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PFFディレクターBLOGRSS

2011/10/15 02:04:17

ああ釜山

今日は(もう"昨日"ですね)釜山の閉幕だなあと考えながら、水キムチの作り方を書いた本を読んでいました。好きなのにめったに遭遇できない水キムチですから、自分でつくってみようと思った次第です。米のとぎ汁からつくるとは知りませんでした・・・
そして、釜山滞在中の北川仁監督(『ダムライフ』でコンペに参加中)から、クロージングセレモニー途中にPFF事務局に届いた連絡で、受賞はないようだと知りました。
・受賞者には内示があるらしい
・受賞者とそうでないものは、入るゲートが違うようだ
・受賞者でないものには、通訳がついていないようだ
それらを考えあわせて、受賞はないようだ。
という、ここには箇条書きしましたが、なかなか臨場感あふれるメイルでした。
PFF制作の『タイムレスメロディ』が釜山でグランプリをいただいたときには現地にいた私ですが、内示は一切ありませんでした。あれからもう12年。そういえば、その時代は、グランプリ作品は韓国での配給が行われるという特典もありました。会場も、今の海沿いのリゾートタウン、海雲台ではなく、釜山タワーのある街中でした。今は遥かに大きな映画祭となった釜山。オーガナイズに効率が求められるようになり、いろいろとやり方を変えてきたのでしょう。何はともあれ、内示のある映画祭はそれほどないと思います。通訳がついているかついていないかで、受賞があるかどうかバレる、というケースは、何度か体験したことがあります。ああ、そういえば、こんなことやら、あんなことやら、そんなことやら、いろいろありましたね。PFF作品と一緒に世界の映画祭を旅してみて、賞の発表を待つ身になった体験が、表彰式の構築のアイデアを与えてくれたとも言えるなと再確認です。

釜山には、今年もたくさんの日本の映画人が参加していたわけですが、15分の短編映画『日曜大工のすすめ』が短編のコンペティションに招待された、PFFの予告編や、映画祭の先付映像を近年創って下っている映像作家、吉野耕平さんも、2泊3日の駆け足滞在をしてきたと聞きました。初めての海外映画祭参加は、なんだか凄い体験になったようで、映画祭スタッフに「多分賞とってないと思うから最後まで居なくていいよ」と言われたとか・・・。「目がシロクロする」って、こんなときに使うといい表現かなあ・・・と申しましょうか、ぶったまげました。すごすぎる釜山。ワイルドです。

その『日曜大工のすすめ』は、先日お伝えしたNO NAME FILMSというタイトルで上映される10本の短編の一本です。公益財団法人ユニジャパンが「若手映像作家育成」のために行う制作で、監督とプロデューサーとペアで参加し、映画製作を一貫して学ぶという趣旨。15分という長さは厳しく決められています。こちらはデジタル作品ですが、もうひとつ、同じ趣旨でVIPO制作の30分の短編映画制作プロジェクトがあります。こちらは35ミリフィルムでの制作を経験するという趣旨で、予算もぐっと上がります。
どちらのプロジェクトも、共通するのは「公的資金で制作されている」こと。それが何を意味するかと申しますと、「収益をあげてはならない」ということ。つまり「商品としての映画」として、市場に出してはならないのです。となると、ものすごくアヴァンギャルドで過激な作品が出現してほしいのが、映画祭上映作品を探す私の望みです。が、一方、どちらも「若手映像作家育成」のためのプロジェクトですので、それなりに、市場で通用する作品が期待されるという、非常に難しいポジションを持つわけです。さはさりながら、NO NAME FILMSと題された10作品上映は、監督たちが自主上映を行うことを決めた訳です。

今、映画で最も困難な過程は、作品の公開を多くの人に知ってもらう、観に来てもらう。ということです。これは、予算のない映画にとっては、砂漠で道に迷うような途方に暮れる行程です。書きながら胃が痛くなります。今週、風邪から8割がた回復して、まず、渋谷ユーロスペースで公開中の『家族X』のトークを見に行きました。佐々木敦さんと吉田光希監督の対談。すごく面白かった。前作の『症例X』で何か"自分の映画"を掴んだ
と感じた吉田監督が、『家族X』では、誰もが知っている俳優さんたちと、『症例X』と同じつくり方ができるかどうか、も、ひとつの挑戦だったと。そして、次作では、全く違うことをやってみるかもしれないと。楽しみになりました。が、この対談、満席でのトーク、とはいきませんでした。そして、外に出てふと気づくと、2階のオーディトリウム渋谷ではワン・ビン特集が。ちょうど監督のトークがあったようで、東京っていろんな人がいっぺんに集ってるというの、久しぶりに街に出て再認識です。星の数ほどあるイヴェントから、どうやって自分の作品を選んでもらえばいいのか・・・う~ん。
あ、ワン・ビン監督の新作『無言歌』は、昨年の東京フィルメックスで上映され、それを観た配給会社ムヴィオラが公開を決定しました。「公開プリントで観ると、細部までくっきり状況がわかって、全然印象が違うので必ず再見するように」とムヴィオラの方に言われていますが、まだまだ強烈に記憶されている映画です。『無言歌』と『一命』、今の日本に、効くと申しましょうか、どちらも強烈です。

あ、なんだか話が飛んでしまいました。
作品をつくる、公開劇場を探す、というところまでは、随分とチャンスが増えたと思うのですが、その後の、公開=宣伝する。人を映画館に呼ぶ。ということは、更に困難になってきています。ここには、映画をつくることとは、別の情熱、別の仕事が必要なので、エネルギーを振り絞って一度は出来ても、複数回はなかなかハード。いい方法はないものだろうか、と、このことも、いつも頭を離れない課題です。

また話は変わりますが、ユーロスペースでは、フレデリック・ワイズマン特集も始まりますね。これまた3時間当たり前~という長い映画ばかりですが、ウッディ・アレンも欠かさず観るというワイズマンのドキュメンタリー。「俳優として演技のアイデアを盗みに行くのかな?」という話になるほど、普通の人々の顔、行動、たまりません。それと、関係ないですが、ワイズマン監督、お顔がですね、ヨーダに似ておられるのです。それでファンな私かも?しかし、ご本人は、びっくりしたのですが、大柄なんです。勝手に小さい人と思っていた自分を反省しました。


プロフィール

PFFディレクター
荒木啓子 Keiko Araki

雑誌編集、イベント企画、劇場映画やTVドラマの製作・宣伝などの仕事を経て、1990年より映画祭に携わる。1992年、PFFディレクターに就任。PFF全国開催への拡大や、PFFスカラシップのレギュラー化、海外への自主製作映画の紹介に尽力。国内外で映画による交流を図っている。

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