映画の持つ大きな力。そのひとつが「知らなかったことを伝える」力です。第35回PFF全国開催では、この力を持つ作品を招待作品として、各地でヴァラエティ豊かに展開します。「え!」という驚きを与えてくれる時間を堪能してください。
不思議なタイトルは、子供たちの甲状腺の検査結果をあらわす記号
[2013年/71分/カラー]
監督&撮影:イアン・トーマス・アッシュ/プロデューサー:コリン・オニール
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除染作業が始まる前から再開した保育園では、子どもたちが放射線量の高いスポットを避けながら園庭で遊び、給食の食材はすべて放射線量を計測、調理に使う水はすべてペットボトルの水と徹底している。そうしなければならない理不尽さが、穏やかに話す園長や明るくはしゃぐ園児たちの姿を通して、あらためて胸に迫る。各戸や学校の除染作業は進んでも、学校や行政側が「当面は安全」と言い張っても、母親たちの明日に対する不安は消えない。だが、不安の声を上げることすら異分子のように扱われる風潮が生まれている。子どもたちの甲状腺の検査結果を示すタイトルを持つこの映画は、“おかしなこと”にしっかりと怒るたくましい母親たちと子どもたちを記録。アッシュ監督が福島の子どもたちに捧げたドキュメンタリー映画だ。
1975年生まれ。アメリカ出身。
最初の長編ドキュメンタリー『the ballad of vicki and jake』(06年)が、スイスドキュメンタリー映画祭でグランプリを受賞。滞日歴は10年におよび、原発事故後の福島でも本作をはじめ、『グレーゾーンの中』(12年)などの作品を製作している。本作『A2-B-C』はニッポンコネクション(ドイツ)で「ニッポン・ビジョン賞」を、グアム国際映画祭で「BEST OF FESTIVAL」を受賞している。
※やむを得ない事情により、プログラムおよび来場ゲストが変更になる場合がございます。
© Ian Thomas Ash 2013