10代で観たい! 私を変えた映画たち

10 代で観たい! 私を変えた映画たち 【特集企画部門】

「10代」をキーワードに、憧れのクリエイターたちが
映画から貰ったものを伝えていく場所をつくります。

今年は6名のセレクターが、
上映作品との出会いを綴ってくれました。更に会場では、
映画上映後、ご登壇いただきお話を伺います。

Aマッソ加納(お笑い芸人)セレクト

『茶の味』を選んだ理由

大学時代、映画サークルの一つ上の先輩に教えてもらった作品です。田舎の自然豊かな町に住む一家が、それぞれ悩みをもちながらも、のどかに暮らしている。大きな事件はないけれど、シーンの一つ一つがチャーミングで、ユーモアに溢れていて、「ああ、自分もこんな映画撮れたらなあ」と思いました。何度見返しても大好きな邦画です。春野家の他にも、今見ると信じられないほど豪華な役者さんたちが次々と出てくるのも魅力です。

麗(チョーキューメイ/ミュージシャン)セレクト

『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』を選んだ理由

「これは戦争映画です」と紹介されると、身構えて観るのを少し遠ざけてしまうかもしれません。ですがこの映画はそういった気持ちの整理がない状態で見た方がより没入感があります。こんなに悲しいのに優しさに包まれていて温もりがあってじんわりと胸に残って離れない。見終わったあと日々を大切に生きようって思える素敵な映画です。私がこの映画を見たのが20代になってからなのですが、10代の頃に出会っていたらもっと豊かな感性で観れたなと思うので、10代の方に是非見て欲しい1本です。

ゆっきゅん(DIVA)セレクト

『渚のシンドバッド』を選んだ理由

これを観たのは20代のはじめで、そのとき、10代の時にずっと探していた作品だったと思った。高校のクラスメイトの青春群像。同性愛者の伊藤くん、伊藤くんが恋する吉田くん、吉田くんと付き合っている優等生、ふざけてるクラスメイト、そして誰ともつるまない転校生・相原。岡田義徳さん演じる伊藤くんとDIVAデビュー前の浜崎あゆみさん演じる相原、孤独な二人の少し秘密の男女の友情が本当に好き。青春は一言多い、青春は一言足りない、青春は誰にも何も伝えきれない。心が体を伴って集まった教室も、二人きりの緊張感も、二人だけの開放感も、夏という季節がカメラになってかれらの姿を捉えるかのように焼き付けられている。かっこよくない。

神田伯山(講談師)セレクト

『リリイ・シュシュのすべて』を選んだ理由

25年前。学生の時に観た、『リリイ・シュシュのすべて』はとても面白かった。今、僕が持っている感性、大人になったら忘れたり、なかった事になるような気持ちが、この映画には全部入っていたから。「監督は大人なのに、なんで僕の気持ちが分かるんだろう」それが不思議でしょうがなかった。若い自分自身をのぞいているような映画で、しかもそれは多くの観客が同じことを思ったのだろう。久しぶりに観てみよう。つまらない映画と思うようになっていたら、僕が大人になってしまったということか。タイムカプセルを掘り返すような気持ちで、中学生の自分の感性に会いに行きたい。この映画体験は、若い世代にこそ観て欲しい。同じ気持ちになるか否か。

稗田寧々(声優 )セレクト

『動物界』を選んだ理由

理解できないものを前にしたとき、自分はどう向き合うのか。10代は、属する社会が次第に広がり、多様な価値観や考え方に触れていく時期です。その中で、自分らしさや周囲との違いに悩み、他人の目を気にしたり、「こうあるべき」という無意識の圧力に苦しんだりする人も少なくありません。本作が、「違い」と向き合うことの難しさ、そして他者を理解しようとすることの大切さについて考える契機になればと思います。

朝井リョウ(小説家)セレクト

『ジョゼと虎と魚たち』を選んだ理由

親の運転する車でしか辿り着けないTSUTAYAをひたすら徘徊する高校生だった。千円で借りられる五枚のDVDをどれにするか、可能な限り厳選していたのだ。『ジョゼと虎と魚たち』は、そんなころに手に取った一作だった。池崎千鶴演じるジョゼは、脚が不自由で、車椅子生活を送っている。そんなジョゼは、妻夫木聡演じる大学生・恒夫との出会いを経て、その世界を一気に広げていく。だが――当時の私は、作中で描かれている感情を、一度観ただけでは十分に咀嚼できなかった。特に後半、貝殻の形をしたベッドの上でジョゼが零す独白は、一週間というレンタル期間いっぱい、何度も繰り返し鑑賞した。今の自分では到底掴みきれない感情が描かれている――そう明確に自覚した、初めての映画体験だった。そして、本作に関しては、もしかしたら本編以上に忘れられない鑑賞体験がある。それは、犬童一心監督と池脇・妻夫木両氏によるコメンタリーだ。今では私も“千円で五枚レンタル”どころか“月額数千円で何万作品見放題”の世界線にいるが、その利便性と引き換えに失った、大抵のレンタル商品に付属されていた特典映像の数々を恋しく思っている。私は特典映像に目がない。メイキングや未公開シーンも良いが、何より、監督や出演者が本編を鑑賞しながら裏話を語るコメンタリーが大好物なのだ。そして、その癖を私に植え付けたのが、まさにこの『ジョゼと虎と魚たち』なのである。というのも、コメンタリーに収録されていた御三方の声が、今作を世へ送り出したことへの誇りや興奮に満ち満ちていたのである。次々に明かされる裏話も興味深かったが、鑑賞後、私は何より「こんな大人になりたい」と強く思った。当時の私は、大人になることや仕事をすることを、辛く苦しいことだと認識していた。そんな私にとって、自分の仕事について軽やかに弾けるように語り合う御三方の姿は、それこそ貝殻から零れ出る真珠の如く眩しく煌めいて感じられたのだ。