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PFFアワード作品紹介

PFFアワード1996

作品名 監督名 作品名 監督名
『かさぶただらけのマリア』 松本真葉 準グランプリ
『19(ナインティーン)』
渡辺一志
神森 崇
審査員特別賞
『詭弁の街』
飯野 歩 『日向のにおい さがす憧れ』 鶉屋二吉
グランプリ
『ゴキブリマン』
福津泰至 WOWOW賞、シャンテ賞
『BLUE HEARTS』
広崎哲也
『しらぬがかける』 駒谷 揚 『見切発車』 尾上和裕
『チキンヘッド』 山本 拓 『もしもし』 木下 恵
ジャストシステム賞
『手の話』
村松正浩    

応募総数 690本 入選 11本

『かさぶただらけのマリア』

監督:松本真葉

愛が、濃い
「愛してない、でもセックスする。」そう宣言する女を本気で愛していく男。付き合ってください、と言われて付き合い始めた男に、次第に執着していく女。恋に捕らわれた人間はプライドと独占欲の間で自分を失い、バカげた行動にひた走る。彼らの愛憎の対象となった人間もまた、恋愛における優位に立ってしまった自分を持て余し、ただ立ち尽くす。愛というナイフで傷つけられ、自分をも傷つけた者たちは、だがしかし、かさぶたも治らないうちに、また誰かを愛し始める。
恋愛が、人間の精神に、肉体に、もたらすもの。その全てを直視しようと奮闘するカメラ。最後まで高い集中力を保つその視線が、愛すること、愛されること、愛さないこと、愛されないことが微妙に枝分かれしていく様を、くっきりとフィルムに焼き付けた。男性の心理描写が細やかで、特に、恋人の部屋で歯みがきをしようとして、自分以外の男の存在に気付くシーンは秀逸。

1996年/8ミリ/カラー/92分 英題:SCARRED MARIA
監督・脚本・音楽・Premire編集:松本真葉
撮影:松本真葉、和田龍成 撮影協力:中間耕平、藁垣洋平、松川直人、堀内裕未、サーヤ 機材協力:松浦 亨
出演:島本三起子、松本真葉、和田龍成、的野裕子、山崎浩司、ポコ橋本、富田耕一郎、ムッシュ武居、サーヤ

審査員特別賞

『詭弁の街』

監督:飯野 歩

ヤツは見てほしいんだ、おれに
大学を中退し、毎日を虚無的に生きる坂巻。彼の家には時々、奇妙な電話が入る。「池袋、ロングヘアーの女」など、地名と人物の特徴だけを言って切れるその電話は、実は殺人予告だった。それに気付いた坂巻は犯行を目撃すべく、偶然再会した大学時代の友人・馬淵を「おもしろいものを見せる」といって連れ回す。彼の真意を知って責める馬淵に、人間の非力さをうそぶく坂巻。彼には高校時代、目の前でクラスメートに自殺された経験があった。しかし自分の自殺未遂を馬淵に命がけで助けられたのをきっかけに、坂巻の中で何かが変わる。犯行の動機が孤独にあると考えた彼は、犯人を救うため人混みの中を走る。
ドラマチックに傾きがちなテーマを、硬質の画面がしっかりと支える。自殺を見せられ、今また殺人を見せられようとする主人公が、“見る”から“関わる”へ自分を変えた途端に走り出すカメラが、この作品を頭でっかちでなく生きたものにしている。

1996年/16ミリ/モノクロ/48分 英題:SOPHISTICATED CITY
監督・脚本:飯野 歩
映像演出:今井秀道 音響演出:青山真之
出演:五十嵐正俊、石山英憲、中川玲子、鈴木 優

グランプリ

『ゴキブリマン』

監督:福津泰至

ゴキブリマン、あなたがいたから僕がいた
佐藤には近頃、気になることがある。煙草の減り方が妙に早いのだ。「自分1人で2人分喫っているのか。それとも、もう1人喫っている誰かがいるのか」。そして彼は考える。「自分が行っていない時も大学は存在するのか」「自分が部屋にいない間、部屋には本当に誰もいないのか」と。そんなある日、クローゼットの中からブリーフ1枚の男が登場する。時々、ベランダで飛ぼうとするその男は、毎日を無気力に過ごす佐藤に、現実的な質問をしたり、意見を言うようになるのだった。彼の正体は一体…?
自分の視界の外に広がる世界。その圧倒的な大きさに思いを馳せた時、自分という存在の小ささを思い知る。外との接触を断って、その恐怖をうやむやにする佐藤。男との会話を字幕にしたことで、彼の閉じた世界を表現することに成功した。数日間に起こった小さな再生を描いたユーモラスなタッチは、エンディングのテーマ曲で一層印象的になった。

1996年/8ミリ/モノクロ/33分 英題:COCKROACH MAN
監督・脚本・編集:福津泰至
撮影:伊藤伸浩、長池弘史 録音:古沢秀治 照明:鈴木竜一郎、長池弘史 記録:熊田祐子 音楽:野崎美波
出演:冨永昌敬、福津泰至、大野洋介、長池弘史

『しらぬがかける』

監督:駒谷 揚

君を好きでいたいから、聞かないよ
野山かけるは、公園で男に見事な平手打ちをくらわす女の子・舞に一目惚れ。口は立つが行動力のないかけるを、友達のミキは心配するが、彼女の予想を裏切って、かけるの恋は急展開でいい感じに。ところがある日、男と仲良くコーラで乾杯する彼女を目撃。「あの人、誰?」と聞き出せずに悶々とするかけるだったが、さらにその後、違う男と親しげにガムをかむ舞、また別の男とクールに煙草を喫う彼女を目撃。ミキは自分と恋人・アキラの例を出しつつ、真実を追求するべきだとハッパをかける。そして遂にかけるは行動を起こすのだが…。
恋がスタートした高揚感。これを聞いたら、2人の関係が終わってしまうかも、という不安。いくつものドキドキが、早口言葉のようなセリフ、大胆にカットされた映像とで、映画全体からリズミカルに伝わってくる。気弱で熱血漢で優しい主人公のキャラクターが、恋する人間の混乱ぶりを素直に体現。

1996年/ビデオ/カラー/50分 英題:KAKERU
監督・脚本:駒谷 揚
助監督:相徳雅恵、三宅太郎 アニメーター:長田剛志、名倉正恵 アニメ助手:広橋有里子、中川原真紀子
出演:八幡浩充、岡本展子、長沼陽子、谷 忠彦、松田 卓、清水耕一郎、三宅太郎、相徳雅恵

『チキンヘッド』

監督:山本 拓

チキンヘッドに導かれ、娘たちはどこへ行く
空にヘリコプターやジェット機の轟音が響く、ある夏の暑い日。帰宅したヨシミに一通の手紙が届いていた。それは“実の父”からで、「海の家で待っているから会いに来てほしい」という内容だった。「お前はその家の本当の子供ではない」という話はすぐには信じられなかったが、ニワトリの首、チキンヘッドを持っているという指摘は事実だった。翌日、ヨシミは二度と戻らない覚悟で家を出る。一方、バス停に集まった3人の女は、お互いの首にチキンヘッドがぶら下がっているのを見つけて驚く。すぐに仲良くなった3人は無軌道な冒険に出るが、次々と奇怪な事故に巻き込まれていき…。
意味がありそうでない、続いているようで切れている、近未来のようで過去のようでもある、不気味なようでオカシイ、シュールなストーリーと映像。アナログ感覚あふれるスピード感が、昼間見た悪夢のような感覚を呼び起こす。

1996年/8ミリ/カラー/41分 英題:CHICKEN HEAD
監督・脚本・編集・美術:山本 拓
撮影:山本 拓、牧 誠司、阿部瑞枝 録音:牧 誠司、佐藤昌孝、鈴木よしみ、手塚利奈 音楽:山本 拓、高畠康一、鈴木よしみ
出演:阿部瑞枝、手塚利奈、鶴見奈美、牧 誠司、山本 拓、遠藤京子、佐藤昌孝、野溝俊二、若松拓良、鈴木よしみ

ジャストシステム賞

『手の話』

監督:村松正浩

「彼女」がいれば、大丈夫
粗雑なくらいさばさばした性格の夏子。少し気弱なマイペース男、坂井。ある日、夏子は坂井の仲介で、本棚を人に譲ることになった。2人は車で出かけるが、届け先がわからない。でも「彼女が教えてくれるから大丈夫」と坂井は言う。「彼女」とは選択に迷った時に現れる、彼にしか見えない女性の右手。そのおかげで(?)目的地に到着するが、夏子が怪我をしてしまう。本棚を放り出し、病院を探して車を走らせる坂井。だが「彼女」の存在はぷつりと消えて…。
月のような信号、星のような街灯。冬の夜の道路をあたたかく映し出すカメラは、友達以上恋人未満の2人を見つめる監督の眼差しでもある。坂井が迷う間もなく一番大切なものを選んだとき=愛する責任を引き受けたときに、“選んでくれていた”彼女がいなくなるピリオドは、物語に深い奥行を与えた。非現実的なモチーフを使いながら、充分に現実的な幸せの誕生を描いた映画。

1996年/16ミリ/カラー/30分 英題:THE LEADING HAND
監督・脚本・編集:村松正浩
制作・記録:高橋真美 撮影:花山純子、田嶋克次 照明:根津信哉、広嶋哲也 録音:宮地 寛、向井崇人 音響:武井尚士、藤井暁久 音楽:竹花寿実、瀬尾タロ
出演:瀬尾タロ、勝田 愛、佐々木 広、大窪将央

劇場公開
海外映画祭
1997年 トロント国際映画祭 (カナダ)
オルレアン国際映画祭 (フランス)
準グランプリ

『19(ナインティーン)』

監督:渡辺一志/神森 崇

夏休みみたいな誘拐でした
“欲しいものがあれば盗み、いらなくなれば捨てる”という無秩序な行動を繰り返しながら、目的もないまま旅をしている男たち。彼らは白昼堂々、街なかで1人の大学生を誘拐する。訳がわからないままに仲間にされ、最初はおびえていた大学生だったが、どこか憎めない3人のペースに次第に魅かれていく。そんな時、ふとしたことで大学生が人を射殺してしまう。死体を捨てに行くために走り出した4人の車は、検問に引っかかり…。
動機も目的もない無謀な行動、残虐さと優しさが奇妙に混じりあう性格。そこに生まれるある種の清潔感は、主人公と同様、観客にも新鮮な連帯感を抱かせる。さらに、暴力がロマンでもスタイルでもなく、音楽や冗談と同じ“気分”として存在しているアナーキーさ。おそらくそれは、技術や計算ではなく生来のセンスと世代だろう。タイトルは撮影当時の監督2人の年齢。新世代の台頭を予感させる、平熱のバイオレンス。

1996年/8ミリ/カラー/51分 英題:NINETEEN
監督:渡辺一志、神森 崇
制作・脚本・編集:渡辺一志 撮影・音楽:神森 崇
出演:福山亮一、有馬 顕、渡辺一志、野呂武夫、島田亮輔

『日向のにおい さがす憧れ』

監督:鶉屋二吉

大好きなもの、大切に、暮らしたい
家族と綾瀬に住んでいる私は、池袋の本屋で働いています。時々、友達とフリーマーケットに店を出します。その店は彼女が好きな食器と、私がボタンで作ったアクセサリーを売っていて、結構評判がいいのです。そこで貯めたお金で友達は念願の海外旅行に出かけました。私の目標は一人暮らしを始めること。今日は休みだから、アパートの下見に出かけます。公園に立ち寄ると猫が集会をしていました。古い建物を見ていたら、急におばあちゃんに会いたくなり、私は電車に乗りました…。
全編、モノローグと手持ちの8ミリカメラで綴られるのは、ボタン、自分の部屋から見る夜明け、猫、海、おばあちゃんなど“私”の好きなものばかり。コレといった脈絡も意味も、大層な美意識もないそれらは、しかし心地よいリズムと美しいメロディを奏でていく。その自然なおだやかさがノンフィクションを思わせるフィクション・エッセイ。

1996年/8ミリ/カラー/29分 英題:SCENT OF THE SUN
監督・脚本:鶉屋二吉
音楽:藤木弘史 協力:千葉 昇、笹口こずえ
出演:赤城美美子、湯澤康代

WOWOW賞&シャンテ賞

『BLUE HEARTS』

監督:広崎哲也

笑わねーと、火ィつけんぞ
不良仲間とシンナー遊びや優等生いじめに明け暮れる大分の暴走族、梅川 哲。持ち前の要領のよさで暴走族でも出世し、高嶺の花だった美少女とも付き合い始めるが、それも束の間、次々と挫折が彼を襲う。地元に嫌気がさした哲は発作的に上京。プロボクサーとして成功している兄のもとに転がり込む。しかし、勝ち続けるためにストイックな生活を送る兄に反発、やくざの子分になってしまうのだった。ダラダラした生活を送る哲だったが、試合中に兄が死んだことを知り…。
恋、友人、ヒーロー、努力せずに得られる成功。1人のツッパリ少年が多くのものを失った後に辿り着く自己再生。それを定型に沿って描きながら、観ていて愛情を感じてしまうのは、隙あらば笑わせようというパワーと、自覚あるパロディ精神。観る物をあっという間に引き込むイントロから、主題歌が流れるエンドロールまで、徹底したエンタテインメント作品に仕上がっている。

1996年/8ミリ/カラー/112分 英題:BLUE HEARTS
監督・脚本・編集:広崎哲也
撮影・照明・録音:中島隆一 助監督:影山成基、穴山 亨 制作進行:広瀬 香 音楽:丸目高広
出演:広崎哲也、義本哲郎、加藤昌樹、本多さおり、岸田研二、宮下竜也、木村健二、古本聖一郎、山本泰市、ジーコ内山、飯田庸こ

『見切発車』

監督:尾上和裕

こんがらがって、ころがっていく
自暴自棄な生活を送る女。その理由が別れた男への断ち切れない思いにあり、自分の愛情ではどうにもならないと感じた彼氏は、彼女の昔の恋人に会い「よりを戻してやってくれ」と土下座する。そのおかげでかつての恋人と再び付き合い始めた女は、しかし、一方の男とも別れられなかった。そんなある日、元恋人がシャブ中だと発覚する。奇妙な三角関係はどんどん深みにはまっていく。
2人の男の間を行ったり来たりする女。それを許す男たち。それぞれに勝手で未成熟で不器用ではあるが、そこには、現代の恋愛にありがちな計算や逃げはない。彼らは傷ついても、見返りがなくても、自分より相手のことを考えて必死になる。そんな3人のキャラクターとお互いの深い結びつきを、説明的なセリフを抑えたシーンの積み重ねで見せていく演出力は高い。出演者の演技力も高く、特殊に感じられがちなストーリーを、観る者のシンパシーに届くものにしている。

1996年/8ミリ/カラー/83分 英題:NAKED SOUL
監督・制作・脚本・編集:尾上和裕
撮影:尾上和裕、津田謙司、草島英里子、尾上史高 録音:林 未来 製作:プラネット・ステーション
出演:八百美鈴、水波圭太、鈴木昭夫、林 未来、尾上史高、田中仁明、友田勝久、折田妹子、北村 守、コタロ、長尾ジョージ

『もしもし』

監督:木下 恵

完成しない家族パズル
すずは哲が好きだ。哲もまた同じ気持ちでいる。しかし哲の父は、すずの母の再婚相手。血はつながっていないが、2人にはある種の家族意識と後ろめたさが付きまとう。そしてその感覚こそが、共犯関係のようにすずと哲をつないでいる。だから彼女は、母と義父(哲の父)の間に冷たい風が吹き、不吉な予感をはらむ哲の母の変化に気付きながら、哲と哲の母のアパートに家族の一員のように出入りする。だがある日、義父と哲の母がよりを戻して駆け落ちしてしまう。親たちの関係がもつれるほど密度を深めていくすずと哲の愛は、どこへ行くのだろう。
5人の登場人物をさまざまな“2人”に切り取り、それぞれの感情と関係を的確に伝える抑えた演出が冴える。特にロングショットに見られる緊張感は“熟練したデリケートさ”と呼びたいほど。また、何度も登場する食事のシーンが“家族”の意味を問うアクセントとして、見事な役割を果たしている。

1996年/16ミリ/カラー/32分 英題:MOSHI MOSHI
監督・脚本:木下 恵
撮影・照明:田中利夫 録音・MA:照井康政
出演:酒井桂子、上原大介、河原田あや子、早藤昭次、浜田明子

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