお話は面白い、著書「朝鮮民主主義人民共和国映画史」も面白い、そこに紹介された映画もみたくなる。ここで何か企画を実現したいなあと、その夜強く思った私は、今、道を探っています。

来年、PFFは35周年です。実はそっちの課題は大きくて「他の企画してる場合?」と自分に厳しく問わなくてはなのですが、北朝鮮映画、そして、昨日ちょっとお話しました群青いろ作品、2つの企画は実現したいなと、年末までの残り少ない日々(それも神戸でのPFF開催で、関西に行く)のやりくりを考えているのでした。

勿論、3月には恒例の「世界が注目する日本映画たち」を所沢で開催です。こちらは、チラシもすでに配布中!是非、話題の邦画に漬かる3日間に参加してください!!
3日間で8作品『ヒミズ』『鍵泥棒のメソッド』『聴こえてる、ふりをしただけ』『かぞくのくに』『KOTOKO』『一枚のハガキ』『エンディングノート』『サウダーヂ』が一挙に体験できるお得で便利な3日間なのであります。

プロフィール

PFFディレクター
荒木啓子 Keiko Araki

雑誌編集、イベント企画、劇場映画やTVドラマの製作・宣伝などの仕事を経て、1990年より映画祭に携わる。1992年、PFFディレクターに就任。PFF全国開催への拡大や、PFFスカラシップのレギュラー化、海外への自主製作映画の紹介に尽力。国内外で映画による交流を図っている。

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