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PFFディレクターBLOGRSS

2012/03/04 03:00:00

心洗われる金曜日

「木村栄文作品みておかねば~」と、やはり金曜はオーディトリウム渋谷へ。その上映合間に打ち合わせ、などと、事務局スタッフに苦労をかけつつ、ともかく最終日は全プログラムを拝見しました。
そもそも、「テレビドキュメンタリーが劇場で上映される」ことが、画期的な出来事で、作品制作のRKB毎日放送の決断に頭が下がります。ケースバイケースで一概にここに記すのは困難ですが、スクリーンで有料でのテレビ作品の上映は「諦める方が賢い」というくらい、手間暇かかるというか、不可能に近く、映画祭上映も四苦八苦ですので、しみじみ快挙だと思うのです。

が、この木村栄文作品、「パッケージで全国各所で今後展開予定」ということを支配人に聞き、「どこかで全作みることができるのか!」と、心に希望の灯がともる次第です。このチャンス、是非多くの方に掴んでほしい。う~んと、たとえば、ゴーマニズムシリーズを読んで、教科書にない日本の歴史に気づいた方など、栄文作品必見かと思ったりしました。

また、多分、こういうテレビ作品は、今まさに現場に出ておられる方がご覧になると刺激的なのだと思うのですが、20代&30代のテレビや映画の現場スタッフは忙しくて映画館に行く時間がない!のが現実では?その厳しい現実を前に、いつも思うのは、「だからこそ、学校よりも映画館だな」と、ということです。

恐ろしことに、10代~20代前半までの映画の観貯めで、あとの20年間を乗り切るのが映画映像を仕事にする人の現実だったりします。いや、どんな仕事をする人でも、その後の人生の糧を蓄積できるのは、学生時代だと思われる。その蓄積物の中に「映画」を入れると、かなり簡単に多彩な刺激を蓄積することができると思われる。何故なら、映画の情報量は他よりずっと多いから。
そんなことを再確認した刺激的な作品群でした。

足がまだ元通りではないので、都市の「階段尽くし」がいささか辛く、出歩くのを控えている日々です。しかし「やはり出かけると色んないいことに遭遇するなあ」と実感したのは、その日に会場で知った、英語字幕翻訳者によるシンポジウムでした。
「字幕翻訳者が選ぶオールタイム外国映画ベストテン」という書籍の出版にあわせて企画されたイヴェントで、映画翻訳家協会会員が揃い、映画字幕にまつわるお話や、シンポジウムで構成されると。そこで、木村栄文プログラムのあとも、そのまま、若干枚数出るという当日券の列に並んでみたのでした。

「翻訳」という仕事、映画字幕にしろ文学にしろ、言葉を熟考なさる方の文章は面白いなあと、岸本佐知子さん、鴻巣友季子さん、太田直子さんなどなど多くの著書を通して感じていたのですが、今回のシンポジウムも、登壇者の歯切れの良さ、明確さ、ユーモア、感服しました。
告白しますと、映画祭予算が足りないとき「字幕を自分でつくってみようか・・・」と思ったことが、数度あります。思うだけで、実際の作業を考えて、とても手を出せるものではないと恥じ入ってやめるのですが、今回、改めて、プロはプロであると痛感するお話でした。

特に、皆さんの強調なさっていた(個人的解釈でまとめてしまって恐縮ですが)「脚本家はじめ、製作スタッフが何年もかけて作り上げてきたダイアログであり、物語であり、その丸ごとの結果である「映画」をどう観客に伝えるかということに心を砕いて字幕をつくる」という字幕翻訳への姿勢に、「映画」を大切にすることの神髄がすべて詰まっていることに、心洗われた次第です。
"「映画」をまるごと掴む。掴むために努力をする。そして、その映画が多くの人に伝わるために仕事をする"映画を仕事にするというのは、つまりそういうことなのだと、明確に言葉にしていただいた感じです。

ところで、映画字幕、そして、映画パンフの、他に類のない美しさ、クオリティの高さは、実は日本で高度に発達したオリジナル文化です。ここに現れるように、外国文化の伝道者である「外国映画」を大切にしている国日本なのですが、しかし、一方「日本映画」のほうの対外的なプロモーション力は非常に低い。日本映画ファンが世界各地で自主運営している日本や日本映画に特化した映画祭が、日に日に外交場所として重要度が増している、"海外の映画祭頼り"である現実は、実は切実な問題でもあるのです。

が、今それは置いておいて、美術では、もっと切実な問題が起きました。
ロンドンの大英博物館から「日本コーナー」がなくなり、アジアの一部に組み込まれる。と。
文化芸術エンターテインメント芸能スポーツを通して、人はその国に興味を持ちます。理解を深め、愛情を深め、そこに人間が住んでいることを実感し、国のイメージが固まります。その国家イメージのアピールのために、国税を使って活動している人たちがいます。国家公務員ですね。既得権の確保が仕事であるのに、失ってしまった・・・これを皮切りに、ずるずると世界各地の文化施設から日本が撤退させられていくことを、止められないで終わるのだとしたら、これはかなりの危機です。
経済で人を集められても、そこに敬意が伴うかどうかは別問題ですが、文化芸術エンターテインメント芸能スポーツには、必ず敬意が伴います。それを増やすことは、明確に「よきこと。必要。得策」なのに、何故貴重な既得権を失うのか?(個人所得の増える既得権はなぜ手放さないのか?とも書きたいところです・・・あ、書いちゃった)
コミュニケーションの改善が難しいなら、少なくともコミュニケーション場所の確保はしてほしかった・・・・

ともかく、創作物の活発な交流がますます重要になるこれからの世界です。できることをやり続けようと思います。

プロフィール

PFFディレクター
荒木啓子 Keiko Araki

雑誌編集、イベント企画、劇場映画やTVドラマの製作・宣伝などの仕事を経て、1990年より映画祭に携わる。1992年、PFFディレクターに就任。PFF全国開催への拡大や、PFFスカラシップのレギュラー化、海外への自主製作映画の紹介に尽力。国内外で映画による交流を図っている。

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