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PFFアワード作品紹介

PFFアワード1994

作品名 監督名 作品名 監督名
HITACHI賞(ビデオ賞)
『赤ずきん~Little Red Riding Hood~』
内藤昌樹 『超愛人』 歌川恵子
『悲しいだけ』 豊島圭介 WOWOW賞(撮影賞)
『はがね』
中嶋莞爾
審査員特別賞、シャンテ賞
『きままちゃんはあんたたちじゃないからのぼるのぼる』
金井康史 『裸の王子様』 小村幸司
優秀賞
『こわれもの』
石井正人 『春風』 漆 見枝子
佐藤工業賞(録音賞)
『砂漠の民カザック』
奥原浩志 『りべらる』 熊澤尚人
『生活』 杉浦昭嘉 グランプリ
『寮内厳粛』
佐藤信介
『それでも夜明けは訪れて』 井上千尋 『レムニスケート』 岡村博文

応募総数 464本 入選 14本

HITACHI賞(ビデオ賞)

『赤ずきん~Little Red Riding Hood~』

監督:内藤昌樹

「おばあさん、私よ」。ドアを開けたら、ゾンビ赤ずきんちゃん。
「昔々…」と開かれる、絵本のタイトルは『赤ずきん』。でも登場するのは、いがみ合っている魔法使いと占い師の2人の老婆。占い師の孫娘の赤ずきんちゃんは、出てきた途端、疫病で死んでしまう――。しかし、彼女の活躍はそこからだった。魔法使いの手によって、腐乱の途中で掘り起こされた赤ずきんちゃんは、ヤギの脳味噌を持つゾンビとして甦る。命令は自分のおばあさん殺害だけだったけれど、血の匂いと殺しの快感を知った彼女は、もう誰にも止められない。
精緻なモデル・アニメーションによる大人のためのインモラル童話。ヨーロッパ的な暗さを持つ人形が、話の内容とあまりにもマッチ。

1994年/ビデオ/カラー/13分
監督・脚本:内藤昌樹
撮影:伊東美礼、内藤昌樹
音楽:宮野琢也、安井ゆうじ

『悲しいだけ』

監督:豊島圭介

兄に、彼を、取られた。
いつも苛立ち、スリルのためだけのスリや強盗を強要する女。抵抗しながらも、限りない寛容で共犯を続ける男。相手を繋ぎ止めておくために必死なのは、男か女か。果てしなく膨らみ続けるように見えた苛立ちと寛容の間に入ったのは女の兄。しかし、両親の墓前で女に謝罪させる彼もまた、自分の愛を繋ぎ止めるために、ウソという罪を犯すのだった。
説明的なセリフはほとんどない。余白の多い映画ながら、登場人物それぞれの気持ち、境遇を伝えて余りある。構成、脚本や演技力という映画の基礎力の確かさが、新しい三角関係の誕生をクールに、そしてリアルに描き出すことを成功させている。

1994年/8ミリ/カラー/17分
監督・制作・脚本:豊島圭介
撮影:葛生 賢 音楽:原野守弘
出演:奥村康代、関口卓臣、原口大史

劇場公開
海外映画祭
1995年 フィルムビデオ95 (イタリア)
審査員特別賞&シャンテ賞

『きままちゃんはあんたたちじゃないからのぼるのぼる』

監督:金井康史

空への道は梯子。世界でひとつの「縦方向ロードムービー」
きままちゃんは嘘つきで自分勝手で超強引。数少ない友達も、別の女の子を誘って旅行の計画を立てるほどだ。それを知ったきままちゃんは、反省するどころか長ーい梯子を用意して、ライバルを出し抜くための観察と邪魔作戦を開始。しかしすべては徒労に終わり、彼女は残された梯子を登る“上への旅”に出ることに。そしてそれは、不思議な男との出会いと別れを経ていつしか「何かを見つけるための旅」へと変わっていく。きままちゃんは「何か」を見つけられるのか。登りきったあと、地上に戻って来れるのか。
「縦方向のロードムービーを目指した」と監督。おそらく世界でただ1つの試み、さて、空には何が待っている?

1994年/8ミリ/カラー/106分
監督・制作・脚本・撮影・音楽・美術:金井康史
助監督:松梨智子、吉田太郎、瀬川咲子
出演:松梨智子、斗桝佳之

優秀賞

『こわれもの』

監督:石井正人

パパのような立派な人になりなさいって言ってるわ。
一時はアマチュア・バンドの中でもならした存在だった徳市。今は無職で、家賃も離婚した妻子への慰謝料も滞りがちだ。ある日、昔のバンド仲間・貴一から新バンドのボーカルに誘われる。話を聞きに彼の店に行くと、そこには以前会っていた女性が貴一の伝言を持って待っていた。意気投合した2人は貴一達の合宿所に行くが、着いた時、すでにバンドは解散していて――。
不器用で、いつも運をつかみそこねる男と、他人の夢まで食いつぶして、要領良く立ち回る男。2人の間に危うげに立つ女。話が進むほどにそれぞれの多面性が見えて、余韻が残るラストになった。ノイジーなダイアローグとカットからは、音楽が聞こえる。

1993年/8ミリ/カラー/51分
監督・制作・脚本:石井正人
撮影:石井正人、今井たかし
出演:桑原 旭、小野文恵、中里貴一

佐藤工業賞(録音賞)

『砂漠の民カザック』

監督:奥原浩志

カザックは、美しい妻と可愛い子供を置いて旅に出た。
毎朝、仕事に行き、夜、家に帰れば、妻と子供がいる生活――。男は、何かが違うと思い始めた。眠れない、笑えない、答えの出ない毎日。ある日、男の職場である映画館に、怪しい外人に追われた女が逃げ込んでくる。数日後、偶然、その女と再会した彼は、事情もわからないまま、彼女の「最後の危険な仕事」に同行することに決める。短い旅の間に。彼女こそ自分の人生の答えだと確信する男だったが――。
いつまでも少年でいたいピーターパン男の夢物語ともとれる話だが、主演俳優のキャラクターと好演もあり、肉体化に成功。ほろ苦い“少し年をとった”ボーイ・ミーツ・ガールに仕上がった。

1994年/8ミリ/カラー/78分
監督・制作・脚本:奥原浩志
撮影:槇 憲治 音楽:近藤太郎
出演:近藤太郎、須藤幸世、関 文子、関 美利河、アーロン・ダンセイ、満田普也

『生活』

監督:杉浦昭嘉

今日、1人で泣いている人も、明日は誰かと笑えますように。
11月末というのに就職の内定がもらえない大学4年の歩美。最後のチャンスとやって来た会社の面接会場で、幼なじみの千春と再会する。彼女の話では共通の友人・岩田は精神病院に入院中という。一緒に暮らす恋人の拓也が年末年始、仕事だと聞いてがっかりする歩美のもとに、試験結果が送られてくる。一方、千春は、入院前に渡されたスケッチブックに、ある“お返し”をつけて岩田にプレゼントする。
良いことだけではないが、悪いことばかりでもない。そんな「生活」の実感を、いくつものエピソードでさりげなく映画化。タイムリーな話題を、ニュース性に負けることなく消化して、誰もが共感できる作品に仕上げている。

1994年/8ミリ/カラー/44分
監督・制作・脚本・撮影・音楽:杉浦昭嘉
撮影助手:浅木 大、浅野敦也、久間敬一郎
出演:長井身幸、杉浦康博、安藤聡子、増田庄吾、新井優子

『それでも夜明けは訪れて』

監督:井上千尋

ペンダントが消えた、影が消えた。次に消えるのは――。
生きている実感が日に日に薄れていく主人公。処女なのに妊娠検査薬を試すことぐらいしか、自分の生を確認するすべを思いつかない。そうした退屈と厭世の毎日に終止符を打つべく、彼女はダイヤルQ2にあるメッセージを託し、1人の男と会う。声フェチの男をイカせるのと引き換えに、彼女が手に入れたものは――。
フレンチ・テイストあふれるスタイリッシュな絵とは裏腹に、ストーリーはアンニュイからホラーへとダーク度を深めていく。前半の「少女と呼ぶほど幼くはなく女というには青臭い時期特有の疎外感」は、ラストで「現代の民間伝承的こわい話」に。

1994年/8ミリ/カラー/27分
監督・脚本:井上千尋
撮影:槙岡浩彦、茶谷 淳、他 音響:岡本良次 スタッフ:鈴木理映子、森岡教充
出演:末田裕子、深川 善弘

『超愛人』

監督:歌川恵子

美人の隣で、申し訳なさそうに笑え。
山田京子はブスである。彼女には桃谷という思いを寄せる男がいる。アタックをかける山田に彼は言う、「友達連れて遊びに来な」。ブスの上に友達のいない山田は、街に出て女の子に声をかける。基準はただ1つ。自分を引き立ててくれるルックスであること。やっと見つけたデブ少女を連れて、晴れて桃谷のアパートに行く山田。しかし桃谷はデブ好きだった。
きれいになるために占いに頼ったり、自分以下と見分けた同性には強気になる主人公は、「ブスってこんな生き物」という笑いの形をとりながら、観客に「あなたの中のブス的な部分」を突きつける。ルックス・コンプレックスの過激な踏み絵映画。

1994年/16ミリ/カラー/20分
監督・脚本:歌川恵子
制作:澁谷徳子 撮影:首藤 歩、高野 麻 美術・照明:室伏敦子 録音:須賀穣介、青木英美 音楽:小林淳哉
出演:戸田志津代、佐藤彩子、グレース

劇場公開
海外映画祭
1996年 釜山国際映画祭 (韓国)
WOWOW賞(撮影賞)

『はがね』

監督:中嶋莞爾

巨大な鉄の塊に触れる、静かな生命のスケッチ。
みずから繁殖して巨大化したような鉄の建物がそびえ立つ工業都市。友達を持たず、毎日、鉄の廃材で遊ぶ少女は、1人の老画家と出会う。2人は、同じように鉄を愛する者として心を通い合わせる。画家は、かつて一度だけこの町で見た「白い花が降る光景」をキャンバスに描くため、その日を待っているのだという。しかし、白い花は降らないまま、老人の体力ばかりが衰えていく。
「ローテクノロジーへのレクイエム」と監督が言うだけあって、工業地帯の寒々しい風景を、ひたすら美しく、尊いものとして撮り上げようとする強い意志と高い映像力が感じられる。そのまま写真集になりそうな映像大作。

1994年/16ミリ/カラー/68分
監督・撮影:中嶋莞爾
制作:中嶋莞爾、小林良和 脚本:中嶋莞爾、根岸秋しの 音楽:中嶋莞爾、石毛 俊
出演:丸山詠二、押部麗奈、川原文子、安達功一

『裸の王子様』

監督:小村幸司

優しさは、見えないマントか?
銀行員の建(たつる)は、自分が勧めた節税対策が裏目に出て、顧客の家庭が崩壊したことを知る。自分を責めて無気力になり、出社拒否になる建。そんな彼をあたたかく見守る恋人・ユキ。もう一度、自分のためにもユキのためにもやり直さなければと、ホテル従業員の仕事に就いた彼だったが、その第一夜、思いもよらない事件に巻き込まれてしまう。翌朝、自分が犯人にされるのを承知の上で、建はある場所に出かけていく。自分の思いが、誰にも伝わらないのを承知で。
優しさと弱さのボーダーラインの上で自分を見失っていく青年。現代社会が生み落とした、生命力のない大人のさまよいを、都会の風景の中で描く。

1994年/ビデオ/カラー/32分
監督・制作・脚本:小村幸司
撮影:朝倉浩貴 助監督:菅野宏彰 撮影助手:倉田健次、宮川 朗 録音:照井康政 美術:杉浦達也
出演:橋本三郎、藤原常吉、川島祐子、北村未来、橘 隆哉

『春風』

監督:漆見枝子

失恋も、チョコで忘れる、良き年頃。
志都子はいつも少し間が悪い。卒業式の日、ずっと気になっていた男の子にガールフレンドがいることを知り、その上、お腹の虫が鳴った音を聞かれてしまう。ショックから思わず駆け登った屋上で、彼女は1人の少女・空絵と出会う。学校が嫌いで屋上で空を眺めるのが好きだという空絵の話に、志都子はいつしか悲しい気持ちを忘れていく。空絵もまた、自分と同じように要領が悪いのに、なんとなく学校が好きだという志都子に心を開く。卒業式の日、初めて言葉を交わした同級生の2人は、親友のように仲良く帰っていく。
大阪弁と、奇をてらわない丁寧な映像が、タイトル通りの暖かくふわふわした質感をさりげなく醸し出している。

1993年/8ミリ/カラー/29分
監督・制作・脚本・音楽:漆見枝子
撮影:増井公二 助監督:笹岡道成
出演:久保圭伊子、江口京子、秋元克次、西尻幸嗣

『りべらる』

監督:熊澤尚人

都会の密室、狂気は伝染する。
夏の雨の夜、冴えないサラリーマンの北村は、ささいなことから傘で人を刺してしまう。無我夢中で帰宅した彼は、誤って1階下の部屋のドアを開てしまった。しかし出てきた女は、驚きながらも彼を優しく迎え入れ、妹に「私と結婚する人で殺人犯なの」と明るく紹介するのだった。北村を引き戻すべくやってきた婚約者は、その狂気に立ち向かうが逆に犠牲者となる。そして事態は思わぬ方向へと向かい――。
1つズレた歯車が次々と別のズレを呼ぶ不条理な悲劇を、ソフトなトーンのモノクロ映像に焼き付ける。「現在の超個人主義時代に一石を投じる、スキャンダラスな葬送行進曲が静かに奏で始められる」とは監督の弁。

1993年/8ミリ/白黒/56分
監督・制作・脚本:熊澤尚人
撮影:阿子島伸明 音楽:穂山賢一
出演:真木愛子、熊切夏美、松村藤樹、小野寺明子

グランプリ

『寮内厳粛』

監督:佐藤信介

篠原さん、勉強しなくてもいいんですか。
冬季講習前の、ある予備校の学生寮。石黒は、同室で寮の牢主のような存在の篠原から、1つの噂を聞かされる。最近、隣室の橘の成績が急上昇しているのは、薬を使っているかららしい、というのだ。半信半疑の石黒に篠原は、橘の部屋に忍び込んで真偽を確かめようと誘う。そして2人は、彼の机の上に薬のビンを見つける。
ただ1つの目的のために費やす時間は、長いか、短いか。「過ぎてしまった時間の重みから逃げ出すには、自分自身が軽くなること」とばかりに飄々と生きる篠原をはじめ、プレッシャーに飽きた浪人生達の、長くて短いいつもの1日を、名随筆に通じる軽くて枯れたタッチで切り取る。

1994年/16ミリ/白黒/18分
監督・制作・脚本:佐藤信介
撮影:佐藤信介、中村靖日
出演:石黒紀之、川野宏毅、宮本牧子

劇場公開
海外映画祭
1997年 オルレアン国際映画祭 (フランス)
2013年 ニッポンコネクション
NIPPON VISIONS部門「PIA FILM FESTIVAL:CLASSICS」
(ドイツ)

『レムニスケート』

監督:岡村博文

2人が出会ったのは、偶然ではなく必然です。
誰も自分を気にとめてくれない。そんな孤独感とともに暮らす女。ある日、彼女は、風船を自由に操る男に出会い、強く魅かれる。2度目の出会いで2人は、町はずれに2人だけの城を見つけ、暮らし始める。女にとっては永遠に続くと思われた、夢のような日々。ピリオドを打ったのは男だったが――。
わかり合うのに言葉も時間も必要のない、永遠をゆだねられる完璧なパートナーがきっといる――。数学記号で、連珠形、紐状線を表すレムニスケート「∞」に託された、無邪気過ぎるとも見える主人公の望み。風船男は「∞」の半分になれるだろうか。

1994年/ビデオ/カラー/75分
監督:岡村博文
助監督:八木和広、山口信彦 音楽:寺岡佐和子 製作:シネマウントフィルム
出演:近内仁子、香田智哉

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