◎コンペティション部門 PFFアワード2014

季節感や体温から感じる、やさしい希望

『多摩丘陵の熊』

Hibernation
[2014年/32分/カラー]

監督・脚本・撮影・編集・録音・音楽・出演:岡 真太郎

アシスタント・出演:鈴木佑辰/アシスタント:土井省吾、山本 生
出演:堀井綾香

この映画のキーワード

  • 詩のような言葉と映像センス
  • 失声症になった兄
  • 監督が弟役で出演

セレクション・メンバーによる解説

多摩丘陵に暮らす兄と弟。両親の死後、生家である団地に戻り2人きりの生活を営んでいた。兄は恋人が浮気相手と旅行中に事故死したことが原因で失声症となる。季節は冬。弟は兄の回復を待つが…。高台から見晴るかす風景、兄弟が興じる釣り、春の光に溶けかけた雪―─それらはすべて、自然と共に自由に生き死ぬことを肯定している。
言葉の力によりながら、お互いを見つめるまなざしが重要な意味を持っている。声を発することをやめた兄は、「冬眠する熊」だ。言葉を発しない熊は、絵を描くことや贈り物をすることで意志を伝える。兄から贈られた茶色いニットを着て弟が兄と収まる写真は、弟もまた熊であることを示しているかのようだ。弟も兄を見つめることしかできない。観客もまた、それをただ見つめることしかできない。来るべき春を待ちながら。

文:小川原聖子(書店員)

監督:岡 真太郎 おか・しんたろう

1984年 千葉県出身。東放映画専門学校デジタル映画科卒業
映画を志したきっかけは、映画『スタンド・バイ・ミー』です。この映画を見たときに感じる「郷愁」のような感情を表現する事が映画制作をする上で、重要なテーマの一つになっています。長い時間をかけて準備していた企画が、大雪のせいで頓挫、急きょ撮ったのが『多摩丘陵の熊』です。専門学校時代の同期と後輩と、スタッフと出演を兼ねて、ごく少人数で撮りました。映画の舞台となった多摩には小学校のときからずっと住んでいて、とても思い入れがある土地です。最初にテーマというか、詩のような言葉が浮かんで、そこから表現方法を考えていきます。言いたいことというより、最初に浮かんだ言葉も作っていく過程で変化していくので、映画を作ることで自分の言いたいことがわかってくる感じがします。今回は、喋らない人に魅力を感じて、そこから何か作れないか考えていきました。テーマの一つが冬眠なので、冬眠を象徴する動物である熊をタイトルに入れました。

繰り返し観ている作品
『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』(08年/デヴィッド・フィンチャー監督)
最近観て面白かった作品
『ダラス・バイヤーズクラブ』(13年/ジャン=マルク・ヴァレ監督)
好きな映画監督
北野 武
主役にしたい俳優
レオナルド・ディカプリオ

【フィルモグラフィー】
『朱夏遠雷』(2014年/6分/カラー)、『多摩丘陵の熊』(2014年/32分/カラー)、『白黒の森の象』(2013年/27分/白黒)

◎上映日程

  • 【東京会場】2014年9月16日(火) 12:00~ / 2014年9月19日(金) 18:30~ ※監督、出演者など来場予定。
  • 【京都会場】2014年12月13日(土) 16:20~ / 2014年12月18日(木) 12:00~
  • 【名古屋会場】2014年12月21日(日) 11:00~
  • 【神戸会場】2014年12月23日(火・祝) 15:30~
  • 【福岡会場】2015年4月26日(日) 16:30~

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